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「トラウマはなくならない。戦うしかない」映画『チョコリエッタ』風間志織監督

映画ログプラス

映画『チョコリエッタ』


リバイバル上映記念


風間志織監督インタビュー

映画『チョコリエッタ』(2014年)が全国の劇場でリバイバル上映中です。本作は、大島真寿美氏の青春小説を、風間志織監督が映画化。森川葵さん、菅田将暉さん、岡山天音さんなど、現在はドラマや映画で大活躍の俳優陣が出演していることでも再び注目を集めています。

トラウマを抱える少年少女の葛藤や悩みをじっくりと描きながら、ほんの少し勇気や希望を与えてくれる本作が、物語の設定にある2021年、劇場にカムバック!リバイバル上映を記念して、様々な解釈が広がる本作から感じたことを風間監督にお伝えし、当時の作品制作を振り返っていただきました。

風間志織監督動画インタビュー

―― 解釈の余地が非常に広い作品で、観た人がそれぞれ色んな想いを感じることが出来る素敵な作品だと思いました。2014年公開から7年が経過し、今回のリバイバル上映されることについて、率直なお気持ちはいかがですか?

風間志織監督(以下、風間監督)
昔の作品を上映していただけるのは、監督として物凄く嬉しいです。若い人や観たことがない人にとっては古い映画も今の映画と一緒だと思うので、まだ知らない方に観ていただくのも嬉しい。(当時観た方に)また観ていただくのも嬉しい。とにかく嬉しさしかないですね。

―― 森川さんと菅田さんからもお祝いのお言葉があったのではないですか?(笑)

風間監督
森川さんはコメントをいただきました!菅田さんは人気がありすぎて、お話なんか出来ません(笑)

―― 撮影を振り返っていただきたいのですが、森川さんと菅田さんは原作や台本を通じて、自然に知世子や正宗を生み出していったのですか?

風間監督
リハーサルをしたのですが、知世子の場合は、知世子を掴む瞬間がありました。正宗もオーディションをした時に、“この方向が良いかな”というのが見えてきました。

―― リハーサルの時に、まさに監督の思い描いていたようなキャラクターを演じていた?

風間監督
思い描かないんです。その人がその役になることを見ているだけ(笑)

多分、正解というものは先には無いんです。何となく方向性だけはあるけど、これっていうものは持たないです。

―― むしろ、お二人が演じている中でスイッチが入っていく?

風間監督
そうです。その中で作られていくもの。

―― まさに生きている二人を撮っていくような?

風間監督
そういう風に作ろうとしています。

―― 脚本も監督が書かれていますが、そうするとあまり台詞は書いていないのですか?

風間監督
原作が小説なので言葉を大切にしないといけない。ほぼ、小説の台詞をごっそり書いているところが多いです。正宗君なんて、台詞がちょっと口語的な表現ではないのですが、“このまんまだろう”という感じで、(原作の)まんまやっていたりしています。

―― 逆に、映画化していく上で原作との違いを意識されたことはございますか?

風間監督
原作との違いは、映像にする時にこういう風にした方が映像になった時に面白いかなっていうことを変えただけかな。後は、2021年という原発後の世界にしたことが原作との違いじゃないかなと思います。

―― 2021年の世界が描かれているということですが、あまりそれを意識せずに観ていました。どの辺に2021年を埋め込まれたのでしょうか?

風間監督
最初の子供が事故に遭うシーンで【2010年夏】と始まる。後は、学校のシーンで黒板に【2021年○月○日】と書いたぐらい(笑)プリントにも白々しく【2021年】って書いてある。そんなもんなんですけどね(笑)

―― なるほど(笑)
ストーリーについてお聞きしたいのですが、少年少女が抱えてしまったトラウマが、時間と経験によって、受け止め方が変わっていく。逆に、普通は流されていくものなんですけど、意外と二人は流されていない。自分たちの留まっている記憶が変容していることに対してさえ苛立ちを覚えている。ラストシーンからもそういうものを感じることが出来ます。トラウマという表現が適切かどうかは別にして、そういう悩みを抱えている子どもたちの結論というか流れを描いているような気がするのですが、監督としてはこの作品の中では、気持ちとしてどう変わっていっていると捉えていかれたのでしょうか?

風間監督
閉じこもっていることから、とにかく一歩飛び出して戦うしかないんです。というところに着地していればいいな、と。戦うしかないんじゃないのかな。

時間が経って、自分に戦う元気が出たら、生きていけるんじゃないかなと思います。そういうトラウマってなくなることは絶対ないと思います。なくならないから、忘れようとしてたら忘れられないし、それと仲良くするのではなくて、そういうものと戦うだけの元気が自分にあることが重要なんじゃないかなって。

その元気は人間関係とか、そういうものからしか得られない、たった一人だと多分無理だと思います。

その中で二人の関係が恋愛のような恋愛ではないような、もどかしい関係の中で作れたらいいな、と。一歩進むための何か、何だろう?と言われるとちょっとよく分からないけど。

―― ホテルのシーンもそうですけど、ラブストーリーに展開していれば乗り越える力をもらったり、違う方向に変容したのかなとも思いました。そして、ラストシーンでは二人の表情が違いますよね。

風間監督
そうなんです。女の子は飛び越えられたけど、男の子はまだそこにいるんです。「お前の本当の名前を言え」と言われて言えなかった。彼はまだ言えないんです。

―― もう一つ、知世子が頭を刈ってしまったり、私は犬だといったり。自分に置き換えて考えると、「自分が犬である」とは思えません。犬になりたいという気持ちが一体どういうことなのか、未だに消化不良なのですが、、、

風間監督
これは原作の話なんです。「私は犬になりたい」ということは、子どものまま、事故の起こる前の小さい知世子ちゃんのままでいたいということだと解釈して作りました。犬というよりは、そのままでいたい、そこから動きたくない。

―― あの時の風景のままで私はずっと存在していたい、つまり抜け出せないわけですよね。それを犬になりたいと表現している。だからこそ先生が「何か悩みあるのか?」と言っても誤魔化す。自分の世界は伝え難いということですね。

風間監督
伝える気もないんじゃないですかね、“どうせ分からないんでしょ?”って。

―― 正宗が「撮るなよ、バカ」と言われて、突然下を向いて白線を映しています。あそこに心の闇というか、脳死状態というか。思考がストップしてしまっている。自分がカメラを向けている時だけ自分でいられるんだけれども、止めた瞬間に故障したカメラのようになってしまう。あの気持ちが、やはりトラウマの裏返しなのか。自分の世界観を失った瞬間、電池が切れた瞬間なのでしょうか?

風間監督
自分が一番、置いてけぼり食らったんですね、彼は。それに、訳が分からなくなってしまったということです。あれは原作通り。ずっと足元を撮り続けるんです。知世子との旅の終わりでね。「俺、何撮ってるんだろう?」っていうのが原作にあります。

―― 一方の知世子ですが、母親も昔、映画研究部にいたと知ることになります。知世子の置かれている状況をクローズアップしているような、亡くなってから自分の母に一番近付いた瞬間であり、一番感情が揺さぶられる瞬間だったように思います。撮影当時、森川さんとはどんなお話をされましたか?

風間監督
全然話さなかったかな!?森川さんはもう凄かったから、知世子でしかなかったから(笑)森川というより“知世子だぁ”って感じですね。

―― 逆に、トラウマではないですけど、悲しみとかそういう感情すらギュッと押し殺されていたのかもしれませんね。その時の知世子の感情というのはどうなのでしょうか?

風間監督
8ミリ映画を観た時の知世子ですね。

最初はビックリするんじゃないかなと思いますね。あそこで「いつまで撮ってるのよ、バーカ」っていうのは、その後知世子が正宗に言う台詞に繋がっていくのですが、その後、夢で泣いている。夢というか想像の中にお父さんとお母さんがいて、ワンコがいて、「こんなことしてたのよ~」とか、彼女の空想に繋がるわけですね。

―― 押し殺した感情を呼び覚まされて、一番辛かったんだろうなと思いました。

風間監督
彼女にとって経験はしてない幸せな空想をしているわけでしょ?幸せであるという空想をして、経験はしていないんだけど、それって悲しいというか、涙が出てきちゃう、、、

―― 結局はそういう感情と真正面に向き合う。監督のお言葉を借りて、それを戦いというのなら、戦い続けないと先には進めない。叔母さんから「前に進みなさい」と言われるシーンもありました。
最後に監督のお気に入りのシーンを教えてください。

風間監督
土手の上で正宗が(ビデオを)撮っていて、知世子が「いつまで撮ってるのよ、バーカ」っていなくなって、下向いてカメラを撮り続ける。あの一連が私は一番好きですね。撮影している時に「やった!」と思いましたね。“イイいいのが撮れた!”って。

風間志織監督

―― まさに二人があそこに存在する、その場面を撮れたということですよね。とても印象に残るシーンでした。ありがとうございました!!

出演キャスト

森川葵 菅田将暉 岡山天音 三浦透子 市川実和子 村上淳 中村敦夫

監督・編集

風間志織

スタッフ

脚本:風間志織 及川章太郎
原作:大島真寿美:(「チョコリエッタ」(角川文庫刊))
プロデューサー:伊藤直克 撮影:石井勲 照明:大坂章夫 録音:湯脇房雄 美術:丸尾知行 音楽:鈴木治行 スクリプター:田口良子

エンディング曲

森川葵「JUMP」

2014年製作/159分/5.1ch/PG12

あらすじストーリー

知世子が5歳のとき、母親が交通事故で亡くなった。

それ以来、兄弟のように育った愛犬ジュリエッタを心の支えに生きてきたが16歳の時に死んでしまう。短く髪を切り、犬になろうとした知世子。進路調査に“犬になりたい”と書いて担任から呼び出された日、映画研究部の部室を訪れる。母が好きだったフェデリコ・フェリーニ監督の映画「道」を見れば、ジュリエッタに会えるような気がしたのだ。

しかし、そのビデオテープは既に部室にはなく、卒業した先輩・正岡正宗のものだった。訪ねていった家で映像を編集していた正宗は「俺の映画に出ないか」と誘う。まるで、「道」のザンパノとジェルソミーナのように、バイクに乗って2人の撮影旅行が始まる。街を走り、山を走り、海に出る。喧嘩、事故、初めてのホテル。旅は2人に何をもたらすのか……。

全国順次公開中

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