懐かしさと新しさで「好き、のつづき。」へ。 『ベツコミ55th ANNIV. BEYOND THE PAGE 好き、のつづき。』レポート
『ポーの一族』『BANANA FISH』『僕等がいた』など、往年の名作から今まさに連載中の最新作まで。小学館の少女まんが誌「ベツコミ」の創刊55周年を記念したイマーシブ&原画展『ベツコミ55th ANNIV. BEYOND THE PAGE 好き、のつづき。』が、2025年10月13日(月・祝)までLUMINE 0 ニュウマン新宿店 5Fにて開催中だ。『電撃デイジー』『クイーンズ・クオリティ』の作者、最富キョウスケ先生のコメントも交えながら、その魅力をお届けしよう。
あの漫画の名シーンを、イマーシブ映像で体験
ベツコミのこれまでを振り返る年表を見ながら先へ進むと、高さ4m、横幅合計22mの3面投影映像の巨大なワイドスクリーンシアターが待つ。厳選16作品の名シーンをまとめた約30分のオリジナル映像は、ファンの心を鷲掴みにしつつ、その作品を知らない人にも端的に物語世界を伝えてくれる。
場面のセレクトには作家や担当編集が関わり、作品の魅力を伝える象徴的なシーンを選んだそうだ。最富先生も初日に鑑賞し、「ベツコミはこんなにすごいんだぞ、と思わせてくれるような想いを感じる構成で、本当に素敵なものになっていました。ぜひ何度でも見てもらいたいなと思います」と熱い想いを伝えた。
あの名作の制作過程が見られる!貴重な資料からドローイング動画まで
制作の裏側に触れられる「体感ゾーン」は、作品ファンはもちろん、漫画やイラスト制作に関心がある人も興味を惹かれるだろう。制作過程の貴重なアーカイブ資料が盛りだくさんだ。
漫画ができていく過程がわかるネーム、下絵、完成原稿は、作家の頭の中を覗いているようで面白い。中にはテキストベースのシナリオ制作を挟む手法もあり、やり方が多様であることを実感する。
先生方の筆致が感じられる作画風景を納めた、ドローイング動画もつい見入ってしまう。その中の一つ、最富先生の『クイーンズ・クオリティ(QQスイーパー)』のデジタルカラーイラストは、グレースケールで書き込み、そのあとで色を重ねていくグリザイユ技法が用いられている。「早回しの映像で簡単そうに見えると思いますが、実は3日間かけて描いています」と先生。改めてプロの漫画家の高い技術力に驚かされる。
作家インタビューは5名分の大パネルがずらり。ベツコミで活動するきっかけやデビュー当時の思い出、連載当時の秘話、思い入れのあるキャラクターなど、自身の言葉で語られる裏側にはワクワクし、ベツコミ55年の歴史を彩るさまざまな作品にまつわるドキュメンタリーには、何だか胸が熱くなる。
この先にある原画展示エリアは、ぜひ会場でご覧いただきたい。本展独自の3つのテーマ、「気高さ」「絆」「キュン」の3つで構成された41作品の生原画・複製原画を余すことなく堪能できる。
コミックス風ポーチやキャラクターパネルなど、物販にもご注目
最後に、周年記念アイテムが一堂に会する物販エリアも見逃せない。定番のランダムアクリルスタンド、流行の証明写真風ステッカーなど、ポップなアイテムについ手が伸びる。漫画の登場人物をより近くに感じられるキャラクターパネルは、何と小学館公式通販で受注販売をしているというから驚きだ。
自身も活動前からベツコミの一読者であり、長年のファンだという最富氏のおすすめは図録。「会場限定のカバーが付いています。漫画好きの人はきっと読むことがお好きだと思いますので、記念にお手に取っていただきたいです」とコメントを寄せた。漫画がぴったり入る大きさのコミックス風ポーチにも注目し、「中にコミックスを入れて持ち歩けるのが良いですね」と顔をほころばせた。
55年間、読者の心に寄り添い続けてきたベツコミの世界。ページを超えて新たな体験として紡ぎ直す「好き、のつづき。」は、単に懐かしさを振り返るのではなく、あのころの「好き」の気持ちが今もなお続いていること、そして新たな「好き」との出会いへの扉を開くことを意味している。『BEYOND THE PAGE 好き、のつづき。』は10月13日(月・祝)まで、LUMINE 0 ニュウマン新宿店 5Fにて開催中。
文・写真=さつま瑠璃