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2026年1~3月期のM&A市場は引き続き最高件数・金額を更新 ――セクター別M&A動向

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2026年1~3月期のM&A市場は引き続き最高件数・金額を更新 ――セクター別M&A動向

2026年1~3月期の日本におけるM&A市場は、件数・金額共に同期間として過去最高となった。昨年から続く活発な状況は衰えず、上場企業の非公開化案件を含め、国内外のPEファンドなどによる積極的な投資が続いている。本稿では、セクター別のM&A動向について、当社M&Aアドバイザリー部のセクターリーダーがレポートする。

概況:M&A市場は活況だがイラン情勢による不透明感も

2026年1~3月期の日経平均株価は、2月末の米国によるイラン攻撃後の下落の影響により、好調だった過去1年間と比べると低い水準で推移した。ただし、4月に入ってからは停戦や企業業績への期待感などを背景に持ち直している。

一方、M&A市場は活況が続いており、1~3月期は件数・金額共に同期間として過去最高となった。特に金額は前年同期を大幅に上回っており、これはソフトバンクグループによる米OpenAIへの出資(約4兆6700億円)が寄与している。

上場企業が非公開化を選択する事例も引き続き見られ、投資ファンドによる案件も増加傾向にある。ただし、イラン攻撃が長期化すればエネルギー価格の高騰や円安など先行きの不透明感が水を差す可能性はあり、今後の動向を注視する必要がある。

M&Aディール数と金額の推移

金額(10億円)

出所 MARR ProよりFMI作成

インダストリアルズセクターの主なM&A案件

1~3月期で金額が最大となったのは、米サイタイムによるルネサスエレクトロニクスからのタイミング部品事業の買収だった。ルネサスは、ノンコア事業を切り離して得た資金で、AIを含むコア事業への投資を加速させるとしている。

こうした事業再編の動きは今四半期も相次いだ。ソニーはテレビ事業を中国TCLへ売却、またオムロンは祖業とも言える電子部品事業を米投資ファンドのカーライルへ売却することを決め、話題となった。

再編はカーブアウトだけでなく、大きな統合にもつながっている。3月には、デンソーがロームへ買収提案を行い、一方でローム、東芝、三菱電機によるパワー半導体分野での統合協議が始まった。4月27日時点で、デンソーの提案に対するローム側の同意は得られておらず、買収提案撤回の可能性も報道されている。

また、旧日立造船のカナデビアと日鉄エンジニアリングが経営統合に向けた検討を開始するなど、業界をまたいだ動きが活発化しており、この傾向は継続するものと考えている。

インダストリアルズセクターの主なM&A案件
2026年1~3月期 M&A金額順(*はPEファンドなど関与案件)

その他の主なM&A案件(*はPEファンドなど関与案件)

出所 MARR ProよりFMI作成

コンシューマーセクターの主なM&A案件

今期の大型案件としては、キリンによるバーボンのブランド「フォアローゼズ」の売却が挙げられる。キリンは同ブランドを2002年に買収していたが、昨今のアルコール離れも一因となり、ヘルスケア事業に力を入れていくとしている。

外食産業では対照的な2つの動きが見られた。居酒屋を中心に各種外食事業のM&Aで大手となったコロワイドはファンド傘下にあったC-United(珈琲館などを運営)を買収し、さらなる多角化を進めている。一方、ドムドムハンバーガーのドムドムフードサービスは、スガキヤを運営するスガキコシステムズなどの出資を受けてMBOを選択した。

コンシューマーセクターの主なM&A案件
2026年1~3月期 M&A金額順(*はPEファンドなど関与案件)

その他の主なM&A案件(*はPEファンドなど関与案件)

出所  MARR ProよりFMI作成

IT・ビジネスサービスセクターの主なM&A案件

今四半期の案件では、ソフトバンクグループのOpenAIに対する追加出資が金額で突出している。2024年からの累計出資額は646億米ドル(持分比率約13%)となった。

また、欧州の投資ファンドEQTは、AIやロボティクスに強みを持つ豆蔵に対してTOBを実施し、非公開化した。同社はMBOを経て24年に再上場しており、短期間での非公開化となる。本案件では、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を傘下に持つ伊藤忠商事が出資に参画している点も注目される。

AIエージェントの急速な進化は「SaaSの死」とも称される構造的な変化を引き起こし、ソフトウェア関連企業の株価に大きなインパクトをもたらした。(参照:「SaaSの死」の本質とは:https://frontier-eyes.online/saas_ai-agent/)

こうした環境の変化は、すでにM&Aの現場に影響を及ぼしている。当社が関与する複数の進行中案件においても、バリュエーションの前提条件やディール推進における意思決定について見直しを迫られる場面があった。企業や投資家は、事業のAI代替可能性を定量化し、それを前提としたM&A戦略を構築できるかが問われていると言える。

IT・ビジネスサービスセクターの主なM&A案件
2026年1~3月期 M&A金額順(*はPEファンドなど関与案件)

出所  MARR ProよりFMI作成

化学セクターの主なM&A案件

金額の上位2件は共に非公開化案件だ。日本板硝子はファンドや銀行からの出資を受けて非公開化し再建を目指す。同社は2006年にイギリスの同業ピルキントンを買収したが、その時点で自社の2倍近い売上高の企業を買うために負った債務が重荷となっていた。

化学メーカーの太陽ホールディングスも米ファンドKKRによって非公開化される。昨年の株主総会では、筆頭株主であるDICからも社長の再任を反対されていた。

香港の投資ファンドのオアシスが花王の株式を保有して改善提案を行うなど、アクティビストファンドの動きは近年活発化しており、株主との対話が求められていると言える。

また、デンカが1〜3月期に2つの大きな動きを見せた。1つは臨床検査薬カイノスのTOB。生化学検査試薬や免疫血清検査試薬のクロスセルにより、国内で両社製品を拡販する。また、売上高の約97%を国内に依存するカイノスに対し、デンカの海外販売チャネルを活用してカイノスの海外展開を拡大、シナジーを創出する方針だ。

もう1つは、持分法適用関連会社の東洋スチレンの子会社化である。東洋スチレンはデンカ、日鉄ケミカル&マテリアル、ダイセルのポリスチレン事業を統合して発足した共同出資会社で、デンカが50%、日鉄ケミカル&マテリアルが35%、ダイセルが15%を出資。ダイセルの持ち分をデンカが取得し、デンカ65%、日鉄ケミカル&マテリアル35%とする。

ポリスチレンをめぐっては、国内需要の落ち込みと中国などからの輸入品との競争が激化している。東洋スチレンの経営判断迅速化と事業再構築を推進する体制を整えるために、子会社化する。デンカは、東洋スチレンを含むスチレン関連事業を分社化する検討を進めている。

総合化学によるポートフォリオ変革に伴うM&Aも引き続き起きている。三菱ケミカルは、同社のアクリルエマルジョン事業と、完全子会社ジャパンコーティングレジンの合成樹脂エマルジョン事業を、コニシに譲渡すると発表した。これらの事業の競争力を強化するには、ボンド・化成品を手がけるコニシがベストオーナーだと判断した。

また、三菱ケミカルはフィルムコーティングメーカーの中井工業をタキロンシーアイに譲渡すると発表した。三菱ケミカルは2021年に、J-STARのファンドから中井工業の全株式を取得していた。

化学セクターの主なM&A案件
2026年1~3月期 M&A金額順(*はPEファンドなど関与案件)

その他の主なM&A案件(*はPEファンドなど関与案件)

出所  MARR ProよりFMI作成

ヘルスケアセクターの主なM&A案件

久光製薬の経営陣によるMBOが2月に成立した。総額で約3900億円は、2024年の大正製薬のMBOに続き国内で2番目の規模となる。

国内の製薬会社では経営の自由度を求めた非公開化の動きが続いているが、その背景には薬価引き下げや株主からのプレッシャーなどがあると考えられる。

一方で、各社は新薬開発のためのクロスボーダー買収案件も推進しており、塩野義は抗HIV薬、旭化成は重症感染症向け製薬、大塚製薬はPTSDなどの精神疾患治療薬などを手掛ける企業にそれぞれ出資、買収を行っている。また、ドラッグストア業界では大手に続き、地方を含めた中小規模の再編が進んでいる。

ヘルスケアセクターの主なM&A案件
2026年1~3月期 M&A金額順(*はPEファンドなど関与案件)

その他の主なM&A案件(*はPEファンドなど関与案件)

出所  MARR ProよりFMI作成

エネルギーセクターの主なM&A案件

出光興産は、LNG事業への本格参入に向け、インフラ投資の米EIGグローバルエナジーパートナーズの投資先でLNG事業を行う英ミッドオーシャン・エナジーへ出資を決定した。成長分野での事業機会の獲得を狙う。

また、OpenAIは1月、ソフトバンクグループ傘下の米SBエナジーに約790億円を投資すると発表した。ソフトバンクグループも同額を出資して、AI向けデータセンターのためのインフラ開発を行う。

AI向けデータセンターの需要増加を見越して、こうした電力ソリューションへの投資意欲は高まっている。Jパワーなどが出資したモルゲンロットは、計算リソースの供給を効率化・最適化する技術を開発するベンチャー企業だ。

引き続き再生エネルギー・脱炭素関連企業への投資も盛んで、件数としては半数以上を占める。日本郵船などが出資する海上パワーグリッドは2024年設立の企業で、電気運搬船による海上送電事業の実現を目指している。

エネルギーセクターの主なM&A案件
2026年1~3月期 M&A金額順(*はPEファンドなど関与案件)

その他の主なM&A案件

出所  MARR ProよりFMI作成

本記事の執筆者一覧

インダストリアルズセクター 山田 毅(https://frontier-eyes.online/author/tsuyoshiyamada/)
コンシューマーセクター 金子 元(https://frontier-eyes.online/author/gen-kaneko/)
IT・ビジネスサービスセクター 野坂 直道(https://frontier-eyes.online/author/naomichi-nosaka/)
化学セクター、ヘルスケアセクター 河島 義尚(https://frontier-eyes.online/author/yosinao-kawashima/)、溝渕 誠二(https://frontier-eyes.online/author/seiji-mizobuchi/)、池田 勝敏(https://frontier-eyes.online/author/katsutoshi-ikeda/)
エネルギーセクター 古賀 彰(https://frontier-eyes.online/author/akira-koga/)

執筆者:フロンティア・マネジメント株式会社 MAアドバイザリー部

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