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発達特性のある子どもの避難生活、日頃の備えは?多動、トイレ、偏食への対策など【専門家QA】

LITALICO発達ナビ

発達特性のある子どもの避難生活、日頃の備えは?多動、トイレ、偏食への対策など【専門家QA】

監修:井上雅彦

鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

発達が気になる子どもの避難や防災に関して知りたい情報は?

発達ナビでは、2024年1月18日(木)から1月24日(水)まで子どもの避難や防災に関するアンケートを行いました。今回は、その中から避難所での過ごし方や福祉避難所について、発達障害を専門とする井上雅彦先生(鳥取大学大学院教授)にご回答いただきました。

質問の一部をご紹介します。

・知らない場所や、知らない人が多い場所では、多動の特性が強く出てしまい、すぐどこかに逃げてしまいます。そのような場合、避難所を利用するのは難しいのでしょうか。簡易テントは準備していますが、すぐに抜け出てしまうので、あまり意味はなさそうです。<4歳、多動、衝動性が強い> →Q1へ 

・衝動的に飛び出してしまう特性がある子どもは、どうしたらいいでしょうか。いつ、どこから飛び出すか分からない状況ですが、家族だけで24時間見守り続けることは難しく、避難場所にも行けないと思っています。その時だけ、施設や病院が保護してくれることはあるのでしょうか。<中学生、ASD(自閉スペクトラム症)・知的障害(知的発達症)・ADHD(注意欠如多動症)> →Q2へ

・普段も外出先のトイレを嫌がる場合、いつもと違う災害時ではいつも以上に嫌がる可能性があると思います。日頃からできることや、災害時にできる工夫はありますか?<小学生、ASD(自閉スペクトラム症)> →Q3へ

・普段から偏食が激しく、気に入らないと食べないことも多いです。非常時にはそんなことは言っていられないとも思うのですが、もし非常食を食べられなかったら……と思うと心配です。避難所にお菓子があるとも考えづらく、どう乗り切ればよいでしょうか?<4歳、こだわりが強く、衝動性・多動がある> →Q4へ

詳しい回答はそれぞれの章をご覧ください。

Q1:多動や衝動性のある子どもが避難所で過ごせるか不安です。

(回答)

避難のニュースが報道される中で多動性や衝動性のあるお子さんの保護者の方は不安に思われるのではないでしょうか。
ホテルや旅館など比較的個人のスペースが確立している場所に泊まったときのお子さんの様子、修学旅行やキャンプの経験があればその様子を思い浮かべてみてください。

避難所の状況にもよりますが、限られたスペースに居ることを要求されるとかなり大変ですし、あちこち動き回ってしまうこともあると思います。避難先が大きな部屋であれば、その中に簡易テントを張ることで、最低限のクールダウンスペースは作れるでしょう。

あちこち動いても大丈夫なように、夏であれば外にテントを張る方法もあります。カーキャンプなどもできるかもしれません。その場合、平時の際にカーキャンプの練習などで本人の不安を和らげられるように練習をしておけるとよいでしょう。

修学旅行や親の会でのキャンプ、家族での宿泊の経験は大人が考えている以上に子どもたちの練習になることもあります。修学旅行での配慮なども参考になるのではないでしょうか。小さい頃は難しいかもしれませんが、少しずつ練習できるとよいですね。

避難所での生活においても、視覚的に次に何をするか(お弁当が出るのは何時など)が分かるように工夫できるとお子さんも見通しがつきやすくなります。また日中活動が安定するようなお子さん自身が楽しめる「こだわりグッズ」があったほうがよいと思います。動画を観られるスマートフォンやゲーム機器などが好きなお子さんの場合は、充電できるバッテリーなどを備えておけると安心です。

Q2:福祉的な支援が必要な場合、病院や施設で過ごさせてもらうことはできますか?

(回答)

福祉的な支援を必要とするというだけでは医療施設である病院で過ごすことはできません。「福祉避難所」に指定されている施設については入所できる可能性があります。事前に情報を収集しておきましょう。

内閣府から出されている福祉避難所の確保・運営ガイドラインでは、福祉避難所の対象について次のように示しています。

福祉避難所の受入対象者として想定されているのは、法律上「要配慮者」ということになる。要配慮者は、「災害時において、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」(災害対策基本法第8条第2項第15号)と定義されている。よって、福祉避難所の事前指定やその準備は、これらの人々を受入対象として備えておく必要がある。「その他の特に配慮を要する者」として、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者、医療的ケア(※)を必要とする者等が想定される。これらの人々は、一般的な避難所では生活に支障が想定されるため、福祉避難所を設置し、受け入れ、何らかの特別な配慮をする必要がある。

引用:福祉避難所の確保・運営 ガイドライン平成28年4月(令和3年5月改定)|内閣府(防災担当)

https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/r3_hinanjo_guideline.pdf

知的障害(知的発達症)や発達障害の人も対象になりますが、受け入れられる状況によって要配慮者の中でも重症であったり、ニーズの高い方が優先されます。

各市町村の行政窓口やWebサイトなどで福祉避難所の情報を調べることができます。平時の際に福祉避難所はどこに開設される予定なのか、災害時どうやってその場所に行くのかなどを検討しておくとよいでしょう。また、受け入れ施設によって全ての対応は難しいかもしれませんが、事前に行政窓口などにニーズを伝えておくことも大切です。自治体によっては、自治体から依頼された民生委員が面談などして、福祉避難所の対象者を把握したり、名簿を作ったりしている地域もあるようです。詳しくは、お住まいの行政窓口やWebサイトなどでご確認ください。

Q3:トイレを嫌がる子どもの場合、どうしたらいい?

(回答)
避難所の簡易トイレに入るのを嫌がるお子さんもいます。あらかじめ練習をしておくことは難しいと思います。あらかじめ家庭用の防災トイレ(車の中で使えるようなもの)やおむつなどを用意しておくとよいでしょう。

Q4:普段から偏食がひどい場合、災害時の食事はどうしたらいい?

(回答)
特定の食べ物やお菓子なら食べられる、またアレルギーのあるお子さんもいると思います。指定避難所はインスタント食品が準備されていたり、何日間かするとお菓子も届くことが多いようです。インスタント食品や非常食の中でどのようなものが食べられて、どれが食べられないかを事前に知っておくこと、食べられるものが少ないお子さんの場合は、数日分食べられるものを非難袋に備えておくことが大切です。

まとめ

避難生活では日中の過ごし方が心の安定において大切になってきます。視覚的にスケジュールが理解できるための小さめのボードやペン、日中楽しめるこだわりグッズ、予備バッテリーなどは備えておくとよいでしょう。外での寝泊りや食事、防災トイレについては平時に体験する機会があるとよいと思います。

福祉避難所の利用を検討する場合は、事前に情報収集をしておきましょう。

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