「ぜひ最後まで見守っていただけたら嬉しいです」約3年の時を経て実現した『Season 2』は「夢のようなお話」──『その着せ替え人形は恋をする』Season 2、乾心寿役・羊宮妃那さんインタビュー
2022年の『Season 1』放送から約3年……TVアニメ『着せ恋』が帰って来た! 2025年7月より、TOKYO MX、BS11ほかにて『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』 Season 2が順次放送中です。
これを記念し、アニメイトタイムズでは乾心寿(いぬい しんじゅ)役・羊宮妃那さんへインタビューを実施! 「ありがたい気持ちで待っていた」と『Season 2』への想いを話す羊宮さん。そのほかにも、本作の魅力をはじめ、アフレコの裏話などについてたっぷりと語っていただきました。
心寿を通して羊宮さんが感じる「役者としてのひとつの在り方」。ため息が漏れるほどの魅力に溢れた『着せ恋』の髄を、羊宮さんとともに覗き見ます。
【写真】『着せ恋』Season 2 乾心寿役・羊宮妃那インタビュー
羊宮さんが“とってもキュンキュン”したシーンは?
──『Season 1』の放送から約3年の時を経て『Season 2』が放送開始となりました。羊宮さんご自身として、待ちわびていましたか?
乾心寿役・羊宮妃那さん(以下、羊宮):待たせていただきました!(笑) まさか『Season 2』でも心寿ちゃんを演じさせていただけるなんて思ってもみなかったことでしたので、待てるのならば何年でも!という気持ちでした。長かったな、という待ち方ではなく、ありがたい気持ちで待っていた感覚です。
──『Season 2』のお話を聞いたときはいかがでしたか?
羊宮:めちゃくちゃ嬉しかったですし、こんな奇跡が起きるんだ、と! アニメが続いていくには様々な条件がある中で、夢のようなお話でした。
──改めて、心寿の印象をお聞かせください。
羊宮:印象としては『Season 1』から変わらずお姉ちゃん(乾紗寿叶〈いぬい さじゅな〉)が大好きな子です。お姉ちゃんに嫌われるようなことはしたくないんだろうな、と思いつつ、でも無意識に圧を与えてしまうシーンもあって(笑)。本当に愛らしい妹キャラで、とても可愛くて大好きです。
『Season 1』で心寿ちゃんが初登場したときは、人と話すことがあまり得意ではなく、しばしば慌てて、あわあわしていましたが『Season 2』ではそんな心寿ちゃんがみんなとコス合わせをします。(喜多川)海夢(まりん)ちゃんたちにどんどん引っ張ってもらっているのかなと思いました。
──『Season 2』本編をご覧になられて、特に印象に残っているシーンを教えてください。
羊宮:『Season 2』も『Season 1』に引き続き、お気に入りポイントがいっぱいなんです。例えば、風邪を引いてしまった海夢ちゃんの看病にくる五条(新菜〈わかな〉)くんのシーンですね。海夢ちゃんが五条くんの名前を呼んで「呼んら゙ら゙け(呼んだだけ)」と言ったときの空気感と周りの「ザーッ……」という音で、より現実的な時間の流れを感じて、とってもキュンキュンしました。
──『Season 2』ではクラスメイトたちのような新キャラクターも増えるなど、より賑やかになった印象を受けました。
羊宮:『着せ恋』はナチュラルで、リアル感がある作品だと思っています。友達に気になったことを気兼ねなく聞いたり、そこで新たに展開が生まれることもあって。この先に控えているシーンでも、海夢ちゃんのお友達ならではだな、と感じる場面もたくさんありますので、楽しみだなと思っています。
──そんな『Season 2』の収録現場はどのような雰囲気でしたか?
羊宮:コロナ禍が明けたことで、より多くのキャストさんとご一緒させていただくことができました。だからなのか、とてもワチャワチャしていましたね(笑)。
心寿ちゃんが登場する回が「コス合わせ」のシーンであることも相まって、アフレコの人数が多かったんです。特に涼香さんや都さんが……大暴れといいますか(笑)、印象に残るシーンがたくさんありましたし、みなさんとお話しできる機会も増えましたので『Season 1』よりも賑やかだったなと思います。
──『Season 2』における篠原啓輔監督自身の目標が「『Season 1』よりもフレンドリーに」だったと伺いました。
羊宮:フレンドリーといえば、絶対にそうだったと思います(笑)。私個人としても『Season 1』のときはまだ慣れないことも多くて。
待っているときも肩が上がっていて「どこまで喋ったらいいんだろう」「どんな姿勢で振る舞えばいいんだろう」と、わからないことがたくさんでした。今回は当時よりもリラックスして、みなさんと打ち解けられたのかなと思っています。
──みなさんと収録ができたとのことでしたが、共演者の方のお芝居で特に印象に残っているものはありますか?
羊宮:みなさんそれぞれ印象的なお芝居をされていることもあって「この方の、このお芝居」のように触れていくと全員分のエピソードが出てくると思います。
アニメを見ていても感じることですが、そのキャラクターの個性が爆発している、溢れ出ているんですよね。演出との相乗効果もあるかもしれませんが、マイク前に立つみなさんからも溢れ出るものがあるんです。
海夢ちゃん一人を見ても、静まり返るときもあれば笑顔で周りを巻き込んでくれることもある。そのキャラクターごとに0と100のお芝居があるといいますか……良い意味でお芝居が収まっていないんです。なので、印象に残っているのは全員です。言い切れちゃいます。
──アフレコ現場での佇まいという面から見ると、いかがでしょうか?
羊宮:そうですね……村瀬(歩)さんが印象に残っています。(姫野)あまねさんって、めちゃくちゃ難しいキャラクターだと思うんです。女性の気持ちにも理解があるけれど男性の持つサバサバ感もあって。
あまねさんと(緒方)旭(あきら)さんが海夢ちゃんについて話すシーンがありますが「あまねさんの話を聞く姿勢」にこだわられているお姿を拝見しました。何回もテイクを重ねてアプローチされている姿に刺激を受けましたし、勉強になりました。
「役者としてのひとつの在り方なのかなと思います」
──『Season 2』で心寿を演じる上で、意識したポイントを教えてください。
羊宮:『Season 1』のころの私とは、発声が変わってしまっていました。お腹に力が入りやすくなったり、地声筋が鍛えられた結果、当時の感覚で心寿ちゃんの声を出しても、自分が思っているよりも強い発声になってしまうんです。なので、心寿ちゃんならではの発声ができるように(発声を)わざと弱くさせ、滑舌を少し甘くするなどしています。
『Season 1』ではお姉ちゃんに対して「家族だからこそ」という気持ちで音を強めに出すことを意識していたのですが、今回同じように声を出してしまうと3年で発声の仕方が変わったこともあって、ガツガツした女の子になってしまって。なので当時していた意識を今は変えなければ、心寿ちゃんの声色を作れなかったんです。
そういった、『Season 1』とは全く別の気の張り方をしていました。気を抜いてしまうとそれだけで心寿ちゃんの性格が変わってしまう。掛け合いにおいても相手のお芝居を受けて声を出してしまうと出すぎてしまうので、時にはそうしないように切り替えをしていました。
今の私が心寿ちゃんを演じるうえで、私が役としてその子でいることよりも、もっと客観的なところから見ていた方が、みなさんが思う心寿ちゃんになるのではないかと思っています。
──『Season 1』の放送から羊宮さんは3年を経験しているけれど、キャラクターはそうではないですものね。
羊宮:そうですね。役者としてのひとつの在り方なのかなと思います。初めての経験でした。
先ほどお話しさせていただいた通り、発声から変わってしまっているし、生きている軸という観点から見ても、私自身、昔より人と話すことができるようになっていると思います。そういった変化もあり、心寿ちゃんの声が出しづらくなっている。自分の感情の変化を心寿ちゃんに落とし込むと、全く心寿ちゃんではないものになってしまう……。
──ディレクションのなかで、特に印象に残っているものはありますか?
羊宮:お花畑というワードが頻出していた記憶があります。どちらかと言うと、藤田(亜紀子)さんからいただいたディレクションに対して「今の私の心情をどう動かせば理想にたどり着くのか」が難しくて。
心寿ちゃんが好きなものを語るとき、“ふわふわワールド”といいますか、気持ち悪くならず、お花畑で、可愛らしさはありつつ。それでいて可愛いだけだと「好き」が伝わってこない。「好き」を伝えたいけれど、自分の心はガツガツしてはいけなくて……という意識でした。
本来はいただいたディレクションをそのまま心に落とし込みたいのですが、落とし込んだ結果、心寿ちゃんの声が出てくるかと言われると……。難しかったですね。
羊宮:藤田さんも私の気持ちを汲み取ってくださって「そうやって声を作ると息継ぎが難しいよね」などお気遣いいただきました。得策ではなかったのですが、カットごとに止めながら切り替えて録っていただいたシーンもあって。
このようにワンシーン、ワンシーンこだわっていただいたので、みなさんに届く心寿ちゃんは時が途切れることなく、そのときに生きている心寿ちゃんである、と確信を持っています。それがあるのは、今の私との役作りを一緒にしていただいたからだと思っています。
──そんなアニメを彩るオープニング、エンディングテーマについて、映像込みでご覧になったご感想をお聞かせください。
羊宮:『着せ恋』だ……!と思いました。スピラ・スピカさんのオープニングテーマ「アオとキラメキ」は『Season 1』に引き続き、今回も素晴らしい楽曲です。うまく言葉が出ないのですが、聴けば聴くほど「これこれ!」となります(笑)。「『着せ恋』が始まるためにはこの楽曲が必要だよね」という楽曲になっています。
オープニング映像も海夢ちゃんがずっと可愛くて、色々な姿を見ることができて嬉しいですし、最初の部分には海夢ちゃんが自分で(黒江 雫の)衣装を作って着る描写があって。あのシーンも「これが始まりだよね」と。自分でやってみて上手くいかなくて、でも好きだから続けたい……物語の始まりを見ているような気がして『着せ恋』らしさを感じていました。
『Season 2』のエンディングは新しい可愛さ、着せ恋とのかわいい雰囲気が出ていて。「Kawaii Kaiwai」、新しい界隈ですよね。雲の中にいるような可愛い雰囲気もありますし、海夢ちゃんも可愛い。エンディングならではの絵のタッチも見ることができて、嬉しい気持ちになりました。
「安心して受け取っていただけたらと思います」
──五条くんの「なんですって?」にちなみ、羊宮さんが『Season 2』で「なんですって?」と驚いてしまったことを教えてください!
羊宮:うーん……アフレコ現場だと仕事モードでいるから「なんですって?」とツッコめるものはなかったのですが、アニメを見始めると「なんですって?」と思うシーンがたくさんありました。舌打ちのところとか。
──(笑)。
羊宮:せっかく海夢ちゃんがキスをしたのに……!って。「じゃあなんなんですか今の音!!」って聞き返さないであげてーって!(笑)。
──心寿が参加することになった「『棺』のコス合わせ」のシーンにちなんでお聞きしたいのですが、「棺」の設定・ストーリーを知った際の“感想”を教えてください。
羊宮:心寿ちゃんがドハマリしていて大好きな世界観……「棺」を楽しそうに話す心寿ちゃんの姿を原作漫画で拝見していたこともあり、設定やストーリーよりも(心寿が)楽しそうに「棺」について喋るシーンが印象的で。心寿ちゃんが良ければもうなんでもいいかという感覚で受け取っていました。
(原作漫画の該当シーンを見て)スゴイ絵図ですよね(笑)。でもこれが心寿ちゃんの好きなものなんだと思って、すべて受け取らせていただいたので、私は「そうなんだ!(キラキラ)」と思いながら漫画を読んでいました。
──(笑)。「棺」について愛を語るシーンも、キラキラな気持ちを意識されていたのですね。
羊宮:そうですね。とにかく心寿ちゃんは「棺」の世界が大好きで、その世界に登場する子たち一人ひとりを「愛おしい」と思っている子です。その「愛おしい」「好き」という感情に黒塗りしないように……早口にはなるのですが、純粋な気持ちが伝えられるように意識をしていました。
あとは「お姉ちゃんの懐に忍び込む」ことも意識していて。「これを言ったら、お姉ちゃんは断りづらい」というニュアンスをセリフに乗せています。まさに「えへへ」のようなニュアンスですね。
──天然の可愛さ、あざとさといいますか。
羊宮:そうです! 天然なんです!(笑) 矛盾かもしれませんが、天然の可愛さを入れられるようにお芝居をしました。
──最後に、今後の『Season 2』について羊宮さんが思う注目ポイントなどを教えてください。
羊宮:ここまでご覧になられている方でしたら、これからも名シーンがたくさん出てくることはおわかりかと思いますし、一話一話が身に沁みて、見入ってしまうシーンもたくさんあります。私が「楽しめること間違いなし!」と言ったとしても「それはそうだろう」とお思いになるのではないかなと……。
現場で最終回を迎えた際に「ハァ……」と感嘆のため息が出るようでした。『着せ恋』ならではの最終回が待っているので、ぜひ最後まで見守っていただけたら嬉しいです。また、私が心寿ちゃんに想いを込めて演じているように、キャスト一同全員想いを込めて最後まで余すことなく注ぎ込んでいます。安心して受け取っていただけたらと思います。
【インタビュー・文:西澤駿太郎 撮影:小川遼 編集:太田友基】