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中村七之助、17年ぶりの『七月大歌舞伎』へーー大尊敬する松本幸四郎との共演、大阪で演じる江戸っ子と京都人のバトルに心躍らせる

SPICE

中村七之助 撮影=福家信哉

7月3日(日)より大阪松竹座にて開幕する『関西・歌舞伎を愛する会 第三十回 七月大歌舞伎』。今年は、昼の部では「八重桐廓噺(やえぎりくるわばなし) 嫗山姥(こもちやまんば)」と「浮かれ心中」を、夜の部では「堀川波の鼓」と「祇園恋づくし」を上演する。中村七之助も17年ぶりに『七月大歌舞伎』に登場。「浮かれ心中」ではおすずと三浦屋帚木の二役を、「祇園恋づくし」では岩本楼女将お筆を勤める。SPICEでは独占インタビューが実現。『七月大歌舞伎』の思い出や、本公演で演じる役への意気込みなど歌舞伎についてはもちろん、昨年より始まったラジオ番組の話などを伺った。

中村七之助

――『七月大歌舞伎』に出演されるのはいつぶりでしょうか?

これはですね、びっくり仰天しました。うちの父(中村勘三郎)の襲名披露公演で私も出演したのが、関西・歌舞伎を愛する会の『七月大歌舞伎』でした。そう考えますと2005年ですので、17年ぶりでございます。

――当時の事は覚えていますか?

あんまり覚えてないですねー。1ヶ月間、もちろん休みもないという状況下でしたので。今回で『七月大歌舞伎』の出演は三回目になりますが、一回目が17歳だったんですよ。そのとき、1ヶ月の地方公演は初めてだったんじゃないかな。当時高校生で、高校の友達も遊びに来てくれて。うちの兄(勘九郎)と中日交代で「連獅子」に出ていました。「宗論(しゅうろん)」と狂言師左近後に仔獅子の精を勤めましたね。あと、宿泊していたなんばのホテルで洗濯していたことをすっごく覚えています。家にいると母親がやってくれていたので、なかなか自分で洗濯する機会がなくて。なので、洗濯場に行くと「今、地方に来てるな……。歌舞伎俳優だな……」と思っていました(笑)。そのときの昼の部の最後にやっていたのが「浮かれ心中」です。今回、何かすごく縁を感じますね。

――その後、勘三郎さんの襲名で出演されたのが22歳だったんですね。

そうですね、それから(『七月大歌舞伎』は)一回も出演していません。長かったですねー。しかも最後に大阪松竹座に出演したのも5年前の『五月花形歌舞伎』です。『錦秋特別公演』などで大阪へはよく来ていましたが、約1か月滞在するのは5年ぶりです。昔はよく大阪に来ていたんです。父も若かりしころ、道頓堀の中座で良い役をやらせてもらっていて、「俺は大阪に育てられた役者だよ」とずっと子供の頃から聞かされていました。なので、大阪はとってもなじみのある街で、知り合いも多いので、久しぶりで嬉しいです。

中村七之助

――今回、「浮かれ心中」では帚木とおすずの二役で、おすずは初役だそうですね。

そうですね。この演目に関しては、もう何回も観ていますので、おすずも初役という感じは全くありません。おすずは決まり事などないので、稽古でどういうふうになっていくか楽しみです。帚木とおすずの二役は、(中村)福助のおじが何度かやっていますけれども、最近は2016年に明治座で(尾上)菊之助さんがおすずで(中村)梅枝さんが帚木とか、僕も2008年に歌舞伎座で帚木をして、(中村)時蔵のおじ様がおすずを演じたりとか、そういう状況で帚木とおすずは別の役者さんがやることが多かったんです。でも今回は私ひとりでやるので、おすずはまっすぐで純真無垢に栄次郎を愛してるという、かわいらしい感じの女性像をより強く演じて、帚木はお金が大好き、お金しか信用してないという、ちょっと悪いんだけれども憎めないような、すっきりとした感じの花魁にしたいなと思っています。「浮かれ心中」は、作品が素晴らしくおもしろいので、こういう時期でもございますので、来てくださる皆様には明るく楽しくにこやかに、劇場を後にしていただければなと思います。

――「祇園恋づくし」のお筆役はいかがでしょうか。

これはなかなか難しいですね。岩本楼のお筆という、まさか女将さんの役が来るとは思いませんでした。お筆は一筋縄ではいかないなと思います。僕は(片岡)秀太郎のおじ様のお筆が頂点だと思っているので、足元にも及びませんけれども、ああいうふうな感じで、雰囲気だとか、匂いだとか、そこにいるだけで祇園のお茶屋の女将さんに見えるように、1ヶ月間、やっていきたいと思います。

ーーこの演目を関西で上演することへの期待などはありますか?

「祇園恋づくし」は、父と坂田藤十郎のおじ様が昔(1997年)、京都の南座でやっていて、このときすごくウケたそうで、うちの亡くなった(中村)小山三が兄に話を持ってきたんですよ。「こういうおもしろいものがありますよ、坊ちゃん」というので、2015年の『八月納涼歌舞伎』で初めて歌舞伎座でかかって、このとき僕は染香をやらせていただきました。今回(松本)幸四郎のお兄様がされる指物師留五郎を兄が勤めて、そして(中村)鴈治郎のお兄様がされる女房おつぎを(中村)扇雀のお兄様がされていて。この作品はこっち(上方)でやる意味がすごくあるお芝居だと思います。江戸と京都の掛け合いがありますが、南座でもお客様はみんな京都を応援するんですって。で、うちの父がカッカして、大盛り上がりしたと聞いていたので、今回、大阪でやるのはとても楽しみです。江戸っ子と京都の人たちのバトルにちょっと恋模様が入ってくるという、とっても面白い、気軽に観られる作品です。

中村七之助

――SPICEでは松本幸四郎さんのインタビューもご紹介させていただいているのですが、七之助さんからご覧になった幸四郎さんの印象を教えてください。

変人です(笑)。いい意味で変人。ナノ単位というか、もう全身で歌舞伎大好きみたいな。歌舞伎のこと、芝居のことしか考えていないんじゃないのかなという人です。僕は「あーちゃん兄」と呼んでいるんですけど、昔からあーちゃん兄のファンで、もうずっとあーちゃん兄の背中を見ていて、同世代ではないですけれども、一緒にやりたいなとずっと思ってきました。お芝居、踊り、感覚、容姿、全てにおいて抜きん出ていると僕は思っていますので、大尊敬いたしております。

――大阪での共演はいつ以来ですか?

大阪の地で芝居したのは大阪松竹座での『阿弖流為』(2015年)以来ですね。『阿弖流為』は本当、大変でした(笑)。(劇団☆)新感線​の舞台はね、あれは出るもんじゃないです。観るものです(笑)。それをつくづく感じた1ヶ月でした。そのときも、一番元気だったんじゃないかな、阿弖流為(松本幸四郎)さんが。よく声が持つし、動けるし。あのときはみんな大変でしたけど、楽しかったですね。そっか、それ以来か。楽しみです。

中村七之助

――では、お話を変えまして、ABCラジオで『中村七之助のラジのすけ』が2021年4月から始まりました。この1年、ラジオのお仕事をされてみていかがですか?

元々ラジオのお仕事にすごく興味があったんです。テレビとか映像のお仕事は、僕は照れちゃうんですよ。自分が映っていることをすごく意識しちゃって、苦手だったんですよね。でも、ラジオにゲストで出していただいたとき、とってもしゃべりやすいなと思って。ただ、ラジオ番組は知識を広く、深く持っている人がやっているイメージがあるんですよね。たとえばレコードに精通しているとか、映画に精通しているとか。なので、何かコンセプトがないとおいそれとはできないなと思っていたときに、Skyさんからお話をいただきまして。それで、僕がやるのであればどんな番組にしていこうかとみんなで意見を出し合ったときに、「裏方にスポットを当てよう」と前々から思っていたことを言ってみました。そしたら、それはおもしろいんじゃないかというので、「裏方談義~ウラダン~」というコーナーがまずは決まって、そこから番組の骨組みが出来上がりました。

ーー反響はいかがですか?

「裏方談義~ウラダン~」は5分程度の短いコーナーですけれども、改めて「裏方にはこういう人がいるよ、こういう仕事なんだよ」ということを紹介したかった。それがね、すごく好評なんですよ。嬉しいですね。たとえば、床山さんはああいう人たちがやっているんだとか、衣裳さんはこんな仕事なんだとか、背景の絵を描いている方が大道具さんなんだとかね、そういうことをリスナーの方が新鮮に受け止めてくださるので、すごく楽しいですし、多くの方々が携わってひとつの舞台ができていることを改めてわかっていただけて嬉しいです。

――ラジオという声のお仕事が、間接的でも歌舞伎の舞台に還元されるということはありますか?

歌舞伎のお芝居に声の仕事が還元されるということはあんまりないですけれども、改めて裏方さんの話を聞いたときに、「ああ、そうだったんだ」ということは多々あります。以前「隅田川」の踊りをしたときに、僕が軽々しく大道具さんに「ここに洒落で中村座を描いてよ」と言ったんですよ。そしたら「はい、わかりました」と嫌な顔せず言ってくれて。僕はその場で描くのかなと思っていたんですけど、大間違いで、いったん名古屋に持って帰って、そこで描いてくれて、また次の日に東京に運搬してくれて。僕の軽はずみな一言で、大変な思いをされていたことに改めて気づきました。「ごめんなさい!!」と思いましたね。でも嫌な顔せず、「おもしろいですね、それ!」と言って応えてくださる、その心意気に改めて感謝しないといけないなと思いますし、ありがたいなと思います。

――いいものを作りたい気持ちは皆さん、一緒なんですね。

そうなんです。本当に裏方の方たちの熱い想いを聞けるので。1ヶ月間、公演をしていても、裏方の方となかなかサシで歌舞伎の話をすることはないので、本当にいい機会をもらったなと思います。

――そしてゲストの方々も豪華ですね。

もうめちゃめちゃ豪華なんですよ。ほとんど公私混同、出てほしい方に来ていただいています(笑)、大竹しのぶさんをはじめ、松本潤さん、香川照之さんなど、開始から1年足らずのラジオ番組には来てくれないような名だたる方々が支えてくださっています。先日は以前舞台で共演した、声優の入野自由さんも来てくださったのですが、声優というお仕事の心と声と思考の割合とかね、そういうお話がおもしろいなあと思いました。元宝塚の愛希れいかさんには歌舞伎と近そうで遠い宝塚の世界のお話を聞いたり。ゲストのお話が自分の歌舞伎の舞台に如実に出るわけではないんですけれども、聞いたことによって、なにかしら自分の中で消化されて、DNAとなって、何らかの形で醸し出せることは確かだと思うので、芸の肥やしというのはそれですよね。いろんな人とコミュニケーションを取ることだと改めて思います。

中村七之助

――では最後に、『七月大歌舞伎』を楽しみにされているお客様にメッセージをお願いします。

久しぶりの大阪なので、本当に一生懸命に、そして楽しんで舞台を勤めたいと思います。皆様には楽しんで帰っていただける作品ですので、少しでも嫌なことを忘れられるような舞台にしていきたいなと思います。

取材・文=Iwamoto.K 撮影=福家信哉

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