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スタジオジブリ宮﨑駿監督の不朽の名作が、團子、壱太郎、時蔵、中車らの出演による伝統と革新を融合させたスーパー歌舞伎となって新たな伝説を生む

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スタジオジブリ宮﨑駿監督の不朽の名作が、團子、壱太郎、時蔵、中車らの出演による伝統と革新を融合させたスーパー歌舞伎となって新たな伝説を生む

 スタジオジブリ作品の『千と千尋の神隠し』が舞台化されたとき、舞台の可能性のすばらしさをまざまざと見せつけられ気分が高揚したが、今回、スーパー歌舞伎『もののけ姫』を観て、やはり誰かに話したくなるような芝居のおもしろさを堪能した。歌舞伎の中でも、スーパー歌舞伎のコンテンツで上演したのが、見事に功を奏したといえるだろう。

 1986年、三代目市川猿之助(後に猿翁)が歌舞伎の伝統に現代的なスペクタクルを融合させたダイナミックで斬新な演出で、日本の演劇界に新たなジャンルを確立したスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』。その初演から40周年を迎える2026年、スーパー歌舞伎に待望の新作が誕生したのだ。

 スーパー歌舞伎として新たな息吹が吹き込まれるのは、97年の公開から四半世紀を超えていまなお愛され続ける不朽の名作『もののけ姫』。

 スタジオジブリの宮﨑駿監督が、原作・脚本・監督を手がけ、壮大な自然と人間の物語を描いた『もののけ姫』は、当時の日本映画界の歴史を塗り替える大ヒットを記録し、アニメーション作品として初めて日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど、国内外から絶大な評価を得た。

 6月に行われた製作発表記者会見に出席したスタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫氏は、「『もののけ姫』を映画でやろうとしたとき、今、時代劇ではないと多くの反対があった。いろいろなことをクリアして実現したが、それが今日歌舞伎の世界で上演されるのは感動です。基本的に時代劇、チャンバラなので、それを歌舞伎で上演するのは至極当たり前のことだと宮﨑駿さんも言っていました。今回、市川團子さん、中村壱太郎さんがやってくれるのであれば大当たり間違いなし」と言っていた。

 本作の出演者を紹介すると、アシタカとシシ神に、現在放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」の森乱役も話題の市川團子、サンに中村壱太郎、エボシ御前に中村時蔵、乙事主に市川中車という布陣。

 團子は「現代人にも歌舞伎の魅力を伝えたいと祖父が三代目猿之助時代に命を削る思いで始めたスーパー歌舞伎。今回は祖父がいない中での初の新作としての魅力を伝えるべく覚悟をもって臨みます」と並々ならぬ意欲をみせる。そして原作をリスペクトしながらも「アシタカは寡黙な人物だけにその分一つひとつ言動に重みがあり、言動の裏付けとなるどうしてそんな行動をしたのか、それが演じる上でも大事。ヤマトタケルに似ている人物で、王子であること、呪われた運命を背負いながらも前に進む。2年前に演じたヤマトタケルを踏まえながらアジタカを演じられることはありがたいです」と役の分析をする。

 少女ながらけものに育てられたサンを演じる壱太郎は「人生で体験した一番大きな記者会見で、それほど注目度の高い作品だと実感しています。脈々と連なる歌舞伎の魅力を伝えながら、冒険活劇としての壮大な舞台がこの作品で広がると信じています。新時代の歌舞伎の幕開けだと感じています」と、覚悟の中にも自信を見せる。

 そして、初日を翌日に控えた初日前会見と公開舞台稽古には、さらに多くのメディアが集まった。中には、小学生新聞の小学生記者もいて果敢に質問していた。『もののけ姫』という作品がいかに幅広い世代に親しまれているかの証だろう。

「スーパー歌舞伎と、ジブリという2つの冠を背負って全員が大きな熱量をもって挑んできた稽古場でした。アシタカもサンも白塗りですが、リアルで表現するのでなく、スーパー歌舞伎の理念で美しく魅せるというのも歌舞伎版『もののけ姫』ならではと思います」と團子が言えば、壱太郎は「サンは芝居が進むにつれ徐々に表情が出てくるお役で、スッとしたやさしい表情が闘うとなると、これまでこんな激しい動きをしたことがないといえるほどのアクションをお見せします。しっかりと歌舞伎版『もののけ姫』になっているはずです」と稽古を重ねて備えも万端といった様子である。

スーパー歌舞伎『もののけ姫』アシタカ=市川團子

 サンとエボシ御前との一騎打ちという場面もあるが、エボシ御前役の時蔵を、「これまでのスーパー歌舞伎が三代目猿之助さんの旗振りのもとにみんなが集まったという感じだと思いますが、今回のスーパー歌舞伎は、みんなのディスカッションによる話し合いの中で仕上がっていると思います」と、稽古場ではみんながさまざまなアイディアを出し合い工夫を重ねたことを紹介してくれた。

スーパー歌舞伎『もののけ姫』左よりサン=中村壱太郎、アシタカ=市川團子、エボシ御前=中村時蔵

 アシタカの團子は今最も注目される若手歌舞伎俳優との評判に違わず、若々しく颯爽として容子もよく、魅力的なアシタカ像を創り出している。壱太郎のサンも、アシタカとの場面であどけない少女の姿が浮かび上がる。タタラ集団を率いるエボシ御前の時蔵は、冷静沈着の中に慈愛を見せる。声にも品性を感じた。乙事主の市川中車はさすがベテランらしく、見得を切ったり、花道での六方を踏むなど歌舞伎の所作に味わいをみせ、〝歌舞伎版〟の意味をしっかりとつとめる。そして派手な見せ場でツケという拍子木の大きな音が、観る者の気持ちをかきたてる。そしてスーパー歌舞伎につきものの見せ場としての宙乗りを、本作ではシシ神役での團子がつとめ拍手喝采を浴びている。

スーパー歌舞伎『もののけ姫』乙事主=市川中車

「自然と人間との共存という社会性のあるメッセージを含んだ作品であるが、本舞台ではアシタカが何度も言う「共に生きよう」という言葉で打ち出される。演出の随所に、三代目猿之助のスーパー歌舞伎へのオマージュが見て取れる。團子、壱太郎はじめ出演者が口をそろえて言うように「スーパー歌舞伎」の魅力を踏襲しつつ、『もののけ姫』の作品の魅力を伝えるべく、一同があくまで令和版の「スーパー歌舞伎」を意識して演じていることも伝わってくる。

スーパー歌舞伎『もののけ姫』左よりモロの君=市川笑三郎、乙事主=市川中車

 
 歌舞伎初体験の小学生たちは、スペクタクル歌舞伎ともいえる本作をどのように観ただろう。歌舞伎の伝統技術を役者たちが次世代に繋いできたように、観る側としても歌舞伎の観る面白さというものを次世代に伝えていくことも肝要だと感じさせられる。

スーパー歌舞伎『もののけ姫』

原作:宮﨑駿
オリジナル音楽:久石譲
脚本:丹羽圭子 戸部和久
演出:横内謙介
協力:スタジオジブリ

出演:市川團子(アシタカ/シシ神) 中村壱太郎(サン) 中村時蔵(エボシ御前) 市川猿弥(ジコ坊) 市川笑三郎(モロの君) 市川青虎(甲六) 市川寿猿(猩々) 市川笑也(ヒイさま/トキ) 市川門之助(ゴンザ) 市川中車(乙事主)

〔公演日程〕7月3日(金)~8月23日(日)
〔会場〕東京・新橋演舞場
 公式HP:https://mononoke-kabuki.jp/
 
取材・文=二見屋良樹

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