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避難指示が出たらどうすればいい? わかりやすい避難情報を目指し「避難勧告」廃止に

LIFULL

わかりにくかった注意報や避難指示などの情報

昨今の自然災害は、従来の備えではまったく太刀打ちできないほど規模が巨大化している。西日本豪雨とも呼ばれる平成30年(2018年)7月豪雨では、西日本を中心に全国各地が被害を受け、200名を超える犠牲者が出た。その際に問題となったのが、気象庁や各市区町村から出される注意報や避難指示などの情報がわかりにくいということだ。

そこで国は2019年6月、住民が災害発生の危険度を直感的に把握し、適切な行動をとることができるよう、防災情報を5段階の警戒レベルで伝えることにした。ところがである。2019年10月に発生した台風19号でも、多くの人が避難に遅れて被災してしまった。

「避難指示(緊急)」と「避難勧告」の違いを正しく認識していたのは2割以下

従来の警戒レベル。レベル4に「避難指示(緊急)」と「避難指示」の2つがあり、わかりにくいという回答が多かった

このような状況を踏まえ、「令和元年台風第19号等を踏まえた避難情報及び広域避難等に関するサブワーキンググループ」(内閣府)が住民に対してアンケートを行ったところ、警戒レベルの内容を正しく把握している人は、決して多くないことが判明した。

警戒レベル4には「避難指示(緊急)」と「避難勧告」の2種類があるが、「避難指示(緊急)」の意味を正しく認識していた人は24.5%、「避難勧告」の意味を正しく認識していた人は24.5%と、いずれも4人に1人程度であった。
また、両方正しく認識できていた人は17.7%であった一方で、両方誤って認識している人は66.4%にも上った。市区町村から避難情報を受け取っても、なんと3人に2人がその意味を正しく分かっていなかったのである。

本来、「避難指示(緊急)」と「避難勧告」の意味は以下の通りだ。

「避難指示(緊急)」
避難を開始すべきタイミングを過ぎており身の安全に配慮しつつ速やかに避難する。

「避難勧告」
避難を開始すべきタイミングであり速やかに避難する。

このように、警戒レベル4に「避難指示(緊急)」と「避難勧告」の両方があることについて、同ワーキンググループが市町村長向けにアンケートを行ったところ、住民にとってわかりにくい、という回答が約7割となっていた。要するに5段階の警戒レベルは、我々国民に正しく届いていなかったのだ。そのため、2021年5月より新たな避難情報が伝えられることとなった。

2021年5月から、よりわかりやすくなった警戒レベル

2021年5月からの新警戒レベル。警戒レベル4の「避難勧告」が無くなり「避難指示」に一本化されるなどの変更があった(出典:内閣府「新たな避難情報に関するポスター・チラシ」)

具体的な変更点としては、警戒レベル4の「避難勧告」が廃止され、「避難指示」に一本化された。また、警戒レベル5は、「災害発生情報」から「緊急安全確保」に変更され、ただちに安全な場所で命を守る行動をとるよう呼び掛けられる。

それぞれの警戒レベルで求められる行動は以下になる。

警戒レベル1「早期注意情報」(気象庁より)
気象庁から警戒レベル1「早期注意情報」が発表されたら、気象庁のホームページで最新の情報を確認するなど災害への心構えを高める。

警戒レベル2「大雨・洪水・高潮注意報」(気象庁より)
ハザードマップなどで災害の危険性のある区域や避難場所、避難経路、避難のタイミングなどを再確認する。

警戒レベル3「高齢者等避難」(各市区町村より)
避難に時間がかかる高齢者や障がい者などを危険な場所から避難させる。避難情報の発令状況は各自治体やNHKのホームページなどで確認できる。

警戒レベル4「避難指示」(各市区町村より)
対象地域の人は全員すみやかに危険な場所から避難する。

警戒レベル5「緊急安全確保」(各市区町村より)
すでに災害が発生している、または発生直前であったり、確認できていないもののどこかで発生していてもおかしくない状況で、命の危険がある。そのため、ただちに安全な場所で命を守る行動をする。

なお、警戒レベル5は、市区町村が災害状況を確実に把握できるものではないので、必ず発令されるものではない。したがって、警戒レベル4までに避難を開始することが重要だ。

自宅に留まっていても安全を確保することは可能

絶対に避難しなければならない、というわけではない。内閣府はハザードマップで上記3条件をクリアできていれば、自宅に留まっていても安全を確保することが可能としている(出典:内閣府「新たな避難情報に関するポスター・チラシ」)

避難場所に関しては、学校や公民館といった指定緊急避難所だけにこだわる必要はない。現在は三密を避けるべきコロナ禍ということもあり、より安全と思えるならば、親類や知人宅、ホテル(宿泊料必)なども選択肢に入れるべきだ。避難の際は、マスク、消毒液、体温計、スリッパ、常備薬など自分が必要とするものを持参したい。

また、内閣府はハザードマップで以下の3条件のクリアが確認できれば、自宅に留まっていても安全を確保することが可能としている。

1.家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない
2.浸水深より居室は高い
3.水がひくまで我慢でき、飲料水や食糧の備えが十分

「避難行動判定フロー」を活用するのも一つの手

内閣府の「避難行動判定フロー」。実際に被災する前に、家族全員でこのようなツールを使って避難場所を共有しておきたい

災害対策は、実際に被害に遭う直前に行っても手遅れというケースが多い。また、家族の一人が対策を熟知していても、いざ災害となったときに、その段取りを家族全員に共有させるのは難しいだろう。そもそも災害に遭ったときに家族全員が揃っているとは限らない。

そこで事前に活用したいのが、内閣府が公表している「避難行動判定フロー」だ。このシートによって自宅の危険度や災害時の避難場所を家族で共有しておけば、被災後に「あの人の居場所がわからない」といった事態を避けられる可能性が高まる。
「避難行動判定フロー」

昨今は、全国どこで集中豪雨や台風などの自然災害が発生してもおかしくない。特に台風が発生しやすい今頃は危険だ。各家庭で災害対策を行うのは、早ければ早いほどいい。

【関連リンク】
・【内閣府】避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)
・【政府広報オンライン】5段階の「警戒レベル」を確認しましょう

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