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オペラグラス役の柿澤勇人のレコーディング現場に潜入&宮本亞門らクリエイター陣へ直撃インタビュー

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「ミュージカルクリエイタープロジェクト」(上段左から)宮本亞門、ジェイソン・ハウランド(下段右) 岩城直也

2020年6月に立ち上がった、ホリプロ主催の「ミュージカルクリエイタープロジェクト」。これからの日本のミュージカル界を担うクリエイターを見出すべく、音楽部門・脚本部門それぞれで募集を行った本プロジェクトは、いよいよ最終審査を終えて作品作りに突入した。

音楽部門では、こま撮りアニメーション制作を手掛け世界から注目を集めるドワーフ(株式会社xpd)と組み、オリジナルミュージカルショートムービーを制作することが発表された。登場キャラクターのボイスキャストは、鹿賀丈史、濱田めぐみ、柿澤勇人、中村海琉という豪華役者陣が務める。

オリジナルミュージカル ショートムービーのキャラクター

今回はその創作現場にZoom越しで潜入。ボイスキャストの一人、柿澤のレコーディングの模様をレポートする。なお、現場のスタジオにいた宮本亞門(構成・脚本・歌詞)、アメリカからZoomで参加していたジェイソン・ハウランド(音楽監督・作曲・編曲)と岩城直也(ギョロのソロ曲の作曲)の3人へのインタビューも合わせてお届けしたい。

2021年3月某日、スタジオでキーボードを弾きながら繰り返し音取りをする柿澤の姿があった。柿澤が担当するのはオペラグラスのギョロという名のキャラクター。ギョロのソロ曲は本プロジェクトの音楽部門の最終審査を通過した岩城が作曲したものだ。かなりアップテンポで、一度聴くと耳から離れないほど特徴的な楽曲となっている。しかし、どうやらこの時点では曲のキーが定まっていない様子。どのキーで歌うべきか、その場のスタッフやアメリカにいるジェイソン、岩城らと相談しながらレコーディングが開始された。

柿澤勇人のレコーディング風景

最初は裏声を使った高音での歌唱を試す柿澤。スピード感ある楽曲に、難なく裏声で歌詞を乗せていく様は流石だ。とはいえ、まだキャラクターの方向性や歌い方に迷いがある様子。そこで、レコーディングを見ていたジェイソンから「1オクターブ下げて地声で歌ってみてはどうか」とアドバイスが入る。その通りキーを変えて柿澤が再度歌ってみると、柿澤はもちろん、スタッフ陣も手応えを感じた様子が伝わってきた。
キーが決まってからは柿澤自身もキャラクターを掴んだのか、体を揺らしながらどんどん曲にノッていく。「10歳くらいのわんぱくな男の子のイメージで」「きれいに歌うというより、とにかく楽しい感じがほしい」と、次々入る指示を取り入れながら、短時間でソロ曲のレコーディングを終えた。

オペラグラスのギョロ  (C)HoriPro/dwarf

その後は打ち合わせを挟みながらセリフのレコーディングへ。短いセリフながらもイントネーションやテンションを変えて数パターンを録った。さらに、ジェイソン作の楽曲のハモり部分のレコーディングも行われた。柿澤はジェイソンとZoomの画面越しに話しながら音の確認をした上で、レコーディングに臨んだ。最後は現場の宮本をはじめとするスタッフ、リモート参加のジェイソン、岩城ら全員の拍手と共に柿澤のレコーディングが終了。怒涛の1時間、国境を超えてリアルタイムで創作が行われる刺激的な現場だった。

レコーディング終了直後に、宮本、ジェイソン、岩城の3人にインタビューを実施。レコーディングの感想や、本プロジェクトへの思い入れをそれぞれ語ってくれた。

ーー先程柿澤さんが歌っていたギョロのソロ曲は、プロジェクトを通して岩城さんが作曲されたものだとうかがっています。ご自身の楽曲のレコーディングを見ていかがですか?

岩城:自分が作ったメロディが実際に音となる瞬間は、かけがえのないものです。僕は今アメリカのボストン、ジェイソンはニューヨークと、リモートでの参加ではありますが、この瞬間に立ち会えたことはとても嬉しく思っています。

ーー宮本さんとジェイソンさんは、柿澤さんのみならず他のボイスキャスト(鹿賀丈史、濱田めぐみ、中村海琉)のレコーディングにも参加されたそうですね。レコーディング全体を通しての感想を聞かせてください。

ジェイソン:キャストのみなさんは過去に他作品でご一緒したことがあり、本当に素晴らしい才能を持つ方々だと思います。今回の作品のおもしろさは、こま撮りと操演のアニメーションという今までの舞台とは全く違う環境という点にあります。ファンタジーの世界が現実の世界に舞い降りてくる様は見ていてとても楽しく、みなさん素晴らしいレコーディングでした。

宮本:ボイスキャストのみなさんは才能のある方ばかり。パッとキャラクターに入ってくれて、それぞれとても魅力的に仕上がっていると思います。ジェイソンが作った曲も直也さんが作った曲もとても素晴らしい。本当は作中で全曲歌っていただきたいところなのですが、どうしても短くしないといけない部分もあって心が痛みます。舞台と違ってキャラクターが歌うので、ミュージカルを全面に押し出してしまわないように意識して作っています。ミュージカルを観たことがない人にも楽しめる雰囲気になっていると思います。

ーー「ミュージカルクリエイタープロジェクト」の音楽部門の最終審査は、宮本さんとジェイソンさんが審査員を務められました。最終的に岩城さんを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

ジェイソン:迷うことなく彼の作品が一番良かったんです。曲で完璧にキャラクターを表していて、今回の作品を通して伝えたかったストーリーを掴んで読み取り、それをきちんと音楽に乗せて表現してくれました。キャラクターたちが出すエネルギーを音で奏でてくれたというのも決め手のひとつです。

宮本:今回のプロジェクトを通していろんなクリエイターさんの作品に触れ、みなさん本当に才能があることに驚きました。きっと日本のオリジナルミュージカルはこれからどんどん出てくるだろうな、と楽しみにしています。その中でも直也さんは独特の世界を持っていました。ジェイソンも「やっぱりこの人は他と違う!」というひらめきを感じてくれて、僕も「やっぱりそうだよね」と。その後、一緒に打ち合わせをしたらどんどん新しいアイディアを出してくれて、改めて直也さんの頭の中の世界の広がりや柔軟さを感じました。

Zoom越しにやり取りをする宮本亞門(右)

ーーお二人の言葉を受けて、岩城さんはどう感じますか?

岩城:感無量です。プロジェクトの審査の課題としてギョロの曲を作ることになったのですが、その歌詞を見たときは正直びっくりしました。

宮本:不思議な詞がどんどん繋がっているからね(笑)。

岩城:まさか亞門さんが作った詞だとは思いませんでした(笑)。まず日本にいるときに曲を考え始め、ボストンに帰った日に実際に曲を作り、その日に提出したんです。歌詞からのインスピレーションや、歌詞の持つ言葉のイントネーションを大事にしました。元々僕は日本語でオリジナルミュージカルを作りたいという想いがあり、今回も言葉と音楽が共生することを目指しながら作りました。お二人に素晴らしい言葉をいただいて、本当に嬉しく思っています。

ーー今回のプロジェクトには、それぞれどんな想いで取り組まれているのでしょうか?

宮本:ホリプロさんから、ドワーフさんとの新たなコラボレーションのお話をいただいたときはゾクゾクしました。今回は特にミュージカルを観たことがない人にも「楽しいね」「劇場に行きたいね」と感じてもらいたいという想いがあります。この1、2ヶ月、本当に何度も打ち合わせをしています。こま撮りに携わっているみなさんはものすごい忍耐力で仕事をされていて、そのプロフェッショナルを見て僕ももっと頑張んなきゃいけないなと反省したほど。ここまで時間を掛けて丁寧に作り上げているメンバーと一緒にミュージカルを作れるなんて、最高の喜びです。

ジェイソン:今回の仕事を依頼されたときはとても嬉しかったですし、このプロジェクトに携われて光栄です。亞門さんとは別のお仕事でご一緒させていただきましたが、そのときから素晴らしい監督でありクリエイターであるということは知っていたので、また一緒に仕事ができると知ってすごくワクワクしました。また、日本人の作曲家と仕事をするというのは僕にとって初めての試み。すごくユニークな新しい環境での作品への携わり方だと思います。僕は物語を伝えることが大好きなので、ドワーフさんと一緒に物語を作れるということもとても楽しみでした。

岩城:僕は今回ジェイソンが作ったこの曲(その場でピアノを弾いてくださる岩城さん!)が大好き。メロディアスでロマンティックで、こんな曲が作れるようになりたいと想う一心です。亞門さんとは、実はミュージカル『狸御殿』(2016年)でご一緒しており、亞門さんは演出、僕は編曲を担当させていただきました。そのときお話はできなかったのですが、今こうして出会うことができて本当に嬉しいです。そして僕はアニメーションも大好きなので、アニメーションのミュージカル作品に携われることも嬉しくて。これからどんどん発展していくこのプロジェクトにお力添えできればなと思います。

これまでになかったコラボレーションが生み出す、全く新しい作品の誕生に期待が高まる。ホリプロ×ドワーフのオリジナルミュージカルショートムービーは、2021年3月31日(水)にホリプロステージYouTubeチャンネルにて配信予定だ。

取材・文=松村 蘭(らんねえ)

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