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87歳。「70過ぎて銀座で喫茶を始めたの。私、歳のことなんて考えないのね」 生涯現役|東京・住吉「ラ・ポーズ」中澤公

料理通信

世間では定年と言われる年齢をゆうに過ぎても元気に仕事を続けている食のプロたちを、全国に追うシリーズ「生涯現役」。超高齢社会を豊かに生きるためのヒントを探ります。


中澤 公(なかざわ・きみ)
御歳87歳 1938年(昭和13年)2月11日生まれ


鹿児島生まれ。高校卒業後上京して東京・四ツ谷の美容学校へ。美容師として働く。その後、「中澤かつら店」の中澤利晃さんと結婚。長らく家業を支えたあと、70歳前後に縁あって銀座の一等地で喫茶店を開業。店名は“憩いの場所”という意味の「Ra pause」に。2022年、住吉に移転。大切な家族に振舞うような、シンプルで丁寧な心のこもったばぁーばの料理とお菓子で人気を博す。


(写真)厨房に立つ中澤公さん。「できる料理しか出せないから」と生姜焼きやパスタなど、メニューのすべてはシンプルでおいしい家庭料理。食の好奇心が旺盛で、料理研究家のいとこと、月1度は着物を着て馴染みの老舗割烹店に通う。


「ナポリタン」(¥1,000)。ケチャップとウスターソース、ほんの少量の牛乳を加えてマイルドに仕上げる。過剰な演出はなく、中澤さんの几帳面さが伝わるきりっとした味。

喫茶はイチから学校で学びました

私、鹿児島生まれなんです。美容学校に行くために上京して、美容師をやってたんです。お友達の家が銀座のかつら屋で、お店は歌舞伎座の裏にあって、そこで友達の兄だった3代目の夫と出会ったんです。夫は歌舞伎座で床山の修業を積んで、日本舞踊や演劇用のアミかつらを手がけていました。


嫁いでからは、日々忙しくてね。なにしろ、父母、小姑2人、子どもたち、職人さんたち、それに母よりも古くから働いてたようなおばさんが3人、10時頃来るんです。昔のことだから、まずお茶出して、お昼出して、お三時出して、夕飯まで食べてもらう。私は子どもたちを乳母車にのせて野菜を買い出しに行って。それまで大勢の食事を作ったことがなかったから、本を見てね。ともかく、忙しかった。しかも家族の食事時間がバラバラで、好きなときに食卓に来てちょこっと食べる。そのたんびに温めたりしなきゃいけない。今思えば大変だったけど、若いから何とも思わず、やっちゃってたんです。


それから、ずっとあとのことなんですけど、近所に好きな喫茶店があって、ちょこちょこ行ってたんですよ。ご夫婦でやってらしたんだけど、ご主人が亡くなられて、奥さんは「ひとりじゃとてもやれない」ってことで、1年半ぐらいほったらかしだったんです。それで、にわかにやってみたいという気持ちが出てきちゃって。それが、コロナになる数年前のこと。そう、つい最近ですよ。70歳は超えてました。夫に話したら「自分の年を考えろ」って言われたんですけどね(笑)。私は歳のことなんて、全然考えないのよね。


その喫茶店の奥さんに「私、やりたいんですけど」って言ったら、「同じ町内会だし、中澤さんならいいわよ」って。ただね、素人だから、ちゃんと学校に行きなさいと言われて、中目黒のお教室に通いました。普通なら半年ぐらい通わないといけないんだけど、もうすでに家賃も発生してるから、先生にも事情をお話して駆け足で3カ月ぐらいで修了にしてもらったんです。


先生はお店に来てくださって、私がやるのをじっと見てて「OK」と言ってくださって。それからスタートしたんです。今もですけど、コーヒー豆とか、必要なものはお教室からの紹介。でも、なにしろ銀座でしょう。お家賃は高かったですよね。5坪ぐらいだったんですけど、ま、コロナもあって、この住吉に越してきた。それが2022年5月。銀座のときはギュッと詰まっていたけれど、ここは24坪ぐらいあるから、テーブルとかもゆったり配置できてます。


喫茶店の中に鏡台があるのは、夫のかつらの仕事用。仕事場は上にあるんですけど、簡単に合わせるときに使っています。


メニューに挙げてるお料理とかお菓子は、うちで作っていたもの。
「ばぁーばのおいしい手作りSweets」と命名したのは娘です。いま、月曜だけ手伝ってくれていて、在庫の管理とかしてくれるから、助かってます。
最初はカレーは置いてなかったんですけど、「カレーないの?」とよく聞かれるので、オンメニューしました。どんなカレーがいいか考えたんだけど、結局、おうちカレーがいいってことになりました。一番人気はナポリタン。ケチャップとソースを少しだけ煮詰めてからパスタに絡めるようにしています。そうするとマイルドになるので。できるお料理しかできませんからね。


1日のスケジュールですか。毎朝6時頃起きて、体温を計ります。
それからスムージーを作って飲む。昔っから我が家の朝ごはんはスムージで、ヨーグルトやリンゴ、キウイ、甘酒、小松菜、梅干しをほんのちょこっと入れて作ります。皮も入れます。それだけで、もうおなかいっぱい。それから9時半頃お店にきて、お掃除して下ごしらえて、足りないものを買いに行って11時オープンで17時まで。よく、何曜日が混むなんていうけど、うちはいつもばらついて予測不能(笑)。ヒマだと腰掛けてます。


お昼はご飯にミートソースかけたりしていただきます。パスタは面倒なんですもの(笑)。夜は、この近くに魚屋さんがないので、冷凍しておいた切り身などで夕飯を作ります。寝る前にちょびっとナイトキャップも。


一時、足が痛かったんだけど、いまはまったく痛いところなし。毎日、お店の中を歩くのがいいのかしら。ともかく、元気です。


住吉駅から徒歩4分。大通りから少し入ったところにあるので、見つかりづらい穴場。

菓子づくりは店を始めてから本格的に挑戦。「娘のリクエストに応じながらメニューを増やしました」(中澤さん)

毎日続けているもの「ナポリタン」


◎ラ・ポーズ
東京都江東区住吉2-12-7
☎︎03-4363-1135
11:00 ~17:00
日曜、祝日休
都営新宿線住吉駅より徒歩4分
Instagram:@rapause123


■ご意見・情報はメールで(info@r-tsushin.com)


(料理通信)


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