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【わが家のセレモニー大作戦】感覚過敏がある子の卒園式。1か月で蝶ネクタイを締められるようになった方法は?

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【わが家のセレモニー大作戦】感覚過敏がある子の卒園式。1か月で蝶ネクタイを締められるようになった方法は?

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

かっちりした服なんて着ていられない息子

現在、特別支援学校の小学部に通う中度知的障害(知的発達症)の息子とつおには感覚過敏があり、普段は襟元が詰まったシャツや窮屈な服、パリッとした素材の服は苦手で身につけることがありませんでした。もちろんセレモニー服などもってのほか。保育園の卒園式を目前に控え、母である私はそんなとつおになんとかオシャレを決め込んで卒園式に臨んでほしかったのですが、ただでさえたくさんの保護者たちが揃う場で泣いてしまうことが予想され途方に暮れていたわけです。そんな中、通っていた児童発達支援施設の作業療法士さんからうれしいアドバイスが。そのアドバイスとは、見通しが立たない不安を解消し着心地の悪さになれるために、1か月前からリビングなどよく目につく場所にセレモニー用の衣装を飾っておくこと。はじめは数分間からチャレンジさせて徐々に試着時間を伸ばしていく、というものでした。さっそく、わが家のセレモニー大作戦が始まりました!

さっそく作戦実行!

セレモニー服はあらかじめ知人のお下がりがあったので、試しに着せてみるとジャケットは羽織った瞬間に暴れて脱ぎ捨ててしまいました。とつおは感覚過敏に加えとても暑がりさんなので、これは早々にあきらめました。代わりに比較的着心地の良さそうな、ゆるめサイズのベストを購入。シャツもストレッチ感のある素材のものを新たに探し、ボトムスは遠目に見るとパリッとしている風合いの、実は伸びる素材のものを3本購入し、普段から履かせることにしました。そして上の子たちで経験済みのため、卒園式当日の朝に先生たちが手作りしたお花のコサージュが配られることを知っていた私は、あらかじめ息子のコサージュだけ一足早く作っていただけるようお願いしました。忙しい中先生たちには申し訳なかったのですが快く引き受けてくださり、衣装は無事一式揃ったのでした。

少しずつ前進

「卒園式ではこれを着るんだよ。かっこいいでしょ!」と飾っている衣装を指差し声をかけている時は、頷きながらも興味のなさそうなとつお。数日後いざシャツを着せてみるとやはり脱ぎたがりましたが、ジャケットの時ほどではなく、これは行けそうだと思いました。初日はボタンは留めず羽織るのみ。テレビを見ている隙を狙って数分からはじめ、徐々にボタンを留める数を増やしました。そして、ベスト。こちらもシャツの初期反応と同じでした。ベストにつけたコサージュは剥ぎ取ろうとしていましたがなんとかなだめて数分着ることができました。日によって気分が乗らずどうしても嫌がる日は着る練習を数日お休みしたりしつつ、夫が言ってくれた「そもそも当日式に出ることを全力拒否する可能性もある。焦らずど〜んと構えよう」という言葉に背中を押されて、作戦を続けました。

かっこよかった息子

さあ、卒園式当日の息子はどうだったかと言いますと……。運動会もお遊戯会も泣いて拒否していた息子。卒園式の入場は私と一緒に行い、式の間は保護者席でパパに抱っこでしたが、蝶ネクタイも外すことなく閉会まで参加することができました!集合写真は途中でギブアップしたものの息子でも活躍できるよう先生たちが工夫してくださったことが伝わる卒園式は、心温まり大感謝でした。余韻に浸る間もなく、ピュ〜っとお世話になった保育園の門を出て行った我々でしたが、帰宅した途端、すぐさま衣装を脱ぎ捨てて着替え始めたとつおを見て、本当に彼なりに頑張っていたのだなあと胸がいっぱいになりました。
感覚過敏は程度の差があるので一概にはわが家の方法が効果的とは言えませんが、子どもの頑張れる範囲を観察しつつ数日前から準備しておくと心に余裕が持てるのでお勧めできます。これから卒入学を迎えるお子さまも、どうか素敵な式になりますよう祈っています!

執筆/マミー・マウス子ビッツ

セレモニー服は素材が硬い、窮屈、重ね着が必要、見慣れないなどの理由から、発達に偏りのあるお子さんの中には強い不快感を覚えることが少なくありません。式典という非日常の緊張も重なり、負担はさらに大きくなります。「合理的配慮」として普段着で参加することも大切な選択肢ですが、節目の日にピシッとした服で参加してほしいというのもまた親心でしょう。
筆者さんが、お子さんの特性を踏まえ、事前に環境を整えながら少しずつ慣らしていった工夫は、とても理にかなった支援だと感じました。衣装を目に入る場所に置き、短時間から試すことで「何を着るのか」「どんな感覚か」という見通しを育てたこと、素材やサイズに配慮し“見た目”と“着心地”の折り合いを探ったことは、無理に適応を求めるのではなく、お子さん側に歩み寄る姿勢そのものです。また、日によって練習を休む柔軟さや、「どんと構えよう」という言葉もご家族の安心につながり、結果的にお子さんの安定を支えたのではないでしょうか。
加えて、視覚的なスケジュールなどで「この服を着るのはこの時間だけ」と具体的に示すことも有効な場合があります。近年はフォーマルに見えて着心地のやわらかい素材の服も増えており、選択肢を広げて探してみるのも一案です。
感覚過敏の程度は一人ひとり異なりますが、早めの準備とスモールステップの積み重ねが、大切な節目を支える力になることを教えてくれる体験談でした。ありがとうございました。(監修:小児科医 新美妙美先生)

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

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