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在宅で看取りをする際の医療連携。「自分らしく生きる」ための選択肢

「みんなの介護」ニュース

長谷川 昌之

【科目】介護✕ケアマネ  【テーマ】在宅で看取りをするために必要な人生会議

【目次】

看取りに大切な「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」
なぜ人生会議が看取りに必要なのか
人生会議を行う前に必要なかかりつけ医
専門職と人生会議を行った事例

医療と介護の連携支援センター長谷川です。

今回は在宅で看取りを行う際の「医療連携」と「本人が望むケアを受けるために必要な準備」について解説します。

看取りに大切な「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」

高齢の方や、日常的に医療や介護に近い環境で過ごされている方であれば、自身や大切な家族などの「万が一」を考える機会も多いかと思います。しかし、若年であればあるほど、そのような機会が少なくなっています。

亡くなったときや、病気になったときの生命保険の補償などについて考えている方は多いのですが、そこに至るまでの過程が抜けていることも少なくありません。

その部分をしっかり考えるためのキーワードが「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」や「人生会議」だと考えます。これらの言葉を耳にしたことはあるでしょうか?

ACP(アドバンス・ケア・プランニング) 要介護状態や深刻な病気になる以前に、その後の世話や配慮・気配り・医療・看護・介護・福祉などを包括した日々について計画を立てたり、家族などで話し合っておくことを指します。これは自分自身だけではなく、大切な家族についても同様です。このACPを、より親しみやすい言葉に代用したのが「人生会議」です。ACPと人生会議には同義語と捉えて問題ありません。

なぜ人生会議が看取りに必要なのか

私たちは生まれたときから、自身や大切な人とともに人生の選択をしてきました。例えば「どんな仕事に就きたいか」「いつ結婚すべきか」など、さまざまな場面で決断をしてきたと思います。

その中でも、自身や大切な人が高齢になることによって、新たな選択肢が生まれてきます。

病気や怪我をして入院したらどうするか
親や自分たちの介護は誰がするのか
入院費用は誰が負担するのか
今住んでいる家はどうするのか
どこで最期を迎えるか

人生のステージによって、選択肢はどんどん変わっていきます。ただし、どんな決断をするにしても、何より大切にすべきなのは「自分らしく生きること」ではないでしょうか。それが守られてこそ、別の条件や選択肢を検討できると考えます。

しかし、実際に病気や怪我をしてからでは、選択をするための時間を充分に確保することが難しくなります。特に、医療的な場面では、一分一秒が生死を分けることがあり、時間的猶予がまったくない場合もあります。そういった万が一の事態に備えて、人生会議が大切になるのです。

とはいえ、「何をどう話し合うのかわからない」という方も少なくありません。そこで、私が勤めている東京都町田市では、東京都福祉保健局医療政策部が作成した『わたしの思い手帳』を活用しています。

『わたしの思い手帳』は、具体的な場面や想定される対処、人生会議の大切さがしっかりとまとめられています。ぜひ一度手に取ってみていただけたらと思います。また、各都道府県や市町村でもさまざまな取り組みをしていますので、インターネットなどで検索してみてください。

人生会議は遺言書とは異なり、一度決められたことを絶対に変更してはいけないというものではありません。まだ迷っていることや決められないこと、将来的に変化が起きそうなことを話し合うので、あまり深く考えずに気軽にチャレンジできます。

一番大切なのは「自分らしく生きること」のために必要なこと、今大切にしていること、これから大切にしたいことを、家族や大切な人で話し合うという行為そのものにあります。

日本では、これから直面する死や病気に関する話題は「縁起が悪い」という意識から敬遠されがちですが、超高齢化社会を迎えた今こそ、ぜひ検討してみてください。

人生会議を行う前に必要なかかりつけ医

「自分らしく生きる」という思いに対して、医療はどのようなアプローチができるのか解説しましょう。

地域包括ケアシステムの中でも「看取り」は重要な柱の一つに数えられています。「医療・看護」「介護・リハビリ」「保健・福祉」などのあらゆる分野からアプローチすることで、本人が望む最期を迎えられるように支援することが求められています。

こうした支援の前提には、本人が看取りをされたいと望む場所、介護者の意思を明確にする必要があります。しかし、そうした意志を固めるためには、さまざまな苦労があるかと思います。筆者自身はその決断や思いが確定する前にどれだけ医療と連携ができるかがポイントになると考えます。

自宅で看取りをするときには、現在の病状がどのように進行していくのかなど、専門的な意見を聞いて、選択をすることが大切です。そのため、本人や家族だけで決断していくことは難しいのではないでしょうか。

そこで、自分自身のことをよく理解し、「自分らしく生きること」を後押ししてくれる医師や医療関係者とつながることが連携の大前提になります。

医師との連携は、ハードルが高いと感じますが、まずは信頼できる医師を見つけることが第一歩になります。そのためにも、大切なのはかかりつけ医師を探すことです。

かかりつけ医とは 日本医師会では「健康に関することを何でも相談でき、必要なときは専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師」をかかりつけ医と呼んでいます。言い換えると、体調不良時に相談する自宅近くの診療所や病院の医師のことを指しています。

信頼できるかかりつけ医を見つけることができたら、介護が必要になったときや自身が終末期になったときにできることを考えていきましょう。

どのような医療や介護を受けるのか
どこで医療や介護を受けるのか

以上のようなことを、大切な人や支援してくれる方々(医師をはじめとした医療関係者や介護関係者)と話し合って、事前に伝えておきましょう。その中で「自分らしく生きること」を主に皆で話し合うことが人生会議です。

専門職と人生会議を行った事例

私が、かつて担当した自宅での看取りを希望された方のケースを紹介します。本人の希望に基づいて、書面などには起こしませんでしたが、本人と家族、医師・訪問看護師・ケアマネージャーで話し合いを持ちました。

容体が急変した時の対応を確認

まず、訪問看護ステーションでの24時間対応について説明し、そのうえで主治医の訪問診療での対応を説明しました。そこで、急変時には、訪問看護ステーションから主治医へ連絡を取ることを確認しました。

併せて、連絡する順番を書面にして自宅の電話機の前にも貼りました。容体急変時だけでなく、万が一息をしていない状況でもこの順番で連絡をすることを皆で確認しました。このような確認をしていない場合、慌てた家族が救急車を呼んでしまうことがあるからです。

24時間いつでも支援体制があることを確認してもらいました。また、緊急のコールがあっても、病院のように医療職がすぐ来られるわけではないことなども説明しました。そのうえで、本人・家族にも理解していただいたのですが、これも一つの人生会議だったといえるでしょう。

本人の「人生を自分らしく生きること」を支えるのが、医療職をはじめとした専門職の役割だと思います。その際、医師との連携は欠かせません。余裕をもって自身の人生を考えられるうちから、必要な医療との連携をしっかりとれるようにしていきましょう。

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