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チェコのエピック・メタル・バンド:シンフォニティーのギタリストが“東方見聞録”を題材にした新作を語る!

YOUNG

リボール・クリヴァク/シンフォニティー

東欧チェコ出身のエピック・パワー・メタラー:シンフォニティーがファン待望のニュー・アルバム『MARCO POLO:THE METAL SOUNDTRACK』をリリース! 前作『KING OF PERSIA』(’16年)に続くサード・アルバムにして、前身バンド:ネメシス時代も含めると通算4枚目となるこの新作は、タイトル通り『東方見聞録』で知られるあのマルコ・ポーロの生涯に迫ったトータル・コンセプト作だ。ネメシスの頃から不変のドラマティック&シンフォニックな劇的サウンドが満載で、エスニック&エキゾティックなエッセンスの導入も見事な『MARCO POLO〜』──そこには、イタリアのヴェネツィアからシルクロードを経てモンゴル帝国(元)へと到り、皇帝フビライ(クビライ)の下で長期間過ごし、やがて故郷へと帰還を果たしたマルコの大いなる旅が、壮大なスケールで描かれている。

では、このドラマティック大作はどのようにして生み出されたのか? 制作中に何度かメンバー・チェンジが繰り返され、『KING OF PERSIA』のメンツからほぼ総替えになっているのも気になるところだが、そんなモロモロについて、首魁ギタリストでメイン・ソングライターのリボール・クリヴァク(クジヴァーク)に語ってもらった…!!

「Mongols」はキャリアのハイライトとも言える壮大な曲で誇りに思うよ

YG:ニュー・アルバムについて訊く前に、本誌初登場ということで、まずはあなたのバイオグラフィから確認させてください。ギターを始めた年齢とキッカケは?

リボール・クリヴァク(以下LK):11歳の時だったと思う。クローゼットに放置してあったギターを見つけたんだ。ずっと前に母親が弾いていたギターで、チューニングなんかメチャクチャだったけど、とにかくそれで練習し始めた。すると、しばらくして両親が新しいギターを買ってくれてね。Raimundoの“Model 130”というナイロン弦のクラシックなスパニッシュ・ギターだったな。

YG:あなたは鍵盤も弾きますが、ギターと鍵盤はどちらが先でしたか?

LK:いや、家にはピアノもあったけど、正直まともに練習したことはない。だから、俺にとってはギターこそがメイン楽器なんだ。

YG:当初、レッスンは受けましたか?

LK:学校でクラシック・ギターを11年間学んだよ。俺の音楽スキルはその時に確立されたんだ。先生はフラメンコのスタイルも好きだったようだけど、俺がいつも弾いていたのは、マッテオ・カルカッシ、フェルディナンド・カルッリ、フェルナンド・ソルといったところのクラシック・ギターの練習曲だった。ただ、同時にエレクトリック・ギターも弾き始めて、そっちは独学で練習した。初めてのエレクトリックは、Jolanaというチェコ・スロヴァキアのメーカーの黄色い’80年代製“Galaxis”だったな。

YG:ギターを始めた当初のギター・ヒーローというと?

LK:ギターを始めた頃に聴いていたのは、スコーピオンズ、ランニング・ワイルド、ハロウィンなんかで、クレイソンやTUBLATANKAといった地元のバンドも好きだった。そして、ティモ・トルキ、イングヴェイ・マルムスティーン、ポール・ギルバート、マイケル・ロメオ、キー・マルセロ、ヴィニー・ムーア、ヴィクター・スモールスキなどから影響を受けたんだ。でも、俺はどちらかというと(プレイヤー志向ではなく)バンド全体として考えるタイプでね。だって、偉大なギタリストがいるバンドはどれも素晴らしい…というワケではないし、優れたプレイヤーだからといって、優れた作曲家かどうかは分からないからな。

YG:メタル以外のジャンルもプレイしてきましたか? それとも、最初からメタル・ギタリストを志しましたか?

LK:最初から「メロディック・メタルを演奏するのは最高だ!」と思っていたよ。間違いなくね。俺は今でもこのジャンルが大好きで、他のジャンルの音楽を演奏したり、別のバンドで弾く必要性は感じない。ずっと大好きな音楽を演奏していくよ。

YG:初めてバンドを組んだのは?

LK:’93年だ。でも、その時は学校の友達同士で集まっただけで、ロクに楽器を弾けないヤツもいたし、ちゃんと聴く耳を持っていないヤツもいたりで、実際には本物のバンドとは言えなかった。ただ俺は、そこでトマーシュ・スハーチェクというドラマーと出会い、より真剣にバンドを続けていこう…と決意したんだ。そして、そのトマーシュと組んだのがネメシスの前身バンドのOTTERさ。

YG:ネメシスは’03年にアルバム『GODDESS OF REVENGE』でデビューを果たし、その後シンフォニティーと改名して、これまでに『VOICE FROM THE SILENCE』(’08年)と『KING OF PERSIA』をリリースしていますが、この3枚を振り返ってみていかがですか?

LK:『GODDESS OF REVENGE』以前は、俺もトマーシュもただの経験に乏しい若造だったよ。当時は、同世代の良いシンガーがなかなか見付けられなくてね。そこで年上のヴィレーム・マイトネルに歌ってもらうことにしたところ、突然イタリアのレーベル(アンダーグラウンド・シンフォニー)との契約話が舞い込んで、『GODDESS OF REVENGE』は日本盤もリリースされたんだよ。その後、バンドは『VOICE FROM THE SILENCE』でより高いレベルへ到達し、今度はドイツのL.M.P.とのディールを獲得した。当時は、新しいシンガーとしてルカ・トゥリッリのバンドで歌っていたオラフ・ヘイヤーを迎え、ドラマーも現クレイドル・オブ・フィルスのマルテュスだったりして、強力なラインナップが揃っていたな。

『GODDES OF REVENGE』NEMESIS

『VOICE FROM THE SILENCE』
SYMPONITY

『KING OF PERSIA』
SYMPPHONITY

しかし、すべて順調で大きな展望が開けたように見えて、実のところ──バンドはツアーに出たことがなく、幾つかのフェスに出演するのみでね…。そして『KING OF PERSIA』は、前作とほぼ同じメンツで制作したものの、レコーディング中に色々と問題が生じ、予想以上に作業が長引いてしまったんだ。

YG:『KING OF PERSIA』リリース後、メンバー・チェンジが断続的に繰り返され、結局あなた以外の面々は全員バンドを去ってしまいましたね?

LK:最も大きな問題は、『KING OF PERSIA』のラインナップで一度もライヴが出来なかったことだな。詳細は避けるけど、当時は“バンドというよりスタジオ・プロジェクト”といった状態だったんだ。それで、ライヴ/ツアーが出来るように、新たなメンツでバンドを仕切り直すことにしたのさ。

YG:現ラインナップは、シンガーがスロヴァキア人とウクライナ人、リズム隊はチェコ出身ですが、キーボーディストはスウェーデン人で、なかなかの多国籍バンドになりましたね?

LK:決して、狙ってそうしたワケじゃないんだけどね。自然とそうなったんだ。チェコのHR/HMシーンは小さくて、優れたシンガーを探すのが難しい。もし上手いヤツを見つけても、「メタルは歌いたくない」と言われたりもして…。

YG:新作『MARCO POLO〜』の制作を始めたのはいつでしたか?

LK:最初に「Venezia」と「Crimson Silk」に取り組んだのは、’17年11月のことだったよ。でも当時は、マルコ・ポーロについての曲がそれだけになるのか、それとも、もっと複雑なストーリーを構築していくのか、まだ分からなかったんだ。

YG:そもそもマルコ・ポーロの生涯を追ったコンセプト・アルバムを制作しようと思ったキッカケは?

LK:’80年代に、マルコ・ポーロを題材にしたTVシリーズ(’83年『マルコ・ポーロ シルクロードの冒険』)が放映されて、その音楽をエンニオ・モリコーネが担当していたんだ。でも俺は、当時もう「自分でオリジナルのサウンドトラックが作りたい」と思っていてね。それから随分経って、今回ようやく、マルコの人生のサウンドトラックのようなアルバムに取り組むことが出来たのさ。さっき挙げた2曲に取り掛かった際、実はもう他の曲のアイデアも簡単に思い付くようになっていた。それで、ストーリー全体のコンセプトを構想することにも夢中になったんだ。マルコが父や叔父と旅したペルシャ、アルメニア、モンゴル、中国…などなどをイメージし、エキゾティックな楽器、ハーモニー、音階を発見していくのも、また凄く刺激的だったよ。ただ、それでいて“強力なパワー・メタルであるべき”ということも忘れないようにした。

YG:『MARCO POLO〜』収録曲のうち、「Crimson Silk」は早くも’19年11月に公開されていますね? 続いて「Dreaming Of Home」も’20年5月に公開されましたが、もしかすると当初の計画では、アルバムはもっと早くリリースされるハズだったのでしょうか?

LK:そうだ。リリースが遅れた最大の理由のひとつがコロナ禍だよ。パンデミックによってライヴ/ツアーの計画が立てられなくなり、「ライヴの可能性がないのに、アルバムをリリースするなんて意味がない」となったのさ。

YG:『MARCO POLO〜』では、直球のメロディック・パワー/スピード・メタルへの回帰も見られますが、『KING OF PERSIA』からの6年で、あなたとバンドはどう変わったと思いますか?

LK:俺自身は、作曲家として成長したと思う。中でも、10分を超える「Mongols」には注目して欲しいね。個人的にも、キャリアのハイライトとも言える壮大な曲で誇りに思うよ。あと、パワー/スピード・メタルという点では、「The Plague」と「I Found My Way Back Home」がある。この2曲は、俺たち史上でも最速なんじゃない? そういった点で、俺たちは以前よりも数段上に昇ることが出来た…とも言えるね。

C・O・フィルスのアショクと楽しみながらレコーディングした

YG:『MARCO POLO〜』のレコーディングにおける、ギター周りの使用機材を教えてください。まずはギターから。

LK:長年、日本製のESP“M-II”のカスタム・モデルをメイン・ギターにしているよ。元々は黒一色だったけど、地元チェコのギター・メーカーによって、濃い紫地に稲妻というカスタム・ペイントを施してもらった(編註:上の写真で手にしているギターと思われる)。ピックアップは、EMGのハムバッカーとシングルコイルを、それぞれアクティヴで搭載。あと、シャーラーのトレモロも装備してある。とにかくチューニングが完璧なギターで、ツアー中もチューニングする必要が殆どないぐらいだから、とても満足しているよ。今回、『MARCO POLO〜』のレコーディングでは、すべてのリズム・パートをこのギターで弾いた。

一方リードは大部分を、同じくESP“M-II”だけど、セイモア・ダンカンのピックアップとオリジナルのフロイド・ローズが載ったスタンダード・モデルで弾いている。普段はスペアとして使ってるセカンド・ギターさ。

YG:アコースティック・ギターは?

LK:ゴダンの“Multiac ACS Nylon SA USB LB”を使った。昔ながらのライン出力に加えて、USB出力も出来るアコだ。Terratec製の“AX50-USB”というMIDIコントローラーの古いモデルとつなぐための、13ピン・コネクタも備えているんだよ。

YG:アンプは何を?

LK:エングルの“Tube Preamp E530 Modern Rock”と“E840 Tube Poweramp 50/50”を使った。どっちも素晴らしい機材でとても気に入っているんだ。真空管は主にソヴテック製で、時々JJ Electronicにすることもある。ボックス(キャビネット)はエングル“E412VSB”だったと思うな。録音はドライとウェットの両方の信号を記録した。だから、昔ながらのやり方と現代的なやり方の中間と言えるかもね。ミックス前に、ギターからの信号は、べリンガーのDI“GI100 ULTRA-G”を通し、ひとつはエングルのアンプへ送られ、もうひとつはRME“Multiface II”サウンドカードの入力にルーティングされる。

YG:リアンプはしましたか?

LK:エングルのアンプとキャビネットに取り付けられた、パーマーのパッシヴDI“PAN01”を介してリアンプしたよ。シュアー“SM57”マイクを使い、キャビネットのサウンドを録音したんだ。

YG:エフェクターは何か?

LK:一部のソロでしかめったに使用しないジム・ダンロップのワウ“Cry Baby Classic GCB95 F”を除けば、基本的にエフェクト・ペダルは使用してない。コーラス、ディレイなどの追加エフェクトには、TCエレクトロニックのクラシックなギター・プロセッサー“G-Major”を使っているけどね。あとは、タップ・テンポを変えるためのMIDIペダルとして、自分でカスタマイズした(Microchip製)“PIC16F628A”マイクロ・コントローラーがあって、ライヴでは、19インチ・ラックに載せ替えたStageClix製のワイヤレス・システムを使っている。DAWソフトは“Sonar 8”を使っていて、その中のVSTプラグインとしては、MeldaProductionの”MAuto Equalizer”とか、Blue Cat Audioの“NATIVE INSTRUMENTS AUDIO INTERFACES”のリグ、それからMercuriall Audioのステレオ・コーラスなんかをよく使うよ。

YG:全曲のチューニングを教えてください。

LK:全弦半音下げ──つまり、[E♭/A♭/D♭/G♭/B♭/E♭]だ。シンフォニティーではずっとこのチューニングでやっている。過去には、『VOICE FROM THE SILENCE』収録の「Give Me Your Helping Hand」でノーマル・チューニングを採用したこともあったけどね。

YG:「Crimson Silk」にはクレイドル・オブ・フィルスのアショクがゲスト参加し、PVでもあなたとギター・ソロ・バトルを繰り広げていますね?

LK:アショクとは以前に、ちょっとしたギター・バトルについて話し合ったことがあって、遂にそれを現実のモノにする機会が訪れたんだ。「Crimson Silk」をレコーディングしていた頃、このバンドにはキーボード・プレイヤーがいなかったから、ギター×キーボードの掛け合いではなく、クラシックなギター・バトルをやろうということになったのさ。アショクは普段、ブラック・メタルをプレイしているけど、実はイングヴェイの大ファンでね。それを思い出し、2人で大いに楽しみながらレコーディングを行なったよ。

YG:アショクとは長い付き合いなのですよね? かつては、ネメシスの『GODDESS OF REVENGE』でベースを客演していましたし。

LK:彼と知り合ったのは、’00年にDEFENDERという“真なるメタル”をプレイする友人のバンドのアルバム『ON WINGS OF FIRE』に客演した時だった。アショクもそのレコーディング・セッションに参加していてね。俺は1曲でギター・ソロを弾き、アショクはここでもベースを客演した。俺たちは同じ街(チェコのブルノ)の出身なんだ。ネメシスのシンガーだったヴィレームが経営するロック・クラブでは、しょっちゅう顔を合わせていたし、その後も、マルティン(・シュカロウプカ)──シンフォニティーの元メンバーで、クレイドル・オブ・フィルスのドラマー:マルテュスだ──が行なったパーティーで会ったりもしていたよ。

YG:『MARCO POLO〜』収録曲の中で、あなたがヤング・ギター読者に特に注目して欲しいギター・プレイを挙げるとすれば?

LK:まずは、やっぱり作曲家としての俺に注目して欲しいな。是非、10分超のエピック「Mongols」を聴いてもらいたい。この曲には多彩なオーケストレーションが加えられていて、そこにはモンゴルや中国の民族楽器も色々と含まれている。ハードなギター・リフと3連符のリズム・パート、そして強力なサビメロも最高だよ。

一方、プレイヤーとして特筆したいのは、「I Found My Way Back Home」だな。(アルバムのミックスを手掛けた)ミッコ・カルミラが“ストラトヴァリウス系”と呼んだここには、ギター&キーボードにベースも絡めたスリリングなソロ・パートがあるからね!

YG:では最後に、今後の予定を教えてください。『MARCO POLO〜』に伴うライヴ/ツアーの計画は?

LK:アルバムのリリース後、コロナ禍により以前(日程終盤で)中断を(2度も)余儀なくされたラプソディー・オブ・ファイアとのヨーロッパ・ツアーを、また仕切り直して行なうつもりだ。勿論、いつか日本にも行きたいよ。どこかに良いプロモーターはいないかい?(笑) 是非、俺たちを日本へ呼んでくれ!!

[SYMPHONITY from L. to R.]Libor Křivák(g)、Tomáš Sklenář(b)、Mayo Petranin(vo)、Konstantin Naumenko(vo)、Josef Cigánek(dr)、Johannes Frykholm(key)

INFO

MARCO POLO:THE METAL SOUNDTRACK/SYMPHONITY

CD|マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン
2022年5月18日発売

アルバム詳細

日本盤公式インフォメーション
マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン
公式インフォメーション
Symphonity – Official websiteインタビュー●奥村裕司 Yuzi Okumura Pix●Schovanec Zdeněk (off)

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