お笑い芸人・デッカチャンがハマった、ちっちゃいけど深い8cmCD沼
J-POP全盛期である80年代末〜90年代、オレたちの青春のBGMを鳴らした、短冊型ジャケットの8cmシングルCD。そんな短冊CDを今もコレクションし続け、実に3000枚を所有するデッカチャンに“オレの逸品”を聞いてみた。
DJとしての顔も持つ
ぽっちゃり体型に真っ赤な髪、マーチングバンド風の衣装でスネアドラムを叩き「気付いちゃった、気付いちゃった、ワ〜イ ワイ♪」と、そして“あるあるネタ”を披露する「気付いちゃったマーチ」や「デッカチャンだよ!」のキメゼリフで知られる お笑い芸人、デッカチャン。芸人としての彼の姿は知っていても、DJとして活動する姿を知る人は少ないかもしれない。
短冊CDを集め始めたキッカケはSHAZNA
青春時代にハマった1980〜90年代J-POPを得意分野とし、クラブやライブハウスで“DJデッカチャン”として活躍。趣味と実益を兼ねた“短冊CDコレクター”の一面ももつ。
「昔から音楽が好きで、今では考えられないですけど、中高時代はご飯を抜いてでもCDを買う生活をしていました。当時はB’zやWANDS、Mr.ChildrenといったJ–POPが好きだったので。時代的にも当たり前に短冊CDを買っていたんですが、上京して、中古CD屋さんに行ったら、短冊CDが安価でたくさんあって。『これ持ってない! これは買えなかった!』と宝の山をあさってたら、SHAZNAの『Melty Love』が4枚くらいあって(笑)。『これ、たくさんあったらおもしろいな』と思い買い占めたのが、意識的に買うようになったキッカケでした」
学生時代は欲しいCDを厳選して買っていたが、安価で買える中古CDの存在を知り、コレクター魂に火がついたデッカチャン。ちなみに学生時代、初めて買った短冊CDは、「クィーンズの『踊るポンポコリン』か、B’zの『太陽のKomachi Angel』の どっちか」だそう。
「学生時代、音楽の話をする友達はあまりいなかったんですが、当時はカラオケがブームだったので、遊ぶならカラオケといっ た感じ。短冊CDにはカラオケ音源が入っていて、表紙の裏に歌詞が載っているので、歌詞を見ながら家で歌の練習をしていました。だからDJが好きなのかな? とも思うんですけど、好きな曲をカセットに編集して“マイベスト”を作り、A面、B面を無駄なく綺麗に収めるのが好きだったので、A面の最後に時間調整で『リゲインのテーマ』(※)を入れたりして、オリジナルテープを作っていました」
学生時代に買い逃したCDを買ったり、短冊ならではのアートワークに惹かれてジャケ買いしたりするうち、コレクションはどんどん増えていった。
「今はなかなかないけど、レンタルCD屋さんのレンタル落ちや、中古CD屋さんのワゴンセールになっている短冊CDをあさって、いろんなジャケットを見るのが大好きでした。あと、短冊CDって、販売していた年代が限られていて。88〜03年しか製造されていないんです。この期間だけのカルチャーってのも、掘り甲斐あるんですよね」
学生時代はJ–POPが好きで、ロックはあまり聴いていなかったというデッカチャン。短冊CDを集めるようになり、好きなジャンルの幅も広がった。
「学生時代、ロックはこわいイメージがあったので、あまり聴いてなかったんですけど、短冊CDを集めるようになって、ロックも聴くようになりました。ユニコーンさえもやんちゃなイメージがあって聴けなかったんですけど。『デーゲーム』で坂上二郎さんがジャケットになっていて、『やんちゃじゃないんだ!』と思って、そこから好きになりました。Xは聴いてなかったけど、hideは昔から好きで聴いていて。髪が赤いのはhideとSHAZNAの影響がどこかあるんじゃないか? と思っています」
現在、デッカチャンが所有する短冊CDコレクションは約3千枚。しかし今は、8cmCDを手軽に聴いたり、再生できる環境がないのが、悩みのタネなのだそう。
「一度も聴いていないCDも結構あるんですけど、その理由は、僕が所持していた、パカッと上 に開けるタイプのCDJが壊れて、今再生する機器がないんです。僕が初めてDJをやった頃は、パカッと開けるタイプのCDJがよく使われていたので、短冊CDをたくさん持って行って、DJプレイしていたんですけど。今はスロット式が主流なんで、アダプタを付けてもうまく鳴らないことが多いんです」
現在のCDJやCDデッキは、8cmCDの再生を想定していないので、8cmCDサイズに合わせるアダプタに取り付けて再生するしかないのだが、アダプタ に取り付けての再生はトラブルも多いそう。
「特にDJやっている時なんて、急いで次の曲を用意したいのに、入れたら音が鳴らないこともしばしば。今はトラブル防止のために、DJの時はCD-Rに焼いています。本当は短冊CDを山ほど並べたり、プレイ中の曲のジャケットを前に置いたりして、短冊DJならではのプレイがしたいんですけどね」
トレイが折れて後悔するは短冊CDあるある
また、初期の短冊CDは中のトレイが半分に折れて、正方形に折りたためるのが売りだったため、あらかじめトレイが折りやすくなっているのも短冊CDの特徴。不意にトレイが折れてしまうことがあるのも、悩みのひとつ。
「初期の短冊CDは、折りたたむことを前提としたアートワークだったし、『正方形に折りたたむと、コンパクトで収納しやすい!』と思っていたから、折っていたこともあったんですけど、途中から折らない前提のアートワークになったし、折らない方が収納しやすいんです。トレイを折っちゃったのはすごく後悔していますね。縦長サイズのまま収納できるプラスチックのケースがあるので。それに入れておけばキレイに保存できるんですけど、それも今は貴重で数がそろわないんです。
あと、たくさんの短冊CDを収納するのに、ちょうど合うサイズのケースもなくて、ずっと探してるし。3千枚ある短冊CDの収納法には、今も悩まされています」
こういった悩みも含めた、コレクターならではの「気付いちゃった、ワ〜イワイ♪」な、“短冊CDあるある”について、デッカチャンにさらに聞いた。
「中古の短冊CDだと、『レンタル落ちは、シールがあまり貼ってないものがうれしい』とか、『ジャニーズファンものは保存状 態がよい』というのはあるあるですね。あと、『ソニーの短冊CDは、2枚入っていることがある』っていうあるあるがあって、次に出る曲のティザー盤みたいなのが入ってることがあるんです。『8cmCD用のアダプタが買えない』もあるあるですね。僕は千葉に行った時、たまたま寄ったCDショップで見つけて、まとめ買いしました」
近年は以前のように短冊CDが中古で出まわることも少なくなり、以前のように安価でごっそりと購入することもできなくなったが、デッカチャンはまだ見ぬお宝を求め続ける。
「プレミアとまではいかないですけど、定価くらいで売っている短冊CDが時々あって。そういうのは『定価で買えるんだ、ラッキー!』と思って即買いしちゃいますね。レコードみたいに再ブームがきて、最新の8cmCDの再生機が発売してくれるとうれしいんですけど。短冊CDって限られた時期しか発売されてなかったので。再発とかしても、結局、喜ぶのは僕ら世代だけなんですよね」
わずか15年ほどしか販売されなかった短冊CDだが、オレたち世代にはど真ん中だったし、たくさんの思い出をくれた。
「あの頃の曲を聴くとすごく懐かしいし。DJで曲をかけたり、短冊CDの話題で盛り上がったり、同世代の人と共有できるとすごくうれしい。僕ら世代しか、ど真ん中で体験していないという儚さも含めて、やっぱり短冊CDが好きですね」
※…俳優の時任三郎が牛若丸三郎名義でリリースしたシングル「勇気のしるし~リゲインのテーマ~」。曲の長さは約3分。
デッカチャンの8cmCDコレクション
1.SHAZNAは見つける度にお持ち帰り
「Melty Love」をキッカケに、SHAZNAのCDはなんでも見つける度、買うようにしています。どれもジャケットが秀逸なんですよね。「Melty Love」は部屋を探せば、10枚以上あるはずです(笑)。
2.短冊ならではのアートワーク
短冊の縦長のアートワークってTikTokとかの現代っぽいデザインを先取りしていたと思うんです。縦の使い方でいちばん正しいのが、小田和正の「Oh! Yeah!」と、Mr.Childrenの「innocent world」ですね 。
横の使い方でいちばん正しいのが、氷室京介の「KISS ME」。あとhideの板チョコデザインの「ピンク スパイダー」もお気に入りです。スピッツの「チェリー」はオシャレだし、実はこれシールになっているんですよ。BEGINは表が比嘉さんで、開くとメンバー3人並んでるんですけど。比嘉さんの右にいる上地さんがいちばん左にいて、ヘンな感じになっちゃっているのがおもしろい。
チェッカーズの「ONE NIGHT GIGOLO」は、「スマホで何人、顔のエフェクトが付くか?」を調べた時、いちばん多く付いたジャケットでした(笑)。
3.コーネリアスの センスの高さ!
コーネリアス「STAR FRUITS SURF RIDER」はアートワークもセンスいいけど、CDが2枚入っていて同時にかけると、1曲になるというDJ的発想の斬新なシングル。
4.名曲だと気付いた!
王様の「幸せなクリスマス(戦争は終わった)」の“楽しいクリスマス明けましておめでとう”って歌詞を聴いて、「あ、正月の曲でもあるんだ」って驚いたり。SOFT BALLETの「EGO DANCE」は当時は理解できなかったけど、今聴くとめちゃくちゃカッコいいです。
5.8cmCDで知った隠れた楽曲
SPEED「BODY&SOUL」のシングルにしか入ってないMIXとか、TMN「RHYTHM RED BEAT BLACK」の電気グルーヴver.、hide「TELL ME」のLUNA SEAのRYUICHIとのコラボとか、シングルのカップリングにしか入ってない貴重な曲は多いです。あと、名曲なのにアルバムに入ってなくてシングルだけに入っている真心ブラザース「いらだちの日々」とか、しばらく はこれしか音源がなかったV2「背徳の瞳~Eyes of Venus〜」とか、桜井和寿が曲を書いた藤井フミヤの「エロス」も名曲。
6.中古で買うと「あっ、いいな!」
BONNIE PINKの「Heaven’s Kitchen」は、今聴いてもめちゃくちゃイイ曲なんです。中古で買ったら、元の持ち主さんが入れていた、雑誌のインタビューの切り抜き記事が入っていて。BONNIE PINKへの愛情をすごく感じて、うれしくなりましたね。中古のCDを買うと、時々こういうサプライズがあるのも楽しいです。
7.DJイベント鉄板曲
「田園」や「大迷惑」「学園天国」は、絶対盛り上がるし、みん歌いたくなる曲ですね 。あと、テレビで聴いていた曲は知ってるんで、『僕らに愛を!』のL⇔R「KNOCKIN’ ON YOUR DOOR」、『ダウンタウンのごっつええ感じ』のすかんち「恋のマジックポーション」も盛り上がる。鉄腕ミラクルベイビーズ「TALK SHOW」も『ねるとん紅鯨団』の曲だ! ってなりますね。アニメだと、『るろうに剣心』のJUDY AND MARY「そばかす」は鉄板です。
8.ユニコーンソロとBOX買ったらプラスワン
ユニコーンのメンバーそれぞれが出したソロシングルを買って、このBOXを買うと、5枚全部が収納できる上に、別の曲が入ったシングルが1枚入っているという、珍しいアイテムです。
9.あえて8cmを狙った最近のリリース
ゴールデンボンバーの「Dance My Generation」(2013年)とサカナクションの「忘れられないの/モス」(19年)は、あえて短冊CDでリリースした、わりと近年発売された作品。アートワークにこだわりを感じます。