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飼い主に減量させてもらえないミニチュアダックスフンドの「悲しすぎる末路」

わんちゃんホンポ

これは私が動物病院に勤めていた際に体験した、食事制限がきちんとされなかったミニチュアダックスフンドのお話しです。飼い主さんの勝手な判断が招いた辛いお話ですが、1頭でも多くの犬に幸せになってほしいのでお伝えしたいと思います。

柴犬サイズのミニチュアダックスフンド

ある日、動物病院に一匹のミニチュアダックスフンドとその飼い主さんが受診にいらっしゃいました。

そのダックスは8歳で、未去勢の男の子でした。症状は排便時に痛がるようなしぐさがあることと、排尿回数が増えたとのことです。

私はその時、診察室にて獣医の先生の後ろから飼い主さんのお話を一緒に伺っていたのですが、気になったのはそのダックスの大きさです。

個体差はありますが、ミニチュアダックスフンドの適正体重は4.5kg~5.0kgと言われています。しかしその子は、なんと9Kgもあったのです。

これは平均的な柴犬ほどの体重ということになります。お腹周りはパンパンで、重い体を引きずるかのように診察室内を歩いていました。

検査の結果…

その後、検査室で尿検査や超音波検査などを行った結果、前立腺肥大及び前立腺に膿が溜まる前立腺膿瘍(ぜんりつせんのうよう)と診断されました。どちらも去勢手術を行わなければ治らない、もしくは再発してしまうものでした。

飼い主さんに説明すると、

「マーキングやマウンティングなどに困ったことも無いのでなんとなく去勢手術をしていなかった。しかし必要なのであればお願いしたい」

とのことでした。しかし問題は、そのダックスの体重が9Kgもあるということです。

去勢手術はもちろん全身麻酔下で行うのですが、肥満の動物の場合、麻酔薬が脂肪に吸収されてしまうため、通常よりも多量の麻酔を投与する必要があります。そのため麻酔からそのまま目覚めない、というとても大きなリスクがあるのです。

獣医の先生はそのリスクについて飼い主さんに説明し、1か月後の再診時までに体重を8.5Kgまで減らすよう指示をしました。1か月で5%ずつ体重を落としていき、半年後に6Kg代まで落とし去勢手術を行う、という計画です。

前立腺の症状的にはあまり手術を先延ばしにはしたくないですが、急激な減量もかなり体に負担をかけてしまいます。そのため減量プランは一番リスクが小さくなるよう計算されたものでした。

飼い主さんは、食餌や運動などダイエットのアドバイスを受け、1か月後までに減量することを約束されました。

「減量がかわいそう」という飼い主さん

そして1か月後の再診の日が来ました。

「減量できるかどうかが命にかかわる」と先生が熱心に話していたため、私たちスタッフはきっと減量してくるだろうと思っていました。

しかし、いざダックスと対面してみると見た目には痩せた様子はなく、体重を計ってみるとまさかの「9.3Kg」。減るどころか、むしろ増量していたのです。

「ダイエット食はそんなにおいしくなさそうだからトッピングを上乗せしてたからかな?それに運動を頑張ったらおやつのご褒美をあげないとかわいそうだし、今の見た目はコロコロしていてすごく気に入っているんだよね」

と、飼い主さんはなぜかケロッとして話したのです。

飼い主さんのその態度に、先生もスタッフも唖然として、一瞬何も言葉が出なかったのを覚えています。事の重大さが、飼い主さんにはわかっていないようでした。

そして先生が再び、病状、麻酔のリスク、減量の必要性を説明し直し、減量プランをなんとか組み、飼い主さんへ説明しました。

飼い主さんは減量の話になると「でもほしそうだし…」「だってかわいそう…」を繰り返していましたが、「しぶしぶという様子でこの時も減量を約束されました。

1か月後、現れることなく

しかし…その1か月後の再診日、飼い主さんとダックスは受診にいらっしゃいませんでした。数日経っても数週間経っても、再診にくることはなかったのです。

私が勤めていた動物病院では、それまで診ていた患者さんが突然来なくなった場合、こちらから様子を伺う連絡はしていませんでした。なぜなら他の動物病院に変えていることがほとんどだからです。

そのダックスについても心配はありましたが、「他の動物病院に変えてその病院の方針に合わせた治療を行っているだろう」だと願うことしか私には出来ませんでした。

減量させてもらえなかったダックスの悲しすぎるその後

そして初診から1年半ほどたった頃、そのダックスと飼い主さんが私たちの動物病院へ受診にいらっしゃったのです。しかしダックスは誰が見てもわかるほど弱りきっており、体重や筋力の落ち方が病的なものであることは明らかでした。

お話しを聞くと、私たちの病院に来なくなった後は、他の病院にかかることなくいつもどおりの生活を送っていたそうです。しかしご飯をあまり食べなくなり、一日中寝ているだけになってしまったため連れてきたとのことでした。

何はともあれダックスの検査をすると前立腺肥大は悪化、そして前立腺ガンになってしまっていました。

直ちに入院しましたが、結局数週間後にそのダックスは亡くなってしまいました。あの時きちんと減量し、去勢手術が行えていれば助かったであろう命です。

このわんちゃんのことは本当に残念です。しかし、引き取りに来た飼い主さんの涙を見て、正直私は心が動かされることはありませんでした。

もちろん病院側の伝え方にも問題があったのかもしれません。他の病院で診てもらっているのか確認すべきという意見も、もしかしたらあるかもしれません。

しかし結局、飼い犬の体形、飼い犬の生活をコントロールできるのは、一緒に暮らしている飼い主さんだけなのです。

まとめ

最近、テレビやSNSでは動物の画像や動画が流行っており、肥満の犬や猫がかわいいと取り上げられることが多くあります。しかし私にとってそのような特集は恐怖でしかありません。

かわいいから、ほしがるからと肥満のリスクを知らずにどんどん食べ物をあげてしまうと、後で辛い思いをするのは動物たちなのです。

動物のライフステージや健康状態に合わせた適正体重、これは獣医の先生に聞けば必ず教えてもらえます。目先のご褒美より、長い目で見たその動物の幸せを考えてくれる飼い主さんが増えればいいなと思います。

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