映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』パイン役・小林星蘭さんが作品から受け取ったメッセージ「逃げないって、悪くない」
映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』が、2026年8月8日(土)、Netflixにて世界独占配信スタートです。
『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』は、手塚治虫さんが描いた名作漫画『リボンの騎士』を原案とするNetflix映画。業界屈指の多才なアニメーターとして知られる五十嵐祐貴さんが初監督作『スター・ウォーズ:ビジョンズ「のらうさロップと緋桜お蝶」』を経て、初の長編監督を務めた作品です。
アニメイトタイムズでは、映画の公開を記念して、サファイアの友人・パイン役の小林星蘭さんにインタビュー。「どうして私なんだろう?」そう思ったところから、小林星蘭さんとパインの物語は始まりました。そして、「まさか私が歌うことになるとはね」と笑う等身大の小林星蘭さんの思いを語っていただきました。
<introduction>
失われた王国の王女、サファイア。
災厄”ネルガル”に故郷シルバーランドのすべてを奪われ、
絶望の果てにゴールドランドへとたどり着く。
過去を抱えながらも、人々の優しさに触れ、ささやかな希望を見出し始めた彼女。
しかし、平和な日常を嘲笑うかのように、再び災厄”ネルガル”が現れる。
かつて故郷を灰燼に帰した絶望が、今また、この場所から光を奪おうとしている。
もう、何も失わない。誰にも失わせない。
悲しみの涙を振り払い、少女は剣を取る。
これは、リボンを結び、運命に抗うことを決めた、一人のヒーローの物語。
【写真】映画『THE RIBBON HERO リボンヒーロー』小林星蘭インタビュー
「どうして私なんだろう?」から始まったパインとの出会い
──パイン役を演じることが決まった時の率直なご感想をお聞かせください。
パイン役・小林星蘭さん(以下、小林):最初にパインという役でお声がけいただいた時は、作品の内容をまだうかがっていなかったんです。もちろんお声がけいただいたことは、すごくありがたいと思いましたが、パインがどんなキャラクターで、どういう役割なのかというのも、まだよくわからない状況で決まったので、「どうして、私なんだろう?」と思っていました。
それでも、「とにかく求められているなら、応えよう」という気持ちと、「どういうふうに私が立ち回れるのか」、「何が待ち受けているんだろう」と思って、すごくワクワクしました。
──パインというキャラクターの印象をお聞かせください。
小林:実際に脚本を開いて、キャラクターの姿やセリフを見ていく中で、彼女の考え方や本来のちょっと引っ込み思案なところが自分に似ていて、「きっと私に近しい場所にいる子だな」と思いました。
以前、別作品(『スター・ウォーズ: ビジョンズ「のらうさロップと緋桜お蝶」』のロップ役)で、監督とご一緒した時に、「自分のことを見透かされていたのかな」と思いました(笑)。その時に私が演じたキャラクター(ロップ)と今回のパインは、キャラクターの方向性が違う感じではあったんですけど、その時の収録で何か見出していただいたんだろうなと感じました。
実はキャスティングについて、まだ監督にお話を聞いていないんです。でも以前ご一緒した際に、「パインというキャラクターと重なる部分がきっと私にあったんだろうな」と思いましたし、「任せていただいたのなら、また同じように応えられたら」という気持ちで取り組みました。
──「私に近しい」と思われたのは、具体的にどんなところでしょうか。パインとご自身が似ていると感じた部分はありますか。
小林:かなり人見知りなところですね(笑)。そこが一番大きいです。あとは、自分が感じたことに対してすぐ返答が出てこなくて、あたふたしてしまうところとか。言おうと思っていたことのタイミングを逃してしまって、後から後悔するところとか。かなり似ています。
──小林さんが演じてみて感じた、パインの好きなところを教えてください。
小林:パインの好きなところは、熱が入ると止まらないところです。サファイア(CV:サーヤ/ラランド)と一緒にいるシーンでも、スイッチが入ると自分の世界に没頭してしまって、誰かに「ちょっと待って」と止められるまで気づけないところがあるんですよね。本人にとっては後から「やっちゃった……」と思う部分なのかもしれないけど、その真っ直ぐさ、アクセル全開になってしまうところがすごく好きです。
あと、サファイアと一緒にお出かけするシーンで、パインが心の中でずっと喋り続けている場面があるんですけど、それが本当に騒がしくて、かわいくて……(笑)。
私も、口には出さないけれど、頭の中でずっと考え続けていることが多いので、「わかる、そうなるよね」と共感しながら演じていました。
「高い声にしない」意識を変えて生まれた声の安心感
──今回、パインを演じるにあたって気を付けたことや、こだわったポイントはありますか。
小林:パインは自分自身の年齢とキャラクターの年齢が比較的近かったんです。私がこれまで演じてきた役は、5歳や11歳など、自分よりかなり年下のキャラクターが多かったですし、元気溌剌な役柄もたくさんありました。
そのため、どうしても少し高めで、かわいらしい声を意識してしまう癖があったんです。でも今回のアフレコの際に、監督から「もっと等身大で、近い感じで大丈夫です」とディレクションを受けました。そこからは、これまで演じてきたキャラクターよりも、少し低めの声で演じることを意識しました。本当にちょっとした違いなんですけど、「高くしすぎないように」ということはかなり意識していましたね。
──パインの声は聞いていて、安心感がありました。小林さんご自身の普段の声に近いのでしょうか。
小林:そうですね。これまで演じてきたキャラクターと比べると、かなり今の自分の声に近い感覚で演じていました。以前の作品では、もっと高い声で演じることが多かったんですけど、今回は地声に近いところをベースにしています。もちろんアニメ作品なので、聞き取りやすさは意識していますが、声そのものは普段の話し方に近づけることを大切にしていました。
私は声の抑揚をつける時に、少し高くなってしまう癖があるので、高く抑揚をつけるにしても、普段話す時のニュアンスとなるべく近づけることを意識しました。自分の声のトーンに近づけることで、声を上に張るという意識がなくなったので、いつもよりも、キンキンした感じにならずに自然に声が出せて、もしかしたら、その辺りが安心感みたいなものに繋がっているのかもしれないです。
──今回のアフレコで、印象に残っているディレクションはありましたか。
小林:印象的だったのは、特に序盤の切り替えの部分ですね。パインは心の声と、実際にサファイアたちへ話しかける時の声のテンションを行き来することが多いんです。
例えば、心の中でいろいろと考え事をしていたところに、突然サファイアから話しかけられて、「あ、えっとね……」と返すような場面があって、その時の心の中のハイテンションと、実際に人と話す時のテンションの差や、「いや、今ちょっとテンションが上がりすぎたな」と自分で反省して、「なんでもない」とごまかすような切り替えをもう少し、はっきり見せた方が分かりやすいというディレクションをいただきました。
──普段心の中で思っていることと、実際に人に対面して話す時というのは、確かに違いますけど、それをお芝居にする。しかも声優として、キャラクターの声で表現するというのは、難しいと思います。
小林:理解はできるんですけど、やっぱり難しかったですね。モノローグとして心の声が聞こえている状態から、実際に発しているセリフではまったく違うテンションに切り替えなければいけない。声優の中には、そういった切り替えを自然にできる方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、私はまだ声優経験がそこまで多いわけではありませんし、専門的に学んできたわけでもないので、切り替えの部分はリテイクも何度かありました。
ただ、「一度収録を止めて、最初からやり直そう」という感じではなくて、「納得いくまでやってみよう」という現場でした。そこは他のシーンでも同じで、自分自身が納得いかなければ、やり直しをさせていただけるとてもありがたい環境でした。
「パインの想いが伝われば、それでいいと思った」得意ではない歌への向き合い方
──作品の劇中歌としてパインが歌う「冬枯れの旅人」は、エンディングテーマにもなっています。実際に歌われてみて、いかがでしたか。
小林:実は、そこだけはパインと真逆な部分で、歌が得意ではないんですよ(笑)。収録の時も歌いましたが、「あとは、お願いします」という気持ちでした。技術的な部分は本当にスタッフのみなさんにお任せしていたところが大きかったです。私自身も完成した映像を試写で初めて観た時に、エンディングで使われていることを知って、かなりビックリしました。でも監督がとても気に入ってくださっていたそうで、安心しました。
パイン自身は歌うことが好きなキャラクターですし、ノートに歌詞を書き留めてサファイアへ伝えたり、最後に歌うシーンがあったりと、彼女にとって、歌はとても大切なものなんですよね。だから私の得意・不得意よりも、パインがどれだけサファイアへ想いを届けたいと思っているか、その気持ちが伝わればいいなと思いながら収録しました。
歌詞もメロディも本当に素晴らしくて、最後に流れた時に自然と心に残るような楽曲になっているので、私はもう作品についていくだけで……(笑)。とても素敵にしていただきました。
──「冬枯れの旅人」は耳に残る楽曲ですよね。
小林:収録が終わってから、かなり時間が経っているんですけど、今でもふとした瞬間にメロディを思い出して、自分でも不思議なくらい自然に浮かんでくるんです。きっと作品をご覧になった方にとっても、映画の記憶と一緒に残っていく曲なんじゃないかなと思います。そういう作品の大切な要素を担わせていただけたことは、本当にありがたかったです。
作中であるキャラクターが一緒に歌ってくれる場面はありますが、エンドロールでは私の歌唱が中心になっています。私もマネージャーも、今でもこの話になると、「まさか私が歌うことになるとはね」と笑うんですよ(笑)。本当に貴重な経験をさせていただきました。
──オカリナの音色もとても印象的でした。
小林:この作品を象徴する音楽の一つになってくれそうですよね。「旅人」というタイトルと、オカリナの音色はすごく結びつきやすい気がします。なぜそう感じるのかは自分でもわからないんですけど……(笑)。でも、きっと私だけではなくて、多くの方が同じようなイメージを持つんじゃないかなと思います。
作中ではサファイアが吹く笛のメロディがあって、それが「冬枯れの旅人」という楽曲になっていく。そういう流れも含めて、とても記憶に残りやすい音楽になっていると思います。監督が最初からそこまで意識されていたのかはわからないですけど、オカリナの音色と楽曲の世界観がすごく良い形で結びついたんじゃないかなと思っています。
それでも逃げずに進もうとする姿が、とても素敵
──作中でパインはサファイアと出会ったことで、大きく成長していきます。小林さんご自身は、サファイアのような存在や出来事との出会いによって変化した経験はありますか。
小林:私はまだサファイアみたいな存在には、出会えていないかもしれません。だからこそ作品の中で、パインがサファイアと出会い、少しずつ変わっていく姿を見て、「こんな存在が本当にいたら、素敵だな」と感じました。
人との出会いによって、性格や考え方が大きく変わったという経験は、私はあまりないかもしれません。でも、誰かに背中を押してもらって変化するという意味では、今こうしてさまざまな役を演じられる環境そのものが、自分を変化させてくれる存在なのかなと思います。いろいろな役をいただき、その人物を演じることで、自分にはなかった考え方や価値観に出会うことができるので、そういう意味では、この仕事そのものが私を成長させてくれているのかもしれません。
──作品をご覧になった感想もお聞かせください。
小林:最初に思ったのは、「逃げないって、悪くないな」ということでした。作中でゴールドランドの人々は、長い間ネルガルから逃げ続けることが正しいと思って生きてきました。そんな中で、それでも立ち向かおうとする存在が現れる。今後どんな苦しみが待っているかわからないし、もしかしたら一生抱え続ける苦しみになるかもしれない。それでも逃げずに進もうとする姿が、とても素敵だなと思ったんです。
実は私自身、最近ちょっと逃げがちなところがあって……(笑)。だからこそ、この作品から「立ち向かってみるのも、悪くないんじゃない?」と言ってもらえたような気がして、私の中では大切なメッセージとして受け取りました。
──ご自身のタイミングとも重なった部分があったのでしょうか。
小林:収録期間中も、自分の中で「中途半端に終わらせないようにしよう」と挑戦していたことがたくさんありました。「やらなかった後悔」よりも、「やってみて、その先を考える方がいい」と思えるようになったんです。作品を作っている最中もそうでしたし、完成した今もそう思っています。背中を押してくれた作品でした。
──小林さんは幼い頃からドラマや映画、舞台、アニメなど幅広く活躍されていますが、役柄を演じるうえで大切にしていることを教えてください。
小林:最近は「準備しすぎないこと」を大切にしています。昔はドラマでも、かなり入念に準備をしていて、子どもの頃は母と一緒に台本を読んで練習することも多かったんです。
でも今回は、パインに自分と似ている部分を感じながらも、「監督が本当に伝えたいものは、別にあるかもしれない」と思っていました。だから、自分の中で作り込みすぎず、その場で感じたものを受け取れる状態でいたかったんです。
前に「自分が準備してきたものに縛られすぎている」と言われたこともありました。なので、今回は、自分が持ち込んだ解釈だけにとらわれないように意識しました。また、別の作品の現場では「柔軟に対応できる人だよね」や「その場で求められたものを形にするのが早い」と言っていただいたこともありました。自分ではあまり自覚がなかったんですけど、「それが自分の強みなら、まっさらな状態で現場に行ってみよう」と思うようになりました。
──不安はありませんでしたか。
小林:めっちゃ不安でした(笑)。ただ今回は、一人で収録する環境で、時間も充分に取っていただきましたし、監督への信頼もありました。だからこそ、挑戦できた部分が大きかったと思います。テレビシリーズのように、短い時間で進む作品だったら、なかなかできなかったやり方かもしれません。
実際に収録が始まってからは、監督や音響監督とたくさん話しながら、「こうだよね」と解釈を深めていくことができました。ディレクションについても細かく擦り合わせができたので、本当に今回だからこそできた挑戦だったと思います。もちろん最初は不安でしたが、みなさんが丁寧に向き合ってくださったおかげで、無事に乗り越えることができました。
──最後に、配信を楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。
小林:作品の中で、サファイアにはいくつかの大きな軸があるんですが、その中でパインは「友達」という軸を担うキャラクターです。それぞれのキャラクターが抱えている葛藤や過去、忘れられない記憶があって、それらが物語の中で少しずつ動いていきます。ぜひ、それぞれのキャラクターの視点に注目しながら、観ていただきたいです。
きっと何度観ても、新しい発見がある作品だと思います。それぞれのキャラクターの視点を楽しんでいただいて、そして作品を観終わった後に、自分の過去を含めて「これからどう生きていこうかな」と少しでも前向きな気持ちになったり、未来にワクワクしてもらったりできたら、嬉しいです。
──ありがとうございました!