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【ツウ旅】神奈川県相模原市緑区 藤野地区~自然豊かでほどよく便利でアート散策が楽しめる理想郷~

さんたつ

神奈川県北西端、東京都と山梨県に挟まれた旧藤野町。現在は相模原市緑区の一部に当たるが、かつて藤野町で育まれた地域の特徴は、今なお連綿と受け継がれている。「芸術のまち」を標榜し、多くのアーティストが創作の場を構える一方、都心にも出やすい利便性と開発を免れた豊かな自然が共存する立地に引かれ、移住者が後を絶たないという。 傍目(はため)には商店も少なく、大半が山地だけに、暮らしやすそうに思えないが、通りすがりでは分からない吸引力がこの地に潜んでいるのだろう。藤野のディープな魅力に迫るには、さらに足を運ぶ必要がありそうだ。

藤野ライトハウス

アクセス

電車:JR・私鉄・地下鉄新宿駅から中央本線で約1時間5分の藤野駅下車。藤野やまなみ温泉や陣馬山登山口方面へは藤野駅から路線バスが運行。

車:中央自動車道八王子ICから相模湖ICまで約21km。同ICから藤野地区中心部まで約3km。

釣り人のいる日常

穏やかな水面を釣り船が行き交う

相模川を堰(せ)き止めた相模湖や支流の秋山川など、行く先々で水辺の風景が広がる藤野地区。休日のみならず、朝もやが立ち込める平日早朝でも多くの釣り人が姿を現す様子は、ここでの日常の光景と言えよう。エリア内では複数の釣り船業者が営業しており、ブラックバスやヘラブナを狙う太公望が貸しボートを操りながら、思い思いの場で釣り糸を垂らしている。冬季を中心にワカサギ釣りを楽しめるドーム船も運航。

藤野やまなみ温泉

2023年8月にリニューアルオープン

フィンランド式のロウリュサウナを備えた「湖の湯」の内風呂。
「森の湯」の露天風呂。目隠しが低いため、開放感もたっぷりだ。

丘の上にある日帰り温泉で、特筆すべきは内風呂の一角にある泉温36~38℃の源泉風呂。加水は一切せず、pH9.27と滑らかな肌触りのアルカリ性温泉を目当てに訪れる人も多い。趣向や眺望の異なる「森の湯」「湖の湯」は木曜日ごとの男女入れ替え制。食堂や地元の特産品などを扱う売店も併設。

藤野やまなみ温泉
住所:神奈川県相模原市緑区牧野4225-1/営業時間:10:00~21:00/定休日:水(祝を除く)

芸術の道

芸術のまち・藤野の象徴的スポット

中央本線や中央自動車道からも見える、藤野を代表する作品「緑のラブレター」。
昆虫を思わせる作品が地をはうように置かれた「FLORA・FAUNA」。
「射影子午線」は曲線の構成が印象的だ。

県が旗振り役となり、旧藤野町で1980年代半ばに始まった「藤野ふるさと芸術村構想」。名倉(なぐら)地区を中心に前衛的な野外環境アート作品が造られ、散策がてらアート巡りを楽しめる「芸術の道」として整備されている。作品群をじっくり見て歩く場合、藤野駅起点の所要時間は3時間程度。観光案内所「ふじのね」に置かれたガイドマップが大いに役立つ。起伏があるので、歩きやすい格好で訪れるのがベターだ。

藤野芸術の家

芸術のまちで気軽にアート体験を

工房には専門スタッフが常駐し、適宜アドバイスも受けられる。
宿泊棟の4人用洋室。通常期1泊2食付き6400円~。

閑静な山あいにあり、施設は芸術棟とレストランを併設した宿泊棟からなる。芸術棟内の工房では木工クラフトやサンドブラスト(共に1200円~/当日持ち帰り可)、手びねりでの陶芸作品づくり(1500円~/完成まで2カ月)など、アート体験メニューが充実。予約不要の気軽さもいい。

●9:00~21:00(工房は15:00最終受付)、火休(祝の場合は翌水休)。神奈川県相模原市緑区牧野4819 ☎042-689-3030

百笑(ひゃくしょう)の台所

窓越しに広がる眺望はエリア随一

大きく窓が取られた店内には、地元作家の作品も数多く並ぶ。
石鍋で温められる参鶏湯。高麗人参やニンニクなどを詰め、滋養強壮にも効果大。

農業生産法人「藤野倶楽部」が運営する農園レストランで、韓国家庭料理を提供。一番人気は客の約7割が注文するという薬膳スープの参鶏湯(サムゲタン。小鉢・酵素玄米付き1650円、白米付き1540円)で、鶏肉は身が崩れるほど柔らかく、かつ滋味深い。ゆったりとした店内は自家製ケーキセット800円などを手に、ぼんやり過ごすのにもうってつけだ。

百笑の台所(ひゃくしょうのだいどころ)
住所:神奈川県相模原市牧野4611-1/営業時間:11:00~16:00LO/定休日:水(祝を除く)

gallery & cafe studio fujino

周囲の自然に溶け込んだ非日常の場

個性豊かな作品が並ぶギャラリーに立つ藤崎さん(左)と東川さん。
藤崎さんが手がけた木の皿で提供される季節のサンド1200円(手前)と珈琲の為のプリン500円(右奥)。珈琲は500円。

木工家具職人の藤崎均さんとアートディレクターの東川裕子さんが、山深い地の古民家をスタイリッシュにリノベーション。陽光まばゆいギャラリーでは藤崎さんの作品をはじめ、ゆかりのある作家の陶器・ガラス・竹細工などを展示販売。竹林を前にしたカフェは、抑え気味の照明と相まって、時間の流れがゆるやかに感じられる上質空間だ。

gallery & cafe studio fujino(ギャラリーアンドカフェ スタジオ フジノ)
住所:神奈川県相模原市緑区牧野3613/営業時間:12:00~17:00/定休日:土・日・祝のみ営業

カフェレストラン Shu(シュウ)

居心地のよい空間でくつろぐひととき

シックな店内からペット同伴可のテラス席を見通す。
3日間かけて煮込んだチキンカレー1100円としそソーダフロート680円。

コンクリート打ち放しの店内とオープンテラス席が一体化した、開放的な空間が魅力。口にした途端、じっくり手間をかけたことが瞬時に伝わる各種カレーメニューをはじめ、自家製ドリンクやケーキ・アイスなどのスイーツも充実。店で使われるユニークな器やグラスは、多くが藤野地区や関連する作家の手によるものだ

カフェレストラン Shu
住所:神奈川県相模原市緑区日連981/営業時間:11:30~17:00/定休日:金~日と祝のみ営業

おおだ山荘

古民家をリノベーションした民泊施設

裏相模湖が見える里山の、行き止まりの閑静な集落にポツンと立つ。
古民家の風情を残しつつ、使いやすく改修されたコミュニティースペース。

施設は築120年の本館と別館に分かれ、宿泊は1日2組まで(最大25名)。自然豊かで静かな環境のもと、仲間同士が気兼ねなく過ごすのに好適だ。森林浴を満喫できるおおだ小径(こみち)は1周徒歩40分。相模湖駅近くの相模湖畔からおおだ湖畔まで、ボートでの送迎も可(要予約/片道500円)。

おおだ山荘
住所:神奈川県相模原市緑区日連1411

藤野ライトハウス

店名に込めた思いが伝わる品揃え

岩手県釜石市出身の上條さん。厳選した東北支援グッズも取り扱う。
エコロジーに対する積極的な姿勢が垣間見える量り売りコーナー。

藤野駅からすぐの飲食店2階にある店舗は、小さな入り口からはまるで想像つかないほど広々。ハンディクラフトや雑貨、食品などアジア各地のフェアトレード商品を中心に、国内外のオーガニック関連商品から地元の農産物・菓子に至るまで、品揃えは多種多彩だ。その一つひとつに店主・上條理絵さんの強い思いが感じられる。

藤野ライトハウス
住所:神奈川県相模原市緑区小渕1705-2F/営業時間:12:00~17:00/定休日:原則日~水

陣馬山

富士山やスカイツリーも一望

木漏れ日が心地よい一ノ尾尾根コース。なだらかで歩きやすい。
山頂ではシンボルの白馬像が登山者をお出迎え。

東京都と神奈川県の都県境にある標高855mの陣馬山。気軽なハイキングスポットとして根強い人気があり、藤野地区側からも複数の登山路が整備されている。藤野駅発の路線バスで陣馬登山口または和田まで移動すれば、2時間弱の歩程で眺めのよい山頂に到着。週末を中心に営業する茶屋で味わうなめこ汁も楽しみだ。時間と体力に余裕があれば、山頂から尾根をたどり、ハイカーでにぎわう高尾山まで歩き通す縦走コースもおすすめ。

佐野川地区の風景

懐かしい原風景に出合える

眼前に山並みが迫り、心安らぐのどかな風景が広がる。

陣馬山の登山口からほど近い藤野エリア北部の佐野川地区。かつて盛んだった養蚕農家の古民家や土蔵が点在し、急傾斜の麦畑跡には朝晩の寒暖差を生かした段々茶畑が広がる。どこか郷愁を覚える風景は2009年「にほんの里100選」に選定。界隈は藤野特産のユズの生産地でもある。

●神奈川県相模原市緑区佐野川

大石神社

本格的農村歌舞伎舞台が現存

神楽殿に立つ氏子総代の河内正道さん。2階部分の楽屋も見事だ。

牧野・篠原地区の氏神を祀る鎮守で、直径4.2mの回り舞台や迫上(せりあがり)を備えた神楽殿(拝殿)が目を引く。天保14年(1843)築、明治29年(1896)に歌舞伎舞台として大改造されたもので、明治期から昭和初期にかけ農村歌舞伎が盛んに演じられた。社殿は周囲より一段下がった地にあり、境内地全体の一体感も強い。相模原市指定有形文化財で、地域の貴重な宝として氏子らが手厚く保存している。

●境内自由。神奈川県相模原市緑区牧野2957

【COLUMN】藤野の素顔に触れる里山体験ツアー

写真提供=藤野観光協会内「藤野里山体験ツアー運営協議会」。

地域の受け入れ家庭を訪ね、里山散策や畑作業など、藤野での生活を一緒に体験する日帰りツアーを随時開催。一過性のイベントではなく、住民の暮らしに触れることで、地域の真の魅力を知ってもらうのが主眼だ。ツアー内容はHP で確認を。

●体験料4800円。☎042-684-9503(藤野観光協会内「藤野里山体験ツアー運営協議会」)。

旅のワンポイント

散策前後に訪れたい情報発信拠点

藤野駅改札脇の観光案内所「ふじのね」。観光案内のほか地元特産品やアート作品も揃う。

●8:30~17:00、無休。☎042-687-5581

気軽に低山歩きを楽しめる

金剛山から続く山並みにはハイキングコースが整備され、地名から日連(ひづれ)アルプスと呼ばれる。藤野駅起点周回は約2時間30分。

取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2023年11月号より

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