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「観客である皆様もコンサート演出の一部であり、参加者の一部」。TVアニメ『【推しの子】』初のオーケストラコンサートの開催を記念して、監修・演奏を手掛ける音楽家・伊賀拓郎氏にインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年12月27日(土)に開催を控えるTVアニメ『【推しの子】』初のオーケストラコンサート「【推しの子】フィルムオーケストラ~The Starry Echoes~」。

このたび、本公演の魅力に迫るため、伊賀拓郎氏のインタビューを大公開! すでにチケットをお持ちの方も、まだ悩んでいる方もぜひご一読ください。

※本インタビューは、イベントのチケット特典として配布予定の「会場限定プログラム」の内容を一部web用に抜粋したものとなります。

【写真】アニメ【推しの子】オケコンの監修・演奏を手掛ける音楽家・伊賀拓郎インタビュー

「観客である皆様もコンサート演出の一部であり、参加者の一部である」

──「【推しの子】フィルムオーケストラ~The Starry Echoes~」の開催おめでとうございます。今回、ご自身も奏者としてご参加いただくことになっていますが、率直に今のお気持ちをお聞かせください。

伊賀:まず『【推しの子】』という作品のオーケストラコンサートが開催されるということがおめでたいことですし、自分にとってもありがたいことだと思っております。

アニメとしての様々な演出や表現、声優の皆さんの演技もそうですが、その中のひとつである“音楽”がこうしてフィーチャーされたコンサートが開催されるというのは、何より、赤坂アカ先生、横槍メンゴ先生による原作の持つ力の大きさを感じるところですし、そんな原作を平牧大輔監督率いるアニメ制作チームがさらに増幅して、ファンの皆様に楽しんでいただけた結果ではないかと思っています。ひとりの音楽家としては、『もう楽しみで楽しみで、ワクワク以外は何も無い』という心境です。

──それでは『【推しの子】』という作品の劇伴を担当することが決まったときの感想や作品についての印象をお聞かせください。

伊賀:【推しの子】という作品自体は、連載が開始した頃から読んでいたのですが、「ああ“推しの子”ってそういう意味なのか!」と理解した辺りくらいから、当時の仕事の忙しさもあってなかなか追うことができず、少し離れてしまっていたんですよ。

その後、御縁あって劇伴を担当することが決まって、あらためて読み進めると「してやられた!」というか、「これは何なんだ!?」と。作品が面白いのは当然なのですが、例えば、序盤からアイに訪れる悲劇という物語の転換をはじめ、いろいろな事件が起こるわけじゃないですか。もう驚きの連続。考察が間に合わないというよりも、考察することを忘れてしまうくらい没頭して読んでしまいました。

やはり音楽の仕事をしている身としては、アニメやドラマなどを拝見するとき、「この音楽はこういう意図かな」とか、「こういう演出で来たか」という事も意識して楽しみたいのですが、【推しの子】原作の場合は物語がどんどん加速して、つい没頭してしまいましたね。

──ちなみに音楽家である伊賀さんは、漫画を読んでいるときに、場面や状況に合った音楽が脳内で流れたりするようなことはありますか?

伊賀:自分はあまりないですね。特に漫画の場合、面白いと音楽がなくても全然成立しますし、音楽が入る隙間がないぐらい、息もつかせないぐらい没頭してしまいがちです。だから逆に「これに音楽をつけてください」と言われたときは、一歩引いて、「きっとこのシーンはこういう映像に仕上がるだろうから、こういう音楽をつけよう」と、ロジカルに一歩ずつ考えていくタイプです。

ただ、この“一歩ずつロジカルに”というのも使い分けが必要で、あまり考えすぎると、それはそれで面白みが薄れてしまうんです。そのため場面によって“あえて何も考えず、出たとこ勝負で”と判断した場合には、感覚的に作曲します。そのどちらが良いかを自分の中で決めながら、バランスを取っていく感じですね。

──「スタイルを使い分ける」というのもすごい技術ですが、【推しの子】の場合、ロジカルな作り方と感覚的な作り方のどちらのほうが多かったですか?

伊賀:『【推しの子】』の場合、映像の尺や展開に合わせて作曲する“フィルムスコアリング”による楽曲が多かったので、“ロジカル寄り”のものが多いかもしれません。ただ、一曲の中にロジカルな部分と感覚的な部分が混ざり合ってくることも当然ありました。

例えば、長い尺のフィルムスコアリングの楽曲は、一定のところまで緻密に計算され尽くした世界観の音楽にしつつ、ある瞬間からはガラッと雰囲気を変えて、1曲のなかでも攻めた編曲にして勢いをつけたりもします。もちろん映像尺は決まっているので、そこはすごくロジカルに詰めていかなければなりません。

手応えのある仕上がりになっていても、どうしても映像尺にハマらない場合は、曲のテンポを少し変更したり、構成を少し加えたりといった調整をしていました。ただ「タガを外して直感的にやるぞ!」と考えている時点でそれもロジカル寄りかもしれないですね(笑)。

▲劇伴作曲に使用したアップライトピアノとトイピアノ。こちらは曲調によって使い分け、劇伴の表現の幅を広げている。

──続いて、楽曲についてお伺いしたいのですが、まず今回のオーケストラコンサートではどういったコンセプトで楽曲がセレクトされているのでしょうか?

伊賀:基本的にコンサート内の第1部では、アイ、アクア、ルビーそれぞれの歩みを念頭に、アニメの第一期、第二期の印象的な場面で流れる音楽をセレクトしています。また、『【推しの子】』の劇伴は曲数が多く、1曲あたりの尺も長いので、コンサート全体のバランスも考えました。

今回のコンサートに足を運んでくださる『【推しの子】』ファンの皆さんは、音楽にもしっかりと耳を傾けてくださっている方が多いのではないかと思いますが、案外アニメを観ているとき、シーンによって音楽が自然に溶け込んで聴こえていなかった、なんてこともあります。

今回のコンサートでは、スクリーンに映し出されるアニメ映像と、生演奏だからこそ聴こえてくる様々な音にも耳を傾けながら、楽しんでいただけたらうれしいです。

──まさにオーケストラコンサートということで、今回多くの楽器が生演奏で鳴り響くのも非常に楽しみですが、コンサート用のアレンジという点についてお聞かせください

伊賀:楽曲によってはアレンジ作業は分担させていただいているのですが、たとえば今回劇伴ではない「サインはB」は、私がアレンジを担当することになっています。自分で作った曲を自分でアレンジするというのは、案外想像がついてしまうもので、自分の発想から大きく飛び出すことがあまりないのですが、「サインはB」は自分の曲ではなく、オーイシマサヨシさんの曲です。

自分の発想にはなかったアイデアや構成が詰まったこの楽曲をオーケストラにしても良いという、大変貴重な機会をいただいたわけですから、オーイシさんにもご納得いただける壮大なオーケストラ曲に仕上げたいと思っている次第です!

 ──それでは当日コンサートにいらっしゃる方に向けて、見どころや楽しんでほしいポイントなどはありますか?

伊賀:まず1つ目に「生演奏である」という点は、ぜひ皆さんには楽しんでいただきたいですね。生演奏だからこそ、収録音源とは異なる各楽器の調和をお楽しみいただけると思います。そもそも劇伴収録は、木管は木管、リズムセクションはリズムセクションといった感じで楽器セクション毎に録っていく事が多いですし、【推しの子】でもそうでした。

でも今回のコンサートでは当然、指揮者さんに合わせて一斉に演奏がスタートしますので、サウンドトラックとは異なる熱を帯びる演奏になることは間違いないです。ステージ上での自分の演奏や、大所帯のオーケストラの一人一人が熱を帯びた状態での演奏は、きっと作曲者である自分自身も意図していなかったうねりが生まれそうな気がして本当に楽しみです。

そして2つ目に「観客である皆様もコンサート演出の一部であり、参加者の一部である」ということですね。指揮や楽団の皆さん、イベントスタッフの皆さんだけでなく、会場にお越しいただく皆様がいて、初めてコンサートは完成します! 客席で聴いている皆様の反応によって、舞台上の反応や熱量も大きく変わってくるものなので、この日限りのリアルな体験をどうぞ存分に楽しんでいただきたいと思います!

当日MCを務めてくださる大塚さんや伊駒さんにも、仕事の部分を少し捨てていただいてオーケストラコンサートを全力で堪能してほしいですね(笑)。僕も思い切り楽しませていただきます!

【音楽家(監修・演奏)】伊賀拓郎

国立音楽大学作曲専攻中退。 在学中よりライブ/スタジオワーク等の活動を始め、様々なアーティストのサポート/編曲などを多く担う。TVドラマ、アニメ等のサウンドトラックとして【推しの子】、カラオケ行こ!、トリリオンゲーム、私に天使が舞い降りた!、月がきれいなど多くの作品を担当。他、アーティストへの楽曲提供やアニメ主題歌等の作詞作曲、数々のTVCMや音楽番組での作編曲や出演など活動は多岐にわたる。

[インタビュアー:野澤時央 原稿:糸井一臣]

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