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1歳半健診で「指さし」がないことを指摘されたら?発達のプロセスや、発達障害がある子どもの傾向や練習法も【小児科医に聞く】

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1歳半健診で「指さし」がないことを指摘されたら?発達のプロセスや、発達障害がある子どもの傾向や練習法も【小児科医に聞く】

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

指さしは、「もの」と「ほかの人」とのコミュニケーション手段

「指さし」は、自分と対象物との間に、誰かが一緒にいるときにする動作です。自分が見ているものを、「とってほしい」「見てほしい」といった思いを一緒にいる人に伝えたいという気持ちがあるためにとる行動です。自分の興味がわかないものを指さすことはなく、興味をもったものをほかの人と共有したいという欲求がなければ、やはり指さしをするという行為に繋がらないでしょう。

では、指さしをするようになるまでには、どのような心と体の成長段階を踏むのでしょうか。

赤ちゃんは、周りの人と視線が合ったときに、笑いかけられたり呼びかけられたりすることで、自分がここにいることに気づきます。自分も視線を見ている人に向けて、笑い返したりすること、すなわち「アイコンタクト」をします。ここで、自分と相手(多くは保護者)との関係が生まれます。

やがて、赤ちゃんは周りにある物に触れようとします。触れた物を握る力がつけば、手に持ってみて、振ってみたときに音が鳴ることを知ったり、手を離すと物が落ちるといったことも経験します。ここで、自分と物との関係が生まれます。

自分と大人/自分と物、それぞれの間にある関係を専門用語で「二項関係」と呼びます。やがて、二項関係があることによって、やがてもう1つ別の関係があらわれます。

周りにいる人が自分のほうではなく、少し離れたところにあるぬいぐるみに気づいて視線を動かすとします。するとそこには自分とその人だけとの関係ではなく、もう一つ別の要素が入ってくることになります。自分ではなくぬいぐるみを見ている、ということに気づいたときに、自分と相手とぬいぐるみという3つの「三項関係」ができます。ここが心の発達についてとても大事なポイントとなります。

三項関係ができることによって、相手が見ている視線の先を、子どもは追いかけるようになります。これを視線追従といいます。相手が見ているのが自分ではないとき、その視線の先にある物が電車のように動くものであれば、子どもは動くものに興味を引かれて電車を見るといったことがあります。

ここで、相手が見ている視線の先にあるものを「指さし」をします。そのとき、子どもは目の前に出された手や指ではなく、指が指し示す方向を見るかどうかが、発達の成長をみる大事なカギとなります。指と対象物の間に視線を導く線のようなものはなくても、その指さした先を目で見ることができれば、自分と物の間にある空間を理解できたということになります。

1歳6ヶ月健診では、指さしの確認をすることが多くあります。それは自分と他者とそれ以外の物の三項関係ができるか、指さした先を追うことができるか、といったことを見ています。

「指さし」の意味は1つではありません。成長に伴う「指さし」の意味

指さしの成長には段階があります。段階を追ってみてみましょう。

9~10ヶ月ごろから、「ねこちゃんだよ」と言われて、指さされた方向を見ることができるようになります。それまでは出された指を見ているのですが、指さした先に何かがあるということに気づくことで対象物の方を向く「指向の指さし」ができるようになります。

11ヶ月ごろから、自分が興味をもったものをほかの人に伝えるために「あっ! あっ!」と言いながら、まさに自発的に指さします。 指さしたものや手を伸ばした先にあるものを、ほかの人が一緒に見てくれると分かることで、コミュニケーションの楽しさも知るようになります。

1歳ごろから、自分が興味をもったというだけでなく、「ほしい」という意思をこめて指さします。ほしいものを取ってもらいたい要求の手段としての指さしになります。

1歳~1歳6ヶ月ごろから、何かを見つけたときに、「あっ!」と言ったり、発語があれば「わんわん!」と言ったりしながら指さして、一緒にいる人に伝えようとします。指さしながら相手の表情を見て、興味や感情を分かち合おうとします。このことは社会性の発達が成長していることも意味します。

1歳6ヶ月ごろから、たとえば絵本などを見ながら「犬はどこにいるかな?」と聞くと、その対象物を指さすようになります。これを「応答」の指さしといいます。また、「お母さんはどこ?」と聞くと、隣の部屋にいて姿が見えなくても、いる方向を指さします。質問に答えるという、もう一歩進んだ指さしです。

身体的成長の指さし

ところで、ここまでは心の成長によってできるようになる「指さし」を説明してきましたが、身体的な成長によっては指さしがうまくできない場合もあります。

人差し指を1本だけ立てて、ほかの指を曲げるという動きが難しい場合、手のひら全体を使って方向を指示することも「手ざし」と呼んで、同じ役割と考えます。

コミュニケーションとしての指さしは、必ずしも人差し指を立てなくてもいいわけですが、もし、不器用さで指さしの形がつくれないという場合には、少し練習してみてもいいでしょう。

発達障害、知的障害などがある子どもの場合の指さしの特徴は?

発達障害や知的障害があると、指さしの発達が遅れる、あるいはしないことがあるといいます。それはなぜなのか、指さしをするまでの成長を振り返ってみると分かるかもしれません。

「指さし」をするのは、周りへの興味や欲求があるということ。発達障害や知的障害がある場合、周りへの興味が薄ければ、指さしをすることがないかもしれません。

また、自分が欲しい物を示す「要求」の指さしや、聞かれた物事についての返答としての「応答」の指さしはできても、人への関心が薄い場合には、「あれを一緒に見たい」という「共感」の指さしをしない場合もあります。

指さしをしても、指と物との間にある空間を理解できなければ、指さしの意味が分からない、気づかないということも。こうした場合、たとえばとってほしい物がある場合など、周囲の人の手をとって対象物のところまで誘導する「クレーン行動」をすることがあります。自閉スペクトラム症のあるお子さんによくみられる、指さしの代わりにする行動で「クレーン現象」とも言われています。

クレーン行動は、発達障害のある子どもに多くみられるといわれますが、クレーン行動をするからと言って必ずしも発達障害がある、というわけではありません。発達障害ではなくても、まだ言葉を使って自分がしたいことをうまく伝えられない時期は、ただ泣くという方法も含めて、どうしたら自分の意思を伝えられるかを学んでいる最中。そのときにもクレーン行動があらわれることがあります。

心身ともに指さしの力を育むために

クレーン行動がみられるなどの場合には、指さしの意味に気づくための練習が必要なこともあります。指さしができることによって、子どもの意図が周囲に伝わりやすくなるなど、子どもにとってもメリットがあるでしょう。では、どのように練習したらいいでしょうか。

まずは大人が指さしのお手本をやってみましょう。ぬいぐるみや絵本などを目の前において、指さししながら「かわいいね」「わんわんだね」と言ってみます。「一緒に見ようね」と注意を引きながら行いましょう。

次に子どもが指や手で何かを示したときには「あったね!」「ここにいたね」「大きいね」など、一緒に見ているよ、ということについて反応しましょう。指さしても特に反応しないでいると、指さしの意味がわからなくなってしまいます。

手を伸ばしたときに指さしの形になっていない場合には、さりげなく指さしの形に導きましょう。このときは、人差し指以外の手をそっと手で覆ってあげて、自然と指が曲がるように教えてあげます。

また、指を順番に1、2、3…と立てていく練習をしたり、親指と人さし指でOKサインの形をつくって人さし指だけ伸ばしたりなど、楽しみながら指を1本ずつ動かす体操を一緒にやってみます。

おもちゃと絵本を置いて、どっちで遊ぼうか? と聞いてみます。子どもは自分の興味があるほうに手を伸ばします。指をささなくても、「こっちがいいのね」「選べたね」とほめてあげてください。

指さしはできるかもしれないのに、大人が「あなたにはこれがいい」ということを決めてしまう場面が多いと、子どもは自分の意思で選ぶことをしなくなってしまいます。たくさんの種類があるものを並べて、あるいは表示されているところで、どれがいいのかを選ばせてみましょう。

指さしの練習には、動画や絵本を活用してみましょう。YouTubeなどで「指さし練習」と検索すると、アニメーションなどを活用したさまざまな動画が上がっています。ただし、動画の音声があったとしても、一人で見させっぱなしにはしないで、大人が近くにいて、「どれかな~?」「できたね!」など、肉声で声をかけるようにしましょう。

まとめ

「指さし」は、自分がしたいこと・してほしいことを他者に伝えるために大事なコミュニケーション手段です。身体機能の面からも、心の発達の面からも、成長が必要な場合もあります。また、大人が何もかも子どもの行動を決めてしまって、自分で「選ぶ」ことができないと、指さしも成長しないかもしれません。豊かな選択肢の中で自分らしさを選びとるためにも指さしは大事な動作です。指さしができるようになる環境をつくっていくことも重要です。

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