6年ぶり頂点狙う藤枝東、湯山と柳川のホットラインは静岡学園との大一番でつながるか【静岡県高校総体サッカー決勝直前特集】
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静岡県高校総体サッカー男子で、学校創立100周年の節目を迎えた藤枝東が決勝に駒を進めた。
チームの攻撃を支えるのは、小学時代に静岡市のキューズFCで一緒にプレーしていたFW湯山大輔とボランチ柳川結飛(ゆいと)のコンビ。
6月2日の決勝、静岡学園戦に向けて注目の2人を紹介する。
FW湯山大輔(3年、清水ジュニアユース出身)
準決勝の聖隷クリストファー戦。藤枝東は0−2のビハインドを負いながら土壇場で追いつき、さらに試合終了間際にPKを獲得した。藤枝総合運動公園サッカー場は大逆転勝ちを確信した地元オールドファンの大歓声に包まれた。
エースは当たり前のようにボールを両手に抱え、ペナルティースポットに向かった。目をつぶり、大きく深呼吸して集中力を研ぎ澄ませる。静寂に包まれたスタジアム。ゆっくりとした助走から右足を振った。
ゴール左隅を射抜くはずだったボールはしかし、ポストをかすめるようにして枠をはずれていった。
スタンドからは大きなため息が漏れ、湯山は頭を抱えながらその場にしゃがみこんだ。手にしかけた決勝行きの切符は再び元の位置に収まり、PK戦突入を告げる無情の笛が鳴った。
勝ち越しの絶好機を逃したエースが大黒柱としての覚悟を示したのはその直後だ。藤枝東のキッカー1番手としてペナルティースポットに向かってきたのは湯山だった。
再び静まり返ったスタジアム。観衆の視線を一身に浴びながら、失敗した時と同じように目をつぶり、大きく深呼吸した。
「精神的なダメージを引きずっていないか」。そんな周囲の心配は無用とばかりに、湯山は思い切りよく右足を振った。「一度外していても自信はありました」。もう一度左隅を狙い、今度は確実にネットを揺らしてみせた。
試合後、小林公平監督はうなずくようにして言った。「湯山は『1番手で蹴る』とよく言ったなと思う。あれが彼の良さだと思う」。大観衆の前で、重圧から逃げることなく自分の仕事を果たしたエースに賛辞を贈った。
この試合で湯山の公式戦のゴールは8試合連続でストップしたが、本人は気にも留めない様子だった。「常にみんなが僕を意識してくれているので、しっかり決めなきゃいけない」と言った後、すかさず「PKもしっかり練習します」とニヤリ。
「決勝はチームのために戦いたい」。自分のミスを帳消しにしてくれた仲間たちのために、最前線で体を張るつもりだ。
柳川結飛(3年、エスパルスSS静岡出身)
藤枝東のエース湯山を後方から支えるのが、伝統の10番を背負うボランチの柳川だ。
2人は中学時代は別々のチームだったが、高校で再び合流。柳川は今も、頼もしいエースと一緒にピッチに立てる喜びを感じているという。
「湯山は『ザ・ストライカー』。小学校から一緒だったので、彼の動き出しは分かっている。湯山の良さを生かせるようなパスを供給したい」
技巧派の柳川は中盤の底でボールをちらし、藤枝東の攻撃にリズムを生むのが仕事。169センチと小柄だが、視野の広さと左足の正確なロングキックを武器にする。遅攻と速攻の使い分けをテーマに掲げる今季の藤枝東に欠かせない存在だ。
小学5年から中学3年まで県トレセンに呼ばれ、「文武両道を続けていきたい」と県内有数の進学校でもある藤枝東の門をたたいた。
本人は「今はサッカーに専念しています」と苦笑いするが、指定校推薦での大学進学を視野に入れるほど学業も優秀。「ザ・藤枝東」と言える選手だ。
「決勝まで気を抜かずに準備をして、必ず全国出場したい」。今大会は4試合4アシスト。湯山とのホットラインがエコパスタジアムでもつながった時、藤枝東の6年ぶりの歓喜が見えてくる。