魚好きの料理人とソムリエがふたりで営む「ワイン食堂Paz」。
けやき通りの一角に佇む「ワイン食堂Paz(パズ)」は、新鮮な魚料理をアラカルトで楽しみながらソムリエがセレクトしたワインを味わえる、食堂感覚の気軽なお店。ソムリエの星野さんとシェフの宮さんがふたりで営んでいます。オープン1周年の節目に、お料理やワインへのこだわりや、2年目の目標についてお話を聞いてきました。
ワイン食堂Paz
星野 愛 Megumi Hoshino
1989年長岡市生まれ。新卒でフレンチレストランに勤務し、ワインやサービスに興味を持つ。前職の飲食店で宮さんと知り合い、2023年7月にふたりで独立。「ワイン食堂Paz」をオープンする。
ワイン食堂Paz
宮 忠行 Tadayuki Miya
長年料理人として働く中、前職で星野さんと知り合う。2023年7月に星野さんと共に「ワイン食堂Paz」をオープン。大の魚好き。
新鮮な魚料理と、ソムリエがセレクトしたワインを楽しむ。
――こちらはどんなお料理とワインが楽しめるお店なんでしょうか。
星野さん:お魚料理をアラカルトメニューでご用意しています。新潟の洋食屋さんでお魚をアラカルトで食べられるお店って、あんまりないんですよね。ワインに関していうと、店名に「食堂」とついているように、食堂感覚でワインを楽しめるお店です。
――美味しいお魚とワインを気軽に楽しめるお店なわけですね。
星野さん:「安くて美味しい」をコンセプトにしています。高くて美味しいお店はいっぱいあるので、ワインのことがぜんぜん分からなくても美味しく飲めて、気軽に使ってもらえるお店がいいなと思ってはじめました。
――おふたりでお店をはじめられたのには、どういう経緯があったんですか?
宮さん:元同僚なんです。飲食店にいて、10年くらい同じ店舗で仕事をしていました。
星野さん:たまたまずっと同じお店に配属されていたんですよね。
――へ〜、じゃあお互いのことはよく知っているわけですね。
宮さん:コロナ禍になったタイミングで、うちの奥さんに「独立したいよね」と話したら「料理以外できないじゃん」って言われたんです。僕、酒飲めないんですよ(笑)。それなら相棒が必要だよねってなったときに、奥さんが「星野がいいんじゃない?」って。
星野さん:独立してお店をやりたいっていう気持ちは、私の中にもすごくあったんです。コロナ禍で、いつ独立できるか分からない状況だったんですけどね。
――それから昨年の7月におふたりでお店をはじめられたと。
宮さん:コロナが5類になったタイミングでちょうど会社のOKが出たので、独立することにしました。前職では私が上司だったんですけど、今はそれが逆転して(笑)。オーナーシェフにこだわりはないし、この先を考えたとき、星野に社長をやってもらったほうがいいかなって思ったんです。
星野さん:税理士さんとかプロの方のご教示もあり、私がオーナーというかたちに落ち着きました。
――ワインのことや料理のことは、前職で学ばれた部分が多いんでしょうか?
星野さん:私は最初がホテルマンだったんですよ。新卒でフレンチのレストランに配属されて、そこでワインと出会って。ワインだったりサービスだったりに興味を持つようになりました。
――宮さんはずっとお魚料理を得意にされてきたんですか?
宮さん:そもそも魚が好きなんですよ。市場で働くか迷ったくらい好き。今でも最終目標は市場で働くことです(笑)
――そんなにですか(笑)。じゃあ釣りとかも?
宮さん:釣りが大好き。釣りがメインの生活です。
星野さん:釣りに本気ですもんね(笑)
――それは魚料理が得意になるわけですね。
宮さん:ずっと疑問だったんですよ。新潟は海があるのに、新潟の料理人はなぜ魚を使わないのかって。それになぜみんなコースで提供するのかって。海外に行ってもコースってそんなになくて、基本はアラカルトを頼んで、自分の好きなものを食べる。それで、せっかく店をやるなら魚料理をアラカルトで出そうと思いました。
季節を感じる料理と、季節を感じるワイン。
――毎朝市場まで仕入れに行っていると聞きましたが……。
宮さん:営業日は必ず市場に行っています。それで市場と同じ、水曜、日曜休みなんですよ。前の日の魚を冷凍しておいて使う、とかは嫌なので、その日に仕入れた魚をその日に使い切るようにしています。
――じゃあその日の仕入れ次第で、出すお料理を決めているんですか?
宮さん:そうですね。調理法にいくつかレパートリーがあって、スパイスを使うものとか、ハーブを使うものとか、ブイヤベースとか。
星野さん:ワインを出しているのもあって、お料理に対する香りのアプローチがめちゃくちゃ上手なんですよ。香草や柑橘、スパイスっていうのが、ワインを飲むのにいいすごくアプローチなんですよね。
――ワインのラインナップもお魚料理に合わせて考えているんでしょうか。
宮さん:何年も一緒にやっているんで、この時期に僕が何をやるかっていうのを星野もだいたい分かっているんですよね。それによってワインを仕入れるみたいな。
星野さん:この魚が出てくるとこのワインの時期だな、みたいなのはありますね。季節によってワインも変わってきます。夏に重たい赤ワインは飲みたくないだろうし、冬にさっぱりしてばっかりだとつまんないじゃないじゃないですか。そういう季節感をワインから感じられるようにしています。
――お料理だけじゃなくて、ワインからも季節を感じられるわけですね。
星野さん:逆に、飲みたいと思ったワインを仕入れてテイスティングしてみて、宮さんが「じゃあ料理はこういう味わいにする」って決めることもあります。お魚料理でも赤ワインが飲みたいっていう方もいらっしゃって、そしたら宮さんが料理に黒コショウをきかせたり、味わいや香りでアプローチを変えたりして、合わせてくれるんです。そういうふうに料理をワインに寄せることもあります。
――やっぱりお客さんはワイン好きの方が多いですか?
星野さん:もちろんそういう方もいらっしゃるんですけど、「ワインは分からないんです」って言ってくださる方も多くて。でも、それでいいと思うんです。覚えている記憶が「ラベルがかわいい」っていうだけでも、美味しいと思ってもらえればいいんですよ。
宮さん:料理を出すときにも、あんまり説明しないようにしてもらっているんです。
――それはどうしてなんでしょう?
星野さん:わちゃわちゃ考えずに、食べてみて美味しいって思ってもらえるだけでいいんです。知りたい方は質問してくれますしね。
楽しみ続けることが、永遠の目標。
――7月でちょうど1周年を迎えたそうですね。2年目の目標はありますか?
星野さん:この1年のデータがあるので、ワインの提供の仕方を新しくしたり、ワインリストの可能性をさらに広げていったりしたいっていうのが私個人としてはありますね。
宮さん:2年目ってどうしてもお客さんが下降気味になるんですけど、どれだけこっちが楽しめるかだと思うんです。僕らが嫌々やっていたら、お客さんもつまんないじゃないですか。だから体力が続く限り、どれだけ楽しむかっていうのが今後の……永遠の目標なんじゃないですかね。飲食店って楽しい場所なので、そういう場所を提供することを楽しめるように、もっともっと努力していきたいな。
星野さん:そうですね。我々が楽しみ続けることかな。
宮さん:わりと楽しんでいるとは思うけどね(笑)
ワイン食堂Paz
新潟市中央区米山2-2-9 アイエヌジービルⅡ 1F