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METオーケストラが6月に来日 メトロポリタン歌劇場音楽監督のヤニック・ネゼ=セガンが会見で公演の注目点を語る

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メトロポリタン歌劇場音楽監督 ヤニック・ネゼ=セガン

2024年6月、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場のオーケストラであるMETオーケストラが13年ぶり、オーケストラ単独では初の来日を果たす。音楽監督の指揮者ヤニック・ネゼ=セガンが、日本の報道陣のために米国からオンライン会見に臨んだ。

2種の来日プログラムのうち【プログラムA】は、ワーグナーの『さまよえるオランダ人』序曲、ドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』による組曲(エーリヒ・ラインスドルフ編曲)に、メインはバルトークの歌劇『青ひげ公の城』の演奏会形式上演というオペラ・プログラム。『青ひげ公の城』のユディット役にメゾソプラノのエリーナ・ガランチャ、青ひげ役にはバスバリトンのクリスチャン・ヴァン・ホーンが来日する。

METオーケストラ

「『青ひげ公の城』はドラマチックなあらゆる色彩のパレットの表現が要求される作品です。私は、バルトークはワーグナーの影響を受けていたと思います。特に『青ひげ公の城』は同じ1幕ものの『さまよえるオランダ人』に影響を受けていると思うのです。いっぽうドビュッシーはワーグナーを強く拒絶していましたが、それはワーグナーの影響を強く受けていたからです。ですからワーグナーとドビュッシーはとても良い組み合わせだと思いますし、この2人の作曲家がいなければ、バルトークが『青ひげ公の城』のような傑作を作曲することはできなかったと思います。
バルトークのオーケストレーションにはさまざまなものが含まれています。オーケストラを聴くだけで舞台装置さえ見えてくる。それは、オーケストレーションが、歌をサポートするだけでなく、感情と想像力を与えるように構成されているからです。ある意味、『青ひげ公の城』は歌手がいなくても成立します。そのうえで、歌手たちが加わると、さらにパワフルな芸術作品になるのです。バルトークの天才たるゆえんです。
エリーナ・ガランチャは間違いなく現在世界で最も最も優れたメゾソプラノの一人です。ユディット役には、ドラマチックなパワーと声のコントロールを持ち合わせた歌手が必要です。エリーナはまさしくそれを備えた歌手だと思います。クリスチャン・ヴァン・ホーンも私たちMETのビッグスターの一人です。新しい世代の偉大なバスバリトンであると感じています」

【プログラムB】はマーラーの交響曲第5番がメイン。

METオーケストラ

「METオーケストラは歌劇場のオーケストラなので、交響曲の偉大な傑作を演奏する機会は頻繁ではありません。だからこそ、彼らは交響曲に何か特別なものをもたらすと感じています。マーラーの交響曲を数年に1回しか弾かない彼らの演奏には、まったく違うエネルギーがあります。METオーケストラには素晴らしいホルン奏者、トランペット奏者、弦楽器奏者、ハープ奏者、木管楽器奏者がいます。マーラーの交響曲第5番にはそれらすべてがフィーチャーされているのです。日本のみなさんにとって、METオーケストラの通常のレパートーリーではない、オペラ以外の作品でこの楽団の質を目の当たりにすることは、非常に興味深い体験になると思います。
私が観察しているいくつかの重要な要素に、まず“聴く”ということの質の問題があります。オペラ・オーケストラは、舞台で起こっていることに常に耳を傾け、歌手とともに呼吸をしなければなりません。そのことが、マーラーの交響曲では、シンフォニー・オーケストラとは異なる態度を生み出します。シンフォニー・オーケストラだと、縦線を合わせることがすべてというようなことが、残念ながらときに起こり得るのです。
もうひとつ。METオーケストラのように日常的にワーグナーやヴェルディの大作を手がけているオペラ・オーケストラにとって、長いといっても75分、80分のマーラーの交響曲を演奏することは何でもありません。そのことは、ペース配分の感覚やエネルギーのフローに、非常に異なったものをもたらします」

【プログラムB】では、華麗なコロラトゥーラであっという間に若きスター・ソプラノに駆け上がったリセット・オロペサの歌うモーツァルトのコンサート・アリア集にも注目。

「もしモーツァルトが生きていたら、きっと彼女に恋をしていたと思います。彼女はいまやヴィオレッタも歌えば、歌曲も歌います。そうした“文化”は、彼女の声を非常にパワフルな楽器に成長させました。とても深いレゾナンスを備え、非常に官能的でもあります。彼女はそのより深い響きを、素晴らしいコロラトゥーラを歌える能力を維持したまま獲得しました。歌手によっては、中音域がリッチになると、高音域が以前ほどではなくなることもあるのです。今回彼女と演奏する曲目はコンサート・アリアであり、声のヴィルトゥオーソ性が存分に発揮される必要があるアリアです」

音楽監督に就任して6年。現在のMETオーケストラは若いオーケストラだという。

メトロポリタン歌劇場音楽監督 ヤニック・ネゼ=セガン

「オーケストラにはいつも、経験豊富なミュージシャンも若いミュージシャンもいるわけですが、ここ数年はとりわけ新しいミュージシャンが増えたように思います。素晴らしいミュージシャンが加わりながらも、オーケストラは過去のクオリティを保ってきました。同時に以前とは違う響きも持っています。そうした面をこのツアーで披露できることを、とても楽しみにしています」

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