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切り通しから青き海原へ。千葉県大網白里市の丘陵部、田園部、海岸部の多彩な魅力【徒然リトルジャーニー】

さんたつ

1-1大網白里市

千葉県外房側にあり、九十九里平野のほぼ中央に位置する大網白里市。夏には海水浴客でにぎわうマリンリゾートのイメージが強いが、市域は東西に細長く、内陸の丘陵部、中央の田園部、そして海岸部と異なる顔を持ち合わせているのが興味深い。

白里海岸

アクセス

鉄道:JR・地下鉄東京駅から京葉線・外房線特急で約45分の大網駅下車。総武本線・外房線または京葉線・外房線の快速・普通列車乗り継ぎも可。

:宮城野JCTから京葉道路・千葉東金道路・圏央道を利用し、大網白里SICまで約32km。同SICから市中心部まで約3km。

素掘り跡を間近に見られる生活の道「金谷郷(かなやごう)の切り通し」

あたかも異界へ踏み入れるかのような雰囲気が漂う金谷郷の切り通し。やや離れた地にも素掘りの砂田(いさごだ)隧道が残る。

素掘りの切り通しやトンネルが多く見られる房総半島。こちらもその一つで、市域西側に位置する下総(しもうさ)台地の丘陵部が切り開かれ、谷(やつ)と呼ばれる低平地をつないでいる。素掘りの跡が生々しく切り立った壁は高い箇所で10mほどあり、その迫力に圧倒されそう。壁面をくり抜くように自然石の道祖神がまつられているのも、古くからの地域との関係性がうかがえて興味をそそられる。

●千葉県大網白里市金谷郷1738周辺

金谷郷の切り通し(かなやごうのきりとおし)
住所:千葉県大網白里市金谷郷1738周辺

地域の歩みを見守り続けてきた古刹「本國寺(ほんこくじ)」

宮谷檀林の講堂として嘉永元年(1848)に上棟された本堂。

趣きある山門の先に鎮座する重厚な本堂が目を引く、地域を代表する古刹。明治元年(1868)、明治新政府より安房上総(あわかずさ)知県事に任命された柴山典(てん)がこの地に事務所を設置し、翌年誕生した宮谷(みやざく)県の県庁が置かれた歴史をもつ(明治4年、木更津県に統合)。山門手前には県庁跡を示す大きな石碑も立っている。

本國寺(ほんこくじ)
住所:千葉県大網白里市大網3002

現役バリバリで活用中の国登録有形文化財『旧千葉銀行大網支店』

屋上部に据えられた半円状の装飾や縦長の上げ下げ窓が目を引く。

大正10年(1921)頃築とされ、1970年まで千葉銀行大網支店として使われていた木造2階建ての建物。国登録有形文化財として大正時代の銀行建築の様式を今に伝えている。現在はバイクなどを取り扱う『熱海輪店』の店舗として活用されており、タイミングが合えば、店主のご厚意で建物内部の様子を見せてもらえることも。

●千葉県大網白里市大網686-1

熱海輪店(旧千葉銀行大網支店)(あたみりんてん・きゅうちばぎんこうおおあみしてん)
住所:千葉県大網白里市大網686-1

謎の覆面店主の素顔が気になる『浜田屋酒店』

BARのカウンターに立つ齋藤さん。3種飲み比べ(60ml×3杯)のほか、気に入った酒は単品で注文できる。酒肴の持ち込みもOK。
斬新な味が魅力的なクラフトサケの充実ぶりも目を見張る。

扱う銘柄こそ多くないが、厳選した日本酒と個性際立つクラフトサケ(その他の醸造酒に該当)の品揃えに店主・齋藤としちかさんのこだわりが垣間見える。店舗隣に併設した『浜田屋BAR』では店で扱う酒の飲み比べも楽しめる(有料)。

浜田屋酒店(はまだやさけてん)
住所:千葉県大網白里市大網847/営業時間:10:00~18:30(BARは19:00~ 23:00、予約制)/定休日:日・水(臨時休あり)

オーナーの明るい人柄も大きな魅力『gallery ten』

靴を脱いで鑑賞するのは「住空間の中で作品を楽しんでほしい」との表田(おもだ)さんの思いからだ。

「ミスマッチが結構面白いんですよ」と異色の組み合わせの二人展などを多くプロデュースする表田典子さんのギャラリー。焼き物、ガラス、鉄、木、織物など工芸作品の展示・販売が中心で、時には版画や絵画も。内容は月替わりでブログで告知している。

ギャラリーの一角では過去の展示で気になった作品も販売。

gallery ten(ギャラリーテン)
住所:千葉県大網白里市駒込752-203/営業時間:12:00~16:00/定休日:毎月1~14日営業(1・7月は変則、8月は全休)

アイデアあふれる商品が並ぶ『コナノスミカ パンとおやつ』

「幅広いお客さんに喜んでもらえるよう、手間をかけ工夫を凝らしたパンやお菓子を提供しています」と品川勇太さん・遥さん夫妻。

風変わりな店名に思いを詰め込んだパンとお菓子の店で、自家製塩麴や厳選国産小麦など素材にもこだわる。しっとりとした食感と甘みが際立つ食パン425円をはじめ、バラエティ豊かな調理パンからスコーン、焼き菓子、生菓子まで気になる商品が目白押しだ。

メロンカスタードクリームたっぷりの生メロンパン335円。

コナノスミカ パンとおやつ
住所:千葉県大網白里市経田288-1/営業時間:8:30~17:00/定休日:月・火(祝の場合変更あり)

昔ながらの天然由来で循環型の藍染を実践『NORABI』

樽ごとに日々異なる発酵具合を確かめてから、染色作業と水洗いを繰り返し、仕上げていく。

海外でのサッカー選手としての経験を通じ、環境問題や気候変動に対して意識を高めた品田彩来(あやき)さんが、帰国後に始めた工房で、日本古来の伝統手法である正(しょう)藍染と本藍染による作品づくりに取り組む。コースターやTシャツなど作品販売のほか、要予約でワークショップも開催(詳細はHP参照)。

藍染後の生地は天日で乾かすことで色落ち防止になるそう。

NORABI
住所:千葉県大網白里市星谷262/定休日:営業日時不定

農民救済に生涯を捧げた郷土の聖人の住居跡「十枝(とえだ)の森」

農民有志より寄贈された住居を中心に散策路が整備されている。

旧福岡村長や千葉県議会議員として干ばつに苦しむ農民救済のため両総用水事業完遂に尽力し、旧大網白里町名誉町民第1号となった十枝雄三翁の住居跡を保存・公開。推定樹齢460年の大楠をはじめ樹林が生い茂る敷地は、市民ボランティアにより手入れされており、地元に息づく先人への尊崇の念も伝わってくる。

●入場自由。千葉県大網白里市北吉田758

利便性の高い大網駅直結のアンテナショップ『マリンの土産店』

「また足を運んでもらうきっかけになれば」と語る執行社員で障害者福祉事業所も運営する高橋正己さん(左)。

JR大網駅改札口のすぐ目の前、ガード下の「大網パブリコ」内にあるアンテナショップ。落花生、お茶、はちみつ、焼き菓子、水産加工品、日本酒、クラフトビールなど市内および近隣の特産品が揃い、季節の農産物も並ぶ。金・土限定販売のスイーツも評判だ。旅の締めに立ち寄りたい。

マリンの土産店
住所:千葉県大網白里市南玉4-5外6/営業時間:10:00~19:00/定休日:日

太平洋を眺めながら新鮮な海鮮に舌鼓『浜茶屋 協栄』

大粒のハマグリ3個にエビ、イワシ、ホタテ、サザエが付く海鮮網焼きセットB4000円。

店内から太平洋を見通せる磯料理自慢の店。とりわけ九十九里浜で採れたハマグリは身が柔らかく、甘みも濃厚だ。海鮮網焼きセットのほか、いわし御膳1400円やあじフライ定食1300円、あじのなめろう単品900円なども人気がある。焼きハマグリのみの注文も可(時価)。

網焼きセットは自分自身で食材を炙って食べるスタイルだ。

浜茶屋 協栄(はまぢゃや きょうえい)
住所:千葉県大網白里市南今泉4881-78/営業時間:10:00~15:00LO/定休日:火(祝は営業)

どこまでも続く大海原に圧倒される「白里海岸」

広々とした白砂の浜と青い空のコントラストも見事だ。

雄大な太平洋が目の前に広がる九十九里浜の中央に位置し、海から昇る日の出が美しい。夏の海水浴シーズンのにぎわいはもちろんのこと、マリンスポーツ目当てに訪れる人も多い。2025年の海水浴場開設期間は7月5日~8月24日で、魚介類などを提供する海の家もオープン。

白里海岸
住所:千葉県大網白里市南今泉4881-1地先

切り通しに覆面店主、内陸部での出会い

朝早く、人気(ひとけ)のない金谷郷の切り通しへ赴いた。大網白里市と聞いて、太平洋に面した外房の一角程度の知識しかなく、てっきり平坦な土地柄と思い込んでいただけに、内陸部にこうしたスポットがあること自体ちょっとした驚きである。タイミングよく朝の光が足元に射し込む自然の演出もなかなか粋ではないか。

切り通しのある一帯は下総台地と呼ばれ、明治初期に宮谷県庁が設置された本國寺周辺はおそらく台地の縁に当たるのだろう。本國寺から東へ向かうと次第に平坦になり、そのまま市街地へなだれ込んだ。

『熱海輪店』のご主人に声をかけ、『旧千葉銀行大網支店』の様子を覗(のぞ)いてから足を運んだのが、すぐ近くの『浜田屋酒店』である。なんでもプロレスラーのような覆面を被ったあやしい店主がいると聞きつけ、野次馬気分で店の扉を開けると、店主の齋藤さんが明るい表情で出迎えてくれた。「おや、覆面は被っていないんですか?」「ええ、あれはSNSや媒体に登場するときだけです」「また、なんで?」「元々プロレス好きではあるんですが、名刺代わりというか、特化した酒を扱う地方都市の店だけでは埋もれてしまうので、とにかく目立つことで、SNSなどを見た人が関心を持ってくれればとの思いで始めたんですよ」と照れくさそうだ。

その後訪れた『gallery ten』では、これまたプロレス好きのオーナー表田さんとタイガー・ジェット・シンのエピソードで盛り上がったり、『NORABI』では染師・品田さんの藍色に染まった手に感嘆したりしたが、いずれも顔の広い齋藤さんに教わった穴場で、世話好きな覆面店主の素顔にただただ感謝するほかない。

太平洋にたどり着き、旅の締めくくりを思案

市街地を離れ、さらに東を目指すと、「十枝の森」と記された看板が目に留まった。矢印に従って寄り道した先には緑豊かな森が手厚く保存され、手作り風のテーブルやベンチも置かれている。木々に囲まれながら、先ほど『コナノスミカ パンとおやつ』で手に入れた生メロンパンを頬張るのにもよさそうな場所だ。

再び東へ進み、九十九里有料道路をくぐり抜けた先が太平洋に面した白里海岸で、雄大な九十九里浜がどこまでも続いている。「大網白里市のイメージといえば、やはりこの風景だなあ」と納得し、『浜茶屋 協栄』で人気の海鮮網焼きセットを堪能してから、そろそろ旅を締めくくるとしよう。

『マリンの土産店』は、JR大網駅に直結した好立地だけに、帰路立ち寄るには便利このうえない。いや、待てよ。そういえば『浜田屋酒店』併設のBARで、飲み比べを楽しんでから帰るという選択肢もあるかも。そんなことを思い浮かべながら白里海岸を離れ、市街地へと舞い戻った。

【耳よりTOPIC】市役所駐車場で日曜限定の朝市を開催

開催時間が短いので、お目当ての商品は早めに確保を(写真提供=大網白里市農業振興課)。

毎週日曜の8時から8時30分までの30分間、大網白里市役所の駐車場を利用して催されるのが大網白里市朝市組合主催の朝市だ。地産地消の推進を旗印に、地元で収穫した季節の農作物や新鮮な海産物、ひと手間かけた水産加工品などを扱う10~15軒ほどが並ぶ。

●荒天時中止。千葉県大網白里市大網115-2(大網白里市役所所在地) ☎0475-70-0345(大網白里市農業振興課)

取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2025年8月号より

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