子どもが変わる「伝え方」があった! 専門家が伝授する「感情的にならない」𠮟り方4つのコツ
感情的に怒鳴らない「上手な𠮟り方」実践ガイド。アンガーマネジメント専門家が、子どもに伝わる「4つのステップ」を解説。NGワードや、「きょうだいゲンカ」「ダダこね」などシーン別の声かけ実例も紹介します。
【▶︎画像】ママたちに聞いた「自己肯定感ブームに疲れたと感じたことはある?」〈アンケート結果〉育児をしている中で、子どもを怒ってしまうことは誰にでもあるはずです。しかし、感情のままに怒鳴ってしまうと、子どもに反発されたり、親自身が自己嫌悪に陥ったりと逆効果に。大切なのは、親の感情をコントロールし(第1回参照)、子どもに「伝わる言葉」で𠮟ることです。
引き続き、アンガーマネジメントコンサルタント®の野村恵里先生に、子どもの行動を変える「上手な𠮟り方」と、具体的な声かけのコツをうかがいます。
子どもには4つのことを順番に伝えよう
アンガーマネジメントのテクニックを使って感情をコントロールしたあと、子どもにわかりやすく、かつ親の思いもきちんと届く伝え方にするには何が大切なのでしょうか。
「アンガーマネジメントのテクニック(第1回参照)を使って冷静になれたら、次の4つのことを頭の中で整理します。そして、上から順番に子どもに伝えてみましょう。
子どもに伝える順番
①事実
②子どもの気持ちと自分の気持ち
③してほしいこと
④それをしてくれたときの自分の気持ち
これに沿った𠮟り方の具体例を紹介します。
例:部屋の片づけの場面
①今、お部屋が散らかっているね。ブロックやぬいぐるみが床の上にたくさん出てるね。
②○○ちゃんは遊ぶのがすごく楽しくて、まだ遊びたいんだよね。でも、ママはこのままだと踏んじゃいそうで、ちょっと危ないなって心配なんだ。
③だから、ソファの周りだけでも片づけてもらえると助かる。
④そうしてくれたら、ママは安心して歩けるし、うれしいな。
上手な𠮟り方のポイント①過去を責めない
『この間もできなかったでしょ』『どうしてあんなことしたの!』といった、過去を責める𠮟り方はNGです。アンガーマネジメントでは、『どうしたらいいと思う?』といった解決思考で𠮟ります。
また、“これをしてくれたら、未来にこんないいことがある”と伝えるのもいいですね。たとえば、『20分にお家を出られたら、映画館に早めに着くから、映画の予告編がたくさん見られて、それも楽しいね!』といったふうに。お得感があると、子どもも動いてくれることが多いです。
上手な𠮟り方のポイント②「してほしいこと」は一つに絞る
子どもは一度に、いくつもの物事を行うのが難しいもの。また、全部片づけてと言われると、楽しく遊んでいた気持ちが途切れて反発してしまうこともあります。そのため、子どもに『してほしいこと』を伝えるときは、欲張らずに一つに絞ることが大切です。
上手な𠮟り方のポイント③子どもが納得できる提案をする
ママが怖いと、子どもはその瞬間は言うことを聞きます。でもそれは、怒られるからやっているだけで、実は子ども自身は納得していないことも多いのです。大切なのは、怒って従わせることではなく、子どもが納得できる提案をすること。『じゃあ、どれならできる?』と子どもに選んでもらうのもいいですね。
上手な𠮟り方のポイント④あいまいな言葉はNG
『ちゃんとして』などのあいまいな言葉は子どもには伝わりにくいので、具体的に『どこを』『どうしてほしいのか』を伝えましょう。
たとえば小さい子の場合、『時計の長い針が3のところでお家を出るから、2にはトイレに行って、3になったら靴を履こうね』と言うことで、子どもは行動しやすくなります」(野村先生)
シチュエーション別 𠮟るときの声かけ実例集
子どもを𠮟る場面では、状況によって効果的な伝え方が異なります。ここでは、よくあるシチュエーション別に、心理的なポイントを踏まえた声かけの実例を紹介します。
シーン① きょうだいゲンカ:「何があったのか教えてくれる?」
「きょうだいゲンカの場面で大切なのは、“上の子が悪いことをしたに違いない”などと決めつけないことです。まずは『何があったの?』と状況を聞きましょう。
すると、下の子に『ブロックを壊されて悔しかった』など、その子なりの理由を教えてくれます。一方の子を頭ごなしに𠮟るのではなく、気持ちを受け止め、『いつも我慢してくれてありがとう。次はママが助けるね』と伝えることで、親への安心感と信頼感が育ちます。
シーン② ダダをこねる:「約束したから、がまんしようね」
買い物の場面では、事前の約束がポイントです。お店に行く前に『今日はおもちゃは買わない日』と、親側のスタンスを決め、子どもと約束しておきましょう。
そしてダダをこねたときには、『約束したからがまんしようね。がまんできたら○○ちゃんすごいね』と、伝えます。『帰ったら大きいおにぎり作ってあげるね』といった小さなご褒美も効果的です。
それでもダダこねる場合もありますが、“今日は買わない日”ということを根気よく伝えれば、やがて子どもも諦めます。
ダダをこねることが続いている場合は、ある期間、子どもを買い物に連れていかない選択もひとつの手。保育園に預けている間に買い物を済ませるなど、親側でできる工夫をしてみてください。
シーン③ 危ないことをした:「ケガをすると思って、心配だったんだ」
子どもが危ないことをしているときに𠮟るのは、子どもを守るために必要なことなので、仕方がないことです。
ただ、そのあとのフォローがとても大切です。『ケガすると思って本当に心配だったから、大きい声を出しちゃったんだ。びっくりしたよね。ごめんね』などと、怒った理由の裏にある“心配の気持ち”を伝えてあげましょう。
そして、『次はここに登らないようにしようね』と優しく伝えることで、子どもも安心し、なぜ注意されたのかを理解します」(野村先生)
𠮟り方を変えても子どもが変わらないのはなぜ?
すぐに子どもの行動が改善されない場合、2つの原因が考えられると野村先生は話します。
「子ども自身が納得していない提案をしているか、子どもの年齢や発達よりも難しいことを求めている可能性があります。
たとえば、お漏らしが治らない子に『早めにトイレに行こう』と提案しても、子どもは『別に平気』と思っているかもしれません。そんなときは、『外で漏れたら嫌だよね、遊ぶ時間が減っちゃうね』などと、子どもが納得できる理由を具体的に伝えることが大切です。
それでも改善が難しい場合は、親の基準を少し下げてみることも必要です。『トイレは済ませていないけど、お着替えはできているからいいよね』など、スモールステップの考え方を取り入れてみてください」(野村先生)
「いいところ探し」で子どもの自己肯定感を高める
できていることに目を向けることは、日常の中でも積極的に行っていくことが大事だと、野村先生は続けます。
「子どもは毎日少しずつ成長しています。昨日できなかったことが、今日は少しできるようになっています。その小さな変化をきちんと伝えることが大切です。
また、『食器持ってきてくれてありがとう』などと、してくれたことに感謝を伝えることも大事です。プラスの面に目を向け、それを伝えることで、子どもの自己肯定感も上がります」(野村先生)
「いいところ」を探すことで、親自身の気持ちも自然と明るくなります。 写真:アフロ
感情を爆発させてしまった! そのあとは子どもとどう向き合う?
怒りすぎてしまうことは誰にでもあるはずです。そうしたときは子どもに対しても、「さっきは怒りすぎちゃってごめんね」と、素直に謝ることが大事だと野村先生は話します。
「大人が謝る姿を見せることで、子どもも素直に謝ることができる人になります。
また、子どもが『いいよ』と許してくれたら、『ありがとう』と、きちんと感謝を伝えましょう。『ごめんね』『ありがとう』を素直に言えるような関係を築けると、それが家族外の人とのコミュニケーションにもいい影響をもたらすはずです」(野村先生)
子育ては長期戦 できる範囲で試していこう
「頑張っている親御さんに伝えたいのは、怒ってしまう自分を否定しなくていいということです。それは子どもを大事に思い、一生懸命向き合っている証拠だからです。
私自身、子どもには怒ってばかりでしたが、アンガーマネジメントに出合い、少しずつ子どもをうまく𠮟れるようになりました。
その結果、私の顔色をうかがって自分自身を抑えてばかりだった長男は明るくなりましたし、次男はかんしゃくが収まりました。今では二人とものびのびと成長しています。
子育ては長期戦です。最初から全力で走らず、できる範囲で少しずつ、コツコツ積み重ねることが、親子が一緒に成長する大事な時間になるはずです」(野村先生)
子育て中のイライラや怒りは、子どものことを思うからこそ起こるものです。子育てでイライラしたときに大切なのは、怒りの感情をコントロールして、“伝える姿勢”を忘れないこと。今回紹介した子どもへの伝え方を少しずつ実践していくことで、子育てが楽になっていくはずです。
取材・文/阿部雅美
参考書籍:
『とっさの怒りに負けない!子育て』野村恵里(著)/すばる舎
『イライラを爆発させない!パパ・ママが楽になる子どもの𠮟り方:子育てにいかすアンガーマネジメント』野村恵里(著)/中央法規出版
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◆野村 恵里(のむら えり)
日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントコンサルタント®。保育講座専門会社「感情保育学研修所」代表。
20年間、岡山市の公立保育園で保育士として勤務。子どもの心に寄り添う保育を実践してきた経験をもとに、2014年4月「カラフルコミュニケーションズ」を設立し、講師活動をスタート。2025年に「感情保育学研修所」を立ち上げ、「ココロ力を育む気持ちコミュニケーションで保育改革」を理念に掲げ、保育・教育・子育ての現場で役立つ“感情保育学”を全国各地で伝えている。