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PassCode「US / JAPAN TOUR 2023 - GROUNDSWELL -」初のUS公演を含むツアーにみえた成長と新たな景色

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PassCode

US / JAPAN TOUR 2023 - GROUNDSWELL - 2023.12.09(sat)豊洲PIT

12月9日、PassCodeが東京・豊洲PITにて「US / JAPAN TOUR 2023 - GROUNDSWELL -」のツアーファイナル公演を開催した。本ツアーはアメリカ3公演(ダラス、ニューヨーク、ロサンゼルス)、国内12公演に及ぶ内容で、3か月にわたる旅となった。

振り返ってみると、今年のPassCodeはいろいろと動いていた。FCツアーの追加公演にはじまり、全国のZeppを中心に回ったツアー、『GROUNDSWELL ep.』のリリース、SUMMER SONICをはじめとする夏フェス出演、Fear and Loathing in Las Vegas、ROTTENGRAFFTYといった先輩バンドとの対バン、そして何よりダラス、ニューヨーク、ロサンゼルスを回った初のUSツアーが大きかった。たった3本ながら西海岸、東海岸、南部の代表的な都市を回ったことで、アメリカというひとつの国においてもライブのノリがまったく異なることを知った。メンバーの想像を超えるオーディエンスが彼女たちの訪米を心底待ち望んでいたことを肌で感じた。しかも、高度なテクニックを誇るバンド陣に支えられた4人のパフォーマンスは映像で観る以上の迫力があったはずで、そのことは彼らの興奮をさらに高めていた。自分もカメラマンとしてツアーに同行したが、各地での熱狂は本当にすさまじかった(USツアーの模様は、12月20日リリースのLive DVD& Blu-ray「PassCode REVERBERATE Plus Tour 2023 Final at Zepp Shinjuku」収録の「PassCode US TOUR 2023 -GROUNDSWELL- Documentary」に収められている)。この経験によって、アメリカの人々と同様に、PassCodeがやって来ることを切望している人々が世界にはまだまだたくさんいることは容易に想像できたし、それはメンバーも痛感したはずだ。2023年は、PassCodeのTO DOリストに間違いなく「海外進出」の4文字が書き加えられた年でもあった。

PassCode 撮影=ヨシモリユウナ

こんなふうに、本数こそめちゃくちゃ多いというわけではないが、ライブ1本1本に大きな意義が感じられる1年だったと思う。しかし、不思議なことにこういった1年が当たり前のように思えてしまっている自分がいる。おそらく、PassCodeならこれぐらいのことをやってくれて当然だと思っているのかもしれない。言い換えるなら、PassCodeに求める水準が高くなっているのだ。

しかし、PassCodeは今年、課題を抱えていた。コロナ禍における様々な制限の多くが撤廃されたことによって、コロナ禍以降のライブの楽しみ方というものを新たに構築することになったのである。ライブハウスのあるべき姿を残しつつ、会場に来た人みんなを喜ばせるということはコロナ禍以前でも難しいことだった。いまはさらに難しい。これはPassCodeに限った話ではなく、多くのバンドが多かれ少なかれ抱えている問題だ。PassCodeはこの課題に真っ向から向き合い、日々思考を巡らせてきた。当然、今年1年で解決されるような簡単な話ではない。来年も引き続きファンと対話を続けていくことだろう。豊洲PIT公演はツアーファイナルであり、2023年最後のライブだったが、いい意味で大団円的な色合いは薄かった。1年の終わりというのは暦の上の話でしかなく、来年も自分たちのやるべきことと引き続き向き合っていくという印象だった。

有馬えみり 撮影=ヨシモリユウナ

南菜生 撮影=森好弘

その一方で、今、PassCodeのパフォーマンスは数々の経験を経てきたことで格段にクオリティが上がっている。ひとつ指摘しておきたいのは、PassCodeの4人とバンドメンバーのバンド感の高まりだ。もちろん、フロントに立っているのは4人だが、メンバーとバンドで分断されておらず、「ステージ上のすべてがPassCode」という感覚がこの一年でかなり強くなった。これがパフォーマンス面においてもかなりいい影響を与えている。この日も披露された彼女たちの新たな代表曲「Clouds Across The Moon」では、ギタリストのYoichiとKENTが両サイドからステージ前方に出てくる場面はおなじみの光景となったし、それ以外でもステージ上の情報量がだいぶ増えたように感じる。

バンドメンバーの話が出たついでに話をすると、PassCodeのバンドメンバーは常に同じではなく、今年新たにバンドに参加したプレイヤーが2人いる。過去のPassCodeであればバンドメンバーが変わるというのは大事だったのだが、今は誰が来ても比較的苦労することなく<チームPassCode>の一員として4人が受け入れられるようになっている。これは長年かけてようやくPassCodeの音、スタイルが確立されたということであり、それはつまり、PassCodeの揺るぎない芯が出来上がったことを意味する。アイドルとバンドの境目を何の手本もなく綱渡りのようにふらつきながら歩んできた末に、ようやくたどり着いた場所である。この日のライブの序盤、オープニングの「GROUNDSWELL」に続く「Maze of mind」の冒頭、南菜生が「PassCodeはここまでライブだけで上がってきたグループです!」と堂々と言い放ったのは、そんな自信に裏打ちされたものなのかもしれない。この曲が持つグルーヴィなイントロも相まって、鳥肌が立つ瞬間だった。間違いなく、この日のハイライトのひとつ。

このあと、「NOTHING SEEKER」「SIREN」と立て続けに披露していくのだが、ここで気づいたのは観客の歓声のとんでもないデカさだ。ステージに向けて放たれる熱量からビビるくらいの圧が感じられた。中途半端な気待ちで来ている客はいない、ということだ。みんな、このときを心の底から待っていたんだ。最初のMCで南が「コロナ禍になってから2年半、こういう日が来るのをただただ待ちわびていました」と話したが、その想いはみんな同じだ。

高嶋楓 撮影=森好弘

大上陽奈子 撮影=ヨシモリユウナ

ライブのちょうど中盤に披露した「Anything New」の盛り上がりもすごかった。以前はライブ終盤にパフォーマンスすることが多かったこの曲は、中盤にもってきてもフロアのテンションの高さはエンディングのクライマックスのよう。「Anything New」は、メンバーの「この曲を育てたい」という強い思いから、時間をかけてファンへその魅力を伝えていった曲。そんな彼女たちの思いがここで結実した。アイドルはプロデューサーから渡された曲をパフォーマンスするだけ、というイメージをいまだにもっている人も多いだろうが、PassCodeはそうではない。自分たちなりに楽曲を深く解釈し、それを最良の形でファンに伝えていくために日々思考を巡らせているのである。

怒涛のパフォーマンスを繰り広げたあとは緩いMCを展開。9月に行ったUSツアーの話題になったところ、フロアにはニューヨークから来たという観客が。それに追随するようにフィンランドから来たという観客がメンバーにアピールする。過去にも海外からの観客はいたものの、やはりたった3公演とはいえ、自ら海外に出向いていったことは大きい。南がポツリと呟いた、「来てくれたなら行かなきゃな」。

後半は初期の人気曲「Nextage」からはじまり、「Live your truth」「Lord of Light」といった直近のEP2部作からの楽曲や、有馬えみり加入後初のシングル「Freely」、PassCodeを代表する名曲「Ray」など、新旧様々な曲を織り交ぜ、一気呵成に攻め立てた。グループ結成時のメンバーはひとりも残っていないため、どこを起点とするか難しいところがあるが、現編成最古参の南がPassCodeに加入してから今年で10年が経った。後半のセットリストはこれまでの10年を振り返るような重厚さがあった。ラスト「It’s you」の大シンガロングにはメンバーとファンの想いがすべて乗っていた。

PassCode 撮影=ヨシモリユウナ

メンバーとバンドの関係性の変化については前述したとおりだが、メンバー間のステージ上のつながりもだいぶ変化した。キメるべきところはキメるが、それ以外ではアドリブで他のメンバーに絡んだり、いい意味でリラックスした様子を見せることが増えた。かつて、高嶋楓と大上陽奈子はアドリブや自分の見せ方について悩んでいると話していたことがあるが、今はそんなのウソみたいだ。4人全員がのびのびとステージを駆け回っている。1年前と比べてみても明らかにパフォーマンスのクオリティが上がっている。10年が経過してもなお伸びしろを感じさせ、実際に伸びている。PassCodeの頂点はまだまだ先にあるのだ。

さあ、ここからまたPassCodeは新たな山頂を目指して研鑽を積んでいくことになるだろう。来年はもう、彼女たちの活動にストップをかけるような外的要因はない(と思いたい)。何ができるのか、何をやるべきなのか、新生PassCodeの真価が本格的に問われる1年であり、飛躍が期待できる1年でもある。来年は2マン企画をたくさんやりたいと南は話していたし、海外進出に関しても大きな可能性を感じる。今回のアメリカツアーがそうだったように、新しい土地で磨かれることによってPassCodeはさらに伸びる。数々の先人たちと同様に、その成果を日本にフィードバックするとき、彼女たち(そして、もちろんファン)の目の前にはまた新たな景色が広がっていく。4人は虎視眈々と次を見据えているし、我々はそれを見届けていきたい。実は、PassCodeの新章は静かに始まっているのだ。

取材・文=阿刀"DA"大志

PassCode 撮影=ヨシモリユウナ


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