Yahoo! JAPAN

スイス、線路の間に太陽光パネルを設置 既存の鉄道網を利用する初めての試み

ELEMINIST

スイスでは、線路の2本のレールの間にソーラーパネルを設置するという画期的な取り組みがスタートしている。列車が実際に走行しているなかで行われる、世界初のプロジェクトだ。

追加の土地は必要なし レールの間にパネルを設置

Sun-Ways

スイスでは、再生可能エネルギーの導入に向けた新たな取り組みがスタートしている。列車が走行する線路で、2本のレールに挟まれたわずかなスペースに、取り外し可能なソーラーパネルを設置するという世界でも初めてのプロジェクトだ。

太陽光発電は幅広く普及しているが、ソーラーパネルを設置する場所が必要になる。そこで、線路の2本のレールにはさまれた土地に目を向けたのが、このプロジェクトの特徴だ。

世界の鉄道網は100万kmを超え、ヨーロッパだけでも26万kmにのぼると言われている。つまり、それだけ広大な使われていない土地があるということで、そこにソーラーパネルを設置できれば、太陽光発電のための新たな土地を確保する必要がなく、環境への負荷も最小限に抑えられる。

推進するのは、のスイスのスタートアップ企業「Sun-Ways(サンウェイズ)」と、スイス連邦工科大学ローザンヌ校。

2025年春、スイス西部・ヌーシャテル州のブテ駅付近にある100メートルの線路区間に合計48枚のソーラーパネルが設置された。今後3年間にわたり、実証実験が行われる。

発電エネルギーは地域の住宅に供給

Sun-Ways

ソーラーパネルの設置作業には、スイス鉄道のメンテナンスを担う企業「Scheuchzer(ショイツァー)」が開発した専用列車が使用された。この列車は数時間でおよそ1,000m²のパネルを敷くことができるといい、作業のスピードも大幅に向上している。

さらに特徴的なのは、パネル部分の着脱のしやすさだ。必要に応じて簡単に取り外せるため、メンテナンスや点検作業にも柔軟に対応できるという。こうした利便性は、これまで普及の妨げになっていた、土地の確保や高い労働コストといった課題を克服すると言われている。

ただし、現在の鉄道運営が複雑であるため、ソーラーパネルで発電されたエネルギーは、鉄道システムではなく、地域の一般家庭へ供給住宅される。テストプロジェクトでは、年間16,000kWhが発電できると見込まれ、最終的な年間発電量は1TWhとなり、スイスのエネルギー需要の2%を賄う可能性があるという。

再生可能エネルギーのモデルケースに

Sun-Ways社はさらに、ヌーシャテル州での試験運用に加え、ヴォー州の私鉄路線における大規模導入に向けた調査をすすめている。スイス国外では、スペイン、ルーマニア、韓国、オーストラリアへの展開も検討されており、このプロジェクトの国際的な広がりが期待されている。

しかし、いくつかの課題もある。国際鉄道連合は、ソーラーパネル上で起こる光の反射が、運転手の視界を妨げる可能性があることを指摘。パネルの耐久性や、火災の発生リスクといった問題にも懸念を示している。

Sun-Ways社はこのような課題に対して、反射防止加工や強化パネルの導入など、品質の改良をすすめているという。雪や氷がパネルの性能を妨げないよう、着氷を防ぐ専用システムの開発にも取り組んでいる。線路を利用したソーラーパネルの大規模設置の実現に向け、実証と改良を積み重ねながら、技術の効率性を高めている段階だ。

とはいえ、既存の鉄道線路にソーラーパネルを設置するというアイデアは、エネルギー生成時の環境負荷を大幅に削減する可能性がある。スイスでのプロジェクトが成功すれば、再生可能エネルギーの拡大を目指す国々のモデルにもなるだろう。持続可能なエネルギーソリューションが求められているいま、スイスの挑戦が業界に新たな突破口をもたらすかもしれない。

※参考
Switzerland to Launch World-First Solar Panels on Railway Tracks for Clean Energy|ESG news
Sun-Ways New Solar Tracks|Sun-Ways

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【空港利用がもっと快適に】新潟空港がANA「旅CUBE」とシステム連携開始 空港発着便に最適な地上経路を簡単検索

    にいがた経済新聞
  2. 川崎麻世、約40人で妻の誕生日を祝福「お姫様気分にさせてあげると約束しました」

    Ameba News
  3. 【見附市・見附今町・長岡中之島大凧合戦】大空で巨大な凧がぶつかり合う!迫力満点の凧合戦を見に行こう

    日刊にいがたWEBタウン情報
  4. 【評価1.0】Amazonで1980円「卓上ミストファン・ネット通販に失敗しないお守り付き」を買った結果 → 泣いた

    ロケットニュース24
  5. 【80種類の野草を使用したジン】越後薬草(新潟県上越市)のクラフトジンが国内外の品評会で多数受賞

    にいがた経済新聞
  6. 西宮市の『甲山ブルーベリーファーム』2025年は6月17日にシーズンオープン! 西宮市

    Kiss PRESS
  7. 体育の授業でスポーツクライミング 名張・蔵持小児童が挑戦

    伊賀タウン情報YOU
  8. 約3人に1人は朝礼を「ムダ」「負担に感じる」 短時間化や頻度減少など見直しを求める声も

    月刊総務オンライン
  9. おいしい&楽しい! 遊べる道の駅でローカルグルメ旅を満喫

    anna(アンナ)
  10. ハワイで確認した米の価格を報告「買って帰りたいんだけど!!」

    Ameba News