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中村獅童が語る過去へのリスペクト、未来へのロマン~初音ミク共演超歌舞伎 Powered by IOWN『世界花結詞』12月歌舞伎座で超歌舞伎10周年を祝う演目上演

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中村獅童

2025年12月4日(木)より、歌舞伎座で上演される『十二月大歌舞伎』第一部、超歌舞伎 Powered by IOWN『世界花結詞 (せかいのはなむすぶことのは)』。中村獅童と初音ミクの共演による、超歌舞伎の最新公演だ。10年という節目の年を迎えた超歌舞伎への思いを、獅童に聞いた。獅童が未来へ向けるまなざしとは。先だって行われた記者会見のコメントとあわせてお届けする。

■超歌舞伎10年

ーー2016年にはじまった「超歌舞伎」が、10年を迎えます。

「超歌舞伎」は、2016年にニコニコ超会議の企画のひとつとして初演されました。当初は、こんなに長く続くとは思っていませんでしたし、あの頃は、まだ産まれてもいなかった子どもたちが歌舞伎俳優になり、「超歌舞伎」で共演する日が来るとは夢にも思いませんでした。

ーーご苦労もあったのではないでしょうか。

バーチャルと歌舞伎の融合は、お互いに初めての経験でしたから、初年度はデジタルチームとの意思疎通に苦労もしましたし、ぶつかり合いもありました。でも幕張メッセに集まった5000人のミクさんファンの方たちが、大爆発するように盛り上がってくださった。千穐楽では幕が閉まった後も拍手が鳴りやまず、三三七拍子や「超歌舞伎ありがとう!」の大合唱が聞こえてきて、思わずお客様に泣かされちゃって。裏にいた皆で、“来年もやりましょう”と握手で終わることができたんです。我々も熱い思いで創りましたが、お客様の熱も圧倒されるほど高かった。バーチャルも最新技術も、創るのは人間。人の心が通ってるのだと思います。

中村獅童

ーー2019年には、日本最古の歴史を持つ京都南座に進出しました。2022年は博多座、御園座、新橋演舞場、南座を巡り、2023年は、ついに歌舞伎の殿堂、歌舞伎座へ。

歌舞伎座は、僕が6歳の時に初舞台を踏ませていただいた、ある種のホームグラウンド。また、歌舞伎を長くご覧の皆さんの認識として、歌舞伎座でやって初めて認めてもらえるものがある、とも思っています。感慨深かったですし、ミクさんファンの皆さんが非常に喜んでくださったことも印象に残っています。

■10周年を彩る、充実のキャスト

ーー演目は、『世界花結詞』(脚本:松岡亮、演出・振付:藤間勘十郎)です。

この10年で発表した作品、それぞれに思い入れがあります。脚本の松岡さんに、「過去作の印象的だった部分を繋げて、一つの形にできないか」と相談したところ、新たな場面も加えながら、非常に上手く一つの物語に仕立ててくださいました。ブラッシュアップを重ねて、新作と呼べるものになったと思います。この作品を通し、10年の感謝をお届けできるよう、真心を込めて勤めます。

ーー「超歌舞伎」の一作目よりご出演の澤村精四郎さんにはじまり、超歌舞伎初登場の方まで、若手からベテランまで充実したメンバーが揃いました。

中村時蔵さん、中村歌昇さん、2023年に続き中村種之助さん。萬屋と播磨屋、親戚筋にあたる小川家の皆さんに、超歌舞伎に参加いただきたいと思ったんです。

ーー尾上左近さんのご出演は、新作歌舞伎『刀剣乱舞』(演出:尾上松也、尾上菊之丞)での共演がきっかけだったとか。

左近さんは、ふだん控え目な方なのですが、新作歌舞伎『刀剣乱舞』には自分から、松也さんに「出たい」と伝えて出演が決まったと聞きました。だから僕は、わざとイヤ味っぽく「『超歌舞伎』には、出たいと言ってくれたことがないね」と言ったんです(笑)。すると彼は「すでに決まった座組がある中で、自分が手を挙げるのは」と遠慮していたと。でも実は、「昔から理想の女性は初音ミクさんだった」と言うんです。今回は、ミクさんが過去に演じた役をお任せしています。憧れの女性との共演に、眠れない日々を過ごしているのではないでしょうか(笑)。

ーー獅童さんの、ふたりの息子さんも出演されますね。

2人とも、今から張り切っています。当初は、長男の陽喜が赤っ面の坂田公平、次男の夏幹が白塗りの碓井貞景で配役を発表をしていました。でも陽喜は、きれいめな役が好きで、いつかは立役と女方の両方をやりたいタイプ。夏幹は、男っぽい役柄が好き。本人たちと相談し、役を入れ替えました。

中村獅童


■古典へのリスペクト、未来へのロマン

ーー記者会見では、2023年までが「超歌舞伎」の“第一期”。ここからが第二期とのお話がありました。新たなチャレンジはありますか?

実は今回、口上はやらないつもりなんです。

ーー本編前の口上ですね。獅童さんの歌舞伎らしい、かしこまったご挨拶ではじまり、一気に客席をあたためるのが、超歌舞伎恒例のイントロダクションになっていました。

「超歌舞伎」がはじまった当初は、ミクさんファンの方々の多くは、歌舞伎初心者。だから肩の力を抜いて楽しんで、盛り上がってもらえるよう、口上をいれました。でも10年が経ち、もう初心者ではありません。それどころかミクさんファンの方々が、客席で歌舞伎ファンの方に、ペンライトの使い方などを教えてくれたりしている。その光景に、もういらないんじゃないかなと。これは、大きなチャレンジです。ミクさんファンの方々に、千穐楽まで毎日客席をお任せできれば、それに越したことはないけれど(笑)、歌舞伎ファン一色の客席の日があっても良い。日によって盛り上がり方が変わるのも、それでいいと思うんです。お客様の反応を見ながら、次に繋げていくつもりです。

ーー「超歌舞伎」の第二期。新たなフェーズで、目標はありますか?

歌舞伎の歴史は、今400年ですが、この先の400年後もミクさんには、歌舞伎の舞台に立っていただきたいです。バーチャルの世界の方ですから、私がいなくなった後も、ミクさんは老いることなく生き続け、進化を続けるわけです。いずれはミクさんが、バーチャルではなく実在するかのように、歌舞伎俳優と一緒に舞台に立つ時代がくるのでしょう。その頃には「昔は、パネルに映していたんだって」「良く考えたものだね」なんて言われるかもしれません。

中村獅童

ーー獅童さんご自身にも、生成AIで再現された、バーチャルの獅童さんがいましたね(NTTのデジタルツイン技術「AnotherMe®」により、本人の動作や特徴を学習して生まれた”獅童ツイン”)。

ええ。だから100年後は、バーチャルな中村獅童が、また口上をしているかもしれない。「100年前、『超歌舞伎』を初演いたしました。二代目中村獅童でございます」って(笑)。そんな想像ができること自体に、夢があるよね。「超歌舞伎」は、「最新技術×サブカルチャー×伝統芸能」の融合をご覧いただく舞台です。でも、目の前の舞台上だけでなく、その一歩先の未来まで想像を広げて観ていただくと、ぐっと楽しいものになると思います。

今「古典」と呼ばれる歌舞伎を作った役者たちも、未来のお客さんが同じストーリーで泣いたり笑ったりするなんて、想像もしなかったはずです。「超歌舞伎」も、今みんなで一緒に作っている一つひとつが、未来へ生き抜くかもしれない。伝統的にそれを続けてきたのが、歌舞伎なんですよね。

ーー過去と未来の双方向へ、視野が広がる感覚です。ワクワクします。

最近よく思うんです。歌舞伎は、過去へのリスペクトと、未来へのロマンなんだなって。その両方がなければ新しい歌舞伎は作れないし、次の時代にも残りませんよね。

ーー過去へのリスペクトと未来へのロマン。とても胸に響く言葉ですね。デジタルの世界で100年以上残り続けるかもしれないので、念のため確認させてください。これは獅童さんオリジナルの言葉で良いでしょうか。原稿上、“ロマン”はカタカナ表記で良いですか?

もちろん僕の言葉です! ロマンは、カタカナで大丈夫です(笑)。

■30歳の転機と「今はマックス」な現在地

ーー『十二月大歌舞伎』は、1日三部制です。そのうち第一部は、「超歌舞伎」一色。第二部は、2本立ての1本、『芝浜革財布』で獅童さんと寺島しのぶさんが共演されます。

12月の歌舞伎座で、二つの出し物(主演演目)をやらせていただける。体力勝負ですが、役者冥利に尽きます。文句のつけようがないほど、本当にありがたいことです。

ーー勢いを感じるご活躍ですが、これまでにモチベーションの波はありましたか?

そうですね。父親が早くに歌舞伎役者を廃業していたため、後ろ盾もなく、20代後半まで、ほとんど台詞のない“並び”の役ばかりでした。あの頃は正直、モチベーションも低迷していて。でも「いつか主役をやる役者に」、「歌舞伎の外の世界で多くを吸収して、歌舞伎の世界で生かしたい」と、オーディションをたくさん受け続けた時期です。そして30歳で出演した映画『ピンポン』※をきっかけに、一気に声がかかるようになり、モチベーションもマックスまで上がりました。その後、良い出会いに恵まれ、失敗したことも含め、すべてを血と肉に変えて、また次の出会いに繋がっていって。ものすごく波はありました。でも今のモチベーションは? と聞かれたら、また、あの頃と同じマックスですね。

※映画『ピンポン』(2002年公開。曽利文彦監督、宮藤官九郎脚本)で、獅童さんは日本アカデミー賞新人俳優賞受賞をはじめ、各新人賞5冠を獲得しました。

中村獅童

笑われるかもしれないけれど、53歳になった今ふり返ると、仕事に関して「やりたいと思って叶わなかったこと」が、ほとんどないんです。50歳になった頃、妻に「北野たけし監督と是枝裕和監督の作品には、死ぬまでに絶対出たいと本気で思ってる」と話した翌日、北野組から映画『首』のオファーをいただいたこともありました。さらに数か月たたず、今度は是枝組から映画『怪物』のお話をいただいて。本当に、思いは通じるんだなと感じています。

ーー夢を一つひとつ叶えてこられたのですね。

でも、もの創りでもスポーツなどでも、モチベーションの維持には、次に目指すものが必要ですよね。以前なら、自分のことしか思い浮かびませんでした。歌舞伎俳優「中村獅童」の名前を、自分一代で大きくしなくちゃ、と突っ走っていましたから。でも今は、未来に意識が向くようになりました。子供が2人、歌舞伎俳優になったのもきっかけですし、昨年6月に、中村萬壽さん・時蔵さんの襲名披露を、小川家の役者勢揃いでやれた経験も大きかった。のこりの人生で何ができるかを考えた時、萬屋一門を支えた亡き祖母(小川ひな。三世中村時蔵夫人)が喜ぶことをしたいし、この一門の皆を、さらに前に押し出す役割を担える役者になりたいと思ったんです。

もちろん公演中は、目の前の舞台、お客さんに全力です。「次の世代に残そう」とか「一門を」といった気持ちで演じているわけではありません。こうしたインタビューでの質問を受けて、客観的に考えた時、未来を意識するようになったんだなと気づきます。

ーー12月20日には、イープラスの全館貸し切り公演が行われます。最後に、貸切公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

「超歌舞伎」は、ペンライトを振っていただいた方が絶対に楽しいです! 皆さんがペンライトを振る光景が、舞台演出にも繋がります。かつて、開演時間まで在庫のあったペンライトが、終演後に一気に売り切れるという不思議な現象が起こりました。他のライブでもお使いいただけますが(笑)、帰り際よりは早めに買って、ぜひ歌舞伎座の客席で振って楽しんでください。イープラス貸切公演ならではの一体感で、特別盛り上がる公演にしましょう。お待ちしています。

(左から)初音ミク、中村獅童



取材・文=塚田史香    撮影=池上夢貢

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