Yahoo! JAPAN

「選んだ道を正解にする」――春アニメ『左ききのエレン』に重ねた自身の葛藤|千葉翔也さん×内山夕実さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

“天才になれなかった全ての人へ――心をえぐる〈クリエイター青春群像劇〉『左ききのエレン』。毎週火曜深夜24時よりテレ東系列にてTVアニメが放送中です。

何者かになることを夢見ている凡人・朝倉光一と圧倒的な絵の才能を有する山岸エレン。光一は広告業界のデザイナー、エレンは画家として、それぞれ違う道を歩みながらも、人生の岐路ではそれぞれを思い合う、そんな関係性を築いていく。

光一を演じる千葉翔也さんとエレンを演じる内山夕実さんに、作品に対する思いを聞いた。

 

 

【写真】『左ききのエレン』千葉翔也×内山夕実が語る“夢と現実”【インタビュー】

胸に刺さってくる言葉たち――原作の持つ魅力について語る

──原作を読まれた印象をお聞かせください。

朝倉光一役 千葉翔也さん(以下、千葉):他の作品がオブラートに包んでいる部分を引きはがしているような、とても生々しい作品だなと思いました。創作物やエンタメの中に出てこないようなリアルな言い回しがあるんですけど、その感情にフォーカスして、あとで回収できるのかな?というところまで深く掘り下げているので、読んでいてヒリヒリするんです。でもそのヒリヒリ感がたまらなく魅力的で、どこまでも読み進めてしまう。どのキャラたちも活き活きしているので、自分にとって、この人はこうだよなとか、自分はこの人だよなと、いろいろ考えながら読んでしまう作品でした。

山岸エレン役 内山夕実さん(以下、内山):私も初めて読んだときは、こんなにもリアルなんだと思いました。時にちょっと目を覆いたくなるようなシーンも、「逃がしませんよ!」というような熱量でしっかりと描いているので、気がつけばどんどん読み進めているような感じでしたし、そういう感覚になるのも久しぶりだなと思いました。私は会社員だった時期があるので、こういう上司いたなって思いましたし、実際の原作のかっぴー先生が関わってきた方たちがモデルにもなっているとおっしゃっていたので、それで説得力があるんだ!と思いました。

それと私は、一度夢を諦めて戻ってきている立場でもあるので、「本気出して それから 諦めろ」という言葉がすごく刺さったんです。私も、諦めるのならとことんやり切って、出し尽くしてから諦めたいという思いがあったので、それをエレンを通して自分にも言われている気がして、すごく印象に残っています。

──色々な意味で、共感する部分が多かったのですね。

内山:シチュエーションは全然違うのですが、私は親や親戚からのプレッシャーがすごい家庭で育ったので、声優の道を諦めて会社員になることで両親が救われるという気持ちと自分のやりたいことを貫きたいという想いで葛藤をしていたんです。その葛藤を、エレンの葛藤に重ね合わせていたところはあります。

声優をどうしても続けたい、もう一度チャレンジしたいと言ったとき、両親は「2年OLをやってもその気持ちが変わらないのなら仕方ないね」と受け入れてくれたんですけど、親戚がそれを許してくれなかったので、両親のことを思うと諦めたほうがいいのかな? 自分のやりたいことって何なんだろう?と考える期間が長かったんですね。そのもやもやした気持ちは、エレンと重なるところがあると思いました。

──エレンも、絵を描きたいけど、ある理由で絵を描けずにいた期間がありましたからね。

内山:やりたいことは決まっているのに踏み出せない。私は周りを、ある意味言い訳にしていたところがあるのかもしれないなぁとか、そういったところは共感していましたね。

──エレンがそこから踏み出せたのも光一がいたからだと思いますが、2人の関係性をどう捉えながら芝居を重ねていったのでしょうか?

千葉:ライバルキャラって、お膳立てされて登場することが多いですけど、現実世界で自分が「本当にこいつに勝ちたい」みたいな1人に出会うこと自体が稀有なことだと思っているんです。僕が運動部ではなかったことも関係してくるんですけど、この人に勝たないと自分の尊厳が保たれないということがなかったんです。運動部だとしても、そういう人が最後までライバルでいてくれることって少ないと思うけど、エレンは、この先もずっと絵を描く人だから、恒久的なライバルでいてくれるありがたさみたいなものがあるんですよね。だからこそ、光一は奮起できたと思っているし、人生において、何者かになりたいというぼんやりとした願いがある中で、明確に才能がある人というのを、彼は初めて見たと思うんです。その喜びみたいなものはあったと思います。でも光一は、そのがむしゃらさとかダサさがエレンに届いているとは微塵も思っていないので、本当に片想いのようだなと思いながら、2人の関係を見ていました(笑)。

内山:エレンもエレンで意識しようと思ってしていることではなく、光一が自分の目の前でしていること全てが、自分が本当はそうしたいと思っていることなんですよね。自分だってできるなら、素直に好きなことをやりたい。そういう思いがあるから、そうできない自分に毎回向き合わされることになる。だからそのきっかけを与え続けてくれたのが、光一という存在なんだろうなと思っていました。

そこで、千葉さんがダイレクトにぶつかってきてくれるので、私もわぁーとなり、どんどん言い合って、ぶつかり合っていく感じはありました。エレンの言葉も、こうやろうと思って出たものではなく、掛け合いの中で生まれていったものなので、すごくありがたかったです。

千葉:なんというか、振り向かせられないことにより、こちらが焦れるんですよね。ひとつの側面で言えば、すごく安定感がある。それでいて、僕が気づかなかったエレンの人間味みたいなものが、絵に声が乗ったときに、すごく滲んでいると感じたので、そこに関しては、何層にも折り重なっている内山さんのお芝居なんだなということに気付かされました。

──学生時代の2人のぶつかり合いは、本当に生々しい描写であり、お芝居だなと思いました。

内山:生きているな、人間なんだなって思いますよね(笑)。

千葉:冒頭ですけど、光一って自分のことをデキる人だと思っているから、わりとさらっとしゃべっているんですよ。でも多分それは音響チームの想定とは違っていたと思うんです。「それ、わざとやっているということだよね?」ということを言われて、「そうです」と答えたら、「じゃあ、それで大丈夫です」となったので。

光一って、調子に乗ってるウキウキ野郎と思う方もいると思うんですけど、自分のことを全能感のある学生だと思っている人って、クラスの端っこで腕組んでいるタイプだと思うし、それはちょっとわかると思ったので、そのへんは出せていたのかもしれないですね(笑)。

内山:確かにそれだ(笑)。

──そういう解釈も受け入れてくれるようなチームだったということですか?

千葉:結構尊重していただけているイメージでした。

内山:特にこの作品は登場キャラクターが多く、スピード感を持って進んでいく話なので、新しいキャラクターが登場するたびに、最初に「こういうふうにやっていこう」という話し合いが多少あるんですけど、一度任せたら、こちらに任せてくれるような雰囲気だったんです。

千葉:そうでしたね。でも、すごい長考はあるんですよ。こちらが出したものに、結構協議する時間があるけど、そこから抜本的な変更があるわけでもない。おそらく1カット1カット、意味を確かめてから丁寧に作ってくださっていたと思うので、その安心感はありました。あとで辻褄が合わないことがないようにしてくれていたというか。

──学生から社会人になったりするので、そこに齟齬があったらいけないですからね。ちなみに、原作のかっぴーさんとは、アフレコでお芝居の話をする機会はあったのでしょうか?

内山:長考の間、かっぴーさんをはじめ、スタッフさんはブースの中にいるので、本当にちょこっと話せるくらいだったんです。でも、かっぴーさんはすごく話しやすい方で、「僕の周りにこういう人がいて、その話し方はこういう感じだったんだよ」と、キャラクターについて話してくださったりはしました。

千葉:登場人物を見ながら、きっとモデルがいるんだろうなとは思っていたけど、実際に先生にそう言ってもらえると、この仕草ってやっぱり意味があったんだとか、愛せる個性だと思えたんです。だから先生のそういう話を聞いて、このキャラを好きでいいんだと思えました。

 

 

夢を追い続ける人へ2人からのメッセージ

──アニメで、自身のキャラクターの、こういう部分を見てほしいというのはありますか?

内山:この作品に関しては、トータルなのかなぁと思います。一生懸命生きている姿がいいし、だからこそ、ちょっとした些細な言葉が刺さったりすると思うんです。エレンも、いろんなバックボーンがあった上で今があるので、その全てがエレンが一生懸命生きてきた証だから、そこは難しく考えずに観てほしいです。

千葉:光一のモノローグが真理だなと思っていて……。悔しさだったり、許せないのがどこなのかだったり、思ったことが全部モノローグに出ていて、そのあたりが人間らしさだったりするので、モノローグは聞いてほしいです。あと、デザイナーとアーティストは全然違うという描写が自分的には響いているので、そのあたりには注目してほしいですね。

それに才能以外の、人間と人間の関係性についても、わりとドラマとして描かれているんですよ。恋愛的な部分とかも「ここはこんなにちゃんとやるんだ! でも人間ってそうだもんなぁ」と思ったりするんです。

──確かに恋愛ドラマもありますね。

千葉:突然ドラマみたいなことって起きるよなぁとか。

内山:脈絡がないもんね。

千葉:脈絡はないけど、結構人を掘り下げているので、面白い芝居になっているのではないかなと思います。ちょっと名前を呼び間違えるところから始まるドラマとかもあるので(笑)。

──ではまず、アニメを楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

内山:いろんな層の方が観ると思うのですが、自身の置かれている状況とか年代によって、見え方や捉え方が全然違う作品なんです。だからまずは今の等身大の自分で受け止めていただきつつ、歳を重ねてからまた見返していただいても面白いのではないかなと思います。個人的にはアニメから入った方は、これを機会に原作も手にとって、一緒に楽しんでいただけると、より深いところまでお楽しみいただけるのかなと思っています。

千葉:ひとつひとつの要素がとても大事な作品になっているので、もちろん全話観てほしいのですが、たとえばドラマって一週飛ばして観ても、なんか楽しめる良さがあると個人的には思っているんです。それは、その人たちが生きている感じを垣間見ているからだと思っているんですけど、結構このアニメに関しては、この話数が何を言いたいかという主張を受け取れても受け取れなくても結構楽しめると思っているので、身構えすぎずに観てもらえたら、自然と刺さる部分だけが残るのかなと思っています。

──この作品は、夢というのも大きなメッセージになっていると思っています。ぜひお二人から、夢を追う方たちへのメッセージをお願いします。

千葉:僕は最初の内山さんの話とは逆で、子役をやっていて、その時って100%親の意思でやっていたんです。時間制限があったので一度辞めて、そこからもう一度演者になろうと思ったとき、初めてではないのに、初めての挑戦みたいな感覚があったんです。そこで、行けるところまでやってみて、ダメだったらそこまでだし、逆にそれがわかるまではやりたいなぁと思っていたんです。ただ、いざ始めてみると、前やっていたからできて当たり前とか、自分で始めたという意思を、人に伝えるのがすごく難しいとか、自分の想定と常に逆を行ってしまう感覚がすごくあったんですね。だから光一の、何者かになりたいという気持ちがすごくわかるんです。

僕は、誰発信なのかというのはすごく大事だと思っていて、今は、とても素敵な作品にたくさん巡り合って、この仕事をできていること自体がすごく嬉しいんですけど、もし夢見ている人たちが、その夢を本当に自分が憧れられたと思っているのであれば、その気持ちを大事にしてほしいです。それに、もし親に言われて好きになったということに引け目を感じている人がいたら、それを享受できている自分も自分だから、それをプラスに変えて力にしてほしいなと思いました。自分だけで熱量が足りないということもあるので。

──きっかけが親だっただけですからね。自分から出た想いかどうかが大事なんですね。内山さんはいかがですか?

内山:私は自分で何かを選択することをすごく苦手にしてきて、親が敷いたレールを歩いてきた人生だったので、自分で何かを選択して、自分で道を選びたいと思ったのは、声優が初めてだったんです。それを諦めたときに心が折れて、自分には選択権がないんだと思ってしまったんです。ただ、そこから会社員をした2年間で、何もなかったかというと、決してそうではなく、そこでいろんなことを学べたし、その時間が無駄ではなかったというのを、この業界に戻ってきてからすごく感じることができたんです。

ただ、幼い頃の環境が影響しているかわからないんですけど、大人になってからも、何かをひとつひとつ選択することが、私にとってはすごく難しくて、その選択にすごいエネルギーをかけている人生にはなってしまっているんですよね。だけど、自分が選んだ道、選択をしたことは、どちらに転んでも意味があるものだし、選んだ道を、自分の力で正解にしていくものだと思っているので、道に迷っている人がいたり、今やっていることが無駄なのではないかと思っている人がいたら、そう思わないでほしいし、絶対にそれが糧になると思います。あとは、自分の素直な気持ちに正直に生きてほしいなとは思っています。今の環境から抜け出したいと思っているなら、逃げるのではなく、“違う選択をする”という気持ちでいればいいのかなと思っています。

──お二人のコメントが、夢を追いかけるすべての人に、届いたらいいなと思います。ちなみに、異ジャンルでもいいので、憧れている人、天才だなと思う人はいますか?

千葉:難しい……。みんな天才なんだよなぁ。

内山:私は上様です。マツケンサンバが好きすぎて、松平健さんも好きなんです。この前、舞台を初めて観に行ったら、4時間出ずっぱりで! 『暴れん坊将軍』で上様を演じ切ったあとに、ショータイムが始まるんです! 早替えもやるし、踊りもキレキレで、マダムたちが声を上げていたんですね。お歳を重ねてもエネルギッシュでエンターテイナーで、素晴らしいなと感動しました。

千葉:僕はお笑いを観るのが好きなんですけど、自分が本当に笑っているのを感じたときに、一度でもこれをやれたらすごいことだよなと思ったんです。僕、笑いだけは、ないよりあったほうがいいものだと思っているんです。感動というか泣きは、あったら豊かになるけど、なくても何も失わない気がするんです。でも笑いはあったら絶対に得だし、笑えない時点でマイナスだと思うから、そういう仕事を選んでいる方々には憧れていますね。自分自身、イベントとかラジオで、誰かが笑顔になってくれるのが嬉しいという思いがあるからこそ、それを第一に仕事にする人は、単純にすごいなと思います。

 
[文・塚越淳一]

 

おすすめの記事

新着記事

  1. 「缶のままでもOKだよ」「秒でできる」いつものツナ缶が悪魔的おつまみになる簡単ワザ

    saita
  2. ノーセットなのに素敵♡ズボラさん向けショートヘア〜2026年晩夏〜

    4MEEE
  3. 神戸・淡路が「食」で連携 国内外からの観光誘客を目指すプロジェクト始動 神戸市など

    Kiss PRESS
  4. 「タトラス」福岡店が移設・拡大オープン 坂口健太郎が最新コレクションを着用して来店

    セブツー
  5. 「キュレル」と人気銭湯施設がコラボ♡ボディケア・ヘアケアアイテムをお試しできる「キュレルの湯2026」は9月24日まで。

    東京バーゲンマニア
  6. 「ライブ当選を願って神社へ」若者の間で広がる“スピ活”とは? 人気の神社を大学生ライターが紹介

    マイナビ学生の窓口
  7. 千賀光莉、鬼頭明里「自分が心躍るものに一生懸命向き合う経験は、必ずどこかで生きてくる」 #学生の君に伝えたい3つのこと

    マイナビ学生の窓口
  8. しゃぶしゃぶ温野菜の食べ放題が最大20%オフ!年齢割と併用可能な「敬老の日キャンペーン」クーポンは9月30日まで使えるよ~

    東京バーゲンマニア
  9. 10/3(土)10/4(日)『第13回ふちあん村まつり』【大人が本気で造った秘密基地】がコンセプトの複合施設・淵庵村で年に1度のイベントが開催!ハンドメイド作品・飲食など約25店が集結・バンド演奏・親子で楽しめるスタンプラリーも♪@長野県松本市

    Web-Komachi
  10. ご飯がとまらない!鶏もも肉とニラを「ふわふわ卵」で炒めたら絶品だった

    saita