人見知りはいつから?何歳まで続く?激しい子の特徴も【小児科医監修】
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
人見知りはいつから始まる? 人見知りの原因とは?
赤ちゃんが普段接している養育者以外と接するときに、ぐずったり泣き出したりと人見知りが激しくて困っている方もいらっしゃると思います。
人見知りは子どもが発達していく過程で、人を区別できるようになってくると起こると言われています。目安としては生後6~9ヶ月頃から始まり、2~3歳頃になるとおさまってくることが多いようです。
ただ、子どもの発達には個人差が大きいため、下記の月齢はあくまで目安としてください。
赤ちゃんは、生まれた頃はまだ視力も発達しておらず、身近な大人の姿もよく認識できていません。
生後6ヶ月頃になってくると、養育者など身近な人の顔を判別できるようになってきます。あやしてもらうと喜んだり、養育者にしがみついたり、あとを追うようになったり、大人とのやり取りを楽しむ様子が見られるようになります。子どもと養育者は、このようにして愛着を築いていきますが、特定の大人との愛着関係が強まっていくことで、それ以外の慣れていない人と接すると、不安が高まり接触を避けたり泣いたりといった様子を見せることがあります。
8~9ヶ月頃になると、多くの子どもが人見知りをするようになります。
人見知りの激しさは子どもによって差があり、目をそらすといった消極的な場合から、泣き叫ぶなど激しい様相を呈する場合もあります。
また、初対面ではなくても、あまり会う機会のない祖父母などの大人に対して、それまでは人見知りしなかったのに、急に人見知りをするようになる場合もあります。
このように、人見知りは子どもが人を識別できるようになったことと、特定の大人との愛着関係ができたからこそ生じる状態と言えます。
それまでいろいろな人と接していたのに、急に人見知りが始まると戸惑うかもしれませんが、子どもの発達の自然な過程なのであまり心配しないようにするといいでしょう。
人見知りはおおよそ10ヶ月~1歳半頃が最も激しく、2~3歳頃になる頃には落ち着いてくると言われています。
これは、10ヶ月~1歳半頃は愛着の対象である人(多くは養育者)が離れることに不安が強くなる時期だからです。そのため、慣れない人と接する場面では不安感からより人見知りが激しくなることが考えられます。
その後、子どもがさまざまなコミュニケーション手段を獲得し、他者と関わる機会が増えていくことで次第に人見知りもおさまってくるようになります。
人見知りが激しい子に特徴はある?
人見知りの程度や行動は個人差が大きく、まったく人見知りしないという子どももいれば、激しい子どももいます。
人見知りが激しい場合、「話しかけられただけで泣き叫ぶ」「養育者以外が抱っこをすると泣く」「ほかの人の顔を見ただけで「怖い」と養育者に抱き着く」「養育者の陰から出てこない」など、比較的ささいなことでも大きく反応します。
また、泣いている時間も子どもによって差があり、一度泣き出すとなかなか泣き止まず、養育者が困ってしまうということもあります。
このように人見知りが激しく、外で泣き叫んでいるときなどは「何とかしなくては」と焦ってしまうこともあるでしょう。
そのときに叱責するなど無理に泣き止ませるのは逆効果になることがあります。人見知りは養育者との関係がうまくいっているからこそ起きるものです。泣き続けている場合は、子どもが普段触れ合うことの多い人が抱っこをするなどをして、安心感を感じられるようにするといいでしょう。
人見知りが激しい場合、発達障害などの可能性がある?
人見知りは子どもの発達の過程で生じるものと分かっていても、程度によっては「何かほかに原因があるのでは」「発達障害の影響かも」と感じることがあると思います。
ですが、発達障害があるから人見知りが激しくなるというわけではありません。しかし、発達障害があることで不安が強く、そのことが人見知りの程度に影響を与えることは考えられます。人見知りが激しい以外にも、気になる行動や特性が見られた場合は専門機関へ相談してみるといいでしょう。
発達障害のある子どもに見られる特徴例
・癇癪が激しい
・自分のことに夢中になり友達と遊ぶことが少ない
・慣れない状況や急な変更に不安が強い
・感覚過敏がある(著しい偏食、特定の音を過剰に嫌がる、ある洋服の素材を嫌がったり洋服のタグを嫌がったりする)
・歯磨き、着替えなどの身辺自立が遅れがち
ここで挙げた特徴はあくまで一例です。
人見知り以外にも発達で気になる様子がある場合は以下の機関に相談してみるといいでしょう。
発達の気になる子どもの相談先
・かかりつけの小児科
・専門の医療機関(療育センター、児童精神科、小児神経科など)
・市町村保健センター
・児童相談所
・子ども家庭支援センター
・発達障害者支援センター
対面だけでなく電話やインターネットを通じて相談できる場合もあります。WEBサイトなどで確認してみるといいでしょう。
まとめ
慣れていない人と接するときに、避けたり泣き叫んだりといった人見知り。子どもの人見知りは6ヶ月頃から現われて、2~3歳頃まで続くと言われています。
いつまでも泣いていたり、それまで仲良くしていた人にも人見知りするようになると「困ったな」と感じるかもしれません。しかし、人見知りは養育者と愛着を形成できているからこそ起こる状態で、子どものコミュニケーション手段が増えることで自然とおさまってきます。
しかし、人見知りの程度や期間が気になったり、ほかにも発達で気になる様子がある場合は、背景に障害などが隠れていることも考えられます。心配な方はかかりつけの小児科や保健センターなど専門機関に相談してみるといいでしょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。