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雨後の千葉・湊川はヘチ釣り天国だった 1時間6連発のクロダイラッシュ!

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クロダイは海釣りのターゲットであるがその数はもしかしたら川の中のほうが多いかもしれない。エサを食うため、産卵のため、クロダイは海と川を行き来する。そんなクロダイを川からヘチ釣りでねらうにはどんな条件が必要なのだろうか。

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クロダイは海釣りのターゲットであるがその数はもしかしたら川の中のほうが多いかもしれない。エサを食うため、産卵のため、クロダイは海と川を行き来する。そんなクロダイを川からヘチ釣りでねらうにはどんな条件が必要なのだろうか。

写真と文◎編集部

川のクロダイ釣り

この記事が掲載された2025年7月号の釣り人本誌の特集は川釣り──。

「昔なら自分もクロダイで川釣りといわれてもピンと来ませんでしたが、今はむしろ川をメインにクロダイを釣っています」

そう語るのは足立区生まれの下町アングラーである大山健二さん。クロダイ釣りは父に教わった。当時はクロダイといえば沖堤防や沖磯に渡って初めて出会える魚だったが、今や実家のある足立区界隈の運河でもねらうことができるという。

「東京湾奥ではクロダイのほうから、人の近くにどんどん集まってきている感じがします」と語るように、当初は都内の新規の釣り場で取材をするはずだった。それがゴールデンウイーク前のこと。

大山さん自身、まだその釣り場については開拓を始めたばかりだったが、「つい先日も短時間でバタバタと釣れました。とにかく釣り人が少ないんです。ましてやヘチねらいは皆無。なんといっても川の色がめちゃめちゃ濁っているから潮位が低くても食ってきます」と語っていたのだが、取材の2日前に警報級の大雨が降り、状況は一変。

雨と濁りはピンチかチャンスか

「都内の運河は平常時の濁りはウエルカムなんですが雨の濁り、というか雨の直後は水潮になって途端に食わなくなるんです」

取材を予定していた4月下旬のその日は大潮2日目。満潮は午前4時19分で潮位は192cm。そこから春潮らしく一気に潮が引いて10時39分には潮位は0cmまで下がるタイドスケジュール。この条件から最も有望なのは早朝の下げっぱなだが、「都内の運河は濁りが強いので潮位が低くても食ってきた」ことから後回しにし、朝の有望な時間帯は千葉県市原市の村田川へ向かった。

村田川は接続する八幡運河と並ぶシーバスのバチ抜けのメッカだが、大山さんいわくクロダイの多さもお墨付きで、ご多分に漏れず、年々クロダイが増えているという。

「湾奥の運河と違って内房の河川では大雨は悪い条件ではありません。しかも朝マヅメ、高潮位、雨の濁りと三拍子揃っているので大釣りの可能性も大です」

今回の使用タックルは黒鯛師THE ヘチセレクション ZX シリーズ内の新作であるZERO FUKASE T288 と黒鯛師THE アスリートヘチ90W-BB いぶし銀の組み合わせ(ともに黒鯛工房)

食わない理由を考える

「あれ、なんで……」夜明けと同時に最下流の境橋から左岸側へエントリーして、下流へ100mほど探っていく。日曜日とあってシーバスねらいのルアーマンが両岸にいるものの、それはいつものことで、大山さんいわく「朝の100mの往復で2尾は釣れると思っていました」と。

対岸の右岸の往復も音なし。エサのイソガニは最初に装着したままで元気そのものだ。境橋から右岸側の上流へ釣り歩いていく。右岸と左岸はどちらも釣れるが、基本的に浅い川なので深く掘れているほうがクロダイも寄りやすい。そのためカーブしているアウトサイド(流れがぶつかる側)を探るのがセオリー。あとは太陽の向きで川に自身の影を映し込まないこと、風向きなども考慮して上流へ探っていく。

カニはふんどしを傷つけないように脚の付け根から刺して甲羅側に抜く。ハリはチヌR3号(がまかつ)。フロロカーボン1.5号を内掛け結びにしたのち端イトを吹き流しにして、そこへB程度のガン玉を打つ

この日の大山さんは国道16号より下流は右岸を探り、上流は左岸を探った。ここまでアタリらしきアタリはない。とはいえまだ釣り開始から1時間が経過しただけだ。

「でも、釣っているそばからどんどん水位が下がっています。これが小潮ならまだ2~3時間釣れますけど、この勢いだとあと1時間もしたらヘチ際は浅くなって魚が寄らない」

この最下流の往復で魚を手にできると踏んでいたのだが……

産卵期が影響か

かなり焦っているようすだったが、ついにマーキング付きのオレンジのナイロンラインが横走りした。次の瞬間には、静かに立てたZEROFUKASET288が美しい弧を描いてクロダイの走りを止めてしまった。浅い川でハリ掛かりしたクロダイほど瞬発的に沖に向かって走り出すというが、大山さんが真上にサオを立てると行き場を失って成す術もなく玉網に吸い込まれていった。

ZERO FUKASE T288 のチタン穂先。違和感なく食わせることができる柔軟さと、聞きアワセを入れればしっかりフッキングが決まる張りを併せ持つ

「さっきの1尾は産卵を終えてだいぶ体型も回復していましたけど、大半はここ数日でハタいたばかりか今まさに産卵真っ最中なんだと思います」

なんとか本命を手にしたものの、どんどん下がっていく水位に粘りは禁物と考え、即座に都内の運河へ切って返したところ、期待に反してアタリがない。夕方の上げ潮まで都内各地でサオをだしてみたものの大雨前とは打って変わって沈黙を続けた。1尾とはいえ反応があった内房の魚は回復していたが、都内の産卵は少し遅れて今なのかもしれない。というのも取材直前に大山さんが都内で釣った魚のお腹は臨月状態だったという。

湾奥に比べると産卵が早い分、回復も早いようだ

富津の湊川でリベンジ釣行

不完全燃焼に終わった大山さんがリベンジを果たしたのはその1週間後。ゴールデンウイーク後半の連休ど真ん中だった。そしてまたしても2日前に警報級の大雨が降るという不穏な状況だった。

「これで完全に都内運河への未練は消えました。こうなったら条件が最高に近い富津の湊川へ行きましょう」

当日の潮回りは小潮。満潮は7時9分で潮位は115cm。そこからゆっくりと下げていき15時10分に干潮で潮位は35cm。大山さんいわく、いろいろラッキーが重なっているという。

「まず、今回も朝マヅメと満潮前後の潮位の高い時間が被っています。ただしここは潮位が高すぎても釣りにくい。両岸に張り出したコンクリートテラスが海水に浸かるか浸からないかのヒタヒタ状態のときが釣りやすいし釣れます。そして何よりめちゃめちゃ濁っています。都内の運河と違って内房の天然河川では雨後の濁りはプラス以外の何ものでもないです」

翌週は湊川へ。沖に張り出したコンクリートテラスの先端と川の境目が不明瞭なほど期待できる。くるぶし程度の水深でも足先が見えない強烈な濁りだ

1時間で6連発ヒット

湊川下流の左岸のコンクリートテラスに乗ったのは5時前。テラスの上の水深はくるぶし程度ながら指先は見えないほどの強い濁り。そして1投目からZEROFUKASET288が絞り込まれ、THEアスリートヘチ90W-BBいぶし銀のデカノブ効果で一気にゴリ巻きして寄せた。そのパターンで、満潮前の上げの1時間ちょっとで42cmから30cm弱を6連発。

一投目からヒット!

「これ、まだ上げ潮が利いていますし、下げ潮も同じように釣れますから、昼までやれば軽く2桁釣れると思います」

と大山さん。たしかに下流の左岸しか釣りをしていないので下流の右岸、上流の両岸を探ればまだまだ釣れそうだ。しかし今回はあくまでも前回分の補足であり、これだけ釣れれば充分と満潮のだいぶ前に納竿。

川のクロダイは奥が深い。同じ濁りでも効く川と効かない川がある。そうしたクセを覚えるためには何度も足を運ぶしかない。条件しだいでヘチ釣り天国になる川や運河はまだまだありそうだ。

湊川の魚も産卵からだいぶ回復してコンディションがよかった

※このページは『つり人 2025年7月号』を再編集したものです。

 

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