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【寺島進インタビュー】下町の畳屋さんの次男坊「深川を忘れたら、寺島進じゃなくなるから」

さんたつ

生まれも育ちも深川。地元では、今も子供時代と同じ、「ムーちゃん」が通り名だ。 かくれんぼをした藤棚に、雪の日に忍び込んだ清澄庭園、裸に革ジャンでキメた高校時代。アニキのやんちゃな軌跡をたどって。

寺島 進 Terajima Susumu

20代は実家で畳張りのバイトも。「一畳500円だから目標20畳!」。高給です。清澄橋にて。

東京都深川出身。畳屋の次男坊として生まれる。松田優作が監督した『ア・ホーマンス』でデビュー。以後、北野武監督の映画には欠かせない存在に。2021年8月20日公開の映画『孤狼の血 LEVEL2』に出演。著書『てっぺんとるまで! 役者・寺島進自伝』(ポプラ社)発売中。

──「柵ってこんなに低かったっけー!」と言いながら、清澄庭園をのぞきこむアニキ。

寺島 : 清澄庭園、懐かしいなア。小学生の頃さ、友達と一緒に柵乗り越えて忍び込んだことあんの。雪の日で、大通りの雪はどろどろなんだけど、庭園の中はきれいな雪が積もってるわけ。ちょっと丘みたいになってるところで大はしゃぎしてたら、管理人に見つかって、事務所に連れてかれて人生初の“取り調べ”。子供なのに、両手の指紋全部取られたんだから!

──すでに、刑事ドラマの世界です。

寺島 : 家の電話番号教えろって言うから、「絶対に電話しないって約束するなら教える」って、交換条件出して。そしたら、「わかった。でも指紋は、深川警察に10年保存されるからな」って脅されて、ビクビクしながら家に帰ったんだけど、結局電話はなかったんだよなぁ。管理人のおっさん約束守ったんだよ。

畳の裏でオトナなダーツ。少年進の照準は……?

──仁義の深川、登場人物のキャラが立ってそうです。

寺島 : 面白い大人がいっぱいいたよ。じいちゃんの代からうちは畳屋だったから、住み込みの職人がいて。中でも銚子出身の柴さんって人は任侠映画に出てくるような顔つきで、も〜やんちゃ。畳の寸法を測る時、墨(習字の固形墨)を使うんだけど、あれで畳の裏に女の裸の絵を描いてさ、畳針をパヒュンって投げんの。どこに当たるかって。

──進少年もそのアダルトな畳ダーツを?

寺島 : うん、おっぱい目掛けてね。俺、映画「トラック野郎」とか好きなガキだったから。主人公の桃さん(菅原文太)に憧れて、自転車もデコチャリに改造したもん。新大橋の電飾売ってる店でライト買ってさ、ドロップハンドルにして。錦糸町のゲームセンターに通ったよねえ。そしたらある日、界隈でめちゃくちゃ強い兄弟コンビから、「おめえ、そんな生意気な自転車乗ってたら、帳面つけるぞ」って。

──帳面……。

寺島 : 不良界のブラックリストだよね。俺、目立ちたがり屋だったから。中学から、髪はサイドバックのリーゼント、それに先輩から受け継いだ中ランに、ズボンは砂町銀座の店でぶっといのを注文してさ。ところが朝、気合い入れてさあ行くぞって思ったら、ズボンが細くなってんの。おふくろが夜なべして、特注ズボンを細くしちゃったの!

──母心です(笑)。サイドバックの少年は喧嘩もお強く?

寺島 : 深川公園で1対3で囲まれたことがあって、その時は負けて、すごく悔しくてね、それで最強兄弟コンビに入門したの。

──え? え! 帳面つけるご兄弟に?

寺島 : そう。ミットとかグローブとか色々持ってんのよ、兄弟コンビは。公園で子供たちに異様な目で見られながら、兄弟にパンチの特訓してもらったよ。あと家で毎日鏡見てガンつける練習。バカな時代だね。けど、ヤクザ役に役立ってると思う。何事も積み重ねの努力ですよ!

「今、息子に公園で英才教育中。ジャブはこうだ! なんて」

──そんなわんぱくライフの一方で、深川第二中では野球部だったとか?

寺島 : 俺はセンターの5番。江東区の1年生大会では優勝。決勝戦で初ヒット打ったのよ。相手はすごい評判のピッチャーで、源五郎丸洋って知ってる?(1982年〜86年の阪神の投手です!)全員三振のまま俺の番になって、バットを夢中で振ったら偶然当たったの。そこから0対0の延長戦。最後は2アウト満塁の大ピンチになるんだけど、ここも俺がハイライト。セカンドとショートの間に飛んできたフライをキャッチ! でも結局、勝負つかずで、最終的にじゃんけんで勝った(笑)。

中学時代、一つ上のきれいな先輩に会いたくて通った深川図書館。

──いろいろ持ってるアニキですが、高校は亀有へ?

寺島 : そう、葛飾野高校ね。そこではハンドボール部。やんちゃな先輩がいっぱいいてカッコ良かったんだよ。OBはみんなボンタンジャージで肩に国士舘とか入ってんの。厳しいけど優しくてね。1週間の仮入部すると、7日目は近所のスナックで、「じゃ乾杯、明日からよろしくな」って。有無を言わさず本入部、というのがしきたり。

──……スナックで、ですか。

寺島 : そうよ。16歳の時には、地元の神輿保存会の「深川祭明会」に所属して、そこでも諸先輩に目をかけて頂き、スナックに連れてってもらった。「進、あのホステスにはちょっかいだしちゃだめだぞ。どこそこのコレだから」なんて。ホステスさんからはマッチの火の付け方とか、灰皿の取り替え方とか、教わって。でも深川の不良の先輩は、みんな筋道が通ってるから。「神輿やってる時は酒を飲まない」とかね。普段は午前様なんだけどね。

犬の散歩をした川沿い。「メスだから『お嬢』。でも結局『ジョー』に」。

デートもライブも勝負服は、裸に革ジャン

──十代で午前様。一体何を?

寺島 : 錦糸町か、よく行ったのは白河の煮込み屋さん。本物のコワモテの人が来る店で、中学時代の不良の先輩に「お前、あそこ行ってんの!?」って怒られたよね。午前様ばっかりしてたら、ある時、おやじが合鍵をくれたよ。明け方、俺が「鍵開けてくれ〜」って起こすもんだから。実家の合鍵もらった瞬間、俺大人扱いされんだなぁって、勘違いしたよね(笑)。

──地元の走り屋にもご参加されていたとか……?

寺島 : つっても、人に迷惑かけるようなことはしない硬派よ。バイクの集合管の音が遠くから聞こえると、おふくろが、「ああ進の友達が、また来たよ(ため息)」って。パンチパーマとか茶色い髪のやつらが、畳屋に「お邪魔します」なんて。みんな礼儀正しいから。

──集合管仲間と家では何を?

寺島 : ギターの練習。高校生活の記念になんかしてーなあって、バンドを組んだの。俺はボーカルとアコースティックギター。ファッションは、矢沢永吉さんが好きだったから白のバギーに裸に革ジャン。あとねじり鉢巻き。

──革ジャンと鉢巻きですか?

寺島 : 深川じゃみんなノーヘルでバイク乗る時、ねじり鉢巻きするの! 友達から「テラ、明日のデートどんな格好がいいかな」って相談されたら、やっぱり「裸に革ジャンだろ」ってアドバイスしてた。一番間違いないから。

──バンドではライブも?

寺島 : 新小岩で4バンドくらいでやったよ。俺らはロックンロール。他のバンドの女性ボーカルに「寺島さん、声いいね」って言われたの。自分の声が嫌いだったから、うれしかったな。

──俳優を目指したのは?

寺島 : 親父は畳屋を継いでくれたらうれしかったんだろうけど、畳が斜陽の時代になってね。親父は中卒で、否が応でも店を継がなきゃいけなかったから、俺には「好きな道でやったらどうだ」って言ってくれて。そしたら深川祭明会の先輩が、「進の余興は面白いし、目立ちたがり屋だから、そういう業界がいいんじゃない?」って。自分でもそうかもな、やってみるかって。
そしたらたまたま成城にある三船芸術学院っていう養成所のパンフレットを持ってる人がいて、そこからだよね。成城行って驚いたよ。どの家も城みたいで生意気だな!って(笑)。

──そこから、殺陣やスタントを学び、やがて北野武映画でも欠かせない俳優へ。

寺島 : 北野監督は、俺が大部屋俳優だった時代に、「今売れてなくても死ぬ間際に天下取ったら、あんちゃんの勝ちだからよ」って言ってくれた育ての親だよね。もう一生、頭上がんない。俺、映画の『あの夏、いちばん静かな海。』に出た後、監督がアメリカ映画に出るって聞いて、ロサンゼルスまで行ったもんね。タチの悪い追っかけ(笑)。

「ここは昔からある喫茶店。居心地いいよ」。喫茶『つかはら』にて。

憧れのあの人を追って、アメリカ縦断の旅

──アメリカまで、追っかけですか!

寺島 : 尊敬する憧れの人がアメリカ行くなら、俺も行きたいって思って。その前に松田優作さんが、リドリー・スコット監督の映画『ブラック・レイン』に出た時、アメリカまで見学しに行ったって仲間がいて、俺も行けば良かったって後悔したから。
でも、北野監督はいつ行くかわかんない。ロサンゼルスで待機してんのもなんだかなぁって思って、せっかくだからニューヨークにまずぼーんって行って、ロサンゼルスまで監督が来る日にちを逆算しながら、グレイハウンドバスで一人旅をしながら行くことにしたわけ。

──胸が踊るアメリカ大陸横断の旅ですね。北野監督の渡米日時はどのように知って?

寺島 : 『あの夏、いちばん静かな海。』が終わった頃だったからね。北野監督の事務所に、「トラックの男をやらせていただいた寺島って者なんですけど、監督がアメリカに行くのはいつですか?」って電話して。始めはガードが固かったよ〜。でもコツコツ連絡するうちに、ちょっとずつ教えてくれるようになってね。移動のたびに「いつ来ます? いつ来ます?」って。まずニューヨークから電話し、次にアトランタで電話し、次、ニューオーリンズから電話し……。

──だんだんと、ロスと北野監督へと肉迫していくわけですね。

寺島 : そう。当然車中泊もあって、夕方に出発すると、翌日の午前11時ぐらいに次の休憩所に着くんだけど、エルパソ行きのバスの中で朝、目ぇ覚めた時、俺、タバコが吸いたくなっちゃってさ。休憩所まで待てなくて、トイレで気持ちよく一服したの。そしたらトイレから出てきた瞬間、運転手が車内アナウンスでなんか言ってんだよ。英語はわかんないんだけど、「スモーキング」はわかるわけ。

テキサスのど真ん中で、「ゲットアウトヒア!」

──ヤな予感がしてきました……。

寺島 : 席に戻って、そっとバックミラー見たら、運転手とピッて目が合って、「俺?」って自分を指さしたら、「そうだ、ちょっと来い」って。グレイハウンドバスの運転手さんて、すげえ訓練されてるんだよ、トイレでタバコ吸った瞬間、わかるんだよ! それで、「ネクストバスストップ、ゲットアウトヒア! 次のバス停でお前降りろ」って言うわけ。ちょっと待ってよぉ〜、ここテキサスのど真ん中じゃん! って。

──見渡す限り土、みたいなところですか?

寺島 : うん、もうまっ茶色。こんなところで降ろされたら、俺、日干しになっちゃう。それで和英辞典出して、「反省」ってひいて、これこれ、って英単語を指差したんだけどだめで。アメリカって、いきなりレッドカードなのね。

──文字通り一発退場で、降ろされた。

寺島 : 仕方なくしばらく歩いたら、部品屋とかピザ屋さんがあったの。腹も減ったし喉も乾いてるわけ。それでピザ屋に入って、なんせ、まずビール注文したんだよね。そうか、俺は今、日光かんかん照りのアメリカの大地の上で、楽しめってことなんだなって切り替えたよ。ピザ屋のビールが、んまぁうまかったねー!

──スーパーポジティブシンキング、です。

寺島 : 近くにガソリンスタンドに止まってる車を見つけて、ロサンゼルスまでヒッチハイクしようとしたんだけど、「オレはフロリダに帰んなきゃいけない。逆だからダメだ」って。「じゃあどうすりゃいいんだよ?」って聞いたら、「あの部品屋がバス停だから、あそこで待ってりゃいいよ」って。単語並べるだけだけど、がむしゃらだから通じるよね。部品屋に次に来るバスは、16時40分。降ろされたのが10時40分。1日に2便しかない最終に乗れるんだから、俺、すごくラッキーだよね!

──北野監督に会えるのか、だんだん不安になってきました。

寺島 : 6時間待ってりゃいいんだから。またビール飲んだり、部品屋に来たトラックの荷台に乗ってるワンチャンに「お前も一人かあ。俺も一人なんだよ」なんて言って。馬房みたいな馬を乗せた大きなトラックも来て、馬に向かって「お前も、ひとりぼっちかぁ」って。犬や馬と遊んでね。馬に、雑草ちぎって「お前これでも食え。そんなところに入れられちゃってかわいそうだなあ」なんてやってるうちに16時過ぎてバスが来た時は、ホッとしたよ。
やっとロサンゼルスに着いてホテルにチェックインしたら、オフィス北野から電話かかってきたんだよ!「監督はもうそろそろロサンゼルスにつく予定です」ってデスクの人が。

──……ああ良かった。

寺島 : ホテルで待ってたら森社長と北野監督が迎えに来てくれて、「あんちゃん、ちょっとうちのホテルで一杯しよっか。何、アメリカ一人旅してたんだって?」って監督が言うわけ。「なんか面白いことあったか」って聞かれて、「テキサスのど真ん中で、タバコ吸ったらバスから降ろされちゃいました」って話したら、監督がゲラゲラ笑ってさ、「うちのやつらは無茶ばっかりすんな!」って。その時、「うちのやつら」って言ってくれたのが、すっごくうれしかったよね。こないだも久しぶりに現場で会ったけど、70とは思えない。エネルギーがバリバリなんだよ。いまだに北野監督に会うと緊張するけど、幸せなことだよね。

リヤカーのラーメン屋台をやってみたい。役じゃなくて

祭りの時は神輿が連なり縁日が並んだという、高橋のらくろード。

──そうして、順調に役者の道に進むわけですが、地元深川の方はどんな反応を?

寺島 : ちょうど俺が養成所に入った頃かな。俺をかわいがってくれた先輩にばったり会ってさ。「進じゃねえか、飲みに行くか」っておでん屋台に行ってさ。「そういう世界に行くなら、覚悟決めてやれよ。でもどんなに売れても、深川を忘れたら、寺島進じゃなくなるからな」って。なんだか胸にぐっと来たよね……。

──ボディブローのような一言です。今、やってみたい役は?

寺島 : そうだなぁ。人間ってやっぱりレッテル貼られちゃうじゃない? だからヤクザ役ばっかりやってると善人やりたくなるし、善人ばっかやってると、ヤクザやりてぇなって思うよね。

──今はどちらで?

寺島 : ヤクザ、やりたいね! 映画『孤狼の血LEVEL2』でヤクザ役が来た時、うれしかったもん。ヤクザ役は、俺の原点だから。あともう一つ。自粛生活で、自分の料理のセンスに気づいたのよ。もう楽しくて。
昔のラーメン屋台みたいなの、やってみたい。役じゃなくて。
子供の頃、浅草から隅田川渡ってリヤカーのラーメン屋台が来たんだよ。ぷるる〜るるぅ〜って。屋台って麺を茹でる鍋の横に、チャーシューに海苔、メンマなんかが入ってる箱があるじゃない? あれが魔法の引き出しに見えたよね。屋台であの独特の醤油ラーメン作りたいね。

──屋台を引くヤクザ俳優。隅田川“新名所”になるかもです。

寺島 : まだまだ、こんなもんじゃないから。深川の寺島進は!

【今回さんぽした、寺島進の思い出スポット】

八名川公園

母校・八名川小学校に隣接された公園。「子供の頃、ラジオ体操に来たり、園内に設置されたでっかいプールで、ドジョウすくいなんかやったね」。

深川神明宮

「ここ。深川発祥の神社なんだよ、知ってる?」。神明幼稚園に通い、祭りの時にはここから神輿を運んだ。氏子でもあり、思い出深く神聖な場所。

つかはら

高橋のらくろードにあるレトロな喫茶。創業40年。自慢はミックスジュース。バナナに桃に牛乳にコンク2種などこだわりの一品。 レシピを言い当て(半分だけ)「うん、旨い」とつぶやき真顔で飲み干すアニキ。 ナポリタンもお気に入り。

●8:30〜20:00、水休。☎03-3635-6599

取材・文=さくらいよしえ 撮影=加藤昌人

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