二拠点生活の話|都心と大島を軽やかに行き来し、宿を通じて世界とつながる【東京都心⇔伊豆大島】
リモートで働きながら拠点を転々とする「アドレスホッパー」だった調彩乃さん。同じライフスタイルの夫と出会い、結婚。伊豆大島に移住し、現在は隔週で都心に通いながら、民泊を通じて世界中のゲストとつながる暮らしを楽しんでいる。
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掲載:2026年6月・7月合併号
隔週で出勤とリモート。港ガチャも楽しむ生活
調 彩乃さん(しらべ あやの)
神奈川県出身。2019年から青年海外協力隊として中米に派遣。コロナ禍で帰国後は小学校の非常勤講師を務め、2021年から開発コンサルティング会社勤務。夫の久保木亮太さんは、大学で建築学を専攻し、大手ハウスメーカーに就職。退職後、三日月アーキテクツ一級建築士事務所を設立。写真/地層大切断面をバックに。
東京・竹芝ターミナルから高速ジェット船で約1時間45分。東京都でありながら、透明度の高い海と火山が織りなす独特の景観が広がる伊豆大島。
都内の開発コンサルティング企業に勤める調彩乃さんは、都心で仕事を続けながら大島で宿を営む二拠点生活を送っている。
「会社は月の半分が出社で、残りはリモートワークが可能。だから2022年から、ADDressという多拠点居住のサービスを使い、働きながらアドレスホッピング(※)をしていました。楽しいし刺激的だったけれど、どこかに根を張るのもいいなと思うこともあって」
転機となったのは、同じくアドレスホッパーだった久保木さんとの出会いだ。山梨の拠点で知り合い、3カ月で結婚を決めた。久保木さんは建築士で、すでに伊豆大島に古民家を購入し、宿をつくる計画を立てていた。
「私もADDressのホスト側をやってみたいという気持ちがあり、その箱をつくれる夫と出会ったことで、パズルがはまったような感じがしたんです」
大島に移住後、ふたりは賃貸の一戸建てに入居。家が大きかったため、大家さんの許可をもらってホスト同居型の民泊をスタートした。その間に、久保木さんが購入した民家をフルリノベーション。25年5月に一棟貸しの宿「suo 椿の島の宿」をオープンした。
「じつは昨年、築150年くらいの伝統的な古民家も購入したんです。船大工の技術を活かした『船底天井』という、この島ならではの建築様式に一目ぼれして。こちらも宿にしたいと思っています」
現在は「在宅週」と「出勤週」を隔週で繰り返しながら、月に10 日ほど都心の会社に通っている。移動は船。伊豆大島には港が2つあるが、その日の天候や波の状況により、どちらになるかは当日にならないとわからないという。
「それも『港ガチャ』みたいに楽しんでいます(笑)。大変かと聞かれたら大変だけど、民泊ではインバウンドのお客さんと交流できるし、そういう世界とのつながり方がとても心地いいんです」
都会の刺激と大島ののどかさ。その両方を軽やかに行き来して生まれる絶妙なバランスが、調さんの日常をより豊かなものにしている。
「もうすぐ子どもが生まれるので、そのあとは未知の世界ですね(笑)。でも、いろんな人と関わりながら育つのは、子どもにとっても可能性が広がることだと思っています」
アドレスホッパー時代の友人たちと。「大島に移住してから遊びに来てくれる友人が増えたので、自分たちの宿に招いて島を案内するのも楽しいです」。
大島南部、レトロな雰囲気が魅力の波浮エリアにある一棟貸しの宿「suo 椿の島の宿」。海に近く、徒歩圏内にはクラフトビールのブルワリーなどもある。
suo 椿の島の宿 住所/東京都大島町波浮港9-8 ☎080-3156-6085 Instagram/@suo___oshima
建築士の久保木さん。築50年ほどの民家を、「島の風景や風を感じながら」約1年半かけて仲間とともに改修した。
自宅の一部を利用して、ホスト同居型の民泊も運営している。「ゲストの半分はインバウンドで、一緒にご飯を食べたり遊びに行ったりできるのが楽しい」と調さん。
昨年、空き家バンクで見つけた築約150年の古民家。見事な船底天井にほれ込み即購入した。今年、一棟貸しの宿としてオープン予定。
調さんの二拠点生活あれこれ
Q1|島と都心の滞在スケジュールは?
A1|月10日の出社に合わせ、島での在宅と都心部への出勤を隔週で繰り返しています。出勤週は月曜の午前中に島を出て、週末までADDress拠点に滞在。金曜の午後か土曜の午前に船で戻ってきます。月曜と金曜は半休を取って移動に充てています。
Q2|島での平日はどんな流れ?
A2|朝10時にゲストを見送り、30分で清掃を終えて10時半から本業を開始。チェックインがある日は朝7時半から本業を始めて15時半に切り上げ、16時からチェックイン対応という流れです。時差出勤制度を活用して勤務時間を柔軟に調整しています。
Q3|宿を運営するコツは?
A3|清掃やゲスト対応などは私がメインで、事務的な管理やスタッフへの支払いは夫が担当。得意不得意で自然と分担しています。一棟貸しにしたのも、本業があるなかで清掃とチェックイン・チェックアウトだけで回せる形を選んだからです。
Q4|二拠点生活のアドバイスは?
A4|まず、会社の理解があってこそ実現できる生活スタイルですね。島は不便なこともありますが、それも楽しめるポジティブさは必要かも。それさえクリアできれば、伊豆大島は都心部から意外と近いので、二拠点生活に最適だと思います!
「のんびり島暮らし、ではないんです(笑)」と、調さん。でも思い立ったらすぐ美しい海に行ける。忙しい合間に、お気に入りの野田浜でひと休み。
お気に入りのトウシキキャンプ場にて、ゆったり過ごす貴重なひととき。
東京都大島町(おおしままち)
東京から約120km、伊豆半島から約30kmに位置する伊豆諸島最大の島。富士箱根伊豆国立公園に含まれ、豊かな自然景観が守られている。人口は約6200人。高速ジェット船で東京・竹芝ターミナルから約1時間45分、熱海からは最短45分。写真/三原山の火口。
文/はっさく堂 写真提供/調 彩乃さん