夏休みの宿題問題。親子バトルとゲーム攻防戦!?宿題を「やらない」選択で得た一生モノの経験とは
監修:藤井明子
小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/子どものこころ専門医/どんぐり発達クリニック院長
天敵はやっぱり宿題!あの手この手でやらせようと試みるも……?
夏休みで1番の悩みといえば、わが家ではやはり宿題でした。
日誌、計算ドリル・漢字ドリル、それに付随したそれぞれのプリント、工作に読書感想文、習字など……。
大人の私が見ても、「こんなにたくさんはさすがに大変だな……」と思う量が出ていたなと思います。
小学1、2年生でこそ、宿題自体が初めてのことで、物珍しくて面白半分でコチ丸も手をつけていましたが、宿題がどんなものか分かってくると、だんだん面白みがなくなってきたのか、3年生の頃には完全に自分からは手につけない状態に(笑)。
私は平日は終日フルタイムで仕事だったので、最初にはじめたことは、私が夏休みの宿題を全て管理し、「今日はこれだけやる」というチェックリストを作り、全部チェックできたらゲームをやってもいいというアメとムチ方式でした。
初めのうちはそのルールを守っていましたが、やがてそれも長続きせず、日中自宅で見守る大人がいないのをいいことに、ゲームを始めるように……。
私も結局、4年生の夏休みには、全ての宿題を終わらせることを諦めました。
ただ当時は、厳しいルールで縛らなくても、家庭内で最低限の勉強だけはさせておきたいと思っていました。夏休みの間、全く勉強をしないなんてリスキーすぎる(汗)という母の焦りから、せめて夏休みの日誌だけは、夏休みの間に最後まで終わらせようとやっていました。
日誌は1日1ページ、しかも内容も読み物だったり、多くても20問程度の計算問題しかないので、このくらいなら私が帰ってきてからでもフォローができると思ったからです。
夏休みの日誌作戦は量的にもコチ丸にも無理がなかったのか、結構長く取り組むことができて、作戦としては成功でした。最悪、宿題は夜私が帰ってきてから一緒にやることにして、朝からゲームをやることができるのがコチ丸的には良かったんだと思います。
必死の攻防戦!ゲームをやめさせる方法は?
が。
5年生になる頃には、勉強に対する集中力がなくなってきたのと同時に、「書く」ということがコチ丸にかなりの負担がかかるようになり、鉛筆を長時間握ることが困難になっていたのか、4年生までは提出できていた日誌もこの年は未完のまま未提出で終わりました。
そしてその宿題を阻む最大の難関。ゲームやインターネット。
私が日中自宅にいないので、ゲームはパスワードや時間制限をかけるなどして、長時間のプレイを阻止していたのですが、どこで思いつくのか、気づいてしまうのか、パスワードを勝手に解除してしまって、仕事から戻ってくると長時間プレイした形跡が残っていて、それに気がついた私とコチ丸のバトルが勃発!することが夏休みは特に多かったです。
私は毎朝、8時前には出勤してしまい、帰ってくると19時過ぎ。長時間ずっとゲームをやっていたのかと思うと、当時はゾッとしたものです。どうしたら宿題をやりつつゲームの時間を守るかを、何度も話し合い、夏休みの期間の中で何度ルール改正を行ったことか……(涙)。
私も半ば意地になっていたのか、家にあるゲーム類を私が毎日袋に入れて会社に持っていくという力技にでていた時期もありました。
今思えば、なんであんなに必死になっていたのか……と当時の自分を思い出して呆れてしまいますが(笑)。
やらなくても全然生きてこられた!(笑)脱宿題したわが家のその後
そんなわけで「ちゃんとしなくては」だった頃の私は、かなり苦しんだ夏休みでしたが、コチ丸がASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けて、もう学校の宿題は諦めた!ゲームもインターネットもしょうがない!と考えるようになったら徐々に自分の心の負担は減りました。
6年生になり、中学は「学びの多様化学校」へ進学することを決めた頃には、受験という目標が定まりつつあったので、もう小学校のことは良いやという私の諦めと、コチ丸も受験へ向けて少しずつ自宅用のドリルを1年から戻って自主学習を始めていたので、そちらへ親子の考えがシフトしていきました。
ちなみに、学びの多様化学校では、小学校3年程度の算数と国語ができていれば大丈夫と言われていたのですが、本当にそこまでしか勉強しなかったコチ丸。向上心があるのかないのか……。
そんな宿題問題ですが、その後通うことになった学びの多様化学校では、夏休みの宿題は一切なく、本当に丸一日、友だちとゲームをして過ごしました。ゲームは夜は21時まで。ごはんの時間だけは一旦やめて家族と食べる。その2つだけのルールにしたらコチ丸は約束をちゃんと守るようになりました。
さらに入学した公立高校では寮に入り、いよいよ夏休みの宿題をしてこなかったことが心配になりましたが、なんとそこでも夏休みの宿題は「なし」。農業高校で1年生の頃から休み中の課題は自主学習だけだったので、夏休みの課題が私たちを苦しめたのは小学校の間だけでした。
それでも、その期間は本当にトラウマになるくらいお互いに頭を悩ませたなぁと今でも思っています。後になって振り返れば、環境さえ変わってしまったら、宿題なんてこんなもんだったんですけどね……。
経験が武器になった!宿題の代わりに毎年欠かさずやってきたこと
そんなわが家が小学1年~6年生まで、夏休みに毎年欠かさずやってきたのはボーイスカウトやNPOなどのサマーキャンプにコチ丸を一人で参加させることでした。
毎回、「あれに行きたい」「これに行きたい」と決めるときはガヤガヤしているのですが、いざ日にちが近くなってくるとやっぱり不安になってくるのか、「行きたくない」と言うコチ丸を引っ張って集合場所まで連れて行ったのを思い出します。
ひとり親の私としては、その間は育児の負担が減るというのに、コチ丸を送り出した後は毎年早く帰ってこないかなという気持ちばかりになっていた気がします。
憂鬱そうな顔をしながら出て行っても、迎えにいくと必ず満足そうな顔をして、帰りの車では楽しかった思い出話をしてくれるコチ丸に、「行かせてよかったなあ」といつも思っていました。この毎年の小さい頃からの経験によって、コチ丸に新しい場所へ行くのに躊躇しない力がついたように感じています。
与えられた課題をちゃんとこなすことも、規則正しい生活ももちろん大切ですが、「全てをちゃんとやらなきゃいけない」という使命感がなくなってからは、私も休みをとってコチ丸と2人でどこかへ出かけたりと、楽しむ余裕が持てました。
ほかの子と比べてしまったり、まして親自身が子どものころ宿題をちゃんとやるタイプ(何を隠そう、私はそのタイプでした)だと、宿題をやらないわが子を見て心配は尽きないですが、好きなことを思い切りやったり、特別な体験ができるのは、たとえ普段学校に行けていなかったとしても、夏休みの期間中だからこそチャレンジできるというところがあると思います。
なかなか進まない宿題を見て遊びに出かけることを躊躇していた頃より、その悩みから親子で解放されて、いろんなところへ一緒に出かけるようになった夏休みは、面白い思い出がたくさんできた気がします。
執筆/あき
コラムを拝読し、「宿題を終わらせること」だけではなく、お子さんにとってどんな夏休みが充実した時間になるのかを大切に考えられた姿勢が印象的でした。近年は宿題のない学校も増えており、「夏休みの学び」の形も少しずつ変わってきています。一方で、勉強を頑張ってほしいという親御さんの思いの背景には、「将来困ってほしくない」「学力が遅れないように」といった愛情や不安があることも少なくありません。そのため、宿題を巡って親子で苦しくなってしまうこともあります。大切なのは、ほかのお子さんと比べるのではなく、その子のペースや今の状態を見ながら、無理のない目標を一緒に考えていくことではないでしょうか。宿題だけにとらわれず、好きなことに挑戦したり、家族でさまざまな経験を重ねたりすることも、お子さんの成長につながる大切な学びです。親子で笑顔になれる時間の大切さを改めて感じました。(監修:小児科医 藤井明子先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。