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「好き」を安心して語れる余暇活動の場――発達障害の子どもたちとの「趣味トーク」の効果とは(金子総合研究所/東京学芸大学・加藤浩平先生)

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「好き」を安心して語れる余暇活動の場――発達障害の子どもたちとの「趣味トーク」の効果とは(金子総合研究所/東京学芸大学・加藤浩平先生)

「好きなことを話せる場所がない」――「趣味トーク」はそこから始まった

「自分の好きなことについて話せる友だちが学校にはいないんです」
「この子が自分の好きなことを安心して話せる場所がなくて……」

筆者は以前から、このような相談を、発達障害の子どもたちの保護者から幾度となく受けてきました。実際、ASD(自閉スペクトラム症)などの発達障害の子どもたちの中には、アニメや漫画、ゲーム、鉄道など、自分の「好きなこと」や「好きなもの」については豊かに語れる力や語りたい気持ちを持ちながら、それを学校や家庭の中では十分に表現できずにいる子が、かなりの数いると思います。

また、子どもたち自身からも、「1対1なら話せるけど、3人以上になると一気にコミュニケーションのハードルが上がる」「友だちと話している時に自分が話すタイミングがうまく掴めない」「ほかの人の話の流れを追うのに精一杯で疲れてしまう」「どうせ話しても相手に伝わらない」「どうせうまく話せない」……といった、対人関係・コミュニケーションに関する悩みを聞いてきました。こうした子どもたちの語りは、単に「コミュニケーションが苦手」という一言では済まない、対人場面でのしんどさをよく表していると思います。

その一方で、「楽しく自分の好きなことについて、ほかの子と話せる場所があるなら参加してみたい」という声が、本人や保護者の両方からありました。筆者が「趣味トーク」という活動を余暇活動の1つとして始めたのは、まさにそうしたニーズに応えようと思ったのがきっかけでした。

時として、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもたちの「好き」は、学校や家庭では「こだわり」として問題行動のように見られたり扱われたりすることがあります。しかしながら、それらのいわゆる「こだわり」は、その子自身の強みや持ち味になったり、他者とのつながりの入口になったりすると筆者は考えています。だからこそ、発達障害の子どもたちに必要なのは「うまく話せるようにする練習の場」ではなく、「自分の『好き』を安心して語れる場」なのです。

「趣味トーク」とは何か――「特別な興味」を安心して語る活動

ここで「趣味トーク」の活動内容について簡単に説明しましょう。「趣味トーク」とは、進行役・時間管理役を含めて複数名でテーブルを囲み、シンプルなルール(ゆるやかな枠組み)の中で、参加者が順番にそれぞれの「好き(好きなもの・こと)」を語り合う、というフリートーク活動です。「趣味トーク」の中で「好き」として取り上げられるのは、本人の好きな漫画やアニメ、ゲーム、ライトノベル、ほかにも鉄道、海洋生物、歴史、音楽などなど百人百様です。そして、持ってくるものも、作品に関連したキャラクターグッズ(アクリルスタンドやシールや缶バッジ)、本、ぬいぐるみ、パンフレット、自分で描いたイラスト、あるいは「聖地巡礼」(アニメ等の作品の舞台になった場所を訪れること)をした時の写真など、多様なものが披露されます。

「趣味トーク」は、欧米の学校教育で行なわれる「Show & Tell(ショーアンドテル)」に似ていると言われることもありますが、特にプレゼンテーション力や説明する力などを訓練する目的はありません(活動を楽しんでいる中で、結果として説明するのが上手になったりすることはあります)。また、対象年齢が低めの活動ともとらえられがちですが、小学生はもちろん中高生くらいの年齢でも十分に盛り上がる活動です。年齢や立場をこえて、参加者それぞれが自分の好きなものを見せながら、仲間と話題を共有していきます。

この活動の特徴は、話題のベースにあるのが、参加者それぞれの「特別な興味(special interests)」だということです。学校や家庭では、ある意味で「こだわり」としてネガティブに扱われがちな「特別な興味」が、「趣味トーク」の場では「その子らしさ」や「持ち味」として表現されます。「趣味トーク」は、子どもの持つ「好き(興味・関心)」を「問題」として修正する場ではありません。むしろ、それを安心して相手に伝え、楽しく共有できる場と言ったほうがよいでしょう。

また、「趣味トーク」は単なるフリートークでもありません。後述しますが、参加者が見通しを立てやすいルール・枠組みが決まっています。そのため、「何を話したらよいか分からない」「どこで話し始めればよいか分からない」といった不安が軽減されます。自由に話していいと言われるとかえって困る発達障害の子は少なくありませんが、「自分の好きなものを持ってきて、それを見せながら話す」という枠組みやルールがあることで、安心して参加できるのです。

「趣味トーク」の実施方法について

「趣味トーク」の進め方はとてもシンプルです。まず参加者が集まったら、司会進行役がルールや全体のスケジュールを説明したり発表する順番を決めたりして、それを全員で確認します。次に「発表タイム」に入り、最初の参加者が持参したグッズや本などをテーブルの上に出しながら、自分の「好きなもの・こと」について自由に話します。この「発表タイム」では、基本的にほかの参加者は口を挟みません。その後、「質問タイム」があり、ほかの参加者(子どもやピアスタッフ:年上のお兄さん、お姉さんの立場のボランティアスタッフ)が質問をしたり、関連する話題を話したりします。質問タイムが終わると、次の人が発表します。

「趣味トーク」では、特に話し方や聞き方の細かな指導は行いません。その代わりに、以下の図に示すような、いくつかの基本的なルールを最初に共有します。たとえば、話し手は好きなことを好きなように話してよいこと、聞き手も話し手の発言の邪魔をしなければ、自分にとって楽な姿勢で聞いてよいこと、そして何より大事なのが、「ほかの参加者の『好きなもの』を決して否定しないこと」です。このルールを徹底することで、お互いが安心・安全に自分の「好き」について語れる場が作られています。寝転がって聞いてもよい、というルールも象徴的で、ここでは“正しい聞き方”よりも、“楽にいられること”が優先されています。

司会進行は基本的に支援者や活動に慣れたピアスタッフが担当します。司会進行役は、ルールを共有しつつ、時間や場の流れを整える人ですが、細かく指示したり評価したりする存在ではありません。参加者のトークを一緒に楽しみながら、その場の安心を支える存在だといえます。また、ピアスタッフは、アニメや漫画、ゲームが好きな学生・院生にお願いしており、「話題を共有できるちょっと年上の趣味の仲間(ピア)」として参加してもらっています。彼らもまた、支援する立場というより、子どもたちと同じ参加者の一人として、自分の「好き」を語る機会を持ってもらっています。

子どもたちの「趣味トーク」に対する思い

「趣味トーク」に参加している子どもたちは、活動をどう感じているでしょうか。過去に実施したインタビュー調査で、「趣味トーク」に参加したASD(自閉スペクトラム症)の診断のある10代の子どもたちに活動の感想を尋ねたところ、「安心して自分の好きなことについて熱く語れるのがよかった」「授業や学校で話をするのはストレスだけど、自分の好きなものについて話すのは好きだし、気持ちが楽」「聞いてくれる仲間がいるのがうれしい」といった声が聞かれました。また、「『発表タイム』と『質問タイム』と分かれているので(見通しが持てて)安心して参加できた」「持ってきたグッズを見せながら話すので、普段より話がしやすかった」といった感想もありました。さらに、「ほかの人が好きなものについて聞けるのは楽しい。もっと聞きたいし知りたいと思った」「自分にとって『趣味トーク』はオアシスのような存在」と語る参加者もいました。

こうした感想から分かるのは、趣味トークが単なる「発表の場」ではなく、安心してその子の「好き(=特別な興味)」が受け止められる場になっていることです。実際、参加者の中には「以前、学校で自分の好きなアニメの話をしたら同級生に馬鹿にされたことがあって嫌だった」「家では親にゲームの話をすると否定されるので話さないようにしている」「同級生との雑談では、相手の恋バナばかりを聞かされて、退屈な時がある」と語る子もいました。「趣味トーク」のように、学校や家庭以外で自分の「好きなもの・こと」を安心して話せる場があること自体が、コミュニケーションへの抵抗感を軽減するきっかけになっているように思います。

また、「趣味トーク」での経験が日常に活きていると考えられる感想もありました。たとえば、「学校などで友だちと話す時も、相手の興味や状況に合わせて話すように意識することが増えたように思う」「以前よりも友だちとの会話を確認しながら聞けるようになった」といった子どもたちの声をインタビュー調査の中でも聞いています。もちろん、これは会話の訓練成果と単純に言い切るべきものではありませんが、「好き」を安心して語れる経験が土台になって、他者との関わりへの感じ方や姿勢を変えている可能性はあると思います。

大切なのは「上手に話す」練習よりも、「楽しく話せる」体験

一般にコミュニケーションというと、雑談や交渉を上手にこなす力がイメージされがちです。けれど、発達障害の子ども・若者にとって必要なのは、まず「正しい話し方」や「多数派社会で望ましい会話の型」を身につけることではなく、「コミュニケーションすること自体が楽しい」と感じられる体験の積み重ねではないか、と筆者は考えています。「趣味トーク」の目的も、参加してくれている子どもたちが、自分の「好き」を、「話したいこと」を、「伝えたいこと」を、安心して楽しく話せる場を保障することにあります。上手に話すことよりも、楽しく話すことを大切にする。その体験が、コミュニケーションだけでなく、その子らしい表現力や創造力を育み、発達の土台になっていくのではないでしょうか。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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