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社会システム総合研究所とさくらインターネットが進めるラオス救急医療のDX支援

さくマガ

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さくらインターネット株式会社と株式会社社会システム総合研究所は、国際交通救急研究会JAGREを通じて、ラオス人民民主共和国(以下、ラオス)救急医療のDX支援を決定しました。
JAGREがラオス救急医療の課題解決のために開発を進めている「救急医療サービス(EMS)支援システム」において、さくらインターネットはさくらのクラウドによるインフラの提供をおこない、社会システム総合研究所はアプリケーションの開発を支援します。

JAGREによる感謝状授与の様子 左から株式会社社会システム総合研究所 代表取締役 西田純ニ氏、JAGRE 代表 中村俊之氏、さくらインターネット 執行役員
高橋 隆行、さくらインターネット 深井 雄輝

この記事では、株式会社社会システム総合研究所 代表取締役 西田 純ニ氏と、さくらインターネット 執行役員 高橋
隆行の対談をお届けします。ラオスの救急搬送事情や西田氏が取り組んでいること、さくらインターネットが支援するラオス救急医療のDXについて語っていただきました。

ラオスの救急搬送事情

西田 純二氏 プロフィール
株式会社社会システム総合研究所代表取締役。京都大学経営管理大学院特命教授。京都大学工学部交通土木工学科卒。中央復建コンサルタンツ、日本ディジタルイクイップメンツ、阪急電鉄を経て、2004年に株式会社社会システム総合研究所を設立し、代表取締役に就任。学校法人上田学園理事、一般社団法人グローカル交流推進機構理事等を併任。東日本大震災の翌年には被災地復興を目的とする岩手ソーシャルビジネススクール塾長に就任。ICTを活用した途上国における都市・交通問題の解決のための諸活動を展開。

西田
純ニ氏(以下、西田):ラオスでは、交通事故で亡くなる方が非常に多いです。われわれは、交通事故で亡くなる方を減らすために活動しています。そのためにやらなければならないことはたくさんありますが、その中で3つ挙げます。
1つめは「プレホスピタル(病院前救急)」。日本の場合は、119番に電話をすると救急車が駆けつけてくれますが、ラオスでは公的な救急車のサービスがありません。すべてボランティアで運営されています。ボランティアも複数の団体があり、情報の共有がされていません。これをITの力で効率化していきたいです。

2つめは「コマンド・コントロールセンターの設立」。救急車の管理をし、病院との連携をする場所です。日本では当たり前にありますが、ラオスの場合は首都ビエンチャンにすらありません。このコントロールセンターをビエンチャンにある国立の病院「ミッタパーブ病院」の敷地内に作ろうと計画しています。
ここですべての救急車を管理して、病院との連携をします。日本ではディスパッチャー(通信指令員)と呼ばれる人が、連絡を受けたら近くの救急車を向かわせて病院を探しますが、これをラオスでもやりたいです。
そのためにも、救急車と病院が連携を取れる仕組みにしなければなりません。患者さんの状態が悪い場合、病院は事前に準備する必要があります。日本では電話をして、受け入れ先病院を決めてから搬送しますが、ラオスにはこの仕組みがありません。
搬送する患者さんの状況をしっかり調べて適切な病院に送ることは、コロナのような感染症対策としても重要です。ラオスの場合、高度医療ができる病院は限られています。こうした病院で感染症が蔓延してしまうと、ラオスの医療が崩壊してしまいます。

3つめは「人材教育」。コントロールセンターを作っても、指令員が初期の対応をしっかりしなければなりません。そのための教育が必要です。
救急車に乗っているボランティアの方にも、しっかりと医療の教育を受けてもらう必要があります。場合によっては病院に運ぶ前に、応急処置や人工呼吸などをしなければなりません。
これらを全部合わせて、はじめて救急搬送の合理化、機能向上が果たせます。それを3年間で進めていきたいです。このプロジェクトはこのたび、筑波大学を代表とする、JICA草の根パートナー型技術協力事業に採択をいただき、活動を進めることになりました。

社会課題をDXで解決する

高橋 隆行 プロフィール
さくらインターネット株式会社 執行役員。カスタマーサポート、プリセールスエンジニアを経て
2006年にさくらインターネット入社。運用現場業務に従事したのち、2011年に運用執行役員に就任。2016年に営業管掌として異動、非営利団体KidsVentureの立ち上げ、グループ会社代表取締役経験を経て、現在はカスタマーフロント業務統括、グループ会社統括業務に従事。

高橋
隆行(以下、高橋):西田さんのお話からラオスの現状を考えると、ラオスの方々が自発的にDXを進めるのは、まだ難しい段階にあると思います。短期的には、外部からDXを進めていくことが必要です。
教育のお話がありましたが、中長期的にはラオスの方々が自発的にDXができるようにすることが重要だと考えています。社会的課題の多い国が、DXによって劇的に変わるわけですから、そこに対してわれわれがコミットしていきたいと思っています。
西田さんはラオスに何度も足を運ばれていますが、ラオスと日本に共通点はありますか?

西田:ラオス国民のほとんどが仏教徒ですので、倫理観や文化観は日本人にも馴染みやすいです。お坊さんが朝に裸足で托鉢(たくはつ)※されるのですが、お坊さんが怪我をしないように家の周りを掃除します。
※修行のために経を唱えながら各戸の前に立ち、食べ物や金銭を鉢に受けて回ること
なので、街中がとてもキレイです。ラオスでは相互に助け合う意識がとても強くて、コミュニティで助け合う文化があります。

高橋:日本に似ている部分も多そうですね。ラオスはアジアの中でも最貧国の一つだと言われていますが、これから新たな産業が生まれていくと思います。今後さまざまな社会問題が出てくるので、どのような課題が出てきて、どのような貢献をわれわれができるのか非常に興味深いです。

西田:そうですね。これから経済発展をして車も増えていきますが、経済発展と同じスピードで交通事故で亡くなる方が増えてはいけません。DXを進めて、改善していく必要があります。

さくらインターネットがDX支援を決めた理由

高橋:西田さんから、ラオスの現状についての映像と資料を見せていただき、非常に感銘を受けました。

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さくらインターネットの執行役員として、今後のCSV経営を考えていくうえでも、ラオスに対して支援していきたいと考えました。といっても、今回の支援によって短期的な成果があるとは思っていません。短期的な視点ではなく中長期的な視点で、サスティナブルな世の中を目指すことが重要です。

西田:今回ラオスで作るシステムは、全部さくらのクラウド上で動いて、端末はスマートフォンやPC、タブレットを使います。ラオスにもサーバーはあるのですが、気温40℃を超えるラオスでサーバーの熱をどうするのかが問題です。あと、ラオスは落雷がとても多いです。落雷で停電や通信障害が発生することが多いので、運用面で難しい部分があります。
安定したシステムをローコストで提供することを考え、さくらインターネットさんにお声がけしました。

高橋:ありがとうございます。日本とラオスは約4000キロも離れていますが、インターネットは高速で届きます。どうしても回線スピードを求める場合は現地に近いほうがよいですが、すべての用途で回線スピードを求められるわけではありません。
用途によっては、日本のインフラを日本国内だけではなく、世界中で使っていただくことができるわけです。それが今回の取り組みによってわかったので、ほかの国でも私たちのクラウドサービスが役に立てるシーンが多いのかなと思いました。

DXが進むと実現できること

西田:DXを進めることで、救急搬送事情の解消だけではなく、事故を未然に防げるようになると考えています。
今回の取り組みでは、交通事故が発生した場所、時間、原因をデータベースに貯めていきます。このデータを使って、どの道路で、何時ごろ、どんな原因で交通事故が起きたかを解析します。
解析データを元に、ラオスの道路構造を決めて建設をしている「公共事業運輸省(MPWT)」と一緒に、交通事故の発生原因を取り除いていこうと考えています。また、ラオス警察との取り組みも進めたいです。データを元に、事故の多い道路でスピード違反や飲酒運転の取り締まりを強化することで、交通事故の発生自体を減らす取り組みを進めていきます。

高橋:事故が起きる前から防ぐ。これが理想ですね。データは貯めるだけでは意味がありません。蓄積されたデータを分析して活用することがDXです。DXで社会課題を解決できるようになればと思います。

さいごに伝えたいこと

西田:開発した救急車の位置情報システムは、さくらインターネットさんのクラウド上で動いています。こうした取り組みができるのは、多くの通信を支えてくださる方、安定した電力供給をしてくださっている方、ミドルウェアやソフトウェア開発をしてくださっているすべての方のおかげです。
ITの世界では、その後ろにあるインフラをあまり意識しないことが多いですが、いろいろな方が努力をしてきて、いまのインターネットという世界を作ってくれました。
以前は先進国でしかできなかったことが、途上国に技術を持ち込んで、今回の仕組みのようなことが、比較的簡単に実現できるようになったわけです。
DXは、グローバルにいろいろな人の幸せを、バランスよく向上させる力になっていくと思います。多くの方々がいろいろなところで努力をしていただいた結果、われわれが現在のように活動できていると、常日頃強く思っています。みなさまに、ぜひお礼を伝えたいです。

高橋:企業1社でやれることには限りがあります。複数社でパートナーシップを組むことによって、より大きな価値提供ができるのではないでしょうか。今回の取り組みもパートナーシップによって実現できました。
個人でも同じです。1人だけでは社会を変えることは難しくても、協力してくれる人と活動することで、社会を変えられる可能性が高まります。
周りを見渡して、一緒に活動できる人を探して、価値提供できる状態を作る。そうすると非常によい流れができます。このことを伝えたいです。
執筆

川崎 博則
1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子
さくらインターネット社員。1児の母。主に「さくらのユーザ通信」(メルマガ)を担当しつつ、さくマガの記事執筆や編集に関わっている。

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