新ハリーとなる小野賢章「映画の吹き替えと同じ声!と思っていただけたら」 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』インタビュー
2022年からロングラン中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』がついに2026年12月でクローズとなる。ラストイヤーには10人の俳優によるハリー・ポッターが登場するが、中でも注目したいのは初参加となる小野賢章だ。映画版のハリーの吹き替えを12歳から10年間務め、その声に耳馴染みのある人は多いはず。小野に出演を決めた理由や吹き替えでのエピソード、この作品への意気込みを聞いた。
ーーハリー役のオファーが来た時はどのように思われましたか。
実は以前にもお話をいただきましたが、当時は年齢が合わないとお断りしたんです。小さい頃からハリーを演じてきたとはいえ、父親を表現するには若すぎる、と。それから数年が経ち、いよいよラストイヤーというところで、今までハリー・ポッターの様々なコンテンツに関わらせていただきましたが、もしかしたらこれがラストチャンスに近いのかもしれないと思いました。そこでもしチャンスがあるのなら頑張って挑戦しようとお受けしたんです。
ーー初演の舞台をご覧になったそうですが、感想は?
藤原竜也さんの回を拝見しました。最初は、わぁ、藤原竜也さんだ! ってワクワクして(笑)、でも途中からは藤原さんがハリーにしか見えなくなりました。物語が面白くてすっかり夢中に。人が消えた! と、一つひとつの魔法に感動しましたね。年齢を重ねて子供目線ではなく親目線で観るようになり、ハリーとアルバスの親子関係や血の繋がりなど考えるところがたくさんありました。舞台があまりにすごすぎて、自分が出るなんて全く想像もつかなかったです。
ーーこの舞台で気に入っているのはどんなところですか。
点と点が線に繋がる瞬間が面白かったです。そこが伏線で繋がっているんだ! ここが大事なシーンだったのか! と。こうした全体の構成は映画シリーズにも共通するところですね。要所要所でインパクトがあって、舞台だけどアトラクションに乗っているような感覚。これぞエンターテインメントだと感じました。
ーー宣伝ビジュアルでハリーに扮装なさっていますが、扮装した時の感想は?
今までもイベントなどで扮装したことは何度かあります。杖も3、4本持っています。しかし今回はいよいよ逃げられないところまで来た! もう後戻りできないと感じました(笑)。俄然、ハリーとして舞台に立つことが現実味を帯びてきました。
ーー舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』から19年後の物語。ハリーは家庭を持ち、父親になりましたが、息子アルバスとギクシャクしてスムーズな関係を築けません。このあたりの話は観劇した際、すっと腑に落ちましたか?
最初は全く腑に落ちなかったです。なぜなら、僕がハリーの声をやった最後は『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』。駅のホームでアルバスを見送るシーンで、その後どうなったのかは想像したことがなく、僕の中でのハリー・ポッターはそこで「完」でした。ですから舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のストーリーはとても新鮮で衝撃でもありました。
ハリーは両親不在で育ち、親とどうやって接するのかを知りません。そのせいでいざ父親になると、子供との接し方や子供の気持ちがわからず、対等に言い合ったりしてしまう。そこは苦労しているなと思いましたね。ハリーは主人公なのでいい人というイメージを持たれがちです。でも実は自分勝手なところもあって、決していい人の面だけではないんですよね。ある意味、そこは人間味があって面白いところかと。吹き替えをやっていた頃にハリーの人間性をそこまで意識していたわけではないので、今回の舞台で突き詰めていけたらと考えています。僕の中のハリーの印象が変わるかもしれませんね。
ーー他にもハリーをどのように演じるか、現時点で構想していることはありますか?
ハリー・ポッターの映画を吹き替えで観ていた方が、この言い方、この声は聞いたことある! と思っていただけたら、それが僕の強みだと思っています。と言っても、『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』の公開から約15年も経っているので、僕の細胞は何周も回って当時とは変わっているはず(笑)。もちろんハリーも年を重ねているので吹き替えをそのまま再現する必要はないのでしょうが、節々でそのニュアンスが出せたらいいなと考えています。まだ稽古前なので想像がつかないところもありますが、ゼロから作る気持ちでやっていきたいと思っています。
ーー舞台では声はもちろん、小野さんの身体を使って表現することになります。そこでハリーとしてどう見せるか、考えていることはありますか。
子供がいる、その説得力をどう出すのか。自分に実感がなさすぎて、そこは苦労するかもしれないと思っています。体格的にも僕は華奢な方だし、ハリーにしては若く見えたりするんじゃないかと思っていて。どう見せたら説得力が出るのか、稽古をしながら見つけたいです。
ーーハリーの吹き替えをやられていた頃に声の出し方や演じる上で意識していたことはありますか?
『ハリー・ポッターと賢者の石』をやったのは小6の頃で、お芝居をするというよりまだ習い事の延長に近い感覚でした。ですから、ほぼ自分のままでしたね。まだ本当に子供だったので、中学で1回も話したことのない先輩から「(ハリーの声を)やってみろよ」と言われて、「なんでやらなきゃいけないんですか」と断ったりもしました。ハリーも結構そういうところがありますよね(笑)。
お芝居を意識し始めたのは高校を卒業したくらい、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』あたりでしょうか。
ーーハリーと共通点を感じながら、ハリーの成長と共に年齢を重ねられたわけですね。
一番ありがたいと思うのは、自分の声変わり前の声が残っていることです。ハリー・ポッターの映画はまるで声の成長記録みたいで。ダニエル(・ラドクリフ)くんのほうが声が低くなるのが早く、僕も途中で声変わりが始まっているかどうかのチェックがありました。高いままだったら声が合わないから交代になるかも、という話があって、できる限り低い声で喋って何とかなりました(笑)。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』ではダニエルくんがお風呂に入っているシーンがあり、大人だなぁと感じたことを覚えています。
ーー映画シリーズが終わった時の小野さんの気持ちは?
『ハリー・ポッターと賢者の石』の頃はハリー、ロン、ハーマイオニーの3人でアフレコをやっていたんです。年齢を重ね、それぞれが高校生、大学生になるとなかなか一緒の時間が取れなくなって、最後は1人での収録でした。最後3人で録りたかったと思いましたね。全て終わった後に打ち上げがあり、そこで「ホグワーツ、ダンブルドア」と書かれた卒業証書をいただきました。そこで、わぁ、終わったんだ! と実感が湧きました。未だにその卒業証書は大切にしています。
ーーその意味ではこれだけ間が空いて、再度ハリーを違う形で演じられることに特別な思いがあるのでは?
そうですね。やはりありがたいというのが一番の気持ちです。12歳から20年以上関わってきましたから感慨深いです。改めて思うのは、ハリー・ポッターという作品のすごさ。今でも現場でよく「ハリー・ポッター、見てました!」と言われます。多くの人たちを魅了してきた作品だと、そのすごさを感じます。
最近もスタジオツアーやハリー・ポッターグッズのお店ができたりして、まだまだ人気は沸騰しています。赤坂の駅ではハリー・ポッターの音楽が流れていますしね。先日、僕が出ている別作品のグッズストアに行ったら人が大勢いて、すごい人気だ! と思ったんです。そのまま原宿まで行って、たまたまハリー・ポッターのお店の前を通ったら、それこそ大勢の人たちいて、あれ? もしかして僕、結構すごい?! となったことがありました(笑)。嬉しかったです。
ーー舞台で演じる上で楽しみなことは?
魔法がどうやって起きるのかを知りたいので、まず稽古が楽しみです。またアルバス、スコーピウス、デルフィーがポリジュース薬を飲んで変身し、魔法省に忍び込むシーンを観た時に、冒険したり、いたずらしたりしている子供の頃のハリーたちがフラッシュバックみたいに蘇りました。そのシーンを演じることもとても楽しみにしています。大人になったハリーに会いに、ぜひ劇場に来ていただけると嬉しいです。
取材・文=三浦真紀 撮影=福岡諒祠