平和を考える新しい形 本読みデモと若者たちの行動
「私たちの未来は、私たちで作る!」パーソナリティに小泉今日子さん、大石英司さん、上村彩子さんを迎え、あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組です。
今回も、リスナーの方からいただいたメッセージに、スタジオの3人がこたえました。
ロシアとウクライナの戦争もイスラエルとパレスチナの問題も、どちらにも正義はあるのかもしれませんが、その真実がどうであれ現地の子ども達が被害を受けているというニュースに触れるとそんな正義って一体なんなんだろうとモヤモヤします。
私は、特に平和のための活動をしていません。こだわりがあるわけではありませんが、行進をしたり声をあげたりするようなデモに参加するのは違和感がありますし、寄付をするにしても、毎日の暮らしに余裕があるわけでもないですし、どういうふうに使われているか見ていないものに進んで寄付をしようという気持ちにはなかなかなれません。
勉強もたいしてしてないので、よくわかってないのに勘違い的なことを言うな、と思われてしまうのではないかという怖さもありまして、友人や同僚とは戦争や平和について話をする機会もほとんどありません。とんちんかんだとしても、もっと気軽に話せたらいいなと思います。そうすれば考え方や感じ方も、少しは変わるのかと思ったりします。これは戦争とか平和のことだけではなくて、原発の問題にしても、沖縄の基地問題にしても、自分の意見を人前で言うのが恥ずかしいみたいな空気はあると感じているのですが、すこし寂しいなと思います。
戦争反対的なことを呼びかける行動もアイディアがあるわけではないのですが、いろいろな方法があったらいいなとは感じています。
サステバを聴いて、坂本美雨さんの、ガザで飢餓に苦しんでいる子どもたちのためのチャリティオークションのことを知りました。こういうものなら気軽に参加しやすいかもな、と思いました。
小泉:たしかに。SNSとかを見ていても、いろいろな意見があるじゃないですか。自分と違う意見を持っている人のことを攻撃してしまって、喧嘩になっていく、みたいなことを見かけたりするんだけど。そうじゃなくて、きっと、たくさん話していったら意見が一致するものも出てくるんじゃないかなって。そういうところからお互いの理解が広がる、みたいな。
大石:ちょっとずつ。
小泉:そういう機会がすごく少ないのでは、と感じます。美雨ちゃんのチャリティオークションのこと、嬉しいですね。おかげさまで、すごくたくさんの寄付が集まりました。美雨ちゃんも、第2弾もすぐに考えると言っていて、この間は「小泉今日子」で参加したんですけど、次は「黒猫同盟」で参加しようと思っていて。続けてやるそうなので、関心がある方は情報をキャッチしてください。
大石:知るだけでも、大きな参加になるし。
小泉:いろいろな参加の方法があるんだろうなって。そういうのを私たちが提案できたらいいですよね。
上村:この方と同じように感じている日本人って多いのかなって思います。
小泉:一番多い層かもしれないですよね。平和や戦争についてって、そんなに話しにくいことなのかなって思ったりもします。私の親とかは、第二次世界大戦のときにはもう生まれていて。私たちは、実際に自分たちが見た感想っていうのを聞かされて育った最後の世代かなと思うんです。そういう世代の方達はどんどん少なくなてしまって、どう伝えていけばいいのか、っていうのがね。私たちが、その間を繋ぐことがちゃんとできていないような気になっちゃって。
大石:でも、うちの子は今中学1年ですけど、小学5年生くらいの時に「戦争はなんで起こるの?」って突然聞いてきたことがあって。「戦争ってなんで起こるの?」「なんのメリットがあるの?」って知りたい子どもとか若い人も多いはずだから、気軽に話をすることで平和について理解を深めることってできるかもしれないですね。
上村:長崎県にどんな人でも気軽に平和を語り合える居酒屋をオープンした人がいます。堺康徳さん、現在27歳です。長崎県平和町にあるお店の名前は「サニールーチェ」。堺さんのおじいさんが被爆2世、今年の3月に亡くなるまで平和活動を20年以上続けてきたそうです。その想いを自分が引き継ぎたい、と思った時に、20代の自分だからこその形で平和活動をしていきたいと考えたそう。それを形にしたのが「どんな人でも気軽に平和を語り合える居酒屋」です。
被爆の語り部をしている方、平和活動をしている学生、お店がなかったら出会えなかった方々がたくさん訪れているとのこと。オープンから2ヶ月「ほんとに作ってよかった」とお話しされていました。
小泉:いつか行ってみたい。おじいさんの活動を見ていたお孫さんがこれをはじめるというのが、すごく素敵ですね。
大石:こういう参加の仕方があるんですね。
小泉:SNSで見かけたんですけど、広島の平和記念公園で小学生くらいの男の子が英語で外国人観光客の方に広島で起こったことを伝える活動をしていて。そういう頼もしい子たちもいるみたいですよ。「若い人」って一括りにしちゃいけなくて、こうやって活動をしている人たち、関心を持っている人たちも、行動している人もいるって知れるとすごく嬉しいです。そういう若い人たちを私たちがどうしたら支えていけるか、っていう気持ちにもなりますよね。
大石:お店に行くだけでも平和活動になるかもしれませんし。
上村:さっきお店の口コミを見たら「オムライスがすごく美味しい」って書いてありました!
小泉:えー!行ってみたい!
上村:お店もすごくかわいかったです。
戦争に反対する気持ちを表現するアクション「本読みデモ」発起人の学生へのインタビュー
お悩みから視点を広げて、こんな話題も紹介しました。
上村:「戦争に反対する気持ちを表現するアクション」として広がっているもののひとつに「本読みデモ」というものがあります。
全国に広がっていくきっかけとなったのが筑波大学で毎週金曜日に行われているアクションです。発起人の安田茉由さんにお話を伺いました。
「静かに本を読む」という抵抗の仕方もあるんじゃないかと思ってはじめました。
週に一度、毎週金曜日の夜6時から8時に筑波大学でレジャーシートの上に本とか資料を並べて「誰でも読んでいいよ」っていうのをやっています。
一般的なデモもすごくステキだなと思って、応援する気持ちは持っているんですけど、大きい音がダメな人とか、参加しやすい環境を作れてるんじゃないかなって思います。もっと、いろんな人がやってくれたらいいなって思います。
※一部抜粋
小泉:いいですね。そこではじめてそういう本に触れる、ということもできたりするし。静かなデモっていうのは参加しやすそうだし、その時間で自分が知ることも増えたりしてとってもいい気がしました。
上村:「本読みデモ」、知らなかったです。
小泉:ヘイトスピーチが行われている街でそれに対しての行動で、中高年の私たちくらいの人たちが小さな折りたたみの椅子を持って集合して邪魔にならないところに並べて静かに本を読んでいるっていうのをずいぶん前にテレビで観たことがあったんですね。それの進化型とかかもしれないな、って思いました。
大石:ちょっと寄って本をパラパラって。
小泉:どこでもできますよね。カフェみたいなところでもそういう本を並べておく、ということはできるし。もちろん本屋さんでフェアをやるとか、いろいろな場所でできるかもしれない。
大石:会社でもできますよ。
上村:これを知って、デモへのハードルが下がった気がしました。こういうフェアみたいなのはよくやっているじゃないですか。これをデモって言っていいのなら、みんな参加しやすいだろうなって思いました。
小泉:そうですね。レジャーシートの上で寝っ転がって本を読むこともデモになる、っていうのはすごく気持ちよさそうで、平和的だなって思いますね。
上村:さっき調べたら、公園でやっているものもありました。「人と話し合いたいスペース」「一人でゆっくり本を読むスペース」など分けてあって、筆談で話をできるようなものが用意されているところもありました。大きい音が苦手な方、どういうふうに意思表示をしていいかわからない方もいると思うんですけど、こういうやり方があるんだなって。
小泉:今日ご紹介しているものって、みんな若い人が主体となっているのが、素晴らしいですね。私たちがそれを応援していけたらいいですね。
上村:平和について考えるきっかけとなるようなおすすめの本、ありますか?
小泉:いろいろありますけど、「字のないはがき」(原作・向田邦子/文・角田光代/絵・西加奈子)。
向田邦子さんのすごく短いお話を角田光代さんの文、西加奈子さんの絵で絵本にしたもので、向田さんの妹さんの話を書かれているんです。本当に普通の家族の中にもそういうことが起こる。具体的に何かを知る、感じるっていうことからはじめることがいいかな、と思うと、この絵本は素敵でした。
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)