尾中たけし監督×畠中祐さん×永塚拓馬さんが『ね子とま太』以来、約10年ぶりに再集結! 元公務員の永塚さんも唸る“公務員あるある”満載のショートアニメ『ほどよく!わ〜どおふぃす』インタビュー
自治体や公的機関で働く公務員に向けたショートアニメ『ほどよく!わ〜どおふぃす』。本作は、約10年前に『ね子とま太』でタッグを組んだ尾中たけし監督と、声優の畠中祐さん、永塚拓馬さんが再び集結したショートアニメです。
保土良区役所を舞台に、新人職員・シンジ(CV:畠中祐)と、彼の先輩にあたる保護猫のねこ山さん(CV:永塚拓馬)が中心となり、“公務員あるある”をフックにした会話劇がコメディに描かれます。
元公務員という経歴を持つ永塚さんならではのリアルな視点や、畠中さんが語る尾中作品ならではの「会話の面白さ」、そして監督の作品への愛など、和気あいあいとした雰囲気で行われた収録後の鼎談インタビューをお届けします。
【写真】畠中祐&永塚拓馬が『ね子とま太』ぶりに尾中たけし作品に出演!『ほどよく!わ〜どおふぃす』インタビュー
10年ぶりの再集結! 尾中監督作品ならではの「会話の面白さ」
――永塚さん、畠中さん、そして尾中監督の座組から、『ね子とま太』を連想される方も多いと思います。尾中監督からのラブコールで今回おふたりの出演が実現したと伺っておりますが、改めてオファーを受けた際のお気持ちを教えてください。
畠中祐さん(以下、畠中):事務所のスケジュールで先々の予定が見られるシステムがあるんですけど、そこに「監督・尾中さん」って書いてあって。「えぇ!?」と思って詳細を見たら、尾中さんの新作とあって驚きました。
永塚拓馬さん(以下、永塚):僕の方には最初はそう書かれていなくて、概要や資料などをいただく中で尾中さんの作品だと分かり驚きましたね。
基本的に、同じスタッフ陣で制作するアニメだからといって、前作と同じキャストばかりを起用することは少ないじゃないですか。だからこそ、この座組で「またやりたい」と言ってくださったのはすごく貴重と言いますか、嬉しかったですね。多くの監督さんは「新しい風が欲しい」と別の方を起用されると思うので(笑)。
畠中:新しい出会いも大事だからね(笑)。
永塚:でもそこでまた僕らを起用してくださるのは、すごく愛情を感じるというか、むしろ愛しかないです。
尾中たけし監督(以下、尾中):すごいラブコールを出してたからね(笑)。ずっとふたりでコメディーをやりたくて。今日の収録の空気感も、やっぱり最高だったから、「これこれ!」と懐かしさもあったし、ずーっとやりたかったんです。だから今作で実現できてすごく嬉しいですね。面白かった。
畠中:前の作品から10年も経っているんですけどね。でもあの独特な空気感は尾中さんの現場でしかないものだったなと、10年経っても思います。
永塚:会話っていいよなって思わせてくれるのが、尾中監督の作品のすごさですよね。おしゃべりって楽しいんだなっていうのを毎回思わせてくださるなと、今日改めて感じました。
尾中:台本を書く時に、ふたりの声で脳内再生しながら会話を作ってるんですよ。「こういうふうにしゃべってくれるだろうな」って。で、収録が始まったらテンポ感とかの掛け合いは脳内そのまんまでした(笑)。「これこれ!」と思って面白かったですね。
――ちなみに、10年ほど前の『ね子とま太』で共演された当時のことで、思い出に残っていることはありますか?
畠中:本当に色々なことをやってたよね。
永塚:やったね〜、遊園地とコラボさせていただいたり。
尾中:今はもう閉園しちゃった「としまえん」でロケもしたよね。
畠中:しましたね〜! 僕がしばらくLINEのプロフィールのアイコンにしてた、パンダに乗った自分の写真はそのロケのときのものでした(笑)。『ね子とま太』ではいろんなところに行かせてもらって、思い出もいっぱいあるし、イベントも年間で何回かやりましたもんね。そう思うといい時代だったなぁ(笑)。
尾中:いまだに「イベントやらないんですか」とか連絡が来ますよ! まだまだ僕らを構ってくれるんだって、嬉しいですよね。
永塚:尾中先生が結構、お客さんと触れ合ってくださるんですよ(笑)。だからファンの皆さんもアットホームな雰囲気で、すごく温かい空気がずっと流れているんです。本当にファミリーのような独特の世界観があったなと思います。
畠中:確かにそういう感じでゆる〜くイベントもやらせてもらったりして、面白かったですね。アニメの収録日としては1日だけだったりして。
永塚:録ったね。2分ちょっとのアニメを10何話分とか、一気に結構録る
よね?
畠中:でも何回も見ると癖になるような内容で、リピート放送とかもされていたので、結構『ね子とま太』にはずっと長く関わらせてもらってた気がしますね。収録日としてはギュッとしてたけど、体感としては長くて。あとSNS上で流れてきていた時期もあって、毎回見て癒やされてたんです。
永塚:そうそう。尾中監督が定期的に描いてくださるから、流れるたびに見てたね。
尾中:そうだね、頑張ってた時期もあったよ(笑)。
一同:(笑)
元公務員・永塚さんのリアルな視点と、絶妙にズレたキャラクターたち
――そして、今作では少し切り口が変わり、区役所を舞台にした『ほどよく!わ〜どおふぃす』というショートアニメとなりました。作中では「自治体あるあるネタ」をベースに各話構成されていますが、まず台本やキャラクターのイラストをご覧になった際の印象はいかがでしたか?
永塚:僕は元公務員だったので、「一太郎(※ワープロソフト)あったな〜」「公共物の話、するよね」とか、台本を読んでいて懐かしい思い出がよみがえりました(笑)。今作は公務員さん向けのコンテンツなので、すごく喜んでくださるんじゃないかなと、台本を頂いた時に感じました。
ちなみに前回『ね子とま太』では妹役もやっていたんですけど、今回はちょっとお姉さんみがある女の人を演じせていただいて。
畠中:“お姉さんみ”というより、ちゃんとした“お姉さん”だったよ(笑)。
永塚:そこでも10年を感じたというか(笑)。あと3役やらせていただきましたが、どれもすごく面白かったですね。「ねこ山さん」「サキ先輩」「係長」と3人それぞれ方向性が全然違うし。ひとりでいろんな役をやれて面白かったです。
▲左から、ねこ山さん(CV:永塚拓馬)、サキ先輩(CV:永塚拓馬)、係長(CV:永塚拓馬)
畠中:全然こっちに振ってもらっても良かったのに(笑)。
尾中:1対3の構図がしっくりきたんだよね(笑)。たしかに係長をお願いしようと思ったんだけど、祐くん演じる主人公・シンジが中心にドンと構えていて、その周りのキャラクターを永塚くんがやるっていう。
畠中:シンジ、そんなにドンとしてるかなぁ(笑)。
永塚:でも主人公が兼役やっちゃうとね?
畠中:まぁそうだね、ちょっと違うもんね(笑)。
▲シンジ(CV:畠中祐)
――収録も見させていただきましたが、永塚さんの演じ分けがすごくてブース内に登場キャラクター分のキャスト4名がいるのかなと思いました。
永塚:ありがとうございます。色々と頑張らせていただきました。あと『ね子とま太』の時から妹役を演じてますから(笑)。
畠中:そうだね、何の違和感もなかったよ。
永塚:当時から始まってるから(笑)。
尾中:可愛かったよねぇ、あの頃の妹。
畠中:あの頃の思い出がよみがえるくらい、尾中さんの台本から独特の空気を感じました。活字の中に流れているあの空気感というか。
永塚:言葉の面白さみたいなところを、尾中先生がすごく拾ってくださるので。「ジーニスト」みたいに「◯◯イスト」ってセリフを重ねて言葉遊びみたいな流れを作ったり。普通の人が気づかないような日本語の面白さみたいなところを、すごく拾ってくださっているなと思いました。
畠中:やっぱり全然ストレートじゃないところが面白いんですよね。あとボケとツッコミも大まかな役回りはあるけど、一方でツッコミもボケてるというか、そのツッコミにまたツッコミたくなるみたいな。他の作品じゃなかなか見られない面白さですよね。
永塚:それこそツッコミ側である係長もちょっと変だしね。
尾中:変だねぇ。みんな変なんだよ(笑)。
畠中:シンジが「肋骨のセーターってあるじゃないですか?」って係長に切り出して「あるねぇ?」って答えましたけど、そもそもこっちは肋骨のセーター?何それ!?と(笑)。
永塚:でも係長、公務員っぽいんですよ。ああいう雰囲気の人、公務員に結構いるんです(笑)。あんまりテンションは高くないけど、何でも受け入れてくれるというか。民間企業と違って変にギラギラしてないんですよ(笑)。そのギラついてない感じが優しいんです。
――監督は区役所の職員の方に実際に取材されたり?
尾中:いえ、正式に取材したわけじゃないんですけど、用があって区役所に行った際には中の様子をすごく観察しました。窓口に行った時に意識して見て、「公務員ってこういうところで働いてるんだな」「この方は動きから察するに役職が上の方なのかな?」とか。「公務員ってこういう世界だよな」というのはすごく見ましたね。
畠中:個人的に、役所の方ってすごく真面目な人が多いイメージです。窓口で対応してくれる人たちも、俺とは人間が違うんだっていうくらい、ちゃんとされているというか(笑)。
永塚:でもバックヤードに行くと、やっぱりサキ先輩みたいな感じだよ。今どきのアイドルを追っかけていたり。
尾中:みんな雑多な中で真面目に働いているんだよね。机にもたくさんの書類があって丁寧に確認していたりね。
永塚:間違いがあったらいけない仕事ですからね。公務が間違っていたら大問題になりますし、「公務員が守らなかったら、じゃあ誰が守るの?」って。お手本になることを常に意識して、一番規則を守らなきゃいけない職業なんです
畠中:僕にはできないことを皆さん毎日なさっているわけですね……。
一同:(笑)。
永塚:大変なんですよ、公務員って(笑)。
尾中:そんな皆さんを本作で少しでも癒すことができたら嬉しいですね……!
――監督に伺いたいのですが、今回制作された10話分のエピソードはどのように作っていったのでしょうか。それこそ本職だった永塚さんが共感できるほど、かなりリアリティがあるネタも多いようですが。
尾中:ジチタイワークスさんからいただいた「公務員あるある」をもとにネタを書いていきました。基本的に「あるあるネタ」って、あるあるの部分をオチにすることが多いんです。でも今回は、あるあるを頭に持ってきてネタにするという方式を取りました。あるあるがあったからこそ出たネタなので、僕も全然知らないあるあるや用語があって、作る時は面白かったですね。まったく知らない世界でしたから。
――先ほどから永塚さんもかなり共感されていましたものね。
永塚:そうですね。公務員って部署によって雰囲気が全然違うんです。例えば、地域振興とか芸術振興の部署だと外に出ていろんな人と関わるんですけど、窓口業務だとそこの窓口が中心で業務が構成されていて、クローズドな環境なんです。公務員の中では常識だけど、他から見たら全然常識じゃないローカルルールも結構あって。個人的にも「あるあるだなぁ」と思いつつ、意識して演じました。
畠中:公務員の方が、書類上で物事を伺う際に「~してよろしいか」という言い回しがあるようで、そこにフォーカスしたエピソードが出てきたんですが、「誰と会話する時の文化?」って驚いちゃって(笑)。
尾中:たしかに、昔の言い回しっぽいよね。普通の人から「よろしいか」って書面で来たら、「なんだ君は」みたいな感じになるからね(笑)。
永塚:普通は「よろしいでしょうか」とかですものね(笑)。
畠中:急な距離感の詰め方というかね(笑)。でも新しい発見でした。
僕は「公務員の一番の味方の声優」だと思っています!(永塚)
――改めて収録をご覧になって監督はいかがでしたか?
尾中:超面白かったです!「これこれ! 求めていたのはこれだよ! 10年待ったぜ!」って感じでした(笑)。
永塚:嬉しいですね……!
畠中:待ってくださっていた……! 収録が進むにつれてテンポ感も「こういう感じだったかも!」と思い出して。
尾中:見てても途中からいい感じのオーラみたいなのが見えて、「ああ、そうこれこれ!」と思って。速いところやゆっくりなところも含めて、「このテンポで読んでほしかったんだよな」「これだよな」って思いました。
畠中:確かに、「これこれ!」という空気に包まれた一瞬がありましたね(笑)。でも自然と読んでいるとそうなるんですよ。一回では咀嚼できないところが台本の中にあるんですが、収録していったら自然とそのテンポになる感じが、とても心地よかったです。
永塚:うんうん。「会話で魅せるアニメだな」とすごく思いましたね。
尾中:絵も動かさないからね(笑)。
永塚:(笑)。今回はプレスコ収録……最初に絵がない状態で、僕らの芝居に絵をつけてくださる形の収録だったので、おかげさまでより自然な会話のテンポにできたんじゃないかなと思っています。絵が先に決まっていると、そこに僕らも合わせにいくので、今回みたいな感じにはならないのかもしれませんから。
――では今回の収録を終えて、改めて監督の作品のこういうところが好きだな、魅力的だなと感じる部分をお聞かせいただけますか。
畠中:やっぱりこの空気感や間を含めて、すごく繊細な気がするんです。ただ言葉を重ねていけばいいわけじゃなくて、間だったり、「言っていること、確かにおかしいよね」と見ている側も徐々に気づいていく。そこで感じる共感性の高さというか、間も含めて緻密なことをやっている気がするんですよね。それが尾中さんの作品を独特たらしめているものだと思うので、ぜひ細かいところも楽しんでほしいなと思います。
永塚:僕もそう思います。繊細さは本当にその通りで。日本語ならではのニュアンスの伝え方などを、面白おかしくピックアップして表現してくださっているんです。一番の魅力はやっぱり、「会話って面白いな」「おしゃべりするのって楽しいな」と思わせてくれる作品だということですね。人としゃべりたいなって毎回思わされます。
僕は基本的にソロプレイヤーというか、ひとりで旅に出たり、カードゲームをしたり、本を読んだりとひとりで完結する趣味が多いんです。でも尾中先生の作品に関わると、「人とお話しするのっていいことだな」「人って温かいな」と収録するたびに実感しますね。本当に愛を感じます。
尾中:ありがとうございます。今日のお酒は美味しそうです。噛み締めながら飲みます(笑)。
一同:(笑)
――最後に、見てくださる公務員の皆様へ一言お願いいたします。
畠中:いつも僕らの生活を良くしてくださってありがとうございます。もう本当に頭が上がらないです! 僕らの生活の土台を作ってくれている方々に向けて発信するというのは、どういう感覚なんだろうと思いましたが、尾中さんの作品の力を借りて、とってもゆるくお届けできたかなと思います。
皆さんも責務を感じて大変な時があるかもしれませんが、そういう時の息抜きとして、ふとこのアニメがお近くにあることを祈っています。ぜひ肩の力を抜いてお楽しみください!
永塚:お久しぶりです。元・公務員の永塚拓馬です。
一同:(笑)
畠中:同僚だった方も見てるかもよ!(笑)
永塚:たしかに! えー、同僚だった方や、電話対応させていただいた方もご覧になっているかもしれませんが……声優になりました!(笑) もうびっくりですよね。また職業を変えて公務と関わることができて、本当に嬉しいです。公務員時代も、同僚や先輩方が本当に優しくて在職中とてもお世話になりました。
そんな僕は「公務員の一番の味方の声優」だと思っています! 僕のお芝居や尾中先生の作品が、皆さんの背中を押したり、ほっと一息つけるようなものになっていれば嬉しいです。そして公務員じゃない方も、ぜひ「私たちも見たいよ!」といったことを色々なところで発信してくださると嬉しいです! もしかしたら新しい展開もあるんじゃないかなと思ったりするので、ラブコールをぜひ(笑)、よろしくお願いします。
――ちなみに監督は、この3人の座組でやりたいことなどはありますか?
尾中:いっぱいありますよ〜。まずは作中の舞台になっている保土良区役所にちなんで「保土良区民祭り」というイベントの開催じゃないですか(笑)。
永塚:いいですね〜!
畠中:作品が公務員の方しか見れない……ということは公務員向けのイベント!?(笑)
尾中:税金でね(笑)。
畠中:税金で!? すっげぇ〜! 納めた税金が回り回って自分の出るイベントになっていく!(笑)
一同:(笑)
尾中:でもこの空気感が好きなので、色々なことをやりたいですね。ぶっちゃけ、キャラが変わっても僕の書くネタは多分変わらないので(笑)。この空気感をお届けし続けたいなと思います。
――今作は区役所のお話でしたが、他の自治体でもあるあるネタは多そうですし、まだまだやれそうですよね。
永塚:たしかに〜!
尾中:第2弾とか役所以外でもやりたいですね。
永塚:消防篇とか(笑)。
尾中:じゃあ依頼主のジチタイワークスさんにお願いするしかないですね……!
ジチタイワークス:持ち帰って検討させていただきます(笑)。
一同:(笑)
[インタビュー・撮影:鳥谷部宏平]