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【不登校という選択】 小中学生・不登校35万人時代 子ども・親・学校はどこへ向かうの? 有識者・著名人が徹底的に考えた

コクリコ

コクリコの不登校にまつわる記事で2024年大きな反響を呼んだ記事8選を一気読み。鴻上尚史、岡本朋子(NHKチーフプロデューサー)、成田奈緒子(発達脳科学者)、小島よしお、葉一(教育系YouTuber)、西野博之(NPOフリースペースたまりば理事長)、おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)など。

【アンケート結果を見る➡】自己肯定感が「高くない」ママは7割以上! 子育てに及ぼす影響とは?

不登校の小中学生は11年連続増加し、現在は34.6万人(2023年度/文部科学省調べ)。コクリコではこの状態をどうすればいいのか、有識者・著名人など、さまざまな方々に聞き、探り続けています。

多くの子どもたちが学校へ行けない・行かない今。親と教員、学校制度は、現状をどのように受け止め、変わるべきなのでしょうか。

2024年に公開した不登校に関する記事で、反響の大きかった8つの記事を振り返り、25年への展望を探ります。

1)鴻上尚史さん「我が子の切実な訴えを受け止めて」

近年の不登校の増加に対して、作家で演出家の鴻上尚史さんは、「僕は何が問題なのかよくわからない。行きたくないなら、行かなくていいんじゃないかな」と見解を述べつつ、学校に行けないことが人生の失敗につながるなんてことは、まったくないと強調します。

さらにすでに学校に行かないを選択している子どもを「とても立派」「自信を持ちましょう」と肯定し、不登校で悩んだり自分を責めている子どもには、次のようにエールを送ります。

「今の自分にとって『いちばん大事なこと』は何かを考えてください。自分を守る道を選んでください。選ぶことができた自分をホメてあげてください。ゆっくり休んで、自分の道を歩き始めましょう」

また、「学校は人間関係を学ぶ場。マイナスの人間関係しか学べないなら行く意味はない」とも。無理に嫌いな人を好きにならなくてもよいけれど、嫌いな相手と対立しないコミュニケーション術はあるとアドバイスをくれました。

では親はどうすればよいのか。鴻上さんは、「親御さんとしては大きなショックを受けるでしょう」と親の気持ちに寄り添いつつも、「とにかく本人は今、“そうせざるを得ない状況”にあるんです」と諭します。そして親は「何はさておき、我が子の切実な訴えを受け止めてください。話を聞いてあげてください」とも。

なぜなら学校に行けない子どもはとても苦しんでいるから。そんな子どもにいちばん大事なのはまず「守ること」。心が悲鳴をあげている子を無理やり学校に通わせるのは、ブラック企業でも我慢して勤め続けるような人間に育てようとしているようなものだ、とも。

また、「悩む」と「考える」の違いを親は知っておこうとアドバイス。「困った困った」とアワアワするのは「悩んでいる」だけ。でも「考える」を始めると次の展開が見えてきます。鴻上さんの具体的なメッセージは行き詰まった親にも勇気を与えてくれます。

➡注目記事➡ 小・中学校の不登校児が約30万人と急増… 鴻上尚史「不登校はたいした問題じゃない 大事なのは自分を守ること」

➡注目記事➡ 不登校のキミへ 鴻上尚史が伝授する「嫌いな人」を好きにならなくて良い でも対立しない「コミュニケーション術」とは?

➡注目記事➡「不登校の子ども」の親へ 鴻上尚史が助言 我が子が「学校に行きたくない」と言ったらどうすればよいのか?

2)学校の未来をみんなで考える

NHKも、よく「不登校」を番組テーマに取り上げています。2024年1月に放送された『NHKスペシャル“学校”のみらい~不登校30万人から考える~』(NHK総合)では、国内外の学校やフリースクールを紹介。専門家や不登校経験者をスタジオに招き徹底討論しました。

コクリコでは同番組の岡本朋子チーフプロデューサーにインタビュー。岡本さんが心に残ったシーンについて聞きました。

ひとつめは山形県の天堂中部小学校です。6年前、前校長が「子ども主体の学校にするんだ」と熱い思いを持って学校改革を行いました。

授業は一斉授業が全体の8割、子ども自身が学び方を選択する授業が2割で、その中には「フリースタイルプロジェクト」という、自分の興味のあることを自由に学んでいい時間があります。漫画を書く子や熱心にお化粧に励む子どももいたそうです。

「天童中部小学校の子どもたちの真剣な表情は素敵でしたし、イキイキとしていましたよね。そもそも学校改革は不登校対策で始めたことではありませんが、今、不登校の子どもはいないそうです」(岡本さん)

また、番組出演者の中で心に響いたメッセージも聞きました。麴町中学校の元校長の工藤勇一先生です。工藤先生も麴町中学で大幅な学校改革を行ったことでとても話題になりました。

「工藤勇一先生の『子どもたちは、生まれたときはみんな主体的な生き物。教育を受ける中で、どんどん主体性を失って、受け身になっていく』との言葉です。

悲しいことですよね。私を含め、大人たちは良かれと思って、子どもに『あれやれ』『これやれ』と言ってきましたが、今までの日本の教育のままでは、子どもが受け身になってしまうと問題提起してくださっています」(岡本さん)

日本の学校の課題とこれからをあらためて考える機会になります。

➡注目記事➡ Nスペ「不登校から考える」が大反響 教育現場・不登校経験者たちの〔徹底討論〕で分かった学校に足りないもの・必要なもの

3)何はなくとも“睡眠”が大事

発達脳科学者として35年以上さまざまな特性を持つ子どもを診てきた成田奈緒子先生。不登校の原因は子どもによってさまざまで、必ずしも「ふたたび学校に通うこと」がゴールではなく、学校に行かないことも選択肢のひとつで、どうにか学校に行かせようとするのは間違いなく逆効果と言います。

また、子どもが不登校になったという出来ごとは、親が家族のあり方や子どもへの向き合い方を見直すチャンスでもあるとも。学校や勉強のことはひとまず横に置いて、まずは家庭の穴ぼこを埋めるのが先決と言います。

「『不登校は親のせいだ』と言いたいわけではありません。でも、不登校の原因がどうあれ、親が、つまりは家庭が変わらないと、子どもの苦しい状態は変わらないのです」(成田先生)

親と家庭が変わる手段として、成田先生が言い続けていることはひとつ「睡眠をとらせれば、子どもはよくなる」。早寝早起きの生活リズムを整えて、朝ご飯をちゃんと食べることです。

子どもだけでなく、親も寝ないとダメ。大人も十分に寝て脳を休ませないと、悲観的なことしか考えられなくなるからです。「親子でしっかり睡眠を取れば、笑って話せるようになります」と成田先生は言います。

生活リズムを整えて改善しなかったケースはゼロだったと断言します。成田先生は、無気力な子どもや、親に反抗的だった子どもが、生活リズムを整えて見違えるように変わっていく姿をたくさん目の当たりにしてきました。

何はさておき「早寝早起き朝ごはん」、まず「これだけは守る!」と決め挑戦する価値は十分ありそうです。

➡注目記事➡ 発達脳科学者が断言 「子どもが不登校」の保護者が変えるべき「生活リズム」と「親の姿勢」

4)サボリじゃなく起きられない「起立性調節障害」

朝起きられない子どもの中には「起立性調節障害」というケースもあります。朝に自律神経がうまく機能せず、体調不良が起こるため学校に行きたくても通えない症状で、近年、小中学生で増加傾向です。

昼以降は改善することが多いため親は「頭痛いってウソだったのね!」と誤解しやすい面も。発症しやすい子どものタイプ、親の対応、病院のかかり方など、作業療法学博士の野藤弘幸氏に詳しく聞きました。

「起立性調節障害と診断される年齢は小学校高学年から中高生が中心ですが、幼児期からその兆候が見られることもあります。就学前から寝つきが悪く眠りが浅い、朝の機嫌が波打っている状態などが続く子は、身体の様子を十分に見てあげる必要があるかもしれません」(野藤氏)

特に気をつけてあげたいのが、注意力の狭さと感受性の敏感さ、2つの特性を合わせ持つ子どもです。

「『感受性』『注意力』という視点で常に子どもを観察していれば、不調のシグナルに気づき、その時々で必要な対応をとることができますよね。(中略)
表に出てくる『困った行動』を子どもの気持ちの問題だとすまさず、幼児期から子どもを理解しようとする思いを持ち続けてほしいです」(野藤氏)

➡注目記事➡ 「起立性調節障害」発症のリスクあり 「感受性」と「注意力」に特性のある子は「幼少期からの対応」がカギ

5)小島よしおさんが語るSNSと不登校

子どもに大人気の芸人・小島よしおさん。イベントなどでは子どもから「学校に行ってないんだ」と打ち明けられることもあるそうです。特に最近の子どもとSNSの関わりを危惧しています。

実は小島さん自身も過去にSNSで非難され、つらかった経験があります。以前、アニメの吹き替えに抜擢されたとき、SNSで「小島よしおなんか使うな!」と書かれ、反対の署名運動まで起きました。

いい気持ちはしなかったものの、そのときは完全にスルーし、結果的にスルーして良かったと語ります。

「僕が応戦していたら、自分の拳も相手の拳も傷つくし、相手は拳のおろしどころがわからなくなったかもしれない。(中略)自分を守るためにも。戦わないっていう戦い方もあると、僕は思います」

SNSで苦しむ子どもたちには、まず自分自身を守ることを最優先に、と語ります。「スルーしても何も変わらない場合は、まわりの大人にも相談して作戦を考えましょう」(小島さん)。

2024年2月に1児のパパとなった小島さん、もし将来、わが子が「学校に行きたくない」と言ったらどうする? という問いにも真剣に語ってくれました。

➡注目記事➡ 小島よしお「非難するSNSとは戦わない わが子に『芸人やめて』と言われたらまず謝る」

6)今こそ学校教育の変革期

認定NPO法人「フリースペースたまりば」理事長の西野博之さんは、1980年代から学校に行けない子どもたち約2000人をサポートし続けた、いわば不登校のプロフェッショナルです。

この40年で不登校に対する風当たりや制度は大きく変わりました。「喜ばしい変化もあった」と前置きしつつも、「不登校30万人時代の今こそ、日本の教育システムの変革期」と西野さんは語ります。

ではどう変わればいいのか、それは学校に行かない子どもたちの声にたくさんのヒントがありました。

「一人一人の『好き』が生かされないのが、学校で続く今の学びの形です。(中略)人は何のために学ぶのかといえば、幸せになるために学ぶのですから。子どもの『命』を社会の真ん中に置いて、教育システムを考え直す必要がある。子ども自身が学びたいことを学びたいときに、学びたいように学べる社会に、変わる必要がある」(西野さん)

まだまだ課題はたくさんあるものの、西野さんはこれからも「大丈夫のタネ」を、社会にまき続けていくと言います。

「大丈夫のタネ」をまくとは、学校に行けずに苦しんでいる子どもには「なんとかなる。“だいじょうぶ”だよ」と伝え続け、学校に行けない我が子を不安に思う親たちには、「僕がまき続ける『大丈夫のタネ』をしっかり受け取り、大事に育ててくださいね」と繰り返し伝えること。

西野さんの「我が子が学校に行かないことを不安に思い悲しむのはもうやめにしましょう」というメッセージをしっかり心に刻んでおきたいです。

➡詳しくはこちら➡ 不登校の子どもたち 1980年代から2000人に寄り添った専門家が説く「根本原因」と将来の姿

7)YouTuber葉一さんの「学校行きたくない」を救った母

勉強指導をする教育系YouTube番組「とある男が授業をしてみた」で、チャンネル登録者数209万人(2024年12月現在)という絶大な人気を誇る葉一さん。実は中学のころ、イジメられて苦しんだ経験があります。

どうにもつらくて「学校を休みたい」と伝えた日、葉一さんは母親の“普通すぎる”接し方にとても救われたと言います。

「母親に『休みたい』と言うと、何も聞かずに『わかった』と休ませてくれました。母もパートが休みだったら、「じゃあ、ご飯食べに行こうか」と言ってくれたりして。学校が普通じゃなかったから、家は普通だったことが私にはとっても幸せでした」

そのとき母親が葉一さんのイジメに気づいていたかどうかは定かではないそうです。それでも家が普通で心地のよい居場所であり続けたことが、当時の葉一少年を大きく救ったのでしょう。

親は学校に行かない子どもを家でどう見守ればいいのか、「学校に行きたくない」と言われたらどう受けとめるべきかを伺いました。

「まずはSOSを受け止めてあげてください。学校が苦しい場所になっているのに、家まで苦しい場所になったら逃げ場がなくなります。高校に入ってからは、人間関係もリセットされて楽しい学校生活を送りました。つらい毎日を送っている子どもたちも、今がずっと続くわけじゃないことは忘れないでほしい」(葉一さん)

子どもとの会話の糸口が見えなくとも、腫れ物のように接する必要はないとも。

「親側も接し方に悩むと思いますが、そこはまず大人側が『普通に接する』という姿勢を見せてあげてください。(中略)不登校の子どもに対して、親が最優先ですべきなのは𠮟咤激励でも悩む姿を見せることでもありません。家の中を安心して過ごせる『普通の場所』にすることです。そうすれば、子どものエネルギーが徐々に充電され、自分の意思と力で行動できるようになっていきます」(葉一さん)

➡注目記事➡教育系YouTuber葉一 「イジメ」に苦しんだ中学時代を救った母親の“普通すぎる”態度

8)「学校に行かない選択」は勇敢な一歩

全国の学校を訪問し、授業や部活など“生の学校現場”を見続けている教育ジャーナリストのおおたとしまささん。これまで不登校に悩む親も多く取材してきました。

学校の良い面も悪い面も熟知しているおおたさんは「学校へ行かない」選択をした子は、自分自身を守る“勇敢な第一歩”を踏み出したと言います。そんな子どもがまず最初にやっておくべきことは、親をあきらめさせること。

なぜならば、親は「学校に行かせなきゃ」という強迫観念を捨てることで、初めて子どもと向き合えるし、さらに親も次の一歩を踏み出すことができるからです。

「今のキミは、キミにしかできない貴重な経験をしている。キミにしか見えない風景を見ている。それはいつか必ず役に立つ。キミの大きな武器になってくれる。(中略)不登校になったからといって、キミはキミのままだ。何もあきらめなくていい。幸せになる方法は無限にある」

と今悩んでいる子どもたちへ力強いエールを送ります。また子どもの不登校で戸惑う親には、「できることはほとんどありません。子どもが骨折したときに、親が骨をくっつけてあげられないのと同じ」とバッサリ。

かといって子どもをほうっておけというわけでもありません。学校へいけなくなった子どもは、広い意味で傷ついた状態にあり、エネルギーが空っぽで元気がない。まずはゆっくり休んでエネルギーを回復させるのが最優先で、そのときに欠かせないのが「お父さんやお母さんは、今までと変わらずに自分のことをそのまま見ていてくれる」という安心感が必要だと言います。

中学受験に関する著書も多数のおおたさんですが、中学受験も不登校も「親は結局、待つことしかできない」とも。

待つだけとは親にとってつらくもどかしい時間かもしれません。そんなときは「親の会」のようなところとつながって、同じ境遇の親と話すことで、気持ちがラクになる、心の余裕を作る意味では大きな意味があるともアドバイスしています。

また、子どもを見守る姿勢は正面から見るのでなく、横顔を見るぐらいがちょうどいいとヒントをくれました。

「横顔はちょっと油断しているので、その子のありのままの内面が映し出されます。この子なりに必死に戦ってる様子は真正面からだと見えてこないんですよね」

親もオロオロと動揺していい、でも、悩みはしても悲観する必要はないと言いきります。

「学校に行こうが行くまいが、あなたの子どもが素晴らしい存在であり、未来に無限の可能性が広がっていることには、まったく変わりないんですから」(おおたさん)

➡注目記事➡ 不登校のキミへ…「親にあきらめてもらうことが大切」 教育ジャーナリスト・おおたとしまさの助言

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いかがでしたか。当たり前のことですが、不登校の子どもの数だけ「学校へ行けない」理由があり、原因も立ち直り方も、元気になる時期もさまざま。「これをやれば絶対大丈夫!」といった正解はありません。

たくさんの有識者や著名人のメッセージを紹介しましたが、今悩んでいる子どもと親へ、この話の中のひとかけらでも何か響くものがあればと願っています。

最後に不登校の取材で多くの方々が口をそろえて言っていたのが、「不登校の経験は決してマイナスにならない」ということ。子どもはもちろん、親にとってもです。

不登校をなげく時代はもう終わりつつあるとも強く感じます。学校に行けないわが子のことで、不安や怒り、悲しみにおそわれる日、これらの記事をふと読み返してみると、新たなヒントが見つかるかもしれません。

文/谷崎八重

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