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『万引き家族』是枝監督もドキュメンタリー出身!2024年の注目監督&作品を3月開催「TBSドキュメンタリー映画祭」からピックアップ

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『万引き家族』是枝監督もドキュメンタリー出身!2024年の注目監督&作品を3月開催「TBSドキュメンタリー映画祭」からピックアップ

なぜ今「ドキュメンタリー」なのか?

TBSテレビやTBS系列の各局の記者やディレクターたちが、歴史的事件や今起きている出来事、市井の人々の日常を追い続け、記録し続け、熱い思いと共にドキュメンタリー映画として世の中に発信し続けるブランド「TBS DOCS」。テレビやSNSでは伝えきれない事実や声なき心の声を発信し続けるこれらの本気のドキュメンタリー作品に出会える場として、2021年より開催されてきた「TBSドキュメンタリー映画祭」が、2024年は東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて、3月15日(金)より順次開催となる。

劇映画とドキュメンタリーの境界線は言うまでもないが、映画作品としては共通する部分も少なくない。現代の映画界で活躍する監督の中にはドキュメンタリーからキャリアをスタートした監督も多く、『万引き家族』(2018年)等で世界的に知られる是枝裕和監督も、実はドキュメンタリーから出発した一人である。

ということで今回は、全15作品を上映する「TBSドキュメンタリー映画祭」から、とくに注目しておきたい監督たちとその作品を一部紹介したい。

現実の様々を監督の視点で“ありのまま切り取る”記録映像

第4回の開催となる「TBSドキュメンタリー映画祭」では、人種や戦争、社会問題など現代を取り巻く重要なテーマを考える今だから見るべき作品を選んだ「ソーシャル・セレクション」、家族の形や身体体的な障害など、多様な生き方や新たな価値観を見出せる作品を選んだ「ライフ・セレクション」、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など、感覚を司る表現者たちやテーマを通して新たな感性に出会える作品を選んだ「カルチャー・セレクション」と、3つのテーマに沿って選出された15作品が一挙上映予定だ。

『BORDER 戦場記者 × イスラム国』©TBS

知的好奇心を刺激するオリジナリティ溢れるラインナップが目白押しの同映画祭。その最大の特徴は、“どれもTBSドキュメンタリー班が手掛けている”ということ。日々のニュース番組のほか、『情熱大陸』や『ドキュメンタリー解放区』など、系列局で放送しているドキュメンタリー番組にも精力を注ぐTBSだからこそ、番組で伝えきれなかった“熱い想い”がまだまだ存在する。それを伝えるための場でもある「TBSドキュメンタリー映画祭」には、今年も豊富なラインナップが揃っている。

『坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち』©TBS

そもそもドキュメンタリーは“実録”や“記録映像”とも呼ばれるように、虚構を用いず、実際の記録に基づいて作ったもの。全く知らない世界を垣間見ることができたり、その世界をより深く知ったりできるのがドキュメンタリーの魅力で、世の中で起こっている現実を、監督たちの視点で切り取り、熱い想いを添えて発信する。もちろん、いま映画業界を牽引している監督たちの中にも、そんなドキュメンタリー作品出身の監督たちがいる。

世界で活躍する是枝裕和や河瀨直美もドキュメンタリー出身! その強みとは?

映画『海街diary』(2015年)や『万引き家族』で知られる是枝裕和監督も、ドキュメンタリー畑出身のひとり。番組制作会社で、『しかし… 福祉切り捨ての時代に』『もう一つの教育』「公害はどこへ行った…』など、社会派のテーマを扱ったドキュメンタリー作品からキャリアをスタートした是枝は、その後、知り合いのプロデューサーからの勧めにより、小説原作の映画『幻の光』(1995年)で映画監督デビューしている。

Prime Video『幻の光』© TV MAN UNIONInc.

その後、第78回キネマ旬報ベスト・テンで第1位に選出され、第57回カンヌ国際映画祭で弱冠14歳の柳楽優弥に最優秀主演男優賞をもたらした『誰も知らない』(2004年)、累計興収30億円を突破する大ヒットを記録し第66回カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞した『そして父になる』(2015年)、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを獲得した『万引き家族』、2023年に大きな話題となった『怪物』など、登場人物たちの置かれた状況や感情をまざまざと感じさせる作品を次々と贈り出してきた是枝監督。観客たちの心を揺さぶり、何か考えさせるようなヒューマンドラマをリアルに描けるのは、“ノンフィクション”で培った経験がある是枝監督ならではの魅力だろう。

また、『朝が来る』(2020年)で知られる河瀨直美監督もドキュメンタリー出身。映画系の専門学校卒業後、講師を務めながら、ドキュメンタリー作品を自主製作しはじめた彼女は、山形国際ドキュメンタリー映画祭国際批評家連盟賞受賞した『につつまれて』(1992年)で一躍脚光を浴び、その後、第60回カンヌ国際映画祭グランプリの審査員特別大賞を受賞した『殯の森』(2007年)や、第45回報知映画賞の監督賞、第75回毎日映画コンクールの監督賞、第44回日本アカデミー賞の優秀監督賞を受賞した、辻村深月著の小説原作の『朝が来る』でも大きな話題に。

是枝同様、ドキュメンタリーを得意とする彼女ならではの視点で描き出されたヒューマンドラマが多くの人々の心を揺さぶり、第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション「カンヌレーベル」にも選出。日本人の女性映画監督として国内外から熱い支持を集めている。

報道のプロも多数!「TBSドキュメンタリー映画祭2024」注目作は?

ドキュメンタリー出身の監督が、観客たちの心を動かすパワーを持ちあわせていることは、世界的評価を集める先人たちの活躍で証明された。今後そのラインへの仲間入りを果たすことが期待される注目監督が、「TBSドキュメンタリー映画祭2024」の上映作品を手掛けた中にも存在する。報道の現場を長く経験してきたプロフェッショナルも多く、独自の視点で展開される注目作が多数揃っている。

久保田智子『私の家族』©TBS

2023年3月に逝去した音楽家・坂本龍一による社会発信の歩みを描いた『坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち』の金富隆監督は、活動家としても精力的に活動してきた坂本を近くで見続けてきた人物の一人。TBS社会部を経て「筑紫哲也NEWS23」を担当し、911同時多発テロからアフガン攻撃、イラク戦争など激動の時代に、坂本の活動を追ってきた。レジェンド音楽家として知られる坂本が、生涯にわたり伝え続けてきたこととは――? 金富監督しか知らない坂本の顔も、本作で明かされることになりそうだ。

金富隆『坂本龍一 WAR AND PEACE』©TBS

また、劇場公開で話題となった『戦場記者』(2022年)の須賀川拓監督が、過激派組織イスラム国の“いま”を追いかけた最新作『BORDER 戦場記者×イスラム国』も、同映画祭で上映予定。須賀川は、JNN中東支局長を経て現在はTBS系報道番組「NEWS23」の専属ジャーナリストとして活動。出演するYouTube動画が度々話題となるほか、昨年はTBSの人気バラエティ『クレイジージャーニー』に紛争の続くイスラエルから生中継で出演し、注目されたことも記憶に新しい。紛争地域のリアルを知る須賀川が映し出す、衝撃的かつ悲痛なメッセージが込められたドキュメンタリーは必見だ。

須賀川拓『BORDER』©TBS

さらに、特別養子縁組で新生児を家族に迎えた元TBSアナウンサーの久保田智子が監督を務めた『私の家族』や、昨年『日の丸 寺山修司40年目の挑発』を発表した佐井大紀監督最新作にして、1980年代に巷を賑わせた宗教団体・イエスの方舟の“いま”に迫る『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』も要注目。激動の時代を迎え、生き方も多種多様になりつつある“今”こそ観るべき作品が集結している。

佐井大紀『方舟にのって』©TBS

同映画祭の「本気の人間は、面白い。」という今年のテーマが表すように、“本気で生きる人々”の姿を、それに劣らぬ情熱と熱量を持った作り手(記者やディレクター)たちが“本気で”届けるラインナップこそ、最大の魅力と言えるかも知れない

「TBSドキュメンタリー映画祭2024」は3月15日(金) より東京・大阪・京都・名古屋・福岡・札幌の全国6都市にて順次開催

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