Yahoo! JAPAN

「捕まれば処刑される」タリバンに狙われた“裏切者”の命がけ救出ミッション描く『コヴェナント/約束の救出』はガイ・リッチー印の戦争アクション

映画評論・情報サイト BANGER!!!

「捕まれば処刑される」タリバンに狙われた“裏切者”の命がけ救出ミッション描く『コヴェナント/約束の救出』はガイ・リッチー印の戦争アクション

ロバート・ダウニー・Jr.主演の『シャーロック・ホームズ』(2009年)で名探偵ホームズを武闘派に変身させ、近年でも『ジェントルメン』(2019年)や『オペレーション・フォーチュン』(2023年)などの快作を送り出しているガイ・リッチー監督の最新作は、監督本人がずっと以前から取り組みたかったという、戦争映画です。

アフガニスタンを舞台にしたリッチー監督最新作『コヴェナント/約束の救出』は、ミリタリー・アクションだけでなく、ヒューマンドラマの要素も融合された娯楽作に仕上がっています。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

兵士を救った通訳の運命

2018年3月、アフガニスタン。タリバンの隠匿武器捜索にあたるアメリカ陸軍グリーンベレーのジョン・キンリー曹長(ジェイク・ギレンホール)は、有能だがクセのあるアフガン人通訳アーメッド(ダール・サリム)を雇った。アメリカ軍は移住ビザ発行を条件にアフガン人を雇用していたのだ。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ある日、ついに武器工場を突き止めたキンリーたち。しかし、続々と送り込まれてくるタリバンの増援に部隊は壊滅しキンリーも意識不明の重傷を負ってしまうが、アーメッドの献身的な行動により救出され、なんとか帰国することができた。だが自分を助けたことでアーメッドと家族がタリバンに命を狙われ、いまだアフガンに隠れ潜んでいることを知ったキンリーは、単身、アフガンに向かう――。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

ガイ・リッチー監督はアフガン問題、そしてアメリカ軍に協力したアフガン人通訳に関するドキュメンタリーを観て心を動かされ、フィクションとして映画化することを決意したとのことです。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

虐殺と処刑から逃れて

紛争地における外国人と現地人通訳の物語は以前からあり、例えばカンボジア内戦を舞台に<ニューヨーク・タイムズ>記者とカンボジア人通訳の絆を描いた実話ベースの『キリング・フィールド』(1984年)といった秀作があります。通訳ではありませんが、最近でもアフガニスタンにおける、やはり実話ベースの『ローン・サバイバー』(2013年)がありました。

『キリング・フィールド』で描かれた、カンボジア国民800万人のうちの150万人を死に追いやったとされるクメール・ルージュの狂信ぶりも凄まじいものがありましたが、タリバンの時代錯誤な原理主義もまた狂信的です。2021年夏、首都に進攻してきたタリバンから逃れようと、カブール空港の各国軍用輸送機に殺到するアフガン人の映像を憶えている読者諸兄姉も多いことでしょう。

このタリバン復活以降、300人以上の通訳とその家族が殺され、いまなお数千人が身を隠していると伝えられています。『コヴェナント/約束の救出』はフィクションですが、物語の核は事実なのです。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

実際に、『ローン・サバイバー』でシールズ隊員マーカス・ラトレル(演:マール・ウォールバーグ)を匿ったモハマド・グラブ(演:アリ・スリマン)は裏切り者としてタリバンに命を狙われるようになり、2015年にアメリカ移住を余儀なくされているのです。

ネタバレになるのでこれ以上は書けませんが、小さくても硬質で熱い歯車が駆動して大きな歯車を回し、やがて運命を転回させていく男たちのドラマを、ヒネったカメラワークで描く“ガイ・リッチー節”は健在です。雇用関係を越えたアーメッドの献身、その恩義に報いるため、そして自分自身に落とし前を付けるために私財を投げうってアーメッド救出に向かうキンリー、その彼らを待ち受ける怒涛の銃撃戦!

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

そう、原題『GUY RITCHIE’S THE COVENANT』が示すように、本作はアフガン戦争を題材にしてはいますが、あくまでも“ガイ・リッチー作品”なのです。

アフガンはスペイン?

もちろんアフガニスタンでの撮影は不可能ですから、ロケはスペインで敢行されました。そしてこれが、本当に“アフガンっぽい風景”なのです。やはりスペインで撮影されたスペイン軍実録モノの『グレイハウンド』(2017年)という小品がありますが、本作のアフガン風景の見事さは撮影スタッフの力量を伺わせます。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

武装も、カラシニコフ系アサルトライフルが大量に出演するのはもちろんですが、キンリーが現役時代はHK416系を使い、個人で乗り込んでからはM4カービン系を使うなど、なかなか凝っています。HK416は、外見はM4カービンにそっくりですが内部メカが異なるまったく別の銃なのです。

『コヴェナント/約束の救出』© 2022 STX FINANCING LLC. ALL RIGHTS RESERVED

さらに、スペイン軍のF-5軽戦闘機やターボプロップ輸送機A400Mアトラスが顔を出すほか、現代戦に不可欠の存在となっているPMSC(民間軍事警備会社)も登場するなどスペイン・ロケならではのミリタリー要素が山盛りで、その山盛りのミリタリー要素が一堂に会するクライマックスは快感です。

劇場で救出劇の盛り上がりに手に汗を握りつつ、この作品がアフガニスタンの過去と現状を少しでも考えるキッカケとなればと思います。

『コヴェナント/約束の救出』は2024年2月23日(金)より全国公開

【関連記事】

おすすめの記事