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琳派の代表作「燕子花図屏風」は右から観る、根津美術館で毎年恒例の展示

タイムアウト東京

琳派の代表作「燕子花図屏風」は右から観る、根津美術館で毎年恒例の展示

江戸時代の琳派を中心とした展覧会「国宝・燕子花図屏風―デザインの日本美術―」が、「根津美術館」で2024年5月12日(日)まで開催されている。この展示のメインは、琳派の巨匠、尾形光琳(1658~1716年)の「燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)」。同館では、庭園にカキツバタが咲く時期に合わせて、この作品を中心とした展示を毎年違う切り口から行っている。

今年は「デザイン」をテーマに、琳派などの日本美術を概観。本記事では、その中からいくつかの見どころを紹介する。

なお、この展示では「デザイン」という言葉を、いわゆる「産業デザイン」だけではなく、装飾性など「日本美術の特質」ともいうべき古くて新しい意味で使っているという点に注意が必要だ。これは、もちろん光琳が京都の呉服商「雁金屋(かりがねや)」に生まれ、服飾のデザインなどの造形感覚を磨いていたことが背景にある。

Photo: Ryuichiro Sato尾形光琳「燕子花図屏風」(6曲1双、紙本金地着色、18世紀、根津美術館蔵)

最初に観ておきたいのは、何と言っても「燕子花図屏風」だ。画題であるカキツバタは、「伊勢物語」第9段「東下り」に着想を得ていることが指摘されている。この段には、カキツバタの名所である八橋(愛知県)で和歌が詠まれているからだ。光琳が制作した「八橋図屏風」(「メトロポリタン美術館」蔵)と比較するとよく分かるだろう。

Photo: Ryuichiro Sato尾形光琳「燕子花図屏風」(6曲1双、紙本金地着色、18世紀、根津美術館蔵)

造形上の特徴としては、絵とデザイン、両方の性質を強く印象付ける点が挙げられる。近づいて観ると、群青を分厚く塗り、花弁のふっくらとした様子を描き出した花や、緑青を刷(は)いた葉はいずれも絵画的な造形感覚を生かしている。一方で離れて観ると、リズミカルに配置されたカキツバタの一部には、型紙が反復して利用されたり、左隻と右隻で視点の高さやカキツバタの配置を非対称にしたり、意匠性を強調してもいる。

Photo: Ryuichiro Sato尾形光琳「燕子花図屏風」(6曲1双、紙本金地着色、18世紀、根津美術館蔵)

さらに、デザインを考えるなら、屏風(びょうぶ)という立体的な形式にも着目してほしい。画面右側の特定の角度から観ると、リズミカルに配置されたカキツバタは一続きになって見え、正面からよりも視点が上になったかのように錯覚する。あたかも観ている私たちが、描かれていない八橋の上に立っているかのように。一方、左から観てもこのようには見えず、正面から観た際の左隻と右隻の非対称性がより際立ってくるのだ。

Photo: Ryuichiro Sato「扇面歌意画巻」(1巻、紙本着色、17世紀、根津美術館蔵)

この「燕子花図屏風」のように、日本美術においては、和歌や物語と美術は切り離せない関係にあった。本展では、こうしたテキストを画面にいかに取り込むか、という面から発展を遂げた絵画のデザイン性にも着目している。和歌とその歌の内容を描いた扇型の絵による絵巻物「扇面歌意画巻」や、「尾形切(業平集断簡)」など和歌を書いた美麗な色紙など、さまざまな表現手法の違いを楽しんでほしい。

Photo: Ryuichiro Sato「誰が袖図屏風」(6曲1双、紙本金地着色、17世紀、根津美術館蔵)
Photo: Ryuichiro Sato柴田是真「雛図」(19世紀、根津美術館蔵)/木屋製「菊紋唐草蒔絵雛道具」(20世紀)

漆芸や陶芸、染織など工芸との比較も楽しい。漆芸家である柴田是真が表装に描いた、漆芸の雛(ひな)道具の絵や、画中に描かれた染織の技法まで特定できそうな「誰が袖図屛風」は、絵画と工芸が現在の私たちが考えるほど明確に分かれた職能ではなかったことを教えてくれる。

Photo: Ryuichiro Sato「誰が袖図屛風」(6曲1双、紙本金地着色、17世紀、根津美術館蔵)

2階では、古代中国の青銅器や茶道具取り合わせのほか、「地球の裏側からこんにちは!―根津美術館のアンデス染織―」を開催中。根津美術館の染織品コレクションの中より、紀元前からインカ帝国の時代にわたる多様な織りや文様、糸や羽毛などの素材の違いを楽しめる。

なお、会期中は庭園内のカキツバタの開花状況を公式X(旧Twitter)で随時知らせている。庭園内の茶室では抹茶と和菓子のセット(1000円、税込み)も提供しているので、開花に合わせて自然を楽しむのもいいだろう。

Sato Ryuichiro

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