幼保小連携推進へ 唐丹小1、2年生が上中島こども園5歳児と交流 「架け橋期」の成長を支援
釜石市教育研究所(市教委内)が進める幼保小連携のモデル事業の一環として11月26日、唐丹小(戸羽太一校長、児童38人)の1、2年生が上中島こども園(楢山知美園長、園児29人)の5歳児と交流活動を行った。幼児期から小学校入学に至る“架け橋期”にふさわしいカリキュラム構築を目指す取り組みで、両小学校・こども園間では初めての試み。同小児童9人が同園を訪問し、自分たちが考えた遊びで5歳児5人を楽しませた。
この日は、1、2年生が生活科の授業で製作してきた手作りおもちゃを持参。自分たちよりも年下の子どもたちが楽しめるものを―と考え、用意してきたという。園内のホールに縁日スタイルで並べたのは、釣りや金魚すくい、すごろく、こまのほか、一緒におもちゃを作る店。段ボールや菓子の空き箱、ペットボトルキャップなど身近な材料で作り上げたオリジナルおもちゃで園児を迎えた。園児は各店を回り、担当児童から遊び方を教わり夢中になって楽しんだ。各店では遊んだ園児に好みのシールをプレゼント。“すごろく屋さん”では、落ち葉で作ったペンダントもプレゼントした。
途中からは2、4歳児も合流。児童らは園児にやさしく声をかけながら、お兄さん、お姉さんぶりを発揮。会場内は温かい交流の輪が広がった。今回訪れた児童のうち3人は同園の卒園児。その一人、佐々木聖翔さん(2年)は「小さい子たちも楽しそう」とにっこり。苦労して作ったすごろくやペンダントに自信をのぞかせた。来年、新1年生が入るのも心待ちにし、「(新入生の)お手本になるように頑張りたい」と誓った。
1人で“釣り屋さん”を開いた齊藤瑠美奈さん(1年)は「魚を作るのが大変だった」としつつ、喜んでくれる園児たちに満足げな表情。「新しい1年生が入ってきたら、やさしくしてあげたい」とほほ笑んだ。5歳児クラスの新屋匠真君(6)は「釣りが楽しかった」と目を輝かせ、児童らの姿に「かっこよかった」と憧れのまなざし。来春、唐丹小に入学予定で、「学校行くの、楽しみ。お勉強を頑張りたい」と話した。
市教育研究所には同小と同園の教諭が所属していて、幼保小連携の試験的取り組みとして本交流会を企画。1年担任の兼澤桃花教諭は「異年齢交流は相手意識を持たせることにつながる。他者のことも考え、行動できるようになれば」と期待。児童らは今回、年下の子どもたちへの言葉遣いや接し方を考える機会になり、みんなで力を合わせて物事を成し遂げる経験もした。児童の姿を目にした園児にも「学校に入ったら『誰かのために何かやってみよう』という気持ちが芽生えれば…」と願った。
同研究所は同市の教育課題解決に向けた各種研究活動を展開。幼保小連携もその一つで、本年度は幼児期から児童期への「架け橋期カリキュラム」の作成に取り組む。これは幼児期と小学校入学後のギャップを縮め、円滑に移行できるようにするとともに、幼児期に育まれた遊ぶ力、資質、能力を小学校につないでいこうとするもの。同市では少子化の影響で学区内に幼児施設がない地域や、保護者の仕事の関係で居住地から離れた施設に子どもを預けるケースなどもあり、小学校入学で子どもを取り巻く環境が大きく変化する場合も。そうした背景からも幼保小連携の取り組みは重要性を増す。
上中島こども園の楢山園長は「これまでは未就学児が児童と交流する機会はほとんどなく、不安を感じながら入学を迎えていたと思う。このような場が増えれば小学校生活へのスムーズな移行にもつながるのではないか」と歓迎。市教委学校教育課課付補佐の小澤幸恵さんは「研究所では今、各校が実践的に取り組む上でのモデル作りを進めている。今回の活動もその一つで、来年1月に開催する研究大会で事例発表する予定」と話した。