【やまとさんの湯湯自適の記】#11 スパ・バルナージュ(魚津市)連載とやまのおふろ
この連載は、富山県公衆浴場業生活衛生同業組合が行ったスタンプラリーで全45軒を制覇し、「富山銭湯マイスター」の称号を手にした会社員「やまとさん」が、日々の銭湯めぐりや強く惹かれた入浴体験をつづる不定期連載のコラムです。
#11 スパ・バルナージュ
その日は、前の晩の仕事が深夜に及んだこともあって、何かしら「ご褒美」がないと気が済まなかった。
きょうは「ちょっといいサウナ」で朝からのんびりする。
そう心に決めて、家を出た、のだが…おっとっとっと、夏だぜ…! 暑い、暑すぎる…。ぎらぎらと燃えるイケナイ太陽に、早速心が折れそうになる。こんな暑い日にサウナに行くっていうんだから、きっと自分はどうかしてる…なんだか滑稽な気持ちになりつつ、サウナ同然、熱のこもった車を東へ走らせた。
スパ・バルナージュは、魚津駅から徒歩5分の距離、ホテルグランミラージュの9階にある。
1階のフロントで祝日の日帰り入浴料2800円を支払い、フェイスタオルとバスタオルを受け取ってエレベーターで上がると、アーティスティックなシンボルが出迎えてくれた。2024年4月のオープンから1年ちょっと経ったが、施設は全体的にまだまだ真新しい空気感がある。洗練されたデザインの暖簾をくぐり、この日男湯に設定された「ウミ」エリアに入ると、客は自分ひとりだけだった。
猛暑日の朝からサウナに入るなんて……やはり自分はどうかしてるのだろうか。
立山連峰と稲妻をモチーフにしたタイル画によるブルー調の内湯は、大きな窓からの外光を吸収してとてもクール。特にこの季節には涼し気だ。
サウナは内湯エリアに、暗闇の中で自分と向き合う「瞑想サウナ」が、そして露天エリアには富山湾を一望できる「絶景サウナ」がある。水風呂は水温の異なるものが2種類。外気浴用のインフィニティチェアも複数用意されている。
これがラグジュアリーというやつか。非日常の空間、充実の設備に、全裸のおっさんがひとり、誰もいないのをいいことにあっちへウロウロ、こっちへウロウロ…
我ながら、さぞかし間抜けな様だったことだろう。
「ぬるま湯に浸かる」とは、厳しい努力や挑戦を避けて、心地よくラクな状況に安住することを指す慣用句だ。現状に甘んじる状態などと、ネガティブな意味で使われがちだが、一方で刺激やストレスからの解放、リラックス、休息といった、ポジティブな要素も含んでいる。
スパ・バルナージュの「不感温度水風呂」は、体温に近い温度で、身体に負荷が少ないのが特徴、とのこと。これを上質なぬるま湯と例えるのは、水風呂としての存在を否定するようでいささか乱暴かもしれないが、「不感温度」とはよく言ったもので、心も身体も「無」の状態、まさしく究極のリラックス体験となった。間違いなく今回の、2時間半の施設利用のなかで1番のヒットだった。
それにしても、全裸という大前提はさておき、水風呂の効果か、9階の立地がもたらす風の効果か、外気浴がとても心地よい。
いつしか「暑い」という感覚はなくなっていた。富山湾を眺めながら裸で過ごす休日、なんと贅沢なことだろう。間違いない、これは最高の「ご褒美」だ。来てよかった、心からそう思った。
そろそろ上がろうかという頃に、ひとり、またひとりと利用客、いや、同志が入ってきた。ゆっくりしてってね、心の中でひとりごちる。
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時刻は昼過ぎ。
混雑は覚悟の上で、スパ・バルナージュからすぐの距離、地元の名店「山久ラーメン」を訪れると、運よくスッと座ることができた。
名物の「みそ野菜ラーメン」が、汗をかいた、乾いたカラダに沁みること…。気が付けばスープを飲み干してしまっていたことにはやや背徳感もあったが、この際、心が満たされればオールオッケー。
充実のサウナ体験から、最高の「サ飯」にありつく…。こんな幸せを、これからも追い求めていきたいものだ。
【ホテルグランミラージュ スパ・バルナージュ】
住所 富山県魚津市吉島1-1-20ホテルグランミラージュ 9階