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ダンディでスタイリッシュな俳優・田宮二郎が知的で、冷静で、徹底した完璧主義者のジャンボ機の機長を演じ当たり役の一つとなった「白い滑走路」

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ダンディでスタイリッシュな俳優・田宮二郎が知的で、冷静で、徹底した完璧主義者のジャンボ機の機長を演じ当たり役の一つとなった「白い滑走路」

1953年にNHKが開局し、続いて民放初の放送局日本テレビが開局以来テレビはいつも、その時代を映し出してきた。小さな子どもたちから、おじいちゃん、おばあちゃんまで家族一同が集うお茶の間の中心にはテレビがあった。人々にはそれぞれの時代にやきつけられたテレビが映し出した映像が記憶にある。
残念ながら、テレビ離れが囁かれて久しい。視聴率も二桁取れれば及第点と呼ばれる時代だ。果たして今放送されているテレビドラマやバラエティ番組などは10年後の人々の記憶に残っているだろうか。タレントやお笑い芸人たちのバカ騒ぎ番組には辟易しているのに。本シリーズでは過去のテレビ番組から、時代の記憶をよみがえらせてみたい。 
 

 空港や航空機が舞台となる映画やドラマはドラマティックで心が躍る。その昔、飛行機の機長は男子にとってあこがれの花形職業だった。映画では、1970年にパニック映画の元祖と言われるバート・ランカスター、ディーン・マーティン、ジャクリーン・ビゼットらオールスターキャストによる『大空港』が公開された。シカゴの国際空港を舞台に航空業務に携わるさまざまな登場人物たちの物語が交錯する構成で、アカデミー賞10部門にノミネートされている。大ヒットし、エアポートシリーズとして第4作まで製作された。

 74年公開の『エアポート’75』では、チャールトン・ヘストンが元747機の教官を演じていた。77年公開の『エアポート’77/バミューダからの脱出』で主役の機長を演じたのは『アパートの鍵貸します』などで知られるジャック・レモンだった。79年公開の『エアポート’80』では、アラン・ドロンがコンコルド機の機長を演じた。機長の制服姿は、男前をワンランクアップさせてくれるような気がした。

 
 そして、日本で航空機の機長といえば、ドラマ「白い滑走路」の田宮二郎で決まりだろう。

「白い滑走路」は、74年の4月5日から9月27日までTBS系列で放送されていた連続ドラマで、時間帯は違うが同じくTBS系列で渡辺淳一原作の『無影燈』が「白い影」というタイトルで放送され主役の外科医を田宮二郎が演じヒットしたことから、〝白いシリーズ〟第2作と呼ばれた。ちなみに、「白い滑走路」の後番組が山口百恵の〝赤いシリーズ〟の第1作とされる「赤い迷路」で、TBS金曜21時枠での〝白いシリーズ〟と〝赤いシリーズ〟の交互放送が定着した。田宮二郎の映画、ドラマの代表作とされる「白い巨塔」は〝白いシリーズ〟とは無関係である。

イラスト:山﨑杉夫

 
 まず、ドラマのオープニング映像に惹きつけられた。日本航空の全面的な協力が大きかった。田宮二郎演じる杉山は、ボーイング747機種移行訓練のため、アメリカのモーザスレイク・グラントカウンティ空港で、訓練を受けている。実機やシュミレータが使用され、操縦室内でのやりとりで実際の航空用語が飛び交うが、「Flap two zero」「Gear down」などという専門用語は自然とおぼえてしまい、映像に合わせて杉山機長になった気分で思わず口をついて出るようになった。

 物語は、無事に試験に合格し帰国した杉山が、妻・綾子の失踪を知るところから始まる。杉山は仕事の合間に必死に綾子を捜す。一方で新たな恋の予感も。山で遭難し行方不明になっていた杉山の同僚の妻で、杉山の上司・尾形機長の娘でもある里子との接近、さらに、杉山に思いを寄せる日本航空のスチュワーデス(現・キャビンアテンダント)の薫もいる。そんな恋愛模様も物語に花を添える。

 里子を演じるのは「白い影」に続いての共演となる山本陽子。薫役には松坂慶子。尾形役は高松英郎、尾形の妻に風見章子、薫の父で割烹の主人に松村達雄、割烹で𦚰板として働き、薫に恋心を寄せる洋一に河原崎建三らのレギュラーキャストに加え、神山繫、高橋昌也、吉行和子、中条静夫、北村総一朗らも出演。医学部卒のハイジャック犯役で西田敏行も出演していた。

 
 ドラマが中盤にさしかかるころ、話題になったのは、まだ一度も登場していない妻・綾子役は誰が演じるのかということだった。視聴者からもテレビ局にリクエストが多く寄せられた。山本陽子の二役、小川真由美、岩下志麻、三田佳子、なかには引退した田宮二郎夫人で元大映女優の藤由紀子の名前を挙げるファンもいたらしい。最もリクエストが多かったのは浅丘ルリ子で、実際綾子役には浅丘ルリ子に決定した。田宮二郎も気になっていたらしく、浅丘ルリ子に決まったときには「ホッとした」と安堵の言葉をもらしたという。

 徹底した完璧主義者で、ジャンボの部品とさえ揶揄されるほどの冷徹で、人間味を表面に出さない杉山に、綾子は愛されていることの証を得ることができず失踪するのだが、里子との仲が気になり、自宅に戻り杉山を振り回す。綾子が登場するのは第18回の「夏の嵐」と19回の「別れの曲」で、浅丘ルリ子は2回だけの特別出演といった趣きだった。田宮二郎を間に、山本陽子と向き合うシーンはベテラン俳優3人の火花が散る華麗な見せ場だった。

 ピアニスト役ということもあり、綾子のイメージテーマとしてショパンのバラードや「幻想即興曲」が全編に流れていた耳の記憶がある。突発的な感情の起伏や、情念の表出を感じさせる即興曲やバラードは、綾子の心情を代弁しているようだった。そして、綾子が最後に弾くのはショパンの「別れの曲」だった。

 週刊「TVガイド」の74年5月17日号の表紙には杉山機長の扮装で田宮二郎が登場し、「白い滑走路」で田宮二郎の魅力が爆発したようだ、と特集も組まれている。杉山機長は、人一倍責任感が強く、折り目正しく生きてきた男で、田宮二郎その人の個性と重なる。田宮自身は「欠点だらけのボクがきちんと生きようとしてきただけなんだ」と発言しているが、共演の山本陽子は田宮のことを「ともかく完全主義者」と証言している。

 
 鶴田浩二、中村雅俊、片平なぎさ、緒形拳、田中邦衛らの出演のフジテレビ系連ドラ「大空港」があるが、空港または空港近辺で発生した事件を解決する刑事ドラマだ。また、「柔道一直線」の桜木健一主演で浅茅陽子、中山仁、松坂慶子、竜雷太、山村聰ら共演のTBS系の連ドラ「虹のエアポート」は、航空大学校や全日空が撮影協力しているが、パイロットを目指す若者たちの希望、失意などを描いた群像ドラマだった。若い世代にとっては航空ドラマといえば、木村拓哉や堤真一が全日空の国際線パイロットを演じたTBS系連ドラ「COOD LUCK!!」がなじみだろう。カッコいい俳優たちの姿は、航空業界への就職ブームまで巻き起こした。

「白い滑走路」は恋愛ドラマを主軸にしながらも、国際線のパイロットという主人公の設定により、日本航空のジャンボ機などの映像、管制塔とのリアルなやりとり、さらには、シアトルのボーイング社の工場、カナダのバンクーバー、コロンビア大氷河、サンフランシスコ、パリ、ロンドンなどの海外ロケもふんだんに盛り込み、骨格の太いスケールの大きなドラマになった。航空専門雑誌でも「ドラマを超えたドキュメンタリー」として紹介された。

 そして、田宮二郎の存在こそが、このドラマを時代を超えて語られ続ける航空ドラマの頂点と言わしめている。

文=渋村 徹

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