Yahoo! JAPAN

『真冬のバーレスク ボードビル3部作』は音楽あり、踊りあり~串田和美、香寿たつき、秋本奈緒美に聞く

SPICE

左から秋本奈緒美、串田和美、香寿たつき

まつもと市民芸術館では、2019年の1、2月に上演した『Mann ist Mann (マン イスト マン)』以来となる、「冬のカーニバル」と題した企画の第2弾として、『真冬のバーレスク ボードビル3部作』を、長野県松本市・信毎メディアガーデン、東京池袋・東京芸術劇場シアターウエストで公演する。開幕を控え、まつもと市民芸術館芸術監督・串田和美、串田作品初参加の香寿たつき、松本市出身の秋本奈緒美による合同取材が行われた。

 「バーレスク」はボードビル、バリエテ、キャバレー、寄席芸などとほとんど同義語で使われる、19世期末から20世紀初頭にヨーロッパに広まった大衆芸能のこと。その一方で、ピカソ、ダリ、サティ、コクトー、フィッツジェラルドなどの文士や芸術家たちが参加し、当時の既成の権威的芸術をぶち壊そうとした運動でもあった。

 演出を手掛ける串田は「演劇やコント、歌や踊りもあるバーレスクのようなスタイルは今でもいろいろな形で脈々と存続されていますが、僕はそういうスタイルが好きで、もっとたくさんあってもいいのになと思うんです。僕が俳優になったころは、新劇というピシッとした演劇が主流だったけれど、僕は音楽とかサーカスに目を向け、普段の作品でも気持ちの中ではいろんな要素を取り入れてというやり方を目指してつくっています。今回もみんなで、こうでもない、ああでもないと相談しながら、笑い合いながら稽古しています。コロナのおかげで、ショウを観ながら食事することもできない、役者が客席にも入っていけないなど、いろいろな制約がある中でやらなきゃいけないことを最初は残念に思っていましたが、今は逆に、お客さんが触れられたと錯覚するくらいのことをやってやろうと。今回選んだ3作品はいずれも過去に上演してきた作品ですが、いつか“バーレスク”としてやってみたいと思っていたものです」と語った。

串田和美 (提供:まつもと市民芸術館)

ラインナップは下記の3作品。

Ⅰ.『思い出を売る男』
加藤道夫原作。1951年発表。舞台初演は1953年文学座(演出:戌井一郎)で、劇団四季でも繰り返し上演されている。終戦間もない東京の薄暗い裏街に、一人の男がオルゴールを鳴らし、古ぼけたサクソフォンを吹きながら「思い出」を売っていた。彼の奏でる音楽に誘われてさまざまな人が集まってくる……。

Ⅱ. 『戦場のピクニック』
フェルナンド・アラバールの名作。戦場。激しい戦闘におびえる兵士ザポ。そこへ彼の両親がピクニックをしようとやってくる。困惑するザポは二人を帰そうとするが、いつしか彼らのペースに巻き込まれ、楽しいピクニックが始まる……。

Ⅲ. 『もっと泣いてよフラッパー』より「旦那アスピリンの恋」 
串田和美作。1920年代の空想のシカゴで繰り広げられるクラブの踊り子、落ち目のギャング、八百長ボクサーたちの恋物語をキャバレーショウのように散りばめたオンシアター自由劇場の人気作。

 「小さな物語が3つ並んで、フィナーレがつく構成です。『思い出を売る男』は中学3年の時に、高校生がやっているのを見て、あれじゃあ面白くないぞと生意気なことを言いながら仲間と上演しました。その後ずいぶんしてから、まつもと市民芸術館の『空中キャバレー』の中でやりましたね。『戦場のピクニック』はスペインの劇作家アラバールの前衛劇で、ある時期、けっこう頻繁に上演された作品。僕が文学座の研究生だった22、23歳の時に文学座創立メンバーの三津田健さんと共演したことがあります。『もっと泣いてよフラッパー』は20代のころにつくったものでだんだん発展してきた作品。これもバーレスクみたいなものにしたいなと思ってつくったものです。そしてフィナーレは見てのお楽しみです(笑)」(串田和美)

秋本奈緒美 (提供:まつもと市民芸術館)

 まつもと市民芸術館の財産演目と言っても過言ではない『空中キャバレー』常連の秋本奈緒美は、次のようにコメント。

 「串田さんが“バーレスク”といった時に、私は勝手に、日本における串田イズムのことだと思いました。稽古場は作り方から始まって、自由度が高いんですよ。こうあらなければならないということは一切なく、串田さんも一緒になってこうじゃないかな、ああじゃないかなと考えてくださる。それが実はとても哲学的、知的な要素もある。日本でイメージするバラエティは、ふざけて、おかしくてという印象かもしれないけれど、串田さんがやろうとされているバラエティは、お芝居もあり、歌もあり、踊りもありの現代にはない感覚。それこそ、不条理なことも笑える。昨今こんな状況になっているけど、笑っちゃおうよという感じになっています。(今回の作品は)はいこのお芝居が終わりました、はい次のお芝居の始まりですというものではなく、重なって重なって、最後は霧にまかれる感じ? 串田さんはもクラリネットも吹かれるし、タンゴも踊りになられるんですよね!」

香寿たつき (提供:まつもと市民芸術館)

 串田演出作品をいくつも見ているという香寿たつきは、新鮮な挑戦をしているよう。

 「このコロナ禍で、改めてお客様のいらっしゃる前で演じることが当たり前ではなかったんだということを実感している毎日です。串田さんが稽古開始の日に“僕らの仕事は見ている方にとっての一生の思い出になるものなんだ。30、40年先にああだったなこうだったなって感動を与えられる仕事なんだ”とおっしゃったんですけど、それを肝に銘じて稽古に励んでいます。この時期に“バーレスク”のような作品に初めて参加させていただき、素晴らしいチャンスをいただいたことに感謝しています。みなさん楽器もやられて、小道具なども作られて、本当に稽古場が楽しいです。食事のために一人でお店に入ると、『いつも観ているよ』『今回も楽しみ』と声を掛けてもらうことも多いんです。松本の街は芸術文化に通じていると感じて、私も本番を迎えるのが楽しみです」(香寿たつき)

(提供:まつもと市民芸術館)

取材・文:いまいこういち

【関連記事】

おすすめの記事