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一人暮らしの高齢者と共に暮らすペット。事例から学ぶ緊急時の地域支援

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

目次 地域包括支援センターで行うペット支援
飼い主が施設に入所する際の支援
ペットを飼ってから被害妄想が安静化したケースも

地域包括支援センターでは、高齢者が地域で安心して継続的に生活するためにさまざまな支援をしています。

私たちが担当する千葉県富津市の地域では、単身高齢者の住民が年々増えていますが、その中にはペットとの生活を生きがいにされている方も多いです。

今回は、高齢者とペットとの関係について事例を基に考え、当事者の施設入所の際に地域包括支援センターで行うケアを解説します。

地域包括支援センターで行うペット支援

ペットは高齢者の生活にさまざまなメリットをもたらします。

飼い犬との散歩を通じて日常的に歩く機会を確保したり、飼い猫のみならず地域猫の世話をすることが外に出る機会となっていたりと、社会参加や運動効果を生み出します。

地域包括支援センターとして活動する私たちも、さまざまな形で動物たちと関わる機会があります。ある事例を紹介しましょう。

事例1:姿の見えない猫の捜索

地域猫の世話を生きがいとしている高齢女性が、かわいがっていた雄猫「シロ」の姿が見えないと心配していました。

公園をテリトリーとしているシロの姿が2~3日見えないというのです。あまりに心配な様子の高齢者を放っておくわけにもいかず、一緒に付近を捜索しました。

シロの姿は見えないのに、にゃーにゃーと鳴き声が…。怪我をして動けないのかと植え込みを探したり、トイレに閉じ込められてしまったのかと探しても見つかりませんでした。

しかし、シロの鳴き声はますます大きくなるばかり。ふと公園のトイレの屋根を見るとそこにシロがいました。おそらく猫同士のけんかの末、屋根に昇り下りられなくなったのでしょう。

最終的には、脚立を借りて餌で誘導しながら無事保護に至りました。

事例2:多頭飼いの世帯への支援

ある家では主たる飼い主が急逝し、遺された約40匹の猫の世話に追われ住環境が乱れてしまったという高齢者からSOSを受け、支援をしました。

実態を見ると、増え続けるエサ代に掃除、次々と生まれる子猫たちの世話など、大変な手間がかかっていることがわかりました。なかには衰弱している猫もいました。

保健所をはじめ、関東近隣の動物愛護団体に相談をしましたが、コロナ禍で保護猫が増えたため収容できないと断られ続けました。そんなときに助け舟を出してくれたのが地元の「富津ねこネット」さんでした。

衰弱している子猫たちを即座に保護し、獣医師への受診、ワクチンの接種、そして里親探しや避妊去勢までの段取りと迅速に対応してくださいました。

一方、私たち包括支援センターは、里親に出すことや猫たちへの避妊矯正手術をためらう家族の説得や手術をする際の同行などの支援をしました。

結果として1匹の猫も亡くなることなく、避妊矯正手術を受けた猫たちは自宅へ帰り、衰弱していた子猫たちも適切な医療を受けて無事里親さんたちに引き取られていきました。

その結果、世帯の住環境や経済状況が改善し、猫も家族も平穏に生活することが叶いました。

このような保護活動に際しては動物愛護団体の皆様の専門的な支援が重要となります。私たちは専門家につなぐことで、人と猫の生活を支援しています。

飼い主が施設に入所する際の支援

高齢者が自宅で生活することが困難となったとき、発生するのがペットたちの終の棲家問題です。

身体機能の低下や疾病などで、一人暮らしが困難となった高齢者は、自身でその状況を理解していたとしても、「ペットたちを置いて自分だけ施設に入ることなどできない」と施設への入所を断るケースがあります。

事例3:施設の好意でペットと共に入所

施設入所が必要となったAさんは、亡くなった奥様がかわいがっていた猫を残して施設に入所することをためらっていました。里親探しも勧めましたが、奥様の忘れ形見である猫を知らない人に委ねることを嫌がり、手放す決意がつきませんでした。

そこで、私たちはAさんが入所する見込みだった事業所の理事長に事情を伝え、何とか猫と一緒に生活ができないかと交渉したところ「施設入所後も心残りなく穏やかに生活していただくために猫ちゃんも一緒にどうぞ」との言葉をいただきました。

今でもAさんと猫は施設で一緒に生活しており、猫は施設の人気者になりました。Aさんが所用で不在となる際にはスタッフさんが世話をしてくれています。

まだまだペットと生活できる施設は少ないと思いますが、今後Aさんと同じ悩みを抱える高齢者は増えていくのではないでしょうか。

衛生面や世話などの課題はありますが、ペット受け入れ可能な施設が増えることで高齢者の心豊かな生活が継続できるのではないかと考えます。

事例4:安心して施設に入所できるように地域で支える

Bさんは、自身でも一人暮らしの継続が困難であることを実感していたこともあり、施設入所に対する抵抗感はありませんでした。

見学まで順調に事が進み、入所時期を決めるタイミングになって、飼っているチャボと猫を置いて施設に入れないとの訴えがありました。

このケースでも猫に関しては前述の富津ねこネット代表に即座に相談し猫の保護は滞りなく運びましたが問題はチャボでした。

さすがにチャボを引き取ってくれる団体は私たちも把握していませんでした。途方に暮れていましたが、事情を地区社協の会長に相談したところ、会長が引き取ってくださることになりました。

会長は自身の所有する畑の一角にチャボ用の小屋までつくってくださり、チャボは会長宅で今も元気に暮らしています。

そして、Bさんも安心して施設に入所できました。

ペットを飼ってから被害妄想が安静化したケースも

一人暮らし高齢者とペットとの共同生活はメリットがとても大きいです。

例えば、夫と死別し、独居となった不安感から被害妄想を呈したCさんのケースです。

私たちはデイサービスの利用を支援し、地域の駐在さんと交代で訪問するなどの活動を行って支援していました。

ところがある日、家族が小型犬を連れてきてペットとの生活が始まると「この子がいるから夜も安心」と、高齢者の被害妄想の出現頻度も下がり、笑顔が増えていきました。

遠方に住む家族が獣医師への受診やえさの確保などの支援をしてくれていましたが、日々のペットの世話はCさんが主体的に行っていました。

ペットを世話するという役割を持ったことで、精神的な不安感が低減したのではないでしょうか。

一人暮らしの高齢者が増加する中、今後もペットの課題は増えていくことと思いますが、地域包括支援センターとしてもさまざまな機関と共同して、高齢者とペットの心穏やかな生活のため活動していけたらと考えています。

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