「手を加えなくても、おいしいものはおいしい」農家直仕入れの野菜やお米 自然の恵みを、まっすぐに。【さて、羊に戻るとしよう】高岡で季節をいただく昼ごはん
忙しい毎日の中だと、ついついごはんをファストフードやコンビニ弁当などで済ませてしまいがち。本当は、旬の野菜をたっぷり、油や塩分は控えめに…そんな食事が体にいいとわかってはいるけれど、なかなかできないものです。
そんな人に訪れてほしいのが、富山県高岡市にある「さて、羊に戻るとしよう」というお店。自然栽培の野菜やお米を農家から直接仕入れ、素材本来の味を引き出す丁寧なごはんを提供しています。
食を通じて心と体に向き合い、日常を整える。
“ちゃんと食べる”ことの心地よさを思い出せる場所です。
高岡駅南で昼だけ営業
高岡駅の南口から歩いて3分ほど。ホテルや飲食店が点在する県道沿いのワインバル「WINE LAB.」。
ここでランチを提供しているのが「さて、羊に戻るとしよう」です。
ユニークな名前ですが、語源はフランス語の言い回し。本題に戻りましょう、脱線した話を元に戻しましょうという意味があるんだとか。
「『食』って人を良くすると書きますよね。でも現状はそれができていなくて、食事が疎かになっている。脱線している日本の食を元に戻す、食を通じて日本人の精神性を取り戻す、そんな想いを込めました」
店主の松坂亘修さんが穏やかに話してくれました。
旬の素材を味わう 日本人が昔から食べてきた「食」
ということで、「さてひつ」のお昼ごはんは日本人が昔から食べてきた食事に近いものをコンセプトにしているそう。野菜をメインに、肉、小麦、卵、乳製品は不使用。
メニューは週替わりで、お盆を運んできた松坂さんが順に料理の説明をしてくれます。
素材を生かす調理法や自家製調味料 丁寧な仕事が光るおかず
プレートの左端は、白菜のエチュベ。エチュベとはフランス料理の調理法で、少量のオイルと水分で蒸し焼きにしたものだそう。
白菜のシャキシャキ感と甘みがしっかりと感じられ、ほのかに香ばしい風味も…。なんと、自家製の甘エビオイルを使っているとのこと。
お隣は、原木シイタケとカツオ菜のおひたし。肉厚のシイタケがプリっと食べごたえ抜群です。カツオ菜は聞きなれない野菜ですが、九州北部で親しまれる伝統野菜なんだとか。
富山湾のヤリイカと、「アンデスレッド」というジャガイモ、間引き人参のグリル。添えるのは自家製の豆乳マヨソースです。
その隣には里芋と春菊の梅肉和え。少しとろみを感じるシャキッとした食感と、春菊のさわやかな香りが鼻に抜けていきます。
右端は「あやめ雪」という小カブの南蛮焼きに、「京むらさき」という大根の塩麹漬けが並んでいました。
どれも素材のよさが際立ち、嫌味のない自然な味わいで、ひと口ごとに心がほぐれていきます。体に溜まったものが浄化されていくような不思議な感覚。
「あー…食事って本来こういうものだよね、きっと」と、先ほど聞いた松坂さんの言葉を思い出しながらじんわりと納得感が膨らみます。
あえてカツオや昆布の出汁はひかない 野菜出汁の味噌汁
味噌汁には、ぶなしめじと紅はるか。シャキッとしたシロナがアクセントです。やさしい甘みがじわ~っと体に沁みます。
驚くことに、味噌汁の出汁にカツオや昆布などは使っていないそう。
「うちは出汁はひかないんです。サツマイモの出汁一本で。野菜の鍋に味噌を溶いてる感じですね」(松坂さん)
根菜からは旨みが出る…というのは知っていても、ここまで深い味になるとは。野菜のパワーを改めて実感します。
自然栽培のお米の焼きおにぎり
おにぎりには魚津の「宮本みそ店」の味噌をのせて炙り、焼きおにぎり風に。香ばしい香りが食欲をそそります。
ごはんのお米は、射水市で栽培された「亀の尾」に古代米の赤米を混ぜたものです。
「亀の尾」という品種は、今でこそ聞きなれないかもしれませんが、酒米として使われることが多い品種で、実はコシヒカリやササニシキのルーツとなったお米。粘りが控えめであっさりとした味わいが特徴です。
さらっとした食感で、いくらでも食べられそうな魅力があります。
食後は和紅茶と手作りデザートも
お昼ごはんを食べ終わる頃には、すっかり心と体が整ったような感覚に。
しっかり満足感があるのですが、さらに食後には和紅茶と手作りのデザートもいただけます。
ランチメニューは週替わりですが、このセットは定番なんだそう。
和紅茶は、松坂さんが全国の農園から直接仕入れるもので、茶葉が乗った茶器も一緒にテーブルに並びます。
「まずは茶葉を目で見て楽しんで。そのあと、カップに溜まった香りを。そして紅茶を味わってみてください」(松坂さん)
まるで中国茶のような優雅な楽しみ方。味より先にしっかり香りを楽しむ、そのワンテンポがあるだけで向き合い方が変わります。
紅茶は渋みが少なくあっさりとした味で、押しつけがましくない上品な風味。
手づくりのデザートは、台湾で親しまれるスイーツの豆花(トウファ)。
ほろっと崩れる豆腐に、ジンジャーシロップのやさしい甘み。小豆とハトムギの素朴な食感が面白く、ギュッギュッと噛みしめたくなります。
華々しさはなくとも、体と心をまっすぐに整えてくれるような、やさしさと品のある味わいです。
食を通じて自分と向き合う
店で提供する野菜はほぼ全て自然栽培のもので、県内の個人農家から直接仕入れています。
「手を加えなくても、おいしいものはおいしいんです」(松坂さん)
自然との向き合い方が見直される中で、広まりつつあるという自然栽培の方法。
栽培には手間暇がかかり管理も大変ですが、でもその野菜の味や品質は間違いがないと松坂さんは胸を張ります。
農業経験を活かし 農家と消費者の橋渡しをライフワークに
自身が惚れ込んだ自然栽培の野菜を適正価格で届けたい。
そんな狙いも、松坂さんにはあります。
自身も農業の経験があり、さまざまな飲食店での経験を経て、農家と消費者を繋げることをライフワークと考えた松坂さん。
縁があって富山へ移住し、2025年4月にこの店を開きました。
食とは自分と向き合うこと。
「食を通じて、体と心を見つめなおすきっかけを」と松坂さん。
忙しい日々の中で「さて、羊に戻すとしようか」と語りかけ、人間にとって本当に大切なものを思い出させてくれるお店です。
【さて、羊に戻るとしよう】
住所 富山県高岡市駅南5丁目4-7
営業時間 11:30~15:00(L.O. 14:30)
定休日 木、金曜