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内野聖陽、岡本圭人らが、驚きの事件をもとに創作された愛の物語に挑む 『M.バタフライ』会見&プレスコールレポート

SPICE

日澤雄介(演出)、内野聖陽、岡本圭人

あるフランス人外交官が国家機密情報漏洩という大罪を犯すほど愛に溺れた相手が、性別を偽った中国の男性スパイだった――。1960年代の文化大革命時代に実際に起きた驚きの事件である。『M.バタフライ』は、この事件から着想を得て劇作家デイヴィッド・ヘンリー・ファンが創作した物語だ。ブロードウェイでの上演が絶賛され、1988年にトニー賞最優秀演劇賞を受賞。世界30ヶ国以上で上演されてきた。日本においては1990年に劇団四季で上演されて以来、今回が32年ぶりの上演となる。

演出を手がけるのは歴史的・社会的なテーマを掲げた作品を得意とする劇団チョコレートケーキの座付き演出家・日澤雄介。主人公であるフランス人外交官ルネ・ガリマール役は、徹底した役の掘り下げによって裏打ちされた高い演技力と圧倒的な存在感が持ち味の内野聖陽。京劇女優であり毛沢東のスパイでもあるソン・リリン役に、アメリカ最古の演劇学校を卒業後し、本作が二作目のストレートプレイ出演となる岡本圭人が挑む。また、朝海ひかる、占部房子、藤谷理子、三上市朗、みのすけといった実力派キャストが集結した。

開幕に先駆けプレスコールが行われ、内野聖陽岡本圭人、演出の日澤雄介より、本作への意気込みや見どころに関するコメントが寄せられた。

日澤雄介:本作の演出をさせていただけること、本当に光栄に思っています。『M.バタフライ』はオペラ『蝶々夫人』を下地にしております。内野さん演じるガリマールという一見なんの変哲もない男が色々な葛藤を抱えながらソン・リリンと出会い、どういった結末を迎えるのか。演出家としては、どうやってガリマールの頭の中にお客様を連れていくか、いかにして彼の世界を共有できるかを一つ芯としました。

内野聖陽:数年前にこの企画をいただきました。上演にあたって色々なチャレンジを考えたものの、やはり吉田美枝先生が翻訳された日本語の美しさを改めて実感し、前回から引き継がせていただくことにしました。ただ、30年前のものですから、現代にはちょっとそぐわない部分もある。僕は日本語に関してすごくうるさい俳優なので、1年ほどかけて微調整しました。そこに圭人くんが英語に関するアドバイスをくれたり、稽古場で日澤さんが言葉に磨きをかけてくれたりして、ようやくここまで来ました。初日前なので勝負はこれから。自信と不安がありますが、とにかくこの作品の素晴らしさを伝えられたらいいなと思っています。ガリマールの脳内劇場で起こる様々な出来事が詰まったストーリーです。この壮大な物語のクオリティを上げ、皆様に楽しんでもらえるよう日々成長していきたいですね。お客様の想像力を羽ばたかせることができる物語になったらいいなと思います。

岡本圭人:ソン・リリンはとても挑戦的な役で、難しい部分がたくさんありました。内野さんにはセリフを言う時のイントネーションを指摘していただいて。

内野:海外帰りだからね(笑)。

岡本:今も話していてちょっと不安になりました(笑)。この役は自分一人では絶対に作れなかったものです。所作や京劇の先生、メイクさんや衣装さん、日澤さんや内野さん、他のキャストさん、スタッフさん、本当にたくさんの人の力に支えられてここまできました。そして、舞台はやはりお客様がいて初めて完成するので、『M.バタフライ』はまだ完成していません。どんな風に完成するのかすごく楽しみにしています。ぜひ楽しみに観にきてください。


<あらすじ>
中国、北京に駐在経験のあるフランス人外交官ルネ・ガリマール(内野聖陽)は、国家機密情報漏洩により投獄されている。なぜ彼は、そんな大罪を犯すに至ったのか。オペラ『蝶々夫人』と対比させながら、彼が自らの物語としてその「正しさ」を説いていくうちに、ことの全貌が見えてくる。
時は1960年代。文化大革命前夜の中国北京。ルネは社交の場でオペラ『蝶々夫人』を披露した京劇のスター女優ソン・リリン(岡本圭人)に出会う。「東洋人らしい」慎み深さと奥ゆかしい色香を湛えたソンに、瞬く間に魅了され恋に堕ちていくルネ。やがて男女の仲になり人目を忍びつつも20年にわたり関係が続く。しかし、ソンは実は毛沢東のスパイであり男であった――。

プレスコールにて披露されたのは、ガリマールがソンの京劇を観て言葉を交わし、妻であるヘルガ(朝海ひかる)にその夜の出来事を隠すという一連のシーン、そして夢の中で親友マルク(みのすけ)と語り合う場面だ。

内野はガリマールがソンに出会って心を揺さぶられる様子を繊細に表現し、ぐっと心を掴んでくる。静かなシーンでも表情や声音から彼が抱える葛藤や悩み、揺れ動く心情が伝わってくるのが見事だ。ガリマールの独白を挟みながら現実と夢が交差するような構成によって、いつの間にか彼の“脳内劇場”に迷い込んでしまう。

京劇スターであるソン・リリンを演じる岡本は、美しい舞と涼し気な色気により一瞬で観る者を惹き付ける。いたずらっぽい流し目、踏み込んできたかと思うとふっと距離をとる様子など、しなやかで奥ゆかしいがコケティッシュな雰囲気が心をざわつかせる。ガリマールがクラっときてしまうのも納得の儚く怪しい美しさを放っていると感じた。

朝海演じるヘルガは明るく快活な雰囲気で、ソン・リリンが持つ“東洋人的”な美しさとの対比が光る。フォトコールにおける登場シーンはごく短かったものの、夫への信頼が感じられ、彼女が物語の中でどんな役割を担うのかが非常に気になる一幕だった。また、みのすけはガリマールの悩みに寄り添い、彼の背中を押すマルクを親しみ深くユーモラスな語り口で魅力的に演じる。ガリマールは夢の中に登場する彼を天使のようなものととらえているが、はたから聞いていると悪魔のささやきにも思えるのが面白い。彼もまた、作中でどのように活躍するのかワクワクが膨らんだ。

公開された場面は10分程度ではあったが、一人の外交官であり良き夫でもあるガリマールが恋に堕ちていく様子にハラハラしながらも心惹かれ、固唾を飲んで見守ってしまった。

本作は6月24日(金)より7月10日(日)まで新国立劇場 小劇場で上演され、その後は7月13日(水)~15日(金)まで大阪公演、7月23日(土)~24日(日)に福岡公演、7月30日(土)~31日(日)に愛知公演が予定されている。

取材・文・撮影=吉田沙奈

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