なぜ制服がある学校とない学校があるの?
ふらっと こども電話相談室
TBSラジオで長年親しまれた名物企画「全国こども電話相談室」(1964年~2008年)のコンセプトを受け継いだコーナーです。パンサーの向井慧が「電話のおにいさん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。今回の質問は・・・
Q. なぜ制服のある学校とない学校があるんですか?(東京都 さあやちゃん 11歳 小学6年生)
(回答した先生)刑部芳則さん/日本大学教授
向井おにいさん:今回は初登場の先生にお越しいただきました。ラジオなんですが礼服に蝶ネクタイといういでたちで。
刑部先生:そうなんです。戦前の歌手のようなつもりで来てますから。
向井おにいさん:まさにご自分が研究している時代の服装ということなんですね。令和なんですけど昭和がずっと続いてるような。
刑部先生:ずっと続いてるんです、終わってないんです(笑)。いいデザインはそのまま使い続けようという。
向井お兄さん:では、電話がつながっています。さあやちゃん、こんにちは。
― こんにちは。
向井おにいさん:さあやちゃんの質問はなんでしょうか?
― なぜ制服のある学校とない学校があるんですか?
向井おにいさん:ほう。この質問はなんで思いついたんですか?
― 自分の学校は制服がないんですけど、学校から帰ってるとき制服を着ている小学生を見たことがあるので、なんでかなって思いました。
向井おにいさん:そうか、確かに小学校でも制服ある学校とない学校があるもんね。さあやちゃんは来年、中学生になるわけですよね。さあやちゃんが行く予定の中学校は・・・。
― 制服あります。
向井おにいさん:さあやちゃんは、制服を着たいなとか、制服への憧れみたいなものはあるんですか?
― セーラー服とかあんまり好きじゃない。
向井おにいさん:そうなの? ブレザーのほうがいいってこと?
― はい。
向井おにいさん:そうなんだ。自分が行く予定の中学はどっちなんですか?
― ブレザーです。
向井おにいさん:そうなんだ。じゃあ、着たいほうの制服が着られそうなんだね。
― はい。
刑部先生:さやあちゃん、こんにちは。なんで制服のある学校とない学校があるのという質問ですけどね、これは制服にとって大変重要な質問だと思います。制服がなぜあるのかっていうのは大きく三つ理由があるんです。
― はい。
刑部先生:まず一つ目は、制服というのは決められた人しか着ることができないものなんですけど、さあやさんは、この学校のこの制服を着てみたいなとか、そういう憧れってありますか?
― 中学校ではあるけど、小学生の着ているやつはあんまりないです。
刑部先生:ああ、そうですか。中学、あるいは高校とかで着てみたいなっていう制服があるわけですよね。それを着たいと思っても、その学校に入らないと着ることができないじゃないですか。だからその生徒しか着ることができないという特別意識というのが制服にはあるんですよね。それがまず一つ目の理由なんです。
― はい。
刑部先生:それから二つ目は、毎日着るものを選ばないでいい。衣服にかかるお金を少なくできるんですね。ですから便利で経済的に良いっていう理由があるんです。毎日私服だと、お金持ちとそうではない人とでは格差が生まれちゃうじゃないですか。だけど制服だとみんな同じものを毎日着るので、そういう経済的な差がなくなるというのが二つ目の理由なんですよね。
― はい。
刑部先生:それから三つ目は、制服を設けている学校とか会社にとっては、それが自分たちの生徒である、あるいは社員であるってことが見分けることができる。つまり管理しやすいという意味があるんですね。この三つが制服がある理由なんですけど、ここまでわかりましたか?
― はい。
向井おにいさん:うん、うん。
刑部先生:今度は制服がない理由です。さあやさんはセーラー服が嫌いだけど、もしセーラー服の学校に入ったらそれを着なきゃいけないじゃないですか。
― はい。
刑部先生:ブレザーを着たいと思っても着られないわけでしょ。だから実は制服というのは、自分の好みで選んだところに入れればいいんですけど、そうでないものは嫌いでもそれを着なきゃいけないっていう欠点があるんですね。
― はい。
刑部先生:それと、私服だったら毎日「今日はこれを着て行こうかな」とか「明日はこれにしようかな」って、自分の美意識を身につけることができるじゃないですか。
― はい。
刑部先生:それから学校の制服によく似たセーラー服とかブレザーみたいなものを自分でコーディネートして、好きなものを着ることも可能なんですね。
― はい。
刑部先生:こういうような三つの理由があって、あえて制服を設けないほうが自由なんじゃないかということで設けていないところがあるということなんですね。これでさあやさん、わかりましたか?
― はい。
向井おにいさん:さあやさんはいつも私服で学校に通ってると思いますけど、毎朝自分が着ていく服を選ぶのは好きですか? それともちょっと面倒くさいなと思いますか?
― ちょっと面倒くさいって思うときはあります。
向井おにいさん:だとしたら制服がある学校に行くと楽ですよね。それが制服がある理由の一つっていうことですもんね。自分で服を選ぶのはちょっと面倒くさいなと思う朝もあると思いますけど、中学校になったらその面倒くささもなくなります。でも毎朝、服を選ぶ楽しさもなくなってしまうっていう感じなので、ぜひ服を選べる今の小学校の時間を楽しんでください。
― はい。ありがとうございました。
(回答者プロフィール)刑部芳則(おさかべ・よしのり)さん。日本大学教授で、近代以降の日本人の暮らしや文化について幅広いテーマを研究しています。特に日本人の服装や昭和の流行歌などの歴史に詳しい先生です。NHKの連続テレビ小説「虎に翼」の制服考証も担当しています。著書に「洋装の日本史」(集英社インターナショナル新書)など。
(TBSラジオ『パンサー向井の#ふらっと』より抜粋)